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曹洞宗の葬儀はどんなもの?流れやマナー、香典の表書きなど解説

最終更新日: 2024年06月28日

曹洞宗の葬儀はさまざまな経や梵音具(鳴り物の仏具)で構成されています焼香のタイミングなどマナーを知らずに参列すると困ることも出てきますので、事前に概要や特徴を知っておきましょう。

また宗派の教えについても理解を深めることで、葬儀の流れをつかみやすくなります。

この記事を監修した専門家

日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
二村 祐輔

曹洞宗は「座禅」を重視して仏の心に近づく宗派

読経する僧侶

曹洞宗(そうとうしゅう)とはお釈迦様を本尊とし、坐禅を基本に自分自身を見つめる宗派です。

「只管打坐(しかんたざ)」という四字熟語にもあるように、黙々と座禅に専念します。

曹洞宗は「道元」と「瑩山」

曹洞宗は鎌倉時代に、道元禅師(どうげんぜんじ)が日本へ伝え、瑩山禅師(けいざんぜんじ)により広められました曹洞宗ではこの「両祖」を仰ぎ、一仏両祖(いちぶつりょうそ)としています。

お釈迦様の教えを暮らしの中に生かして、精進をかさねるのが曹洞宗です。とくに坐禅によって心身を集中させ、心と身体の調和を図ることを、重視しているといえるでしょう。

このような状態を即心是仏(そくしんぜぶつ)といい、厳しい修行を実践しなければ、悟りは得られないと考えられています。

曹洞宗の葬儀の流れ

葬儀場の様子

曹洞宗の葬儀はさまざまなお経や梵音具で構成されるため、ほかの宗派の葬儀よりも複数の僧侶が出仕します

曹洞宗の葬儀の一般的な流れ

臨終から拾骨までの、曹洞宗の葬儀の一般的な流れは、以下の通りです

ご逝去

  1. ご遺体安置
  2. 枕飾り設置
  3. 身近な人で枕経:最近は省略されることも多い

お通夜

  1. 弔問客受付
  2. 一同着席
  3. 僧侶入場
  4. 通夜諷経(つやふぎん):『修証義(しゅうしょうぎ)』などが読まれる
  5. 焼香
  6. 僧侶退場:退席前に法話をすることもある
  7. 通夜振る舞い:弔問者と共に飲食をともにする

葬儀・告別式

  1. 導師・式衆入場
  2. 剃髪(ていはつ):死者を仏門に入らせるの受戒作法
  3. 授戒(じゅかい)・懺悔文(さんげもん)・洒水(しゃすい)の儀など
  4. 導師焼香 
  5. 引導法語(中心儀礼):導師がたいまつに見立てた法具を手に取り円を描き、この後、引導法語を読み上げ「一喝」する
  6. 読経
  7. 焼香:僧侶の指示により遺族近親者など順次焼香。一般の会葬者はその後引き続いて焼香
  8. 導師・式衆退場
  9. 弔電など拝読
  10. お別れの儀
  11. 喪主など挨拶
  12. 出棺
  13. 火葬・拾骨
  14. 還骨法要・繰り上げ初七日など

ほかの宗派の葬儀との違い

数珠とお経

曹洞宗の葬儀は数々の読経や所作、鳴り物が鳴らされ荘厳に行われます。それぞれの意味について知ることで、教えがより身近に感じられるでしょう。

仏の弟子になることが目的

曹洞宗の葬儀の目的は故人が仏の弟子となり悟りを開くことです。この導きにより故人に平穏が訪れると考えられています。

いわゆる「禅宗」では、戒名と血脈を生きているうちに授かるのが望ましいとされていますが、没後、仏弟子になったということで授与されるのが一般的です。

曹洞宗では浄土系の葬儀式のように極楽往生をめざしていませんが、剃髪して戒律を授けられ、死者の救済として仏弟子にします。これを「没後作僧(もっこさそう)」といい、この時の弟子の名前が「戒名」です

