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埋葬料の受給条件は?申請方法や「埋葬費」「葬祭料」「葬祭費」との違いを解説

最終更新日: 2023年01月04日

埋葬料とは、社会保険の被保険者が亡くなった場合に、被保険者と生計を同じくしていた人が「5万円」受け取れる給付金です。亡くなった日の翌日から2年以内に申請すれば受給でき、申請後1~2カ月以内に銀行口座に振り込まれます。

なお国民保険に移行していても、社会保険資格喪失後3か月以内であれば受給できるので、該当する方はぜひ確認しましょう。

また葬儀を行った人が故人と生計を同じくしていない場合であっても、葬儀にかかった実費を「埋葬費」として、上限5万円支給してもらえます

以下に埋葬料(家族埋葬料)・埋葬費・葬祭料・葬祭費の概要をまとめました。

制度 受給対象 金額
埋葬料 健康保険の被保険者が亡くなった時に、生計を同じくしている方
※直近3カ月以内に加入していた方を含む
5万円
家族埋葬料 被扶養者が亡くなった場合の健康保険被保険者 5万円
埋葬費 健康保険の被保険者が亡くなった時に、生計同一ではないが埋葬を行った人 埋葬にかかった実費5万円相当分
葬祭料 労災で亡くなった方の遺族 給付基礎日額×30日分+315,000円 または 給付基礎日額×60日分
葬祭費 国民保険の被保険者が亡くなった時に、葬儀を行った人 1万~7万円

※なお墓地埋葬等に関する法律で「埋葬」とは、「死体を土中に葬ること」つまり土葬を意味しますが、ここでいう「埋葬」は葬儀費用のことを意味します。(焼骨を土中に葬ることは「埋蔵」)

詳しい受給条件や、申請方法を確認しましょう。

この記事を監修した専門家

葬送儀礼マナー普及協会 代表理事
岩田昌幸

埋葬料の受給条件

計算機を持つ喪服姿の女性

埋葬料は葬儀の負担を軽減することを目的とした給付金です。社会保険の被保険者が亡くなったときに、被保険者と生計を共にしていた人が受け取れます。

受給金額は一律で5万円です。

受給対象 故人が健康保険に加入している(または3カ月以内に加入していた)

かつ

被保険者(故人)と生計維持関係にある人

支給金額 5万円
申請期限 亡くなってから2年以内

受給条件と対象

埋葬料は故人が全国健康保険協会(協会けんぽ)や各種健康保険組合、共済組合などに加入していた場合のみに、受け取れます。国民健康保険に加入していた場合は対象外です。

埋葬料の受給申請をできるのは、健康保険の被保険者と生計を共にしていて、実際に被保険者の埋葬(葬儀)を行った人です。生計の一部でも共にしていれば問題なく、世帯が別で遠方から仕送りをする関係でも、埋葬(葬儀)を行ったのなら受給可能です。

一般的には故人に近しい家族が、埋葬料を受け取るケースが多く見られます。しかし家族である必要性はなく、内縁の夫婦など親族以外でも申請できます。

支給金額

埋葬料の法定給付額は一律で5万円です。法定給付額は法令にて定めると、健康保険法の第100条第1項で規定されていて、2006年に現在の給付額が公布されました。

法定給付額は5万円ですが、加入している保険組合によっては、独自の付加給付があります。

埋葬料は銀行口座への振り込みで給付され、現金での受け取りは不可です。申請から2~3週間後、遅くとも1~2か月後に振り込まれます。受け取りが遅れないように、申請時にはきちんと口座情報を伝えましょう。

参考:健康保険法 | e-Gov法令検索

参考:・健康保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令の施行について(◆平成18年08月30日庁保発第830001号)

