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死化粧・エンゼルケアの流れとポイントを解説。気になる費用も

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最終更新日: 2023年03月15日

ご逝去後、故人が生前のお姿に近くなるよう化粧などのケアを施す行為は「死化粧」「エンゼルケア」と呼ばれます。

死化粧はご遺体の身だしなみを整えること、エンゼルケアは死化粧を含めたご逝去後の処置の総称ですが、具体的な手順や流れについて把握している方は少ないのではないでしょうか。

湯灌やエンバーミングとの違い、実際に処置する際の流れ、かかる費用を確認しましょう。

この記事を監修した専門家

株式会社SAKURA 代表取締役/一級葬祭ディレクター
近藤 卓司

死化粧・エンゼルケアとは

死化粧の様子

死化粧とエンゼルケアは、厳密には異なる行為を示す言葉です。それぞれの違いにも着目しつつ、死化粧とエンゼルケアの基本的な意味合いを説明します。

死化粧はご遺体に化粧を施すこと

死化粧(しにげしょう)とは、ご遺体の身だしなみを整えて生前のお姿に近づける処置のことです。ご遺体に薄化粧を施すだけでなく、肌の乾燥を防ぐために保湿クリームを塗ったり、顔の髭や産毛を剃ったり、爪や髪の毛を整えたりします。

もともと生前の安らかな表情を再現することは、故人の尊厳を守りつつ、死に対する苦痛を和らげる意味合いがありました。またご遺族や親族が気持ちに区切りを付けて、穏やかに故人を見送るためにも重要です。

特に闘病の末亡くなった場合、元気だった頃とはかけ離れたお姿になるケースもあるでしょう。故人の最後のお姿を美しく整える行為は、「きれいなお姿でお見送りできた」とご遺族や親族が故人の死を受け入れるきっかけとなります。

エンゼルケアは広義の死化粧

エンゼルケアとは、死化粧も含めた「ご遺体を美しく整える処置」の総称です。ご遺体の化粧や爪・髪の毛のお手入れに留まらず、身体の清拭や口腔内のケア、着付けも施します

病院で亡くなった場合は医療器具の取り外しや排泄物の除去も行うため、医師や看護師によって行われることが多いです。

なお「死化粧」のみをエンゼルケアと表現するケースや、「医療器具の取り外しや、体内の内容物・排泄物の除去」のみをエンゼルケアと呼ぶケースもあります。

一般的には医療機器の取り外しから着付けと化粧(死化粧)まで、ご遺体の外観を整える全ての処置として覚えておくと良いでしょう。

湯灌・エンバーミングとの違い

死化粧を施す様子

「湯灌」「エンバーミング」もご逝去後に行う処置のため、死化粧・エンゼルケアと混同されやすい言葉です。

湯灌やエンバーミングの意味と、死化粧・エンゼルケアとの違いを解説します。

湯灌とは

湯灌は現世での穢れを洗い流す儀式です。アルコール綿で身体を拭くだけの「古式湯灌」や、ご遺体の汚れをシャワーで洗い流して湯に浸からせる「普通湯灌(洗体湯灌)」を行います。

湯灌で湯を張るときは水に湯を追加してぬるま湯を作る「逆さ水の儀式」を実施するのが一般的です。普段とは逆の手順を踏むことを通して、生者と死者の境界線をはっきりとさせます。

湯灌はこうした「逆さ水の儀式」などの儀礼を通して、故人の死と向き合うといった宗教的な意味合いも持つのが特徴です。

ご遺体の衛生を保つ行為のため、死化粧・エンゼルケアの一環として行われることもあります。

関連記事:湯灌の儀は大切な葬送の儀式。行う意味や基本マナー、流れを解説

エンバーミングとは

エンバーミングはご遺体を通常よりも長く維持するために、ご遺体に防腐処理を施す行為です。血液を薬剤に置き換えたり、体内の内容物や排泄物を除去したりするほか、傷の修復や防腐剤の注入を行います。

ご遺体に処置を施す点では死化粧・エンゼルケアと同じですが、エンバーミングはご遺体を美しく整えることよりも、保持することに重きを置いている処置です

エンバーミングは資格を持ったエンバーマーが行い、処置中に遺族や親族は立ち会えません。エンバーミングは火葬までに日数がある場合や、ご遺体を空輸する必要がある場合などに行われます。

エンバーミングの料金は、葬儀にかかる基本料金とは別で、15万~25万円が一般的です。

死化粧・エンゼルケアは誰がいつ行う?

