ミツモア

日蓮宗の葬儀はどんなもの?特徴やマナーを分かりやすく解説

ぴったりの葬儀屋・葬儀社をさがす
最終更新日: 2023年03月15日

日蓮宗は『法華経』を信仰の拠り所とする宗派です。日蓮宗の葬儀は他の宗派と比べて鳴り物が多く、花びらを模した散華を散らしてにぎやかに行いますまた独自の偈文(げもん・文章)や経典が読まれるのが特徴です。

日蓮宗の葬儀の流れや特徴、マナーを解説します。

お近くの葬儀屋・葬儀社に相談する

この記事を監修した専門家

日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
二村 祐輔

日蓮宗とは?なりたちから葬儀を理解する

お仏壇前の僧侶

ほかの宗派では仏を信仰の中心にしているのに対し、日蓮宗は『法華経』という経典を信仰の中心にした宗派です

開祖「日蓮聖人」の人生と日蓮宗の誕生

日蓮宗は、日蓮が「仏を信心しても本当の悟りの境地にはたどり着けない」と考えたことから始まりました。

鎌倉時代中期に日蓮は仏教界の腐敗を強く批判します。仏の説く真実無二の経典を模索し、たどり着いたのが『法華経』でした。建長5年(1253年)4月28日に、現在の千葉県鴨川市・清澄寺で、日蓮は初めて「南無妙法蓮華経」を唱えます。日蓮宗の始まりの日です。

日蓮は既存の宗派を人々の前で否定し続けたため、度重なる流罪に処せられます。

お題目「南無妙法蓮華経」と死生観

『法華経』は八万四千あるといわれる経典の中で、お釈迦様の教えの集大成といわれる経文です。日蓮宗では法華経を最も大切なお経としています。

お題目である「南無妙法蓮華経」は法華経を心から信じ、帰依するという意味です。

日蓮宗は生きているうちから『法華経』に帰依すれば、仏の心を知って幸せに暮らせると説いています。亡くなってから弟子になるよりも、生きて南無妙法蓮華経の七文字を唱えることが何より大切と考えるのが、日蓮宗の死生観です。

日蓮宗の葬儀の特徴

身延山久遠寺

日蓮宗の葬儀は「法号」「開棺」「引導」「鳴り物」が特徴的です。

戒名ではなく「法号」を授かる

日蓮宗では戒名ではなく法号を授けられます。日蓮宗は法華経に帰依することが、仏教の戒律よりも勝ると考えます。そのため葬儀では、いましめを授ける授戒(じゅかい)がなく、出家後の名前も法号となるのです。

法号の授与は故人の信仰心や人徳、社会や寺院への貢献度から考慮するのが一般的です。「院号」「道号」「日号」「位号」で構成され、日号が最も重要とされています。

葬儀の中で行う「開棺」と「引導」

開棺は導師が棺のそばに立ち、棺の窓を開け、中啓(ちゅうけい)という扇の形をした法具でふたを叩き、払子(ほっす)という仏具を振りながら経を唱える儀式です。

引導(いんどう)は故人を仏様に引き合わせる儀式で、導師は払子を振りながら引導文が奏上されます。これも導師によってさまざまです。

鳴り物「妙鉢」と「団扇太鼓」

鳴り物と呼ばれる鐃鈸(にょうはち)や団扇太鼓(うちわだいこ)、木鉦(もくしょう)を鳴らします。鐃鈸はシンバルにも似た鳴り物、団扇太鼓はうちわに似た太鼓、木鉦は他の宗派の木魚にあたるものです。