申請は亡くなってから2年以内に

埋葬料の申請期限は、故人が亡くなった次の日から2年以内です。

受給対象である被扶養者が申請する場合は、埋葬(葬儀)にかかった費用を証明する必要がありません。そのため葬儀や火葬を行う前でも、埋葬料の申請が可能です

2年以内とはいえ申請しないと受け取れないので、忘れないうちに早めに申請すると良いでしょう。

そのほか受給可能な3つのケース

健康保険の被保険者でなくても、直近まで被保険者だった場合は、埋葬料を受け取れるケースがあります。下記の3つのうちいずれかのケースであれば、受け取り可能です。

  • 被保険者の資格喪失後、3カ月以内に亡くなった場合
  • 被保険者の資格喪失後、傷病手当金あるいは、出産手当金の給付期間中に亡くなった場合
  • 傷病手当金あるいは、出産手当金の受給を終えてから、3カ月以内に亡くなった場合

受給可能な条件については、健康保険法の第105条および第136条に記されています。

参考:健康保険法 | e-Gov法令検索

埋葬料の申請先と必要書類

申請書と届出書

埋葬料の申請先は加入していた健康保険組合か、年金事務所です。以下のものを用意して、提出しましょう。

  • 健康保険埋葬料(費)支給申請書
  • 故人の健康保険証
  • 死亡を証明できる書類(埋火葬許可証、死亡診断書など)
  • 印鑑
  • 振込先品行講座

申請書は全国健康保険協会のWebサイトから、ダウンロードすることが可能です。

勤務先の企業が、提出を代行してくれるケースもあります。また同様に事業主による証明書があれば、死亡を証明できる書類のコピーが必要ないとする健康保険組合もあるようです。

参考:健康保険埋葬料(費)支給申請書 | 申請書 | 全国健康保険協会

被扶養者が亡くなった場合は「家族埋葬料」を申請

封筒の中に入っている紙幣

基本的に埋葬料は、社会保険の被保険者が亡くなった場合に申請できる給付金です。しかし被保険者の扶養に入っている家族である「被扶養者」が亡くなった場合でも、埋葬料を受給できます。

被扶養者が逝去したときの給付金は「家族埋葬料」と呼ばれています。家族埋葬料でも一律の給付額は5万円であるほか、保険組合によっては、追加給付がある点も通常の埋葬料と同じです。

死産の場合は対象にならない点に注意しましょう。

「埋葬費」とは?埋葬料との違いはある?

埋葬費

「埋葬費」は、故人が健康保険に加入していて、生計同一者ではない友人や知人が葬儀を行った場合に受給できる給付金です。

金額は上限5万円で、主に火葬料や霊柩車代など、葬儀にかかった実費が対象となります。生計関係を証明できる書類が必要なほか葬儀にかかった費用の証明書を求められるため、領収書などしっかりとっておきましょう。

なお各健康保険組合の案内には「埋葬に要した領収書」「埋葬に要した明細書」が必要とありますが、実際は「埋葬」ではなく「葬儀に要した領収書」「葬儀に要した明細書」となります。申請書に「埋葬年月日」の日付を書く欄があれば、「火葬年月日」を記入します。

さらに外傷が原因で亡くなった場合は、外傷原因届も提出しましょう。

また埋葬費の提出期限は、故人の遺体を埋葬した次の日から2年以内とありますが、埋葬は土葬を意味するので、定義があいまいです。火葬をした次の日から2年いないと解釈されているようですが、念のため各健康保険組合に確認してください。埋葬料と異なるため、混同しないようにしましょう。

混同しやすい制度との違い

説明を受ける男性

埋葬料は社会保険の被保険者が、業務外の事由で亡くなったときの給付金ですが、似たような制度がいくつかあり、勘違いしてしまうケースも見られます。葬祭料と葬祭費について説明しますが、これらの給付金と埋葬料は、重複して受給できません。

労働災害で亡くなった場合は「葬祭料」

業務中あるいは通勤中の災害で亡くなった場合は、葬祭料が給付されます。埋葬料との違いは、勤務中か勤務外かという点です。葬祭料は医療保険ではなく、労災保険に紐付く制度です。

葬祭料の申請先は、所轄の労働基準監督署長です。「葬祭料請求書」あるいは「葬祭給付金請求書」を提出します。医師の死亡診断書に代表される、故人の死亡を証明できる証明書が必要です。

