贈与契約書の作成において、贈与するものによって印紙が必要な場合と不要な場合が異なります。
本記事では、収入印紙の貼付けが必要な贈与契約書、印紙の貼付け方や印紙税額について解説します。
贈与契約書に印紙は必要?
不動産の贈与契約書にのみ必要です。その他、金銭譲渡契約書や土地譲渡契約書、株式贈与契約書には必要ありません。
収入印紙はいくら?
不動産贈与契約書の印紙代は、贈与金額に関わらず一律200円です。しかし負担付贈与は例外で、契約金額に応じて印紙代も変わります。
この記事を監修した税理士
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
不動産の贈与契約書のみ印紙が必要【金銭・株式贈与の際は不要!】
生前贈与において、不動産を贈与したときのみ贈与契約書に印紙を貼り付けなければなりません。現金や株式など不動産以外のものを贈与する際は印紙が不要です。
そもそも収入印紙は印紙税を支払ったことを証明する切手のようなもので、文書に貼り付けることで納税したことになります。
印紙税法では以下のものを含む、計20種類の課税文書(印紙が必要になる契約書)が定められています。
【課税文書の例】
- 不動産の贈与契約書
- 不動産売買契約書
- 土地賃貸契約書
- 金銭借用証書
現金や株式の贈与契約書は課税文書には含まれず、不動産の贈与契約書のみが印紙税の課税対象となっているのです。
不動産の贈与契約書には200円の収入印紙を貼付け【負担付贈与は例外】
不動産の贈与契約書にかかる印紙税額は、契約書に記載された評価額に関わらず一律200円です。
しかし、贈与を受ける人に債務など何かしらの負担がある「負担付贈与」に関しては売買または交換契約と見なされ、取引金額に応じた印紙税がかかります。
不動産評価額にかかわらず一律200円の印紙が必要
不動産の贈与契約書を作成する場合は200円の印紙貼り付けが必要です。200円は不動産の評価額にかかわらず一定の金額になります。
不動産の贈与契約書が印紙税法第1号の1文書(不動産の譲渡に関する契約書)に該当するため、印紙税の課税対象です。
売買契約等の印紙税は売買金額によって印紙税額が変動しますが、贈与契約の場合は金銭の支払いが生じない無償行為であるため印紙税額は変わりません。
そのため、不動産の贈与契約は記載評価額にかかわらず一律200円の印紙貼り付けとなっています。
【負担付贈与の場合】取引金額に応じて印紙税額が異なる
不動産贈与の際の印紙税は一律200円ですが、負担付贈与は売買や交換と同様の扱いになるので取引金額によって印紙税額が変わります。
負担付き贈与とは「土地を贈与する代わりに残りのローンをすべて支払ってもらう」ケースのように、贈与を受ける人が何らかの約束を守ることを前提とした贈与を指します。
贈与する側は見返りを受けることから無償行為にはならず、売買や交換と同じ扱いになるのです。
負担付きの不動産贈与に関しては印紙税が軽減され、一般的な印紙税額より低い額になります。
この税額は平成26年4月1日から令和6年3月31日までに作成された契約書が対象です。
【負担付贈与の印紙税額(軽減税額適用)】
契約金額 | 軽減税額 | 一般税額 |
---|---|---|
10万円以下 |
200円
|
200円 |
10万円超50万円以下 | 400円 | |
50万円超100万円以下 | 500円 | 1,000円 |
100万円超500万円以下 | 1,000円 | 2,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 5,000円 | 1万円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 1万円 | 2万円 |
5,000万円超1億円以下 | 3万円 | 6万円 |
1億円超5億円以下 | 6万円 | 10万円 |
5億円超10億円以下 | 16万円 | 20万円 |
10億円超50億円以下 | 32万円 | 40万円 |
50億円超 | 48万円 | 60万円 |
【贈与契約書を2通以上作成する場合】書類の枚数に応じて印紙が必要
贈与者と受贈者それぞれ1通ずつ、計2通の贈与契約書を作成することが多いでしょう。その場合は各契約書に印紙を貼り付ける必要があります。
印紙税は贈与契約が成立したことに課されるのではなく、契約を証明するための文書を作成したことに対して課される税金です。
そのため、2通の契約書を作成したら2枚の印紙、3通作成すれば3枚の印紙が必要になります。
一方で契約書の原本を1通のみ作成し、それをコピーして所持する場合はコピー本に印紙を貼り付ける必要はありません。
印紙を貼らないとどうなる?契約は有効だがペナルティのおそれ
印紙を貼らなかった場合でも贈与契約は有効です。しかし、印紙の貼付けを忘れてしまうと脱税と見なされ、過怠税の支払いを求められます。
贈与契約書が印紙を利用に無効になることはありません。しかし、印紙の貼付けがないことを税務署から指摘されたら、本来払うべき印紙税額に加えて、印紙税の2倍の額がペナルティとして課されます。つまり、計3倍の額に相当する過怠税が課されるのです。
また、印紙を貼り付けていても消印が正しくされていない場合も同様の金額の過怠税がかかります。
しかし税務署からの指摘を受ける前に、文書の作成者が自ら印紙の不備を申出た場合(「印紙税不納付事実申出書」を所轄税務署長に提出)の過怠税は、不納付額の1.1倍に軽減されます。
