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合同会社を設立したときの社会保険への加入義務は?

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最終更新日: 2024年06月28日

合同会社を設立したときの社会保険への加入義務は?

原則的には社会保険の加入義務があります。ただし例外として社長の報酬が無報酬に近い場合は加入義務が生じないこともあります。

合同会社の社会保険はいくら?

標準月額報酬の30%弱が保険料率になるので、それを会社と労働者で折板した約15%が会社側が支払う社会保険料になります。

この記事を監修した税理士

アテンド会計事務所 - 神奈川県横浜市西区

合同会社の社会保険への加入義務

合同会社の社会保険への加入義務
合同会社の社会保険への加入義務

合同会社が会社として加入する保険には社会保険(健康保険・厚生年金保険)と労働保険(労災保険・雇用保険)の2種類があります。

加入漏れを起こして立入調査や罰則の対象になると会社の社会的信用を失墜させることにもなりかねません。まずは合同会社を設立したときの社会保険・労働保険の加入義務を正しく理解することが大切です。

法人は原則社会保険への加入義務がある

社会保険の加入義務がある事業所については健康保険法・厚生年金保険法で規定されており、以下のいずれかに該当すれば強制加入となります。

  • 国、地方公共団体、法人で常時従業員を使用する事業所
  • 個人事業主で法定16業種に該当し、かつ常時5人以上を雇用する事業所

個人事業主の場合は2つ目の条件に該当するかどうかで決まるので、従業員数が5人未満であったり法定16業種に該当しなければ強制加入の対象にはなりません。法定16業種の詳細な内容等は以下の厚生労働省のホームページで確認できるので、ご自身の業種の該当有無を確認してみて下さい。

人を雇うときのルール|厚生労働省

法人の場合は1つ目の条件の通りなので、合同会社も含めて全ての法人は社会保険への加入義務が生じます。さらに後述する労働保険とは違って、健康保険や厚生年金保険では従業員だけでなく役員や業務執行社員である社長なども含めて加入の対象です。

合同会社を社長一人で経営している場合でも社会保険への加入義務は生じますし、役員報酬を受け取っている合同会社の代表社員や業務執行社員にも社会保険の加入義務があります。経営者は加入不要だろうと勘違いするケースが多いので、手続き漏れを起こさないように注意して下さい。

法人でも社会保険への加入義務がない場合

上記で紹介した条件に該当すれば社会保険への加入義務が生じますが、例外的に加入義務がない場合があります。それは社長の報酬がゼロ又は極めて低い場合です。

そもそも健康保険や厚生年金保険の保険料は給与から天引きして納付するものなので、役員報酬が低すぎて保険料額以下だと天引きできません。仮に合同会社を設立して社会保険への加入申請を行っても、無報酬や低報酬の場合には逆に年金事務所のほうから加入を断られることがほとんどです。

社会保険に加入しない場合の代替制度

合同会社の一人社長の役員報酬が低すぎて健康保険や厚生年金保険に加入しない場合でも、他の何らかの健康保険制度や年金制度に加入しなければいけません。

地方自治体が運営する国民健康保険や日本年金機構が運営する国民年金に加入するのが一般的ですが、健康保険制度では国民健康保険組合に加入したり健康保険に加入している家族の被扶養者に入るという選択肢もあります。それぞれの健康保険制度には加入条件があるので、事前にお住まいの自治体のホームページや全国国民健康保険組合協会のホームページで確認したり健康保険の被扶養者認定基準を満たしているかを確認して下さい。

全国国民健康保険組合協会

被扶養者とは?|協会けんぽ

合同会社の労働保険への加入義務

労災保険法・雇用保険法では労働者を使用する事業所が労働保険の加入対象とされています。小規模な個人経営の農業など一部例外を除いて従業員を雇っていると労災保険・雇用保険は強制加入になるので、合同会社も従業員が1人でもいれば労働保険の加入義務が生じて加入手続きが必要です。