鳴り物は故人の霊を浄土へ導き、邪気をはらう役割があると考えられています。また大規模な葬儀の場合、雅楽が演奏されるケースもあります。

日蓮宗の葬儀の流れ

葬儀の受付の様子

日蓮宗の葬儀は花びらを模した散華(さんげ)を撒いたり、さまざまな鳴り物を鳴らしたりと、あまりしめやかさは感じません。

仏の教えである偈文(げもん)の奏上や、参列者ともどもお題目を唱和するなどして、故人を送り出す点にも特徴があります。

逝去から拾骨までの葬儀の流れ

日蓮葬の葬儀の流れの一例を確認しましょう。各寺院や、僧侶によっても組み方が異なります。

【ご逝去後】

  1. 逝去後の清拭や末期の水:安置後、脱脂綿などで唇を湿らせる
  2. 納棺:身近な親族で行うが、できれば僧侶の立ち合いが求められる
  3. 通夜
    ・道場偈(どうじょうげ):通夜の始まりに仏を迎える
    ・三宝礼(さんぼうらい):仏・法・僧の三宝に礼拝
    ・勧請(かんじょう):諸仏、諸尊・日蓮大聖人や先祖を招き入れる
    ・開経偈(かいきょうげ):経典を開く前に、奉げる偈文
    ・読経:妙法蓮華経方便品(みょうほうれんげきょうほうべんぽん)
    ・唱題:南無妙法蓮華経を唱える
    ・回向:お経を唱和して功徳を振り分ける

【翌日】

  1. 葬儀
    ・導師、式衆入場
    ・総礼(そうらい):導師と参列者でお題目を三唱
    ・道場偈、三宝礼、勧請、開経偈などの読経が始まる
    ・咒讃鐃鈸(しゅさんにょうはち):鳴り物と偈文を唱える
    ・散華(さんげ):導師が散華を散らす(行わない場合もある)
    ・開棺・引導・・導師が棺のそばで引導文を奏上し『法華経』の功徳を称える
    ・法号授与・導師焼香
  2. ・祖訓、唱題:宗祖の文章を拝読したのちお題目を唱える
    ・宝塔偈(ほうとうげ)、回向:信者の功徳をたたえ、浄土へ行けるよう祈る
  3. 諸品の読経・・遺族親族に続いて一般会葬者焼香(告別式)
    ・四誓(しせい):衆生を救う誓いの言葉を唱える・・そろそろ終わり
    ・三帰(さんき)、奉送(ぶそう):仏・法・僧の三宝に帰依する誓いを立て、仏を送る
    ・導師、式衆退場
  4. 弔電など奉読
  5. お別れの儀
  6. 喪主挨拶・出棺
  7. 火葬:拾骨の際、導師が自我偈(じがげ)を読み上げることもある。
  8. 還骨・繰り上げ初七日法要など

お近くの葬儀屋・葬儀社に相談する

日蓮宗の葬儀のマナー

経文と数珠

日蓮宗の葬儀では、数珠の持ち方と、焼香の回数に気を付けましょう。服装や香典は、一般的な葬儀のマナーと同様です。

数珠は108珠で、こすり合わせない

日蓮宗の正式な数珠は、本蓮と呼ばれる108玉の数珠です。玉の1つひとつが煩悩を表しており、念じることで仏に苦しみを取り除かれると考えられています。

日蓮宗では数珠をこすり合わせて音を鳴らすことを行いません。礼拝の際は数珠を二重にして房を下に垂らし、左手の四本の指に掛けます。念仏を唱えるときは一度ひねって、左右の中指の第一関節に掛けて合掌します。

焼香は押しいただく

日蓮宗では、焼香を押しいただき(額の前に持っていく)香炉にくべます。

押しいただく回数は、僧侶は3回が作法と言われていますが、一般会葬者は特に指定はありません。基本的に1回~2回行います。

立礼式の焼香の流れは以下です。

  1. 祭壇正面、焼香台の前で合掌一礼
  2. 抹香をつまみ、1、2回押しいただき香炉にくべる
  3. 数珠を両手で挟むように合掌
  4. 正面の位牌・遺影に対して深く一礼の後、喪主・遺族に対して一礼
  5. 席に戻って着席、または外へ出る

香典の表書きは「御霊前」か「ご香典」

香典の不祝儀袋に御霊前もしくはご香典と表書きし、その際は薄墨の筆ペンを使いましょう

香典の相場は一般的な葬儀と同じく、故人や遺族との血縁や社会的関係、または自身の立場によって変わります。

  • 近親・親族の場合は葬儀費用の支援負担が伴う場合があるので、金額は十分に考慮する。場合によっては10万円以上のときもある。
  • 友人・知人・近隣のお付き合いであれば5,000~1万円が目安。