「血脈(けちみゃく)」はお釈迦様からの系譜(血)を脈々と受け継がれていることをあらわすもので、火葬の後に、ご遺骨とともに骨壺に納められます。

儀式の様式美に触れる

曹洞宗にはとくに所定の教典はありませんが、『般若心経』(はんにゃしんぎょう)や『法華経』のほか、『修証義』などがよく読誦されます

導師の立ち振る舞いや所作には細則の様式が厳密に決められているので、たいへん厳かな式の流れになるでしょう。脇僧らの鳴り物を含めて、独自の宗教観を感じることができます。

全600巻にもわたる大般若経をわずか262文字にまとめた『般若心経』は、もっとも有名なお経の1つです。

梵音具(鳴り物)や御詠歌も唱えられる

にぎやかで華やかな点も曹洞宗の葬儀の特徴です儀式では引磐(いんきん)が最初に鳴らされ、そのあと太鼓、鐃祓(にょうはち・シンバル状の仏具)などが、緩急のリズムで連打されていきます。

引磐(いんきん)は朱塗りの柄の先に小さな座布団にのったりん、いわば携帯用のりんです。鉢(チン)、太鼓(ポン)、引磬(ジャラン)を使用するため、昔はお葬式を「チン・ポン・ジャラン」とも通称されていました。

葬儀の中で仏の教えを歌にした、梅花流詠讃歌(ばいかりゅうえいさんか)を僧侶が唱えるケースもあります。

曹洞宗の葬儀のマナー

仏壇に手を合わせる人

服装や香典のマナーはほかの宗派と同じですが、焼香の回数と数珠の作法が異なります。曹洞宗の葬儀マナーについて詳しく見ていきましょう。

曹洞宗の数珠

曹洞宗の正式な数珠は「百八環金(ひゃくはちかんきん)」という金属の輪が付いており、108個の珠が二重になった数珠です。

一般の方は、主玉の数を減らした「片手数珠」を使うことが多く、最近では「腕輪念珠」などもあります。

弔問や会葬のときは、左手に持ち、房は下にしましょう。礼拝の際は左手だけにかけ、合掌する場合や、あるいは合掌した両手にかけて親指で押さえます。

曹洞宗の香典の表書きと相場

曹洞宗では「御霊前」や「御香典」と表書きした不祝儀袋を使用します。水引の下に薄墨で自分のフルネームを書きましょう。連名の場合は3人まで、それ以上の人数のときは「〇〇一同」と表書きし、別紙に1人1人の名前を記します。

親族は血縁や、お付き合いの度合いによって異なるのが一般的です。場合によっては、葬儀費用の支援の意味で多くお包みすることもあります。友人・知人は5,000~1万円が相場のようです。

曹洞宗の焼香の回数

曹洞宗の焼香は一般的なものと少し異なります。回数や礼の仕方を、しっかりと押さえておきましょう。

  1. 祭壇の手前まで進み、遺族と参列者に一礼
  2. 焼香台の前に立ち合掌し一礼
  3. 軽くつまんで、1回目は額の高さに押しいただき香炉にくべる
  4. 2回目は押しいただかずにそのまま香炉にくべる
  5. 数珠をかけ、両手で挟むように合掌
  6. 深く一礼の後、遺族に向き直って一礼、参列者に一礼してから席に戻る

手荷物はあらかじめ預けるか、着席の椅子、または焼香台に手荷物用の置台があれば、そこに置きます。ハンドバックやポーチなど焼香台の上に置くことはしないように気を付けましょう。

曹洞宗のお布施の相場

お布施などの「お包み」には、本来は金額に決まりはありません。地域慣例や菩提寺との関係、また大葬儀などでの出仕僧侶の数にもよります。一般的には30万円前後といわれていますが、根拠はありません。

葬儀の場合は読経に対する御礼や「お車代」(僧侶の人数各々に渡すのが原則)のほか、「戒名授与」に対する「お包み」の合計が目安です。戒名は院号や位号などランク、菩提寺の格式などによって大きく幅があり、中には100万円以上の場合もあります。

