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【解説!】モルタルの種類と用途、メンテナンスの方法まで

最終更新日: 2023年03月31日

住まいの印象を決める外壁。さまざまな外壁材の中でも、自由度が高く温かい雰囲気に仕上がるモルタル塗装に、再び注目が集まっています。

外壁材としてモルタルを使用すると強度はどうなのか、また、どんな種類があるのか、さらに気になるメンテナンスまで。おしゃれなモルタル塗装について解説します!

モルタルとは?外壁、床、他にどんなところに使われている?

モルタル塗装の外壁が再度注目されています
モルタル塗装の外壁が再度注目されています

外壁だけでなくお庭やエクステリアなどの外構DIYにもよく使われるモルタルですが、いったいどんな素材なのでしょうか。モルタルの用途や外壁塗装の変遷について説明します。

モルタルとは?

モルタル = セメント + 砂 + 水

モルタルとは、セメントに砂と水を混ぜてペースト状にした建築材料のことです。やわらかいモルタルをコテで塗れば、表面がなめらかに仕上がるため、外壁の下地やコンクリート仕上げ材として使われています。

モルタルの用途は?<外壁、床、目地、他>

モルタルの大きな特徴は扱いやすく用途が広いこと。プロの職人でなくても使いやすいためDIYの素材としても用いられています。

主に使われるのは住まいの外壁やコンクリート壁の仕上げ材。また、土間や床の上塗りにも使われます。

モルタルを下地として塗った上にタイルを貼ると、接着剤としても利用可能。さらにブロックやレンガを積むときには、空洞や目地など隙間を埋める材料としても使われています。

防水材が入っているモルタルは、ベランダの床材として、壁にアルミサッシを設置した際の隙間材としても利用できます。

1980年と現在の外壁塗装の移り変わり

建築資材として扱いやすく、活用の幅が広いモルタルは、現在も建築現場でさまざまに利用されていますが、特に1990年以前は外壁材としてよく使われていました。しかし、最近の外壁材はサイディングボードの利用が主流になっています。

サイディングボードとは外壁に板(パネル)として貼っていくもので、決まったサイズのパネルを貼るだけで、外壁塗装が完了します。左官職人が手作業で塗っていくモルタル外壁に比べ、施工時間を大幅に短縮できます。さらに、パネルは工場でつくる工業製品なので、品質も一定。建材費用も工賃も安くできるため、最近の新築住宅9割でサイディング壁が採用されているといわれています(日本窯業外装教材協会H29年調査)。

デザイン性を高めたモルタル

モルタルの良さは、人の手で塗っていくため、塗る際にさまざまな装飾ができることです。最近では、自然石やレンガ、金属の質感をリアルに再現した「モルタル造形」も人気。海外のおしゃれなカフェやテーマパークにあるショップのような個性的な外壁にできる工法です。

サイディングボードも最近では多くのカラーやデザインが登場しているものの、モルタルの自由度にはかないません。強度を保ちながら、アンティーク調にもナチュラルな雰囲気にもできる自由度の高さは、モルタルならではの大きな特徴です。

モルタルの特徴<メリット・デメリット>

まるで石を積んだ雰囲気の壁もモルタル塗装で演出できます
まるで石を積んだ雰囲気の壁もモルタル塗装で演出できます

用途が広く扱いやすいモルタルですが、使用する際のメリット、デメリットにはどんなことがあるのでしょうか。

モルタルのメリット

外壁にモルタルを使用するメリットは以下のような点です。

  1. 自由度が高い
    モルタル外壁の仕上げ方にはさまざまな種類があり、質感もデザイン性にも優れています。また、モルタル造形など、オリジナリティの高いデザインにすることも可能です。グレーというイメージが強い色も、さまざまなものから選択できます。
  2. 壁に継ぎ目ができない
    外壁材として人気のサイディングは貼り付けるパネルとパネルの間に継ぎ目ができてしまいます。モルタルは全体を塗ってしまうので、継ぎ目や隙間がないなめらかな仕上がりになります。
  3. 不燃性で有毒ガスを発生しない
    モルタルの原料は、セメント、砂、水なので、燃えにくく、火災の際にも有毒ガスを発生しません。
  4. 自分で補修しやすい
    経年変化や風水害などで外壁が破損した場合も、モルタルは扱いやすい素材なので、自分で補修が可能です。