葬祭料の申請期限は、故人が逝去した次の日から2年以内です。給付額は以下のいずれかの計算を行い、金額の高い方が支給されます

  • (給付基礎日額) × (30日) + 315,000円
  • (給付基礎日額) × (60日)

国民健康保険の被保険者なら「葬祭費」

故人が国民健康保険の被保険者の場合は、葬祭費を受給できます。後期高齢者医療制度に加入している場合や、国民健康保険の被保険者に扶養されている人が、亡くなったときも適用可能です。

葬祭費の申請は市区町村の窓口で行うもので、自治体によって名称が異なる可能性もあります。給付額は市区町村によって1万~7万円と幅がありますが、東京23区の場合は5~7万円、それ以外の都市は5万円が多いようです

また葬祭費とは別の給付制度を用意している場合もあるため、詳細は住んでいる自治体に確認しましょう。

葬儀費用の負担を減らすには?

書類を前に考え事をする女性

葬儀費用を補填するために、埋葬料の需給は重要ですが、埋葬料だけで葬儀費用の全ては支払えないでしょう。葬儀費用の負担を少しでも減らすためには、埋葬料の給付以外の制度もうまく活用することが重要です。

埋葬料以外にもらえるお金もチェック

埋葬料を受け取れるのは、社会保険の被保険者が死亡した場合です。同じ状況で受け取れる給付金としては、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」が挙げられます。受給条件は18歳以下の子どもがいることです。

18歳以上の子どもがおらず、夫の死亡時に妻が40歳以上なら、遺族厚生年金と中高齢寡婦加算を受給できます。それ以外の場合は、遺族厚生年金のみの受給となります。

一方で死亡した被保険者が第1号被保険者だった場合は、18歳以下の子どもがいれば遺族基礎年金、18歳以下の子どもおらず各種条件を満たしていれば、寡婦年金の受給が可能です。いずれにも当てはまらない場合は、一定の条件下で死亡一時金が給付されます。

また亡くなる前に高額な医療費がかかっていた場合は、一部払い戻しができるかもしれません。医療費の自己負担限度額を確認しましょう。

関連記事:医療費が高額になったときの社会保険手続き「高額療養費制度」とは?

相続税の控除対象の費用を確認しておく

相続税とは故人の遺産を引き継ぐときに課される税金です。相続税の控除対象を確認しておけば、総合的に費用負担を減らせるでしょう。

故人の遺産から葬儀費用を支払った場合、相続には当たらず、相続財産からの控除の扱いとなります。葬儀・告別式の費用や、火葬料・納骨費用などが控除の対象です。(墓地の購入費用や初七日など法事にかかった費用は除く)

なお埋葬料は故人から相続する遺産に含まれず、埋葬を行った人が健康保険組合から受け取る給付金であるため、相続税はかかりません。

参考:No.4129 相続財産から控除できる葬式費用|国税庁

葬儀後に埋葬料を受け取ろう

お金の計算をする女性

社会保険の被保険者や被扶養者が亡くなったときに、埋葬を行った人が受け取れる給付金が埋葬料ですここでいう「埋葬」とは、墓地埋葬等に関する法律の「埋葬」の意味とは異なり、葬儀のことを意味します。

埋葬料の給付額は一律5万円です。社会保険組合に必要書類を提出して申請します。

混同しやすいほかの給付金との違いを把握した上で、受給可能な給付金の申請を、忘れずに行いましょう。

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監修者:岩田昌幸

葬送儀礼マナー普及協会 代表理事

葬送儀礼(臨終から葬儀、お墓、先祖供養等)が多様化している中で、「なぜそのようにふるまうのか」といった本来の意味を理解し、そうした考え方や習慣を身につけられるよう「葬送儀礼マナー検定」を実施しています。メディア監修多数、終活・葬儀・お墓関連セミナーも実施しています。

コメント
埋葬料は故人が健康保険に加入していれば基本的に受け取れるため、忘れずに申請すると良いでしょう。「埋葬」は墓地埋葬等に関する法律では土葬のことを指しますが、ここで意味する埋葬料は葬儀費用のことを指します。

参考:一般社団法人葬送儀礼マナー普及協会