香典に包むお札は新札を避けます。もし手元に新札しかない場合は、折り目をつけてから不祝儀袋に入れましょう。

日蓮宗の葬儀のお布施のお包み

お布施の額は菩提寺との付き合いの深さや、法号の院号・位号ランクにより異なるため、明確には決まりはありません。日蓮宗の葬儀には複数の式衆が葬儀にあたるため、人数によってお布施の金額が変動します

最もポピュラーな法号は「信士」「信女」で、お布施(読経と法号授与に対する「お包み」)の目安には幅がありますが、20万円~と考えておきましょうその他にお車代、お膳料なども考慮する必要があります。

いくらにすべきか迷ったときは、菩提寺に直接目安を聞いても失礼になりません

また内々の家族葬であっても、お布施の額が少なくなるということはないです。もし家計の状態などで苦慮しそうな際は、十分に相談をして、納得のできる範囲で対応しましょう。菩提寺とのコミュニケーションが大切です。

喪服のマナーはほかの宗派と変わらない

日蓮宗の喪服のマナーも、ほかの宗派と変わりありません。葬儀の際は喪主・親族は男女ともにブラックフォーマル、もしくは和装です

男性はブラックフォーマルかダークスーツ、無地の黒いネクタイ、白いシャツを用意し、ネクタイピンやカフスは付けません。靴やベルトも黒で統一して、飾りのないものを選びます。

女性はブラックフォーマル、もしくはダークカラーのアンサンブルです。バッグやストッキングを黒でそろえ、結婚指輪以外のアクセサリーは控えましょう。

関連記事:お葬式の正しい服装とは?男性・女性ごとの身だしなみマナーや小物を紹介

『法華経』の教えで故人を見送る

仏壇の前の僧侶

日蓮宗の開祖である日蓮聖人は、ほかの宗派を厳しく批判し続け、激しい弾圧を受けました。しかし日蓮の死後も「信仰を深め、毎日を心穏やかに生きよう」と説く教えは、根強く日本全国に広まっています。

日蓮宗の葬儀は、導師以外に式衆という複数の脇僧で営むことも多いです。また檀徒(檀家や信徒・信者)は団扇太鼓をならし、一緒にお題目を唱えるなどの特徴があります。

しきたりを知らない人は戸惑うこともあるでしょう。葬儀を滞りなく執り行うには、日蓮宗の教えや、葬儀のしきたりを熟知した葬儀社が欠かせません。

葬儀社を探すなら、一括で最大5社から見積もりを取れるミツモアがおすすめです。気になる葬儀社にチャットで質問することができるので、日蓮宗の葬儀に詳しいかどうか、見極めることができます。

また複数社の見積もりを比較すれば、適正な価格かどうかを確認できるでしょう。

ミツモアで葬儀・お葬式を依頼する

監修者:二村 祐輔

日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
『葬祭カウンセラー』認定・認証団体 主宰
東洋大学 国際観光学科 非常勤講師(葬祭ビジネス論)

著書・監修

  • 『60歳からのエンディングノート入門 私の葬儀・法要・相続』(東京堂出版) 2012/10/25発行
  • 『気持ちが伝わるマイ・エンディングノート』 (池田書店) 2017/9/16発行
  • 『最新版 親の葬儀・法要・相続の安心ガイドブック』(ナツメ社) 2018/8/9発行
  • 『葬祭のはなし』(東京新聞) 2022年現在連載

など多数

コメント
日蓮宗は唯一開祖の名前「日蓮」を宗派名にしています。当時は鎌倉時代でいろいろな社会不安があった時代、いわゆる「末法(お釈迦様の没後1000年)」の世です。多くの庶民は「南無妙法蓮華経」というお題目を繰り返し唱えることで「成仏」することができると信じ、救済の教えとして広く浸透しました。現代でも日蓮宗の僧侶は「お上人」と尊称し、祈願や罪障消滅の厄払いなど「木剣修法」で勇猛なご祈祷をしています。