モルタルのデメリット

モルタルのデメリットは以下のような点になります。

  1. 工期が長い
    モルタルは左官職人が手作業で仕上げていくため、壁全体を塗り終わるまでに時間がかかります。また、しっかり固まるまでの乾燥時間も必要なので、工期が長くなってしまいます。
  2. 職人の技術に仕上がりが左右される
    モルタルは人の手で塗っていく外壁材なので、塗り方などに職人さんの技術が出やすいという特徴があります。特に、コテでデザインや装飾をしたい場合は、腕のよい職人さんにお願いしないと思うようには仕上がらない可能性もあります。
  3. ひび割れしやすい
    経年変化や乾燥、地震などの自然災害の影響で、表目にひび割れが入りやすいという特徴も持っています。大きなひびが入った場合は、早急な補修が必要です。
  4. 紫外線や雨による劣化がある
    外壁を凸凹にする仕上げにした場合は、汚れが溜まりやすかったり、雨水の跡がつく場合があります。また、紫外線により防水性が失われていくと、壁を触ったときに白い粉がつく「チョーキング現象」が発生することもあります。

モルタル、コンクリート、セメントの違い

セメントに砂を混ぜ、水で練ったのがモルタルです
セメントに砂を混ぜ、水で練ったのがモルタルです

モルタルと同じように砂などを混ぜてつくる建築資材に、コンクリートやセメントがあります。それぞれどのような違いがあるのでしょうか。

作り方の違い

大きく異なっているのは作り方です。

コンクリートやモルタルの原料になっているのがセメントです。セメントはクリンカ(石灰石と粘土を混ぜて焼いたもの)、石膏、珪石、酸化鉄が原料になっています。

セメントにさまざまな素材を混ぜることで、コンクリートやモルタルができます。セメントには「ポルトランドセメント」「混合セメント」「特殊セメント」などがあり、一般的に使われているのは「ポルトランドセメント」です。

セメントに砂と砂利、水を混ぜるとコンクリートになります。一般的にはセメント1:砂3:砂利:水適量で混ぜ合わせます。

砂利をいれず、セメントと砂を水で練ったものがモルタルです。モルタルはセメント1:砂3:水適量を混ぜ合わせます。

コンクリートもモルタルも、まずセメントと砂をよく混ぜ合わせます。コンクリートの場合は、その後砂利を混ぜ合わせ、最後に水を加えます。水は少しずつ入れて練り混ぜていき、耳たぶくらいの柔らかさにしていきます(水の分量はセメントの重さの60%程度)

モルタルを作る際の砂の種類は、川砂や生砂などがおすすめです。

セメントの材料: クリンカ、石膏、酸化鉄
コンクリート セメント1 + 砂3 + 砂利 + 水
モルタル セメント1 + 砂3 + 水

強度の違い

セメント、モルタル、コンクリートの強度は、

セメント < モルタル < コンクリート

です。

モルタルも、セメントと比較すれば強度は高く、耐風でものが飛んできて壁に当たっても破損することはありません。ですが、ダムや防波堤、橋などにも使われているコンクリートに比べれば強度は弱くなります。

用途の違い

セメント、コンクリート、モルタルの用途は、扱いやすさと強度によって分けられます。

  • セメント
    コンクリートやモルタルの材料、外壁補修、タイル目地の仕上げ など
  • コンクリート
    住宅やビルの基礎・構造部分、橋、ダム、トンネル など
  • モルタル
    コンクリートの上塗り材、タイルやレンガの下地・接着剤、瓦やスレートの材料、外壁、床など

モルタル塗装・下地材の種類

左官仕上げのモルタル塗装ならこんなアートな壁も実現できます
左官仕上げのモルタル塗装ならこんなアートな壁も実現できます

実際にモルタル塗装をする場合には、どのような方法で行うのでしょうか。外壁にモルタルを塗る前の準備や、下地材と塗装の種類などをご紹介します。

モルタル塗装の下地準備

モルタルで外壁を作る場合は、下地を作ってモルタルを塗っていきます。下地になるのは木摺りと呼ばれる1cmほどの木材の上に防水シートを貼り、ラス網というモルタル崩れ防止の金網を貼ったものです。

