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生前贈与の非課税枠を紹介!事前の対策で相続税を大節税!!

最終更新日: 2022年12月16日

生前贈与は相続税の節税対策の王道です。
平成27年に相続税の大増税が行われて以降、ますます生前贈与の重要性は増しています。
ところが、生前贈与が相続税対策になると頭では分かっていながら実行に移せていなかったり、贈与は行っているものの手法が間違っていたりというケースも少なくありません。
ここでは、生前贈与の効果と正しい贈与の手法、さらにはお得な非課税の特例についてもご紹介いたします。

生前贈与の非課税枠は非常に複雑・難解!

贈与税 非課税
生前贈与にはさまざまな非課税枠が(画像提供:imtmphoto/Shutterstock.com)

生前贈与については基礎控除年間110万円以外にも様々な非課税枠が用意されています。非課税特例を適用して贈与された財産の多くは用途が限られているため、事前に当事者間でよく話し合ってから実行に移す必要があります。
それぞれの特例の内容を十分に理解し、そのうえで適用できる非課税特例がないかどうか検討してみるとよいでしょう。

そもそも贈与税の課税対象外のもの

まず大前提として、夫婦間や親子間など扶養義務のある家族間における生活費や学費等の贈与についてはそもそも贈与税の課税対象とはなりません。
両親や祖父母が下宿している子や孫に生活費を仕送りすることは自然ですし、学費を負担してあげるのもよくあることです(たとえ医学部で何千万円もかかったとしても)。
もちろん、実際の生活費や学費を超えるような多額なお金を贈与した場合には、超えた部分は贈与税の課税対象となりますし、また数年先の生活費や学費までまとめて贈与した場合には、贈与した年に使い切れず残った部分は贈与税の課税対象となります。
あくまで「必要な時に必要な分だけ」を渡していることが贈与税の課税対象とされないための条件です。

年間110万円の非課税枠を使った暦年贈与

一番シンプルなのは、年間110万円の基礎控除だけを利用した「暦年贈与」です。
もし金銭を贈与する場合には、贈与する側の口座から贈与される側の口座へ振り込むようにします。
現金の受け渡しは証拠が残らず、税務調査で問題になる可能性があるためです。
同時に、贈与契約書を作成して双方が署名捺印しておけばより安心です。
なお、祖父母が幼少の孫に贈与する場合には、孫にまだ意思能力がないため、親権者である両親が契約書に署名捺印しておきましょう。
ちなみに、相続税の税務調査でよく問題になるのが、被相続人が子どもや孫の名義の預金口座を本人に内緒で作っており、これを相続財産から除外していたケースです。
繰り返しになりますが、贈与契約は「贈与する側」と「贈与される側」の意思が合致して初めて成立しますので、本人に内緒で勝手に作成した家族名義の口座は「名義預金」として被相続人の相続財産に含まれ、相続税の課税対象とされてしまいます。
わざわざ贈与契約書を作成し署名捺印までするのは、「もらった側が承知していた」ことを明らかにするための重要な証拠となるからです。

夫婦の間の居住用不動産の贈与

婚姻期間が20年以上の夫婦間において居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、2,000万円までは贈与税が非課税となる特例があります。
実際には、基礎控除額の110万円と合わせて2,110万円までを非課税で贈与することが可能です。
なお、この特例を適用して非課税となった部分の金額(基礎控除を除く)については、たとえ相続開始前3年以内の贈与であっても生前贈与加算の対象とはなりません。
しかしながら、この特例を利用するかどうかの判断は慎重に行う必要があります。
というのも、配偶者については元々相続税が優遇されている(最低でも1億6,000万円までは相続税がかからない)ほか、不動産の贈与については不動産取得税や登記費用といったコストが高額になるためです。
相続税の節税効果を超えるコストがかかったのでは意味がありません。
もし興味がある場合には、事前に相続税の節税効果と生前贈与した場合のコストとを比較し、明らかにメリットがあると判断した場合のみ実行に移すべきでしょう。

