人間に対しては危険度の低い蜂であるクマバチ。しかし家屋に対する危険度は大です。家に巣を作られると木材の強度が下がってしまう恐れがあるため、早めの駆除を行う必要があります。
この記事ではクマバチの生態・特徴を網羅しつつ、巣の駆除方法について詳しく紹介します。
クマバチは危険?
毒性は強くないため、クマバチに刺されても重症化するリスクはありません。しかし針は太く、刺されたときに痛みを感じやすいです。
クマバチの巣は駆除すべき?
家に巣穴が作られていたら駆除が必要です。クマバチは木材に穴を開けて巣を作るため、放置しておくと建物の強度が弱まります。ひどい場合、雨水やシロアリの侵入リスクも高まることが考えられます。
クマバチの特徴と生態
まるまるとした見た目がかわいいクマバチ。その生態は他の代表的な蜂とは大きく異なります。
以下でクマバチについての基本情報を確認してみましょう。
クマバチはミツバチ科のハチ
クマバチとは「ミツバチ科クマバチ属のハチ」全体を指す呼び名です。全体的に黒くクマに似た見た目から「クマバチ」と名付けられました。日本では胸のあたりが黄色くなっている「キムネクマバチ」がよく見られるため、キムネクマバチを一般的にクマバチと呼んでいます。
特徴は約2cm以上とミツバチより大きな体長と、ふっくらでまん丸とした胴体です。沖縄を除く日本全土に生息し、市街地や郊外、低山地など低い場所を選んで巣を作ります。
クマバチの主食は、ミツバチと同じく花の蜜や花粉です。中でも藤の花を好んで食べます。
クマバチは花粉の媒介者としての役割も果たしています。強いアゴの力を使って藤の固い花弁をこじ開けることで、藤の開花を助けているのです。
クマバチの生態・ライフサイクル
クマバチの生態 |
クマバチは単独行動を基本とする蜂です。スズメバチやミツバチなどのように、女王蜂と働き蜂からなる社会を持っていません。他の蜂との関わりはめったになく、巣の中で親子関係を持つ以外は単独で行動する習性があります。
「クマバチは理論上飛べない」という話を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。謎だらけだったクマバチの飛ぶメカニズムは、現在は明らかになっています。空気抵抗を感じやすいクマバチは、体と羽の大きさのバランスが悪いにも関わらず飛ぶことができるとされているようです。
クマバチのライフサイクル |
7~10月 | 幼虫が羽化して成虫に。しばらく親から花粉を与えてもらいながら成長。 |
11~3月 | 巣の中で冬眠。 |
4~5月 | 冬眠から目覚め、交尾によって繁殖する。 |
5~7月 | メスが1匹で巣を作る。子育てが終わると寿命が尽きる。 |
クマバチが出現しやすい時期は4〜11月。
寿命は1年ですが、7月に誕生した成虫は巣から出ることなく越冬します。そのため本格的に活動を始めるのは、冬眠から目覚め交尾を始める4月からです。5〜7月に子育てを行ってから、その一生を終えます。
「クマンバチ」も意味は変わらない
「クマバチ」と似た言葉として「クマンバチ」があります。これは方言の違いによるもので意味的には一緒です。日本の一部では「クマバチ」を「クマンバチ」と呼ぶ地域が存在しています。別の蜂の種類を指す言葉ではない点に注意しましょう。
また地域によっては、「クマンバチ」が「スズメバチ」や「マルハナバチ」を指すところもあります。
クマバチはめったに刺さない
温厚な性格のクマバチは、刺激を与えなければ人間を刺すことはほとんどありません。ただしクマバチのメスを刺激すると刺される場合もあるため、近づくときは注意が必要です。
過去にハチに刺された経験がある人は、アナフィラキシーショックの危険性も認識しておきましょう。
クマバチがついてきても威嚇行動ではない
クマバチはその温厚な性格の通り、人間を刺すことはめったにありません。クマバチがついてきても威嚇しているわけではないので、安心してください。
クマバチのホバリングは、スズメバチやアシナガバチが行うものと目的が異なります。ホバリングとは、空中を飛行しながら1カ所にとどまっている行動のこと。スズメバチなどの種類が人間の目の前にきてホバリングを開始すると、威嚇行動をしている証拠です。
