シャリンバイはどんな植物?
1~4ⅿの樹木で、春から初夏にかけて白い花を咲かせます。潮害や排気ガスにも強く、公園や道路の緑地帯によく植えられています。
シャリンバイは育てやすい?
非常に丈夫で剪定もあまり必要ないので、大変育てやすい木と言えます。
1~4ⅿの樹木で、春から初夏にかけて白い花を咲かせます。潮害や排気ガスにも強く、公園や道路の緑地帯によく植えられています。
非常に丈夫で剪定もあまり必要ないので、大変育てやすい木と言えます。
地域によっては街で見かけることも多いシャリンバイですが、そもそもどのような植物なのでしょうか?シャリンバイの特徴をみていきましょう。
植物名 | シャリンバイ |
学名 | Rhaphiolepis umbellata |
科名 / 属名 | バラ科 / シャリンバイ属 |
原産地 | 日本、東アジア |
開花期 | 5~6月 |
花の色 | 白 |
樹高 | 1~4m |
特性 | 常緑性、大気汚染・潮害に強い、育てやすい |
シャリンバイは大気汚染や暑さに強い、バラ科シャリンバイ属の常緑低木です。
この性質から公園や庭の植栽、生垣やシンボルツリーなど、様々な場面で用いられる庭木です。
また漢字では「車輪梅」と書きます。梅に似た白い花を咲かせることや小枝が車輪のように出ていることから、シャリンバイという名が付けられました。
高さは1~4m程度で、低木~中高木に分類されます。
常緑性で大気汚染や夏の暑さのほか潮風にも強く、道路脇の植え込みなどにも使用される花木です。
本州西部・四国・九州など、西日本を中心に広く分布しています。
シャリンバイは5月~6月の初夏のタイミングで、梅のような白い花を咲かせます。
花びらは直径1~1.5cmほどの大きさで、小さくて可愛らしい花が枝先にたくさん咲く姿が、華やかな印象を与えてくれるでしょう。
花びらの先端は丸くなっており、ふっくらとした姿は小さいながらも存在感を感じさせます。
また花からは、ほのかに甘い香りが感じられるのも特徴のひとつです。すっきりとした香りのため、大人っぽさを感じます。
シャリンバイの花が咲いているのを見た際は、花の香りを楽しむのもよいでしょう。
シャリンバイの葉は濃い緑色で光沢があり、肉厚で長楕円形をしています。
葉は長さ4~8cmほどで、車輪のように互い違いに生えるのが特徴です。
シャリンバイは常緑性で葉を年中楽しむことができ、枝葉が密集する性質もあることから生垣としての人気も高い草花です。
シャリンバイは秋になるとブルーベリーのような黒紫色の実をつけます。直径1cmほどの大きさで、枝先にたくさんの数を実らせる姿は見ごたえがあります。
シャリンバイの実は有毒性がなく食べられるものの、可食部が少ないため、食用には不向きといえるでしょう。
シャリンバイの花言葉には「そよ風の心地よさ」「純真」「愛の告白」の3つがあります。
シャリンバイは春から初夏にかけて開花しますが、この時期は暑くも寒くもなく、過ごしやすい気候です。「そよ風の心地よさ」という花言葉は、この開花時期に由来すると考えられます。
また「純真」という花言葉は、シャリンバイの特徴である白い花から取られているのでしょう。
そして、まとまって咲くシャリンバイの花の様子が花束のように見えることから、「愛の告白」という花言葉が生まれたとされています。
シャリンバイの葉には消炎作用があります。皮膚がただれてしまったときや腫れ物ができてしまったときにシャリンバイの葉を煮詰めた液で洗ったり、打撲した傷にはつき潰した汁を塗ったりします。
また根は煮詰めて打撲傷に塗ったり、焼酎漬けにしてくるぶし関節の古傷に服用したりします。
鹿児島県奄美大島でつくられている織物「大島紬」には、シャリンバイの枝をチップ状にして釜で煮だした液が使われています。
大島紬は下の写真のように深い黒に繊細な染めと織りの技術が光る、世界三大織物にも数えられる絹織物です。
シャリンバイは手入れが簡単で比較的育てやすく、庭木としても人気があります。
まずはシャリンバイを育てる前に、確認しておきたいポイントを紹介しましょう。
シャリンバイは日光を好むため、日当たりの良い場所に植えるようにしましょう。
日当たりが不足していると、ひょろひょろと間延びしたように育ってしまい、まとまりがなくなってしまいます。
耐暑性があり、暑さには比較的強いので、日当たりが良すぎても問題ありません。
鉢植えであれば日当たりに合わせてシャリンバイを移動できますが、地植えの方がしっかりと育つため、地植えにするのがおすすめです。
庭の中の日当たりが良い場所を見極めて植えるとよいでしょう。
シャリンバイを植えるには、水はけの良い土を使いましょう。基本的にはやや砂質で、腐葉土や堆肥を含んだ肥沃な土を好む植物です。
中粒の赤玉土1に対し、腐葉土や堆肥を2の割合で混ぜた土などを使うと良いでしょう。
水はけをよくするためには、砂を少し混ぜるのもおすすめです。
自分で土を混ぜて作るのが大変であれば、市販の培養土でも問題なく育てられます。
庭土を使用する場合は、植える前にあらかじめ腐葉土を混ぜておきましょう。
基本的には水はけさえ良ければ、土質にはそれほど気を使わなくても構いません。
シャリンバイの植え付け、開花期、剪定、肥料のタイミングは上の図のとおりです。
それぞれ詳しくご紹介します。
シャリンバイの植え付け時期は3~4月がおすすめです。鉢植えでも地植えでも、緩効性の化成肥料を元肥として使用します。