住宅取得等資金の贈与

平成27年1月1日から平成33年(2021年)12月31日までの間に、父母や祖父母などの直系尊属から住宅用家屋の新築、取得又は増改築等に充てるための金銭(住宅取得等資金)の贈与が行われた場合、一定額までは贈与税が非課税となる特例があります
非課税限度額は「住宅用家屋の新築等の契約日」と「住宅用家屋の種類」により異なります。たとえば2018年中の契約で消費税率が8%の場合、「省エネ等住宅」であれば1,200万円、「省エネ等住宅以外の住宅」であれば700万円までが非課税となります。
実際には、これに基礎控除額の110万円を足した金額までを非課税で贈与することが可能です。
なお、この特例を適用して非課税となった部分の金額(基礎控除を除く)については、たとえ相続開始前3年以内の贈与であっても生前贈与加算の対象とはなりません。

教育資金の一括贈与

教育資金_子育て資金_贈与税_非課税枠
教育資金や結婚・子育て資金の贈与には非課税枠あり(画像提供:imtmphoto/Shutterstock.com)

平成25年4月1日から平成31年(2019年)3月31日までの間に、父母や祖父母などの直系尊属から30歳未満の子どもや孫などに対して教育資金の贈与が行われた場合、1,500万円までは贈与税が非課税となる特例があります。
実際には子どもや孫などへ直接贈与するわけではなく、金融機関と契約して教育資金口座を開設し、金銭を一旦預け入れます。
そして、贈与を受けた子どもや孫などが実際に教育費を支払った場合に、その領収書などを金融機関へ提示してお金を払い出すという仕組みです(習い事など学校等以外への支払は500万円が上限)。
ここで思い出していただきたいのですが、そもそも扶養義務者間の教育費の贈与については、その都度必要な金額を渡す限りは贈与税の課税対象とはなりません。
したがって、あえてこの特例を使うケースとしては、高齢の祖父母・曾祖父母が孫・曾孫の将来の教育費を一括して生前贈与する場合などが考えられますが、非課税枠が大きいため余命が短い場合には非常に有効な相続税対策となります。
なお、この特例を使って贈与した金銭については生前贈与加算の対象とはなりません。
ただし、贈与を受けた子どもや孫などが30歳に達した時点で使い切れていない資金残額がある場合には、その残額に対して贈与税が課税されることになります。何も考えずに上限の1,500万円を贈与するのではなく、本人の年齢や希望進路から30歳までに使い切れそうな額を予測して贈与することが必要です。

結婚・子育て資金の一括贈与

平成27年4月1日から平成31年(2019年)3月31日までの間に、父母や祖父母などの直系尊属から20歳以上50歳未満の子どもや孫などに対して結婚・子育て資金の贈与が行われた場合、1,000万円までは贈与税が非課税となる特例があります。
こちらも教育資金と同様、金融機関と契約して結婚・子育て資金口座を開設し、金銭を一旦預け入れます。
そして、贈与を受けた子どもや孫などが実際に結婚・子育て費用を支払った場合に、その領収書などを金融機関へ提示してお金を払い出す仕組みです(結婚資金については300万円が上限)。
ところで、結婚費用等についても、たとえば結婚式の費用の一部を親に負担してもらったり、あるいはお祝い金としてある程度まとまったお金を受け取ったりしたとしても、それが通常認められる範囲内の金額であれば贈与税が課税されることはありません。
したがって、この特例を使うケースも、高齢の祖父母が孫の将来の結婚資金等を一括して生前贈与する場合などに限られるかと思います。
ただし、教育資金の一括贈与とは異なり、贈与した人が亡くなった時点でまだ使い切れていない資金残額があるときは、贈与を受けた子どもや孫などがその資金残額を相続又は遺贈により取得したものとみなし、相続税の課税対象となります。
つまり、相続財産と完全に切り離すことができないため、相続税の節税効果はあまり期待できないということです。
また、贈与した人が亡くなる前に贈与を受けた子どもや孫などが50歳に達した場合など、契約が終了した時点で使い切れていない資金残額があるときは、その残額に対して贈与税が課税されます。