いっぽうクマバチのホバリングは繁殖を目的として行っているため、威嚇しているわけではありません。
ホバリングするクマバチは主にオス。交尾に向けてメスを待つために、春頃の繁殖期になると地上2mほどの低空でホバリングするのです。この時期のクマバチは、近づいてくるものなら何でもしつこく追跡する習性があります。重低音の強い羽音を出しながら飛ぶため、クマバチに付きまとわれて怖い思いをした経験がある人もいるでしょう。
しかしクマバチのオスは針を持っていないので、刺される心配はありません。低空飛行して付きまとってくるクマバチには、過度な恐怖心を持つ必要はないといえます。
毒針を持っているメスには注意
温厚な性格のクマバチですが、刺激を与えると刺されることがあります。クマバチで毒針を持っているのはメス。巣や花の近くにいるクマバチはメスの可能性が高いため、注意が必要です。
オスとメスの違いは以下の通り。
オス | メス | |
毒針 | なし | あり |
見た目 | 目が大きい
顔に黄色い毛 |
アゴが大きい
顔全体が黒い |
巣作り | しない | する |
オスとメスは顔で区別するのが簡単です。メスの顔全体が黒であるのに対し、オスは額に黄色い毛が生えています。
メスの毒性はそれほど強くないので、刺されても重症化するリスクは高くありません。しかしクマバチの針はほかのハチの針より太いため、刺されたときは強い痛みを感じやすいでしょう。
またクマバチをはじめとするミツバチ科のハチが刺す針は、人間の皮ふから抜けにくいという特徴があります。
クマバチに刺されて針が残っている場合は、素早く応急処置を行ってください。針を抜き血をつまんで絞り出した後は、すぐに病院へ受診しましょう。
ハチに刺されたことがある人は特に注意
過去にクマバチやスズメバチに刺されたことがある人は、ハチの毒によって発症する「アナフィラキシーショック」にも注意する必要があります。
「アナフィラキシーショック」はアレルギー症状のひとつです。体内に入ってきた物質に人間の身体が過敏に反応し、血圧低下や呼吸困難・意識の低下などを引き起こします。
過去にハチに刺されて抗体(アレルゲンを排除するためのタンパク質)が作られていると、身体が過剰に反応してアナフィラキシーショックを起こしやすくなります。刺されてから発症までの時間が約10〜15分と短いのが特徴です。発症すると命が危なくなる恐れもあります。
アナフィラキシーショックを発症した場合は、ただちに救急車を呼ばなければなりません。発症に備えて症状を抑えるための注射薬「エピペン」を常備しておくのも有効な対策です。
クマバチの巣の特徴と家屋への被害
クマバチの巣はメス1匹のみの働きによって作られます。巣作りのときに木に開けられる細長い穴が巣の特徴です。
クマバチは一度巣を作ると、数年間にわたって同じ場所に住み続ける習性があります。家屋への被害が深刻になるケースもあるので、家にクマバチの巣が作られていたら注意が必要です。
他の種類の「蜂の巣」との見分け方は、以下の記事を参考にしてみてください。
木に穴を開けて巣を作る
一般的にイメージされる蜂の巣と違い、クマバチの巣は古い木や木材に穴を開けて作られるのが特徴です。大工が器用に巣を作っているように見えるため、英語ではクマバチのことを「Carpenter Bee(大工バチ)」と呼んでいます。
巣を作る場所は、自然の中であれば木の幹が多いです。竹筒のような元からある穴を利用して巣を作る場合もあります。市街地では、家の軒先や垂木・屋根回りの木材などに穴を開け、内部を巣にして生活します。藤の花を好むため、庭や玄関先に藤棚を設置している場合、藤棚や周囲の木に巣を作っていることもあるでしょう。
巣の入り口の大きさは1.5〜2cmほどあり、クマバチの成虫と同じくらいの大きさです。巣穴の奥行きは20~40cmにもなり、一列に並んだ小部屋に幼虫が入っています。
放っておくと家の強度が下がる
クマバチの巣作りが進むと家屋の強度はどんどん下がっていきます。そのためクマバチの巣を放置しておくのは危険です。