本来支払うべきでないお金がペナルティとしてとられないよう、不動産の贈与契約書作成時には印紙の貼付けと正しい消印を再度確認してみましょう。
印紙の貼付けと消印の正しい方法
収入印紙は1枚目の契約書の左上に貼るのがベターです。特に決まりはありませんが、一般的な貼付け場所となっているからです。
また印紙の貼付けと同時に、契約書と印紙にまたがって消印を行ないましょう。正しく消印できないと過怠税のおそれもあるので注意が必要です。
印紙は契約書1枚目の左上に貼るのが一般的
印紙の貼付け場所に指定はないですが、契約書1ページ目の左上に貼ることが多いです。
法律でも印紙の貼付け場所については特に決まっていませんが、忘れずに貼り付けるようにしましょう。
【消印のルール】印紙と課税文書にまたがって押印
印紙を張り付けた後は、印紙と契約書にまたがるように印鑑を押すか署名を行ないます。
印紙と契約書が対であることを証明するため、必ず2つにまたがって押印してください。押印が正しくされていないと過怠税が課されるおそれがあるので注意が必要です。
収入印紙の再利用を防ぐための行為なので、消印を行なうのは贈与者と受贈者どちらでも問題ありません。
印鑑はシャチハタでもゴム印でも大丈夫です。しかし、署名する場合は誰かが消したり改ざんしたりできないよう、鉛筆などの消えるものではしないようにしましょう。
収入印紙の購入場所と印紙代の負担者について
電子化せずに印紙を張り付ける場合は、印紙の購入から消印まで進める必要があります。普段なかなか行なうことのない作業ですので、どのように進めるのか説明します。
収入印紙はコンビニでも買える
収入印紙は法務局や郵便局で売っているほか、コンビニでも販売しているので簡単に入手することができます。
【収入印紙の販売場所】
|
コンビニでは基本的に200円印紙のみ販売しています。高額の収入印紙を購入する場合は郵便局や法務局、役所で買うとよいでしょう。
また金券ショップやネットオークションでは、通常価格より低い値段で販売していることもあるのでお得に購入できます。
印紙代金の負担者に決まりはない
印紙税を誰が負担するのかは法律で決まっていないので、贈与する側と贈与を受ける側のどちらが印紙代を負担しても問題ありません。
贈与契約書作成の際は事前に打ち合わせをし、スムーズに契約を進められるようにしましょう。
電子契約すれば贈与契約書の印紙代が節約できる
前章で、贈与契約書の印紙は大きな額でないことを説明しました。それでも、節約できるものは節約したいものです。この章では、印紙税を節約できる電子契約書について説明します。
電子契約書は印紙税がかからない
贈与契約書を電子契約書で作成した場合、印紙税がかかりません。これは贈与契約書に限らず、すべての契約書の対しても同様です。
電子契約をしても契約書の有効性は変わりません。そもそも契約というのは口頭で合意した場合も有効となります。
しかし、口頭のみの契約だと後ほどトラブルになった場合、本当に合意したのかどうかを証明することが難しいでしょう。
そこで重要な合意について、契約があったことを証明するために契約書を作成しているのです。
紙でも電子でも合意していれば契約は有効ですが、もめたときに電子契約書が本当に合意していたことを示せるかがポイントとなります。
ここで重要なことは署名あるいはハンコです。紙の場合は直筆の署名や印鑑で本人の同意を示せますが、電子サインだと本当に本人の署名なのかわからないこともあるでしょう。
しかし最近では、電子署名するにあたって多段階の認証プロセスを行なうので本人以外が署名することは難しくなっています。
つまり紙の契約書と比較しても、電子契約書における契約の有効性に変わりないということです。
電子契約書のメリット
贈与契約書を電子化することのメリットは印紙代以外にもあります。
- 事務作業が簡単になる
- 契約書の紛失リスクが減る
紙の契約書は本紙を作成し、郵送するもしくは全員が同じ所に集まって署名することが必要ですが、電子契約書の場合はメールで送りパソコンがあれば署名できるので締結が簡単です。
さらに、電子契約書はデータを保存すればよいので保管スペースが不要になり、他の書類に紛れ込んでしまう事態も防ぐことができます。
贈与契約書は毎年作成し続けるケースも多いので、それなりの枚数になることも多々あります。
契約書の作成・管理の効率化を図るために、電子契約書を検討してみるのもよいでしょう。
贈与は税理士に相談を
贈与契約書の印紙について説明してきましたが、印紙は贈与全体のほんの一部のことです。贈与を進めるには税理士に相談して進めることをおすすめします。
税理士は税金の専門家
贈与契約書の作成を目指す方は、節税目的の方が多いのではないでしょうか。相続税と贈与税は大変複雑な税制度なので、自身で進めず税理士に相談しながら進めることをおすすめします。費用はかかりますが、それ以上に節税できる案を提示されることも多くありますので是非ご検討ください。
監修税理士からのコメント
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
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この記事の監修税理士
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通