障害者に対する贈与

障害者の方の生活費などに充てるために贈与が行われた場合、特別障害者の方については6,000万円まで、特別障害者以外の障害者の方については3,000万円までは贈与税が非課税となる特例があります。
この特例の適用を受けるためには、信託銀行と契約し、財産を信託して管理・運用してもらうとともに、信託銀行を通じて「障害者非課税信託申告書」を所轄税務署長へ提出する必要があります。
そうすると障害者の方に対しては、信託銀行から生活費などに充てるための金銭が定期的に交付されるようになり、贈与した方が亡くなった後も障害者の方が亡くなるまで信託銀行が継続して財産を管理・運用します。非課税枠を利用することによる相続税の節税効果もさることながら、自らが亡き後の障害者の方の将来の生活保障になるという意味でも非常に有効な制度です。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、高齢者の財産をなるべく早いうちに次の世代へ移転することで財産を有効に使ってもらい、経済の活性化を図ろうという趣旨で作られた制度です。原則として60歳以上の父母又は祖父母から20歳以上の子ども又は孫に対して財産を贈与した場合に選択できる制度です。
非課税枠は「2,500万円」と非常に大きな金額ではありますが、精算課税制度により贈与した財産については相続の際に必ず相続財産に加算されますので、単純に相続税の節税につながるわけではありません。
さらに詳しくご説明します。
まず、非課税枠の2,500万円は、毎年使える暦年贈与の基礎控除(110万円)とは異なり、一生のうちに使える非課税金額の合計額です。
精算課税制度による贈与額が累計で2,500万円に達するまでは非課税で贈与を行うことができますが、2,500万円を超えた場合には、超えた部分に対して一律20%の贈与税が課税されます。
しかし、贈与した財産は最終的に相続財産に持ち戻されて相続税の課税対象となり、支払った贈与税は相続税から控除されることになりますので、この贈与税はあくまで「相続税の前払い」にすぎません。
このように、相続時精算課税制度は必ずしも相続税の節税効果を発揮するとは限りませんので、適用には慎重な検討が求められます。
精算課税制度を利用した贈与をお勧めできるケースとしては、以下のような場合が考えられます。
・相続財産が相続税の基礎控除以下の場合 … 2,500万円までは贈与税も相続税も気にせず生前贈与できる
・将来値上がりしそうな財産を贈与する場合 … 相続財産に加算される価額は「贈与時の価額」のため、もし贈与後に値上がりしていればその分だけ相続財産を圧縮できたことになる
・収益を生む財産を贈与する場合 … 賃貸マンションなど収益を生む財産を贈与すれば、その後の収益(現金)が贈与者に蓄積せず相続財産を減らせる
なお、相続時精算課税制度を一度選択してしまうと、その父母や祖父母からの贈与についてはそれ以降すべて相続時精算課税による贈与として扱われ、暦年課税に戻ることはできません。
精算課税贈与を行うよりも暦年課税贈与を毎年続けた方が相続税の節税につながるケースも多いため、選択はくれぐれも慎重に行うようにしましょう。

相続開始前3年以内の贈与は注意

気を付けなければいけないのは、相続が発生した日からさかのぼって3年以内に被相続人から贈与を受けていた財産については、相続財産に加算されて相続税の課税対象となってしまうことです。
その間に支払った贈与税については相続税から控除されますので、税金的には贈与がなかったことと同じになります(贈与契約自体は有効)。
したがって、「3年ルール」に引っかからないよう早い段階から生前贈与を行っておくことが必要です。
なお、この「3年ルール」は相続により財産を取得した人のみに適用されますので、財産を相続しない孫などへ贈与した財産については加算対象外となります。

生前贈与は専門の税理士に相談

生前贈与を有効活用して円滑な相続を

ここまで、生前贈与の様々な手法・特例についてご紹介してきました。
一見簡単そうに見える生前贈与ですが、理想的な生前贈与の進め方については本人が所有する財産の規模や種類、家族構成などによって千差万別です。適切な生前贈与を実施するために、まずは一度専門家に相談してみるとよいでしょう。

相続税の節税は生前の対策がすべて

相続税の節税対策は、万が一のことがあってからでは手遅れです。
元気なうちからコツコツと生前贈与を行っていた場合と何も対策をしていなかった場合とでは、将来支払うことになる相続税に数百万円、数千万円もの差が生じることになります。
また、これは生前贈与をする・しないに関わらずですが、自分が亡き後の遺産の分け方や家族の暮らし方について生前に家族間で話し合っておくことは、将来の揉め事の種を摘むことにもつながります。

相続専門の税理士に相談を

相続を扱う専門家・士業はたくさんいますが、相続には「税金」がつきものですので、相談するならやはり税理士が一番頼りになります。
しかし、税理士にも得意分野・不得意分野があり、相続税を専門に扱う税理士がいる一方、相続税申告を一度も経験したことのない税理士も決して少なくありません。
税理士をお探しの際は、相続税申告の経験が豊富な税理士を簡単に探すことのできるミツモアをぜひご利用ください。