クマバチが家に巣を作るということは、家屋を支える重要な木材に穴が開くということです。クマバチが開けた巣穴から雨水が浸入して木材が腐食したり、シロアリが侵入したりする被害が考えられます。
クマバチは1度巣をつくると、数世代にわたって同じ巣を使い続けることがあります。長い間巣が使われるとなると、それだけ巣穴も深くなることが予想されます。木材の内部でトンネルが作られるケースも考えられるでしょう。
クマバチ自体には害はありません。しかし「刺さないからいいや」と思って放置していると、いつの間にか家の柱が穴だらけの状態になっているかもしれません。家に巣があるのを発見したら早めに駆除を行う必要があります。
クマバチを駆除する判断基準と対策方法
「クマバチは刺さないから巣が作られても大丈夫」と思うのは危険です。家屋に深刻な被害が及ぶため、巣が作られているのを発見したらすぐに駆除を行う必要があります。
駆除方法や再発を防ぐための予防方法についても確認しておきましょう。
家に巣穴があれば駆除が必要
家に巣が作られている場合は必ず駆除を行ってください。刺すかどうかではなく、家屋や住人に被害を与えるかどうかを判断基準にするのがポイントです。
家の周辺や庭付近でクマバチを見かけたら、まずは軒先や垂木などの木材をくまなくチェックします。もしも巣穴があるなら、住宅に深刻なダメージを与えてしまうので駆除が必要です。
ただ花の蜜を吸いに来ただけのクマバチは人を刺したり、群れで行動して恐怖を与えたりすることはありません。むやみに駆除せずそっとしておいてあげましょう。
クマバチの駆除方法
クマバチは殺虫剤による駆除が可能です。しかし巣穴の形状が特殊なので、駆除の難易度は高め。基本的には専門知識がある駆除業者に依頼することをオススメします。
もし自分で駆除を行うときは、肌の露出を防ぐことが肝心です。巣を刺激することでクマバチの反撃を受けることが予想されます。厚手の作業服やレインコートを用意し、軍手やタオル、眼鏡、帽子、長靴なども使うと安心です。
クマバチを駆除する手順 |
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ハチは暗くなると活動が弱まるため、夕方から夜間にかけて駆除するのが理想です。昼間のうちに巣の場所を確認し、作業自体は暗くなってから行います。
また殺虫剤の効果をより高めるためには、風の弱い日を選んで作業するのがGood。
巣を駆除する際は、すぐ噴射できるように殺虫スプレーを構えながら近づきます。万が一クマバチが出てきてしまうケースに備えましょう。
穴の入口に噴射口を入れたら、約10〜15秒間殺虫剤を吹き付けます。このとき穴がどの向きに延びているかが分からないので、上下左右にまんべんなくスプレーしてください。
巣からクマバチが出てこなくなったら、細い棒などで中の死骸をかき出します。もし死骸が残ったまま巣穴をふさぐと、死骸が腐敗して木材が劣化します。巣穴が40cm以上に延びている場合は難易度が高いため、特に注意して取り出すようにしましょう。
完全に巣穴をカラにしたら、木工用のパテなどを使って巣穴をふさぎます。ふさぐ前には必ず巣穴の中に幼虫や成虫の死骸が残っていないか、念入りにチェックしてくださいね。
駆除した後の予防も忘れずに
クマバチに巣を作られたということは、その家屋はクマバチにとって住みやすい環境かもしれません。駆除だけを行っても、また別のクマバチが寄ってきてしまうことが考えられます。
巣穴が作られた場所はもちろん、木材が露出している部分にもしっかり予防対策を施しておきましょう。
蜂に忌避効果のある殺虫スプレーや木酢液などを吹きかけておくのが手軽でオススメです。成分が雨で流れてしまう場合に備えて、こまめに吹きかけておくと効果が持続します。
巣の駆除を依頼するときの費用相場
自力での駆除が難しいクマバチの巣は、専門業者に依頼するのが最善です。
ここでは依頼時に最も気になる費用についてチェックしていきます。
自力での駆除は難しい
クマバチの巣は自力で駆除することもできます。しかし巣穴が小さく奥行が20~40cmにもなるため、自力で完全に駆除する難易度は高めです。