故人に手を合わせる人たち

故人が亡くなった場所によって、死化粧・エンゼルケアの処置を担う人が異なります。病院で亡くなった場合と、自宅で亡くなった場合の処置を確認しましょう。

病院で亡くなった場合は看護師

病院で亡くなった場合は、主に看護師が死化粧・エンゼルケアを行います。看護師による死化粧・エンゼルケアは、医療処置である場合が多く、身支度の細かな要望は通らないでしょう。簡単な衣服を着せてもらうといった希望であれば、了承される可能性があります。

なお病院で亡くなった場合でも、ほとんどの処置を葬儀社に外注しているケースもあるため、病院により対応は様々です。

そのほか介護施設で亡くなった場合は、専門的な処置は除いて、介護士が死化粧・エンゼルケアをしてくれる例もあるでしょう。

自宅で亡くなった場合は葬儀社や納棺師

自宅で亡くなった場合は、葬儀社に死化粧・エンゼルケアを依頼します。基本サービスには含まれず、オプションとして追加で依頼するのが一般的です。

看護師に処置してもらう場合よりも費用がかかりますが、メイクへの細かい要望が通るといったメリットがあります。またご遺体の変化に応じた対応もしてくれるでしょう。

病院で行うご遺体の処置は、応急処置的な要素が多々あるので、葬儀社の専門スタッフにご相談するのがおすすめです。

納棺師や死化粧師に直接頼む選択肢もあるでしょう。納棺師とは納棺に関する儀式を執り行うプロフェッショナル、死化粧師とは死化粧を施すのに特化した専門職です。適切な処置を心得ているほか、心情を理解し遺族に寄り添ってくれるでしょう。

ほとんどの葬儀社はプロの納棺師が在籍しています。また多くの提携先もあるため、葬儀全体の流れを考慮すると、葬儀社に依頼する方が好ましいでしょう。

遺族が行うことも可能

最初の医学的な処置は、医療従事者が担う必要があります。しかしご遺体の清拭やメイクは、誰が行っても問題ありません。伝統的にはご遺族が担っていた役割のため、現在でもご遺族が自ら行うことが可能です。

看護師や納棺師などに頼まなければ、費用がかかりません。しかしご遺体を取り扱う際には、傷つけたり時間が経って腐敗したりしないように、細心の注意が必要です。またご遺体へのメイクは、薄化粧になるように気をつけましょう。

死化粧・エンゼルケアを行うときのポイント

故人の身なりを整える様子

死化粧やエンゼルケアをご自身で行おうと考えた場合、きちんとポイントを把握していないとトラブルに発展したり、失敗したりする恐れがあります。注意するべき2つのポイントを確認しましょう。

専門的な処置はプロに任せる

死化粧・エンゼルケアでは一番はじめに、ご遺体の腐敗が進んで感染症が広がらないための医学的な処置を行います

葬送儀礼としての死化粧・エンゼルケアは誰でも施せますが、医学的な処置は医療従事者しか行えません。また医学的な処置が終わった後も、ご遺体を湯に浸からせたり、洗体・洗髪したりするのは、想定以上に大変です。

全てを自分でこなそうとするのではなく、プロにアドバイスをいただきながら執り行うと良いでしょう。

ご遺体に合わせて適切な化粧を施す

ご逝去後は故人の体温が下がり、顔色が悪くなります。生前のお姿に近づけるためにも、死化粧は女性だけでなく、男性にも施すのが一般的です。故人の生前の写真があれば、元の顔が分かって生前に近いお姿になるでしょう。