健康保険や厚生年金保険とは違って加入対象は従業員だけで法人の役員や取締役、合同会社の代表社員は労働保険の加入対象外となります。ただし、合同会社の業務執行社員に関しては労働者性が強いと判断される場合には加入義務が生じるので、労働者性の判断に悩んだ場合には社労士等の専門家に相談するようにして下さい。

合同会社の社会保険への加入手続き

合同会社の社会保険への加入手続き
合同会社の社会保険への加入手続き(画像提供:PIXTA)

合同会社を設立して社会保険や労働保険の加入条件に該当する場合には、会社を設立してから一定期間内に手続きを行う必要があります。

様々な手続きが必要になる会社設立時には社会保険や労働保険の手続きが後回しになりがちですが、ケガをした場合など万が一に備えて加入する大切な制度です。以下では中小企業が加入することが多い協会けんぽに加入する場合の手続きを解説していきますので、合同会社の経営者として必要な手続きを漏れなく行うようにして下さい。

健康保険・厚生年金保険の加入手続き

合同会社を設立して健康保険・厚生年金保険の加入義務がある場合、日本年金機構に「健康保険・厚生年金保険新規適用届」「被保険者資格取得届」を提出しなければいけません。また必要に応じて「被扶養者(異動)届」を提出します。

健康保険・厚生年金保険新規適用届

会社を設立してから5日以内に年金事務所に新規適用届を提出する必要があり、電子申請・郵送・窓口持参のいずれかの方法で提出します。法人事業所の場合は登記簿謄本等、個人事業所の場合は事業主の住民票等の添付が必要ですが、添付書類などの詳細な内容は以下の日本年金機構のホームページで確認して下さい。

新規適用の手続き|日本年金機構

被保険者資格取得届

会社を設立してから5日以内に年金事務所に被保険者資格取得届を提出する必要があり、電子申請・郵送・窓口持参のいずれかの方法で加入対象者全員分を提出します。原則として添付書類は不要ですが、60歳以上の方が退職後1日の間もなく再雇用された場合など添付書類が必要になる場合もあるので、詳細な内容は、以下の日本年金機構のホームページで確認して下さい。

就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き|日本年金機構

被扶養者(異動)届

社会保険に加入する役員や従業員に家族がいて被扶養者の認定基準に該当する場合には、会社設立後すみやかに被扶養者(異動)届を年金事務所に提出します。電子申請・郵送・窓口持参のいずれかの方法で提出し、用紙は以下の日本年金機構のホームページからダウンロードが可能です。

従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き従業員の被扶養者に異動があったときの手続き|日本年金機構

労働保険の加入手続き

合同会社を設立して従業員を雇う場合には労働保険の加入手続きが必要です。まずは、労災保険に関する届出として「保険関係成立届」「労働保険概算保険料申告書」を労働基準監督署に提出し、その後、雇用保険に関する届出として「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに提出します。各届出の用紙は以下のサイトからダウンロードが可能です。

まず労働基準監督署で届出を行ってその後にハローワークで届出を行うことになるので、以下では提出期日が早い書類から順に解説していきます。ただし建設業など一部の業種では手続き順序が異なるケースもあるので、手続きに不安がある場合には事前に専門家である社労士に相談したほうが良いでしょう。

保険関係成立届(労働基準監督署)

従業員を雇用した日の翌日から10日以内に保険関係成立届を労働基準監督署に提出する必要があります。保険関係成立届を労働基準監督署に提出してからでないとハローワークでの雇用保険関係の手続きができないので一番最初に提出する書類です。

添付書類として登記簿謄本や雇入通知書、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿が必要になります。また、登記簿謄本に記載の本店所在地とは別の事業所で適用を受ける場合は、その事務所の賃貸契約書が必要になります。

添付書類の種類が多いので早めに揃えて期日内に確実に手続きを終えるようにして下さい。

労働保険概算保険料申告書(労働基準監督署)

労働保険料を計算して記載する労働保険概算保険料申告書を保険関係成立の日から50日以内に労働基準監督署に提出します。

雇用保険適用事業所設置届(ハローワーク)

