外壁塗装で養生をする役割・メリットは?
外壁を塗装する際は、目的の箇所以外に塗料が付いてしまうことを避けなければなりません。
そのために、ビニールシートなどを張り付ける「養生」をおこないます。
養生をすることで、窓枠、サッシ、植木、花壇、自動車などの「塗装しない場所」を保護し、汚れを防ぐ役割があるのです。
「丁寧に塗装すれば塗料が飛び散らず、大がかりな養生なんて必要ないのでは?」と考える人もいるかもしれません。
しかし「塗料の飛散を防ぐ」こと以外にも、「塗装をきれいに仕上げる」という役割もある不可欠な工程なのです。
塗料や洗浄水、サビが建物(家、隣の家)に飛散するのを防ぐ
養生のおもな役割は、塗料や洗浄水、サビなどが建物(家、隣の家、植木や車など)に飛散するのを防止することです。
外壁塗装で塗料や水などを扱うと、どうしても壁に当たって跳ね返り、飛散してしまうリスクがあります。
また下地にサビなどが付いている場合には、ヤスリなどの工具でケレンと呼ばれる作業によってサビを落とします。その際に剥がれ落ちた部分が家を汚す原因になってしまうことがあるのです。
もし自宅ではなく隣家に飛び跳ねた場合には、賠償などのトラブルに発展することもあり得ます。
塗装をきれいに仕上げる
外壁塗装は刷毛(はけ)やローラーを使って、職人が手作業でおこないます。
しかしどんなに熟練の技を持つ職人でも機械のように直線を引くことは不可能です。
養生をすることで、塗らない場所を保護しておけば、塗装を終えた後に剥がすことで、結果的にシャープな境界線が生まれ美しく仕上げることができます。
このように塗装をきれいに仕上げる際に養生はとても有効な手法です。
養生をする期間は?
外壁塗装は様々な工程に分かれており、その内容は大きく次のように分けれらます。養生は2週間近く続きます。そのため、日常生活に負担を強いられることも多くなるのです。
工程 | 期間 | ||||
足場組立 | 1日目 | ||||
高圧洗浄 | 2日目 | ||||
養生 | 3日目 | ||||
下地処理 | 4~6日目 | ||||
塗装
|
7~11日目 | ||||
養生撤去 | 12日目 | ||||
足場解体 | 13日目 |
壁の汚れや洗浄水の飛散を防ぐため、足場組立の段階に飛散防止ネットで家全体を覆います。
つぎに下地処理の工程で壁のサビを削ったり、ひび割れを埋めたりして、塗料が付着しやすい状態に整備。
そして塗装は下塗り、中塗り、上塗りの3回以上に分けられ、それぞれ塗り終わったあとに数日の乾燥時間を取ります。
下地処理~撤去の間は養生を外すことができないため、塗装が終わるまでの2週間ちかくも養生しっぱなしということになるのです。
養生する箇所ごとの必要性・ポイント
家全体には飛散防止ネット
塗装する家全体には、飛散防止ネットを使うことで、塗料や水が飛び散るのを防ぎます。
外壁塗装をする前には、高圧洗浄で塗装する部分をキレイにします。
そうすることで塗料が密着しやすくなるのです。
その際に建物全体を飛散防止ネットで覆うことで道路や隣地に洗浄水やサビが飛散することを防ぎます。
窓やサッシ、照明、ポストなどの養生
窓、サッシ、植栽、庇ひさし、照明、メーター、ポストといった、壁以外の場所にも養生が必要です。
これらの場所には、おもにマスカーを用います。
マスカーとは養生シートとマスキングテープを一体化した資材です。
養生シートにテープを貼り付ける工程を省略できるため、作業スピードの向上と作業量の軽減につながっています。
建物だけでなく、細かい箇所にも養生でき、手で簡単にカットできる点もメリット。
窓やサッシの養生は汚れを防ぐだけでなく、ペンキの匂いが家に侵入するのも防ぎます。
玄関、ベランダ、下屋根などの養生
玄関、ベランダ、下屋根といった、塗装の際に足場として使われるような場所にも養生を行います。