自力で行うとなると巣を刺激するため、刺される危険性が高くなります。また死骸が残って完全に駆除できなければ、同じ場所にまた巣が作られる可能性も。
手間や難易度を考えると、蜂の巣駆除の専門業者に徹底的な駆除をしてもらうのがオススメです。
専門業者に依頼したときの費用相場
クマバチをはじめとするミツバチ類の巣の駆除料金は、8,000〜15,000円が相場です。
巣の大きさや営巣された場所によって、作業の難易度には差が出ます。そのため費用相場には開きがあるのが一般的です。
攻撃性が弱いミツバチ科のハチは駆除作業のリスクが低めです。そのためスズメバチやアシナガバチの駆除よりも安価に設定されています。
ただし蜂の巣の駆除依頼が増える夏や秋には、費用が割高になる場合もあります。依頼前には調査費や出張費、アフターフォロー代が加算されるかどうかをチェックしておきましょう。
ミツモアを利用すれば、カンタンに最大5社の専門業者を比較することができます。ぜひ無料で見積もりを依頼してみてはいかがでしょうか。
クマバチの駆除に使える殺虫剤
自分で駆除作業を行うときは、ハチ用の殺虫剤を用意する必要があります。クマバチや巣の駆除に効果を発揮するおすすめの商品を3つ紹介します。
アース製薬 ハチアブスーパージェット
速効性や致死効果の高い有効成分を配合しており、飛び回るクマバチに噴射すると素早く駆除できる殺虫剤です。無風状態なら約11m先まで噴射できるため、遠くにいるクマバチも狙えます。
ハチの巣作りを予防できるのも魅力です。巣を作りそうな場所へあらかじめ吹きつけておけば、ハチが嫌がる有効成分とパウダーの効果で約1カ月ハチを寄せ付けません。
巣に噴射するときは3~4m離れた場所から吹きつけます。約35秒の噴射で1本消費してしまうため、駆除の際は十分な量を用意しておきましょう。
アース製薬 ハチアブマグナムジェット
クマバチを無力化させ反撃を防ぐ殺虫剤です。ハチの巣や飛び回るクマバチに噴射することで駆除効果を発揮します。
バズーカ方式の強力噴射で巣ごと全滅させられるのが魅力です。約1カ月にわたり巣を作らせない予防効果も発揮します。
無風状態での噴射距離は最大約12mです。巣に吹き付ける場合は3~4m離れて使いましょう。約45秒間で1本の中身がすべて噴射されます。
フマキラー ハチ・アブ バズーカジェット
巣に戻ってきたハチやふ化したばかりのハチに効く持続殺虫成分も含まれており、巣ごとの駆除が可能です。
最大約12mの距離まで噴射が届くため、遠くのクマバチも駆除しやすいでしょう。巣作り防止の効果は約1カ月持続します。
クマバチに似ている虫
黒い体・黄色い毛・丸い形といったクマバチの特徴が分かれば、危険なスズメバチ科と見分けることができます。
クマバチの仲間なら基本的に人への害はないので安心です。しかし生態系に影響を与える外来種や、見た目が似ているアブなども存在します。
関連記事:黒い蜂の正体とは?蜂の種類や特徴 |
【外来種】タイワンタケクマバチ |
タイワンタケクマバチは、名前のとおり台湾などに多く生息している外来種。竹に営巣するのが特徴です。
竹製品などの輸入によって日本に侵入したと考えられていて、2006年に愛知県豊田市で発見されたのが初の報告例です。
見た目は全身真っ黒で、脂っぽく光沢がある羽根が特徴。
在来種のクマバチと争う可能性は薄いそうです。しかし体に外来ダニがついているため、在来種のクマバチやダニへの遺伝的な影響が懸念されています。
見た目が似ているハナアブ |
ハナアブという種類の虫はクマバチに似ています。天敵から身を守るために、ハチに擬態しているのだとか。
「アブ」という名前なので「刺される危険性があるのでは」と思ってしまいますが、実はアブではなくハエの仲間です。そのため針は持っておらず、人間を刺すこともありません。ただ人間の汗をなめるハナアブがいるので、寄ってきて不快な思いを与えることはあるでしょう。
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