従業員を雇用した日の翌日から10日以内に雇用保険適用事業所設置届をハローワークに提出しなければいけません。合同会社を設立した当初から従業員を雇っているのであれば会社設立日の翌日から10日以内ということになります。提出の際には登記簿謄本の原本も必要です。

雇用保険被保険者資格取得届(ハローワーク)

労働者を雇った月の翌月10日までに雇用保険被保険者資格取得届をハローワークに提出します。必要な添付書類は賃金台帳や労働者名簿などですが、管轄のハローワークによって取扱いが異なることがあるので事前に確認するようにして下さい。

社会保険料の計算方法

社会保険料の計算方法
社会保険料の計算方法

料率が低い労働保険料は大きな負担にはならないものの、社会保険料は金額が高額になって大きな負担になることがあります。保険料の納付時になってから慌てることがないように、事前に金額を計算して把握しておくことが大切です。

あらかじめ社会保険料まで含めて考慮して会社の収支予測を行えば会社経営を行う上でも大いに役立つので、社会保険料の計算方法について確認していきましょう。

社会保険料の計算式

健康保険料・厚生年金保険料は標準報酬月額保険料率を掛けて算出します。標準報酬月額とは毎年4~6月の給与平均額によって決まる金額で、その平均額が該当する等級の標準報酬月額がその後1年間の保険料計算で使われる仕組みです。残業代等で毎月の給与額が変わっても保険料計算は影響を受けないので計算しやすくなっています。

令和元年度時点で健康保険は50等級、厚生年金保険は31等級に区分され、例えば協会けんぽ・東京の保険料率は健康保険料率が介護保険第2号被保険者11.63%、それ以外9.90%、厚生年金保険料率が18.3%です。

参考:平成31年4月分(5月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表|協会けんぽ

ただし健康保険料率は加入する健康保険制度や地域によって異なります。協会けんぽ加入者の場合には協会けんぽの保険料額表を確認し、その他の健康保険制度加入者の場合には加入制度に個別に確認して下さい。

また、標準報酬月額は毎年4~6月の給与額で決まるのが原則ですが、新入社員の場合は当初決めた給与金額から標準報酬月額を決め、大きな昇給があった場合には昇給した月から3ヶ月間の給与平均額で標準報酬月額を決めることになります。標準報酬月額の決定はそれぞれのケースによって変更になりますので、社会保険料の計算については専門家である社労士に相談するのがおすすめです。

社会保険料は会社と労働者で折半

社会保険料は会社と労働者で半分ずつ負担するので、合同会社を設立して社会保険に加入した場合も会社側が半分を負担します。健康保険料率は加入する制度等によって差があるものの約10%、厚生年金保険料率は18.3%で、合計した約30%近くの保険料率の半分である約15%を会社・労働者双方が負担する仕組みです。

これだけ保険料率が高いと相当大きな納付額になるので、保険料の納付時に慌てないためにも事前に金額を把握して資金繰りを調整しておかなければいけません。

社会保険料の計算例

続いて社会保険料の負担額がどれくらいになるのか具体的な金額を計算してみましょう。以下では東京都で協会けんぽに加入している男性・30歳・月収30万円(賞与なし)のケースを考えてみたいと思います。

協会けんぽ(東京都)の健康保険・厚生年金保険の保険料額表
協会けんぽ(東京都)の健康保険・厚生年金保険の保険料額表(出典:協会けんぽ

上記の保険料額表から健康保険の等級が22等級であることが分かり、標準報酬月額は30万円です。30歳で介護保険第2号被保険者には該当しないため健康保険料率は9.90%、厚生年金保険料率は18.3%なので、保険料は以下のように計算できます。

  • 健康保険料:300,000円×9.90%=29,700円
  • 厚生年金保険料:300,000円×18.3%=54,900円

健康保険料29,700円と厚生年金保険料54,900円の合計額84,600円を会社と労働者で折半することになり、それぞれの負担額は42,300円です。

合同会社を設立して社会保険に加入した場合も同じように計算できるので、従業員全員分の保険料を算出して実際の納付額がいくらになるのか計算してみて下さい。相当大きな金額になることが分かるはずです。