ご遺体の肌は乾燥していて化粧ののりが悪く、日常的な化粧とは大きく異なります。ベビーオイルや乳液で保湿するほか、粉タイプではなく、油分の多いクリームタイプの化粧品を使用するのが適切でしょう。

故人が生前に使用していた化粧品と、化粧道具を用いることも可能です。しかしご遺体へのメイクに使った化粧品や化粧道具を残しておくと、感染症の拡大につながる恐れがあります。ご遺体へのメイクに使ったものは、できれば使用後に処分しましょう。

死化粧・エンゼルケアの流れ

故人の身なりを整える人

具体的な死化粧・エンゼルケアの流れを確認しましょう。医療器具の抜去から始まり、身体の内容物や排泄物の除去、着付けと死化粧を行う流れが一般的です。

医療器具を取り外す

病院や介護施設で亡くなった場合は、点滴やドレーンチューブ、人工呼吸器などの医療器具が挿入されたままです。挿入されている医療器具は、火葬前に抜去する必要があります。ただし血管カテーテルは、出血防止のために抜かないケースもあります。

医療器具を取り外す作業は、体内ガスや分泌物が漏れ出す恐れがあって危険です。ご遺族で取り外さず、医療従事者に任せましょう。

またペースメーカーを装着している場合、そのまま火葬すると爆発してしまう可能性が高く非常に危険です。ペースメーカーの取り外しは、必ず医師や看護師に事前に依頼しましょう

内容物や排泄物を除去する

死後は全身の筋肉が弛緩して、排泄物や体液が漏れ出すほか、体内に留まったままでも、ご遺体の腐敗が急速に進んでしまいます。ご遺体の腐敗を遅らせるために、内容物や排泄物を取り除く工程が必要です

鼻腔内の体液を吸引したり、胃の内容物を取り出したりするほか、腹部を圧迫して排泄物や腹水を除去します。同時に体液も流出する恐れがあるため、紙おむつを装着させて、周囲が汚れないようにするといった配慮も必要です。

口腔内や全身を清潔にする

ご遺体を衛生的に保つために、全身の汚れをアルコール綿で拭き取ります。清拭に加えて、普通湯灌(シャワーや入浴)まで施すケースもあるでしょう。顔の髭や産毛も剃って、丁寧に整えます。

口腔内は残留物や体液が原因で、特に悪臭が発生しやすいものです。歯ブラシやアルコール綿でケアをして、悪臭を防ぐ必要があります。

着付けと死化粧

最後に着付けをして死化粧を施します。古くから死装束を着せるのが一般的で、真っ白な死装束には、穢れのなさが表現されていました。死装束を着せるときは、左側の襟を前にするのが決まりです。

一方で近年では服装に特別な規定はなく、故人が生前に愛用していた服を着せるケースも増えています。服装の希望がある場合は、看護師や葬儀社にあらかじめ相談しておきましょう。

着付けができたら死化粧を施して、黄疸を隠したり顔に生気を取り戻させたりといった処置を行います。くしや整髪料を使って、髪型を整えることもあるでしょう。

手の組み方・口の閉じ方

ご遺体が手を組んだ状態にするには、合掌バンドを使います。ゴム製のバンドで手を固定し、ご遺体を運ぶ際に腕が横に落ちないようにするためです。

また近年ではご遺体の手を組まず、横にするケースも増えています。ご遺体の腐敗を遅らせるために、消化器の場所にドライアイスを設置する際、手を組んでいると凍傷になってしまったり、冷やしにくくなったりすることが理由です。

ご遺体の口を閉じる方法は、丸めたタオルをあごの下に置いて、枕をあごが自然に閉じる角度に調節することです。自分で上手にできない場合は、葬儀社のスタッフに任せるといいでしょう。