防水シートには水の侵入を防ぎ、木材の耐久性をあげる働きがあります。ラス網にも防火性能や耐震性を向上させる働きがあり、この準備をしっかりすることで外壁の性能を向上させています。

下地材の種類

モルタルでの外壁塗装は、下塗り、中塗り、上塗りの3つの工程で行います。中でも下塗りは、壁の強度を左右する重要な工程です。モルタルを接着する効果がある下塗り塗料の種類は、アクリル樹脂ウレタン樹脂シリコン樹脂フッ素樹脂があります。それぞれモルタル外壁の耐久性や価格が異なってきます

最も安価なのはアクリル樹脂の下地。安いのですが、耐久年数が7年くらいで、その後はメンテナンスが必要になります。

次によく使われるのがウレタン樹脂やシリコン樹脂。どちらも耐久性が高く10~15年の耐久性があります。

最も耐久性が高いのがフッ素樹脂です。耐水性、耐久性がアップし、20年くらいはメンテナンスが不要になります。その分他の下地材より高価になりますが、長い目で見ると費用対効果が高いという人も増えています。

モルタル塗装の種類

モルタル塗装の仕上げの種類には大きく分けて5つあります。

  1. リシン吹付
    リシン壁とは、表面が細かくざらざらしている砂壁のような仕上げのモルタル外壁です。細かく砕いた石とセメント、樹脂、塗料を混ぜて吹き付けて仕上げます。安価にできること、温かい雰囲気に仕上がることで人気でしたが、凸凹の部分に汚れがつきやすく、ひび割れも発生しやすいことから、最近ではあまり使われていません。
  2. スタッコ
    石灰と水を原料にしたスタッコ材を厚く吹き付けたものがスタッコ壁です。スタッコ材を吹き付けたり、吹き付けた後ローラーでつぶしていくことで重厚感のある壁を作ります。耐久性は高いのですが、凸凹に汚れがつきやすいというデメリットがあります。
  3. 吹付タイル
    表面をなめらかに仕上げられるのが吹付タイル。専用のスプレーガンで広範囲に塗料を塗り、ローラーやコテで整える方法です。独特の風合いを好む人も多く、ひび割れや汚れが起こりにくいという特徴があります。
  4. リシンかきおと
    リシンを吹き付けた後、ブラシや剣山などで表面をかきとり、風合いをつけた外壁です。かきとり量によって、風合いに微妙な変化をつけることができ、個性的な外壁にできます。リシン吹付より表面積が増えるので、通気性が高まるという特徴もあります。
  5. 左官仕上げ
    左官職人がコテを使って仕上げる方法です。扇型の模様が重なったものや四角い模様を連ねたものなど、職人の感性が光るおしゃれな外壁にできます。腕のいい左官職人さんに依頼できれば、アート作品のような外壁にすることも可能です。

モルタル塗装の劣化とメンテナンス

モルタル壁のひび割れは早めに補修しましょう
モルタル壁のひび割れは早めに補修しましょう

おしゃれで温かみのある雰囲気が出せるモルタル塗装ですが、ひび割れや汚れなどの劣化が起きやすいという特徴も持っています。長持ちさせるためには定期的なメンテナンスが重要です。使用しているモルタルや下地材、表面塗装材料によって5~15年くらいでメンテナンスをしていきましょう。

ひび割れ

モルタル壁のデメリットとしてあげられることが多いのがひび割れです。継ぎ目がなく一面を塗ってしまうので、地震などの揺れでひび割れが発生するのです。

また、紫外線や雨によりモルタル表面の防水塗装が劣化することも原因の一つ。モルタルが雨を吸収し、乾燥と吸水を繰り返すうちに、ひび割れが起きてしまいます。

ひび割れを放置しておくと外壁の内側に水が入り込む原因となり、家の構造が傷んでしまいます。

ひび割れを見つけたら樹脂製のコーキング材(シーリング材)を注入し、表面を防水効果の高い塗料で塗装して隙間を埋めましょう。早い段階で補修すれば、セルフ補修でも問題ありません。