足場として使われるので、滑りにくく破けづらいノンスリップマスカーを用いることが多いです。
また玄関ドアなどには養生期間中でも開閉ができるように、個別で養生を施します。
エアコン室外機や給湯器などの養生
エアコンの室外機、給湯器、ボイラー、換気扇といった空気を循環させる場所は、塗料で汚れるだけでなく、塗料の匂いが家の中に侵入する可能性があります。
塗料の匂いを完全に消し去ることはできませんが、養生をすることでかなり軽減できます。
養生している間も使用できるように、通気性の高いメッシュ素材の室外機用シートを使うのが一般的です。
車の養生
飛散した塗料が大切な自動車に降りかかってしまう事故も、避けなければなりません。そこで役立つのが自動車用のシートです。専用のシートをかぶせることで、愛車をしっかりと守ります。
ただし夏場にポリフィルムを長時間被せていると、車の塗装が変色してしまうことがあります。
通気性の良い素材のメッシュタイプのカーカバーがあるので、心配であればそちらを使用しましょう。
キッチンフードの養生
マンションの外壁についていることが多いキッチンフードで。
養生素材がビニールだと燃えてしまため、アルミホイルが用いられます。
もし使用素材を誤ってしまうと、不完全燃焼による一酸化中毒や爆発などが起こりえるため要注意です。
その他の場所
表札、郵便受け、樋、カーポート、倉庫などにも養生を行います。郵便受けなどは郵便物を入れられるように養生してもらうこともできます。
養生に使う道具まとめ
- マスカー(養生ポリシート+マスキングテープ)
- ノンスリップマスカー
- メッシュシート
- ポリフィルムカバー
- ブルーシート
- 布テープ
- コーキング材
これらの道具はホームセンターなどでも購入することができます。
もしDIYで養生する場合は、規模にもよりますが1~2万円ほどで買いそろえられるでしょう。
養生の費用相場と安く抑えるコツ
養生の費用相場
養生の費用は、たいてい外壁塗装にかかる費用全体の約5%程です。
一般的な30坪2階建ての家であれば、足場代なども込みで総額100~200万円程が相場。そのため養生にかかるのは5~10万円程度と見積もっておきましょう。
養生の費用相場は、家の形や装飾などに左右されますが、だいたい1平米あたり300~500円と言われています。
塗装のときの請求額は、塗装作業や足場仮設などもろもろの総額ですが、項目ごとの単価を知っておくのは重要です。
見積もり書を確認するときには、「養生」の施工単価を確認して、適正価格かどうかを確認しましょう。
なかには見積書の料金表が、すべてまとまって「一式」というふうに書かれていることがあります。
この「一式」のなかに、実は養生費用が含まれていないことがあり、「素人なら理解できないだろう」と考える悪徳業者だと別料金で請求されてしまうのです。
相見積もりを取ろう
養生費用が適正な価格かどうかを判断するためには、「相見積もり」をするといいでしょう。
相見積もりとは、複数の施工業者それぞれから作業内容と料金を提示してもらい、比較する方法のことです。
うまく相見積もりを頼むには、2つのポイントがあります。
1つは3社以上の業者に見積もりを頼むことです。
1社や2社など最低限だけに発注すると、たまたま価格設定の高い業者だけに当たってしまう可能性があります。
そういった事故を無くすためにも、最低3社は見積もりを依頼して料金を比較しましょう。
もう1つは相見積もりすることを業者に伝えることです。
「施工料金を比較している」と伝えることで、業者が競合を意識し、値引きしてくれる可能性が高いからです。
見積書で内訳を確認したうえで、養生にかかる具体的な金額を把握しましょう。
雨が降っているとき、養生はできる?