なお口は死後硬直が解けると徐々に開いてしまうものです。かつては口を閉じるために紐やバンドで固定することもありましたが、近年では使用されないケースが増えています。

死化粧・エンゼルケアにかかる費用

通帳を持つ喪服姿の女性

死化粧・エンゼルケアにかかる費用は、誰に依頼するかによって異なります。病院に依頼した場合と、葬儀社や納棺師に依頼した場合の費用を確認しましょう。

病院に依頼する場合

病院での死化粧・エンゼルケアにかかる費用は、3,000~1.5万円が一般的な相場です。病院によっては、無料で処置を施してくれるところもあります。

病院によっては葬儀社や納棺師に外部委託しているケースもあり、そういった場合は費用が高くなる傾向にあります。死化粧・エンゼルケアの費用は、病院ごとにまちまちなため、一概にいくらと判断せず、個別で病院に費用を確認することが大切です。

葬儀社や納棺師に依頼する場合

葬儀社や納棺師に依頼した場合の費用の相場は、3万~15万円です。病院に依頼するケースと比べて、高額な費用がかかります。

葬儀社や納棺師に死化粧・エンゼルケアをお願いするには、オプション料金を支払う必要があるのが基本です。処置の内容によって実際にかかる費用が大きく変わります。たとえば湯灌も依頼した場合や、特殊メイクが必要な場合は、高額になりやすいと考えましょう。

費用を抑えるには事前確認が重要

死化粧・エンゼルケアにかかる費用を抑えるには、あらかじめ料金を確認しておき、内容に応じて、どれだけ料金が変動するのか把握しておく必要があります。事前の想定よりも高額だと感じた場合は、儀礼的な内容を省くのも選択肢です。

葬儀社に死化粧・エンゼルケアを依頼する際は、一括見積もりサービスを使って、複数業者から相見積もりを取るのも良いでしょう。

ミツモアなら最大5社からの見積もりを無料で確認でき、事前にチャットで相談も可能です。複数業者を比較すれば、自分にとって最適な業者を見つけやすいでしょう。

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死化粧・エンゼルケアはご逝去後すぐに依頼しよう

故人と対面する喪服姿の女性

死化粧・エンゼルケアは故人が亡くなった後の、ご遺体を整える処置全般を指します。亡くなった場所によって処置を施す人はさまざまで、化粧や身体を整えるケアであれば遺族や親族が自ら行うことも可能です。

ただし医療機器の抜去といった医学的な処置は医療従事者が行う必要があるため、専門家に依頼しましょう。

死化粧・エンゼルケアは故人の死後、すぐに対応する処置です。速やかに葬儀社や病院に相談し、故人のお姿を美しく整えてお見送りしましょう。

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監修者:近藤 卓司

株式会社SAKURA 代表取締役
厚生労働省認定 一級葬祭ディレクター

1964年東京都生まれ、中央大学卒。大手互助会で大型葬儀や社葬、合同葬を担当。独自の音楽葬スタイルを研究し、世に広めるため家族葬専門葬儀社を経て株式会社 SAKURAへ転職。2012年代表取締役に就任後、音楽葬プランの立ち上げ、日本のおもてなしの原点である茶道の取り入れを含め、葬儀プランをすべて見直す。これまでに3,000名以上のお葬式を手掛ける、現役の一級葬祭ディレクター。

著書・監修

  • 『わたしの葬式心得』(幻冬舎) 2016/07/01発行

コメント
大切な方のご遺体に適切な処置を施すことは、葬儀においては「一丁目一番地」です。故人の尊厳を守るという、とても重要な意味があります。近年では、ご遺体に対する意識の高い病院や介護施設などでは、専門家の指導の下にセミナーなどが開催されています。これはとても良い傾向であると思います。しかし病院や介護施設の場合、応急処置の域にとどまってしまうのは仕方のないことでしょう。
ご遺体の状態は日々刻々と変化していきます。ご遺体を安置する環境によっても変化の様子は異なるでしょう。大切なことは、葬儀全般を考えたときに「一丁目一番地」から始まり、故人の尊厳を守り通すために『どのようにして処置を施していくか』ということです。費用のこともあるので、信頼のできる葬儀社に相談してみてください。