社会保険に未加入の場合のペナルティ

社会保険に未加入の場合のペナルティ
社会保険に未加入の場合のペナルティ

社会保険の加入義務がある場合には合同会社設立後に加入手続きを行う必要がありますが、加入しないと立入調査や罰金などのペナルティを科されることがあります。

そもそも罰則の有無に関係なく加入義務がある以上は社会保険に加入するのが当然ですが、社会保険への未加入が如何に許されないものとして厳しく取り締まられているのかを確認しておきましょう。

社会保険に未加入の場合調査や罰則の対象になる

加入義務があるにも関わらず社会保険に未加入だと6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金の対象となります。様々な情報を使うことで年金事務所は経営者が思っている以上に簡単に未加入会社を把握して連絡をしてくるので、もしも社会保険に未加入ならば速やかに手続きを行わなければいけません。

年金事務所から最初に届く通知はあくまで社会保険への加入を勧奨する内容ですが、会社側が従わずに加入しないままだと職権により立入調査が行われます。悪質だと判断されれば罰金等の刑罰が科されることもあるので、そのようなことがないようにするためにも社会保険関係手続きは期日までに確実に終えることが大切です。

遡って加入する必要がある場合も

年金事務所から社会保険への加入を勧奨する通知が最初に届いた時点で加入手続きを行えば、過去分の保険料までは請求されず以後の保険料を支払うだけで認めてくれるケースがほとんどです。しかし立入調査や罰則の対象となって悪質と判断されると、保険料徴収の時効である過去2年間の保険料まで含めて遡及的に支払いを命じられることがあります。2年分の保険料は相当な金額であり、一括して支払うことになると重い負担になるので未加入は絶対にやってはいけません。

例えば、社会保険料の計算例で紹介した東京都・30歳・月収30万円のケースでは月額の保険料が労使それぞれで42,300円でしたが、2年分の金額は1,015,200円にもなります。会社・従業員それぞれが100万円を超える金額を一括して支払うことになり、さらに従業員側はそれまでに加入していた国民健康保険などの他の健康保険制度から切り替える手続きも必要になって手間や負担も掛かります。

経営者と従業員の信頼関係や会社としての社会的信用が損なわれることにもなるので、合同会社を設立した際には社会保険の手続きを忘れずに行うことが大切です。

【まとめ】原則として社会保険への加入は必要

合同会社を設立した場合には原則として社会保険への加入義務が生じ、たとえ一人社長の会社であっても社会保険への加入が必要です。従業員を雇っている場合には労働保険も強制加入となるので、合同会社を設立してから一定の期間内に忘れずに社会保険・労働保険の加入手続きを行わなければいけません。

社会保険については特に保険料額が大きくなることがあり、会社経営者としては保険料計算の仕組みを理解しておくことも大切です。従業員の給与額を基準として決まる標準報酬月額に保険料率を掛けて算出できるので、会社の収支見込みを考える際に社会保険料負担額についても考慮に入れるようにしてみて下さい。

しかし社会保険や労働保険の仕組みは複雑で、合同会社を設立して何かと忙しい時期に社会保険や労働保険のことまで経営者自身が抱え込むと逆に手続きミスを起こす可能性もあります。手続きに時間や手間が掛かって経営に集中できなくなっては困るので、会社設立に強い税理士に相談することも是非検討してみて下さい。

監修税理士からのコメント

アテンド会計事務所 - 神奈川県横浜市西区

年金事務所では社会保険未加入者に対する調査を強めていますので、お早めにお手続きいただくことをお勧めいたします。 また、社会保険・労働保険共に会社負担分が発生しますので、それを踏まえた資金繰り計画を検討していきましょう。

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この記事の監修税理士

アテンド会計事務所 - 神奈川県横浜市西区

アテンド会計事務所-神奈川県横浜市西区 横浜駅徒歩2分に事務所を構える税理士の藤井光樹と申します。 主に会社設立される企業様やベンチャー企業様をワンストップで支援する会計事務所です 。 決算業務のほか、会社設立登記や創業融資支援、管理業務フローの支援などお気軽にご相談ください。