雨が降った場合、設置も撤去もできない
雨天時には、養生の設置・撤去ができません。雨になると滑りやすくなり、作業が危険になるためです。
養生の設置時には、湿気によってテープが張り付かなくなります。
養生がうまく張り付かないと、それだけ塗装完了時のクオリティーも下がるので、雨天での養生作業は控えなければなりません。
また雨天時には、養生を撤去することもできません。
養生シートを剥がす際には付着した塗料のカスが飛散する可能性があります。
空気が乾燥しているときにはカスも乾いているので問題はありませんが、湿度が高い時には、塗料のカスがまだ液状のままである可能性があります。
それが飛び散ると、他の場所に張り付いて取りにくくなってしまうのです。
延期になったとき、費用は変わる?
基本的に、雨によって工期が伸びたとしても、その工賃が増えることはありません。
しかしなかには、「期間延長になったから」という理由で追加料金を請求してくる業者もいます。
そういったトラブルを避けるために、追加料金が発生する条件やそのときの金額などは、事前に業者から聞いておきましょう。
雨天時にも作業しようとする業者に注意!
上記の通り、雨天時の養生・撤去は避けるべきです。
ところが中には、雨が降っていても作業をする業者もいます。
「雨なのに熱心でありがたい」と考えることは正しくありません。なぜなら、その業者は工期を短縮し、作業全体を効率化するために強行しているかもしれないからです。
延長のときに料金がかからないことだけでなく、雨天時にどのような対応をするのかも事前に確認しておきましょう。
養生するときの注意点
養生をしている2週間ほどの間は、日常とは違った生活になります。養生中の生活の注意点を知っておくことで快適な生活を目指しましょう。
窓を開けられない
窓を養生している場合、開閉してしまうことで保護しているポリシートが崩れたり破れたりする危険があります。
また窓を養生することで、塗料の匂いが部屋に入ってくるのを防ぐ役割もあるため、誤って動かさないようにしましょう。
雨戸やシャッターの開閉ができない
窓に同じく雨戸やシャッターも動かせません。
シャッターは開けた状態でも閉めた状態でもどちらでも大丈夫ですが、一度養生すると2週間近くは開閉することができません。
もしシャッターを閉めたまま養生すると、塗装が終わるまでは部屋に日光が入らないため、開けておくのがオススメです。
洗濯物を干せない
塗装の際には、ベランダも養生します。
洗濯物を干すことができなくなるので、あらかじめ対応策を考えておきましょう。
乾燥機がない場合には、近くのコインランドリーまで洗濯物を乾燥させに行く必要があります。
植物を長期間養生していると枯れてしまうかも
外壁塗装の際によくあるのは、養生していた植物が枯れてしまうことです。
酸素や日光の不足によって枯れてしまう可能性があるため、何度か養生しなおして空気を入れ替えるか、別の場所に一時避難させておくのがいいでしょう。
植木鉢などのほかにも、動かせる小物はなるべくどかしておきましょう。
エアコンや給湯器の使用に注意
エアコンや給湯器などの場所には注意が必要です。
これらを使用している間は機器を通してを外気と内気を循環させています。
その循環を妨げるような養生を行ってしまうと、機器の故障につながることも。また給湯器はガスを扱うため、一酸化炭素中毒などの事故も考えられます。
養生するときには、エアコン・給湯器を使用しても大丈夫かどうか、あらかじめ業者に確認しておきましょう。
DIYで養生する場合のコツや必要な道具は?
DIYでの塗装・養生はおすすめしない?