チョーキング

チョーキングとは、外壁を触ったときに白いチョークのような粉がつく現象のことです。紫外線によって表面塗料の樹脂が劣化したために起こるもので、防水機能が失われていることを表します。

防水機能を失ったモルタル外壁は水分を吸収するので、壁の内部に水が浸入し、構造を傷めてしまいます。

チョーキングに気づいたら、古くなった塗料をはがして新しい塗料を塗る必要があります。早めに外壁塗装のメンテナンス依頼をすることが重要です。

カビ、コケ

モルタル外壁は凸凹していることが多く、日当たりの悪い場所はカビやコケがつきやすい状態になっています。壁にカビやコケが付着すると、見た目が悪くなるだけでなく、壁の破損の原因にもなります。コケが出す酸性物質がモルタルの主原料であるセメントのアルカリ成分を中和させるためで、壁がもろくなってしまいます。

カビやコケに気づいたら、まずは高圧洗浄機などできれいに洗浄し、壁についたものを除去しましょう。きれいになったら、カビやコケを防止する塗料を上塗りすればOKです。

爆裂

爆裂とは内側から力がかかってモルタルがはがれてしまう現象のこと。モルタル外壁に入った小さなひびを放置していると、だんだん大きくなって雨水がしみこむようになります。モルタルの下にあるラス網は金属なので、これが雨水に触れると錆びてしまうのです。金属は錆びると大きくなるので、モルタルを押し出してしまい、はがれてしまいます。

この状態になったら、ラス網がある土台部分からの交換が必要。外壁塗装のプロにお願いしましょう。

モルタル塗装の材料

モルタル塗装に使う左官こては先が尖ったものが一般的です
モルタル塗装に使う左官こては先が尖ったものが一般的です

モルタル塗装の際に使うモルタルや使う道具にはいろいろな種類があります。メンテナンスをする際にも知っておくと便利なモルタル塗装の材料をご紹介します。

インスタントモルタル、他

モルタルはセメントと砂に水を混ぜて作るものですが、その割合や水の加え方によっては、モルタルの強度は大きく変わってしまいます。

細かい比率を考えずに水を混ぜるだけで使えるのがインスタントモルタルです。仕上げ用、土間用、ひび割れ用など、用途によって配合を変えたものが販売されています。

モルタルやコンクリートは固まる際に少し収縮しますが、モルタルの種類によっては無収縮のものもあります。隙間の補修や機械の固定やフェンス柱の施工など隙間ができては困るものに利用されています。

色モル

モルタルといえば灰色、のイメージを覆すのが色モル。さまざまな色が入ったカラーモルタルです。モルタルに色粉をいれて好きな色を作るのは至難の業。でもすでに色が入ったカラーモルタルなら、落ち着いた好みの色味の壁にすることができます。

コテ、ローラー、スプレーガン

モルタルを塗るのに不可欠なのがコテです。さまざまな種類がありますが、モルタル塗装に使われるのは仕上コテ、中塗コテと呼ばれるもの。先が尖っており、長時間持っていても使いやすい重さのものを選びます。

塗装するときは、ローラーやスプレーガンを使います。スポンジ状のローラーに塗料を含ませて塗っていく方法は広い面積を塗る際に便利です。

スプレーガンも広い範囲を塗るのに適しています。微妙なグラデーションや模様をつけることができるだけでなく、ローラーより早く塗装できるので、多くの現場で活用されています。ですが、風に流されやすい、飛び散りやすいなどのデメリットも。塗装時に大きな音が出るので密集地では使用されない場合もあります。

樹脂モルタル他、いろいろなモルタル

モルタルはセメントと砂と水を混ぜるものが一般的ですが、それ以外の材料でできているものもあります。

セメントの変わりに樹脂が入っているものは樹脂モルタルと呼ばれます。セメントを使ったモルタルに比べ固まるまでの時間が短いのが特徴です。柔軟性もあるのでひび割れが起きにくいことから、外壁塗装や床塗装などに使われます。

ポリマーセメントモルタルは、セメントの中にポリマーをいれたものです。耐衝撃性、耐水性、耐摩耗性、耐収縮性などの機能が向上するので、耐震補強が必要な場所にも使われます。

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