「料金」ではないので、あいまいなことに戸惑いますが、何よりも直接、寺院僧侶に尋ねると良いでしょう。

「お車代」はホールまで来ていただくための交通経費です。なお送迎しても1名あたり3000円~5000円を日ごとに包むこともあります。遠方から来られる場合は、実費以上のお包みや宿泊なども考えなければなりません。

「御膳料」は、精進落としなどの事後の会席に、僧侶が出席されない場合に用意しておきましょう。

曹洞宗の葬儀の服装

喪主・遺族は「正喪服」、親族、親しい友人・知人は「準喪服」とするのが一般的です。男性の正喪服はモーニングコートか紋付羽織袴、女性の場合はブラックフォーマルもしくは黒紋付の着物です。

男性の準喪服はブラックスーツ、女性はブラックフォーマルになります。最近では葬儀自体が簡略化されており、喪主や遺族も、参列者と同様の準喪服で参列するケースも増えています。

曹洞宗の葬儀後の法要

数珠を持つ人の手元

曹洞宗の葬儀を終えてから弔い上げまで、定期的に法要を執り行います。とくに四十九日と三回忌までの年忌法要は大切です。

初七日・四十九日・一周忌

初七日は「故人の霊が三途の川にたどり着く日」と考えられています。昔は亡くなった日から7日目に営まれていましたが、現在は火葬の後に還骨して、身内だけで行うのが一般的です。

四十九日法要は故人が仏になる日にあたります。ご遺族が喪に服す期間を終える忌明け(きあけ)が、この四十九日法要のタイミングです。法要の後は精進落としをいただきます。「白木の仮位牌から本位牌に入れ替える」「納骨する」といった行事もこの日に行うのが一般的です。

その後は、亡くなってから1年目の命日に一周忌、三回忌は2年目の命日に、以降は七回忌、十三回忌と年忌法要が続きます。三十三回忌か五十回忌で、年忌法要を終了する行事である「弔い上げ(とむらいあげ)」にするケースがほとんどです。

曹洞宗の葬儀は進行作法にこだわりも多い

棺に手を合わせる人たち

曹洞宗の葬儀では、故人を仏の弟子として入門させ、悟りの境地へ導くための儀式を行います。

曹洞宗の葬儀で喪主になり、知識や執り行い方に不安があるときは、葬儀社に事前に相談しておくと安心です。複雑な儀式を必要とする葬儀は、宗派のしきたりを熟知した葬儀社を選びましょう。

信頼できる葬儀社を探すには、ミツモアの利用がおすすめです。希望する内容を入力すれば、最大5社から無料で見積もりが届きます。気になる葬儀社にはチャットで質問できるため、曹洞宗の葬儀形式に詳しい葬儀社を探すことができるでしょう。

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監修者:二村 祐輔

日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
『葬祭カウンセラー』認定・認証団体 主宰
東洋大学 国際観光学科 非常勤講師(葬祭ビジネス論)

著書・監修

  • 『60歳からのエンディングノート入門 私の葬儀・法要・相続』(東京堂出版) 2012/10/25発行
  • 『気持ちが伝わるマイ・エンディングノート』 (池田書店) 2017/9/16発行
  • 『最新版 親の葬儀・法要・相続の安心ガイドブック』(ナツメ社) 2018/8/9発行
  • 『葬祭のはなし』(東京新聞) 2022年現在連載

など多数

コメント
曹洞宗の開祖、道元禅師(1200~1253年)は、鎌倉時代初期の僧侶で、座禅の心得やマニュアルとして有名な『正法眼蔵』をあらわしました。それは現代でも読み継がれて、今に通じるメッセージが多々あります。とくにストレス社会に過酷に生きている私たちにとって、時には「身心脱落」の座禅は、心の平穏を取り戻してくれます。あわせて禅寺の簡素な庭にも、自然との一体化を感じる生死の達観を感じ撮ることができます。