外壁塗装にかかる費用は決して安くはありませんよね。
「ならば自分でやってしまおう」と思うかもしれませんがあまりおすすめはできません。
素人作業だと塗装の仕上がりが悪いだけでなく、外壁の耐久性にも悪影響を及ぼす可能性があるのです。
おなじく養生にかんしても、素人による施工では飛沫を防ぎきれず、トラブルに発展する可能性があります。
隣人とトラブルになることも
自分で養生をするときの最大のリスクとして、養生が甘く、塗料が隣家へ飛び散ってしまう場合が挙げられます。
もし隣の住人に賠償金を求められたら、大変な出費になってしまいますよね。
業者に頼むことで、そのような事態は防げるでしょう。
万が一飛び散ってしまった場合にも、「請負業者賠償責任保険」というものがあり、施工した業者が補償してくれます。
隣人との関係は工事の後も続くものなのでトラブルを避ける意味でも業者に任せるのが無難でしょう。
DIYで養生するコツ
もしどうしてもDIYで外壁塗装や養生をするなら、最低限動かせるような小物はよけておくのがコツです。
塗料が飛び散らないようにするためには、極論を言えば、塗料を飛沫させたくないものが置いていない状況で塗装するのがベスト。
まずは小物をどかして、必要なものだけを養生するようにしましょう。
もし自分で養生を行うのであればこれらの道具があると役に立ちます。
1.新聞紙
新聞紙は、ペン立てのような小物や小さい箱など、こまごましたモノを養生するときに便利です。
また塗装が終わったときには、新聞紙に残った塗料を吸わせることで簡単に捨てることができます。
塗装の際には読み終わった新聞を用意しておくとよいでしょう。
2.マスカー
人手の足りないDIY養生で、マスカーは必需品です。
マスキングテープを貼った上からマスカーを貼ることでビニールがはがれるのを防げます。
ただし粘着力が足りないマスカーを使うと、剥がれて塗料が入り込む恐れがあります。
粘着力がつよい製品、また使う箇所にあった大きさのマスカーを選びましょう。
3.マスキングテープ
マスキングテープはいわずと知れた養生の主役です。
養生シートなどを、壁面に固定するために使用します。
4.養生テープ
養生テープはビニール製のため、場所を選ばず使うことができます。
マスキングだけでなくビニールや新聞紙をつなげるのにも使えます。
5.ビニールシート
ビニールシートは床を保護するのに使います。物を置いたり、歩いたりすることもあるので丈夫なものを選びましょう。
6.コーキング材
コーキング材は凹凸のある壁を塗るときに、必須のアイテムです。
マスキングテープだけでは壁の凹凸を覆えず綺麗なラインを引くことができません。
コーキング材を使ってしっかり固定することで、仕上がりを抜群に変えられるでしょう。
もしも塗料が飛び散ってしまった場合
業者に依頼していた場合
外壁塗装を業者に依頼した場合、作業が終了した後に室内外に塗料が飛び散っていないかしっかり確認しましょう。
万が一汚れがついていた場合は、剥離剤などを用いて塗料をはがしてもらいます。
もしも車や、隣の家が汚れていた場合には、「請負業者賠償責任保険」を適用して補償してもらえる可能性があります。
請負業者賠償責任保険とは、塗装業者が施工中に人や物で事故を起こしてしまった際などに、補償金が発生する保険です。
業者がこの保険に入っていない場合、補償はしてもらえないので、塗装を依頼する段階であらかじめ確認しておきましょう。
DIYで塗装した場合
自分で塗装をしていた場合、まずは跳ねてしまった塗料をはがせるか試してみましょう。
ヤスリで擦ったり剥離材を塗ったりすると、解決できるケースがあります。
しかし隣の家に飛び散ってしまった場合、自分で塗装を消そうとすることは避けましょう。
塗装を消した跡が残ったり、悪化して傷をつけたりするかもしれません。
このように後々トラブルになる可能性があるので、まずは隣人に謝ってから対策を考えるべきです。
弁償に発展することもありますが、塗装剥離の専門業者などに頼んだりすることもできます。
穏便に済ませたい気持ちはわかりますが、とにかく焦らずに隣人に伝えることが大切です。
ミツモアで外壁塗装業者に見積もりを依頼しよう!
外壁塗装は、大切な住宅の美観と安全性に関わります。
そのなかでも養生作業は、塗料の飛散を防ぎ、また塗装の仕上がりにも影響するため、大切な工程です。
良好な仕上がりが期待できる発注につなげるためにも、養生への理解を深めて、信頼できる塗装業者選びをしましょう。
そこで重要なのが、相見積もりです。複数の業者から提示された見積額を比較検討し、納得できる費用で依頼をしましょう。
ミツモアでは豊富な経験と知識を持ったプロに外壁塗装の見積もりの依頼ができます。まずはプロに相談をしてみてはいかがでしょうか?