鉢植えの場合、根鉢よりも一回り大きい鉢を用意しましょう。底にネットを敷いたら、軽石・用土を入れて植え付けます。地植えの場合は、根鉢の2~3倍程度の穴を掘ってください。
根を傷つけないように慎重に植え付けたら、最後に水やりをします。なお、最適なのは3~4月ですが、9~10月の秋ごろに植え付けを行っても構いません。
シャリンバイの水やりは土の表面が乾いたタイミングで行います。乾く前に水やりをすると水の与えすぎになり、根腐れを起こす原因となってしまうので注意しましょう。
なお地植えの場合は、2年経つとしっかりと地面に根が張り、地面に染み込んだ雨水から水分を得られるため、特に水やりの必要はありません。
雨がまったく降らない時期が続いたりして地面が乾ききってしまった場合、水やりをするようにしましょう。
シャリンバイの追肥は2~3月ごろに施しましょう。
地植えの場合は2月、鉢植えの場合は3月に、化成肥料を一握り程度、株本の周辺に埋めればOKです。
埋めるのが難しい場合は、株本に置いておくだけでも効果を発揮します。
与える肥料は、チッソ分の少ない物を選ぶのがおすすめです。
チッソ分が多すぎると生育が悪くなり、冬の寒さに耐えられなくなってしまいます。
シャリンバイは暑さには強いですが、本来温暖な地域で育つため、寒さはそれほど得意ではありません。
シャリンバイの剪定は、花後の6月ごろに行います。
7月中旬ごろになると翌年開花するための花芽が出てくるため、誤って刈りこんでしまわないよう、早めに作業するのがポイントです。
また剪定の際には刈込バサミを使って、樹形からはみ出して長く伸びている枝を切っていきます。
シャリンバイは樹形が整いやすいので、あまり剪定する必要はありません。
シャリンバイは枝を伸ばす力は強いですが、芽吹く力は強くないので、切りすぎて樹形を乱してしまうとなかなか元に戻らなくなってしまいます。
むしろできるだけ枝を切らずに、樹形からはみ出したものだけを剪定していく方が、元気に育てることができます。
切る枝を決めたら、その枝を根元から切り落としましょう。
シャリンバイはこまめな手入れをしなくても力強く育っていきますが、大きく成長してきた場合は簡単な手入れが必要です。
シャリンバイを長く楽しむためにも、必要な手入れの方法をしっかりと確認しておきましょう。
シャリンバイを鉢植えで育てている場合は、成長に合わせた植え替えが必要です。成長しすぎて根詰まりを起こしてしまう前に、一回り大きな鉢に植え替えましょう。
またシャリンバイは根が少ないので、植え替えの際は根を傷つけないように注意します。根があまり丈夫ではないため、頻繁な植え替えはおすすめできません。
植え替えする時期は、植え付けと同様に3~4月が適しています。ただし地植えの場合は、植え付けから8年ほど経過すると根の状態から植え替えが難しくなるため、植え付け場所は慎重に選ぶようにしましょう。
シャリンバイを増やす方法は、種まきと挿し木の2種類です。
11~12月ごろになると完熟した実が採取できるため、果肉を指でつぶして種を取り出します。
種は乾燥しないように湿った砂に混ぜ、ビニール袋に入れて密閉しておきましょう。種まきは植え付けと同様に3~4月に行うため、それまでの間は冷蔵庫で保管するのがおすすめです。
挿し木で増やす場合、下の図のような手順で作業をします。
6月ごろに若い枝を先端から10cmほどの長さに切ります。
切り口を水につけて水あげした後、赤玉土に挿して水やりをしましょう。
乾燥するとうまく根が出ないため、ビニール袋で密閉して湿度を保つのがポイントです。
シャリンバイを育てる際に気を付けたい病気や害虫について解説します。害虫を放置していると、シャリンバイが病気にかかってしまう原因にもなるので、早めの対策を心がけましょう。
シャリンバイに発生しやすい害虫は、カイガラムシとアブラムシです。
カイガラムシは葉や枝、幹などに寄生して樹液を吸い、シャリンバイの成長を妨げます。カイガラムシは成虫になると、貝殻のような固い殼に覆われるのが特徴で、薬剤が効きづらくなります。
なるべく卵や幼虫のうちに薬剤を使用して対処しましょう。成虫を見つけたときには、竹べらなどで落として対処します。
また春から夏に発生するのがアブラムシです。葉の裏に潜んでいることが多く、養分を吸い取ってしまいます。繁殖する力が強いため、見かけたら早めに薬剤散布で対処し、大量発生を防ぐことが大切です。
シャリンバイの病気としてよく知られているのが「すす病」です。
写真のように、葉の表面が黒いすすのようなカビに覆われる病気で、すす病になると光合成が阻害されてしまいます。
その結果、生育不良に陥る可能性があるのです。
すす病を発見したときには、葉の表面のすすを拭き取るか、ひどい場合はその葉を取り除くようにしましょう。
すす病はカイガラムシの排泄物などが原因で起こる病気です。
このように害虫は、樹液を吸うことによって直接影響を与えるだけでなく、病気も引き起こすことがあるため、見つけたら早めに対処しなければいけません。
発生する前から予防的に薬剤を散布するなどして、病気や害虫からシャリンバイを守りましょう。
シャリンバイにはいくつかの種類があり、それぞれ樹高や葉の付き方、花の色などが異なります。
シャリンバイは葉の形をはじめ変異が多く、これから紹介するマルバシャリンバイやヒメシャリンバイも変種の1つです。
また変種とそうでないものは中々区別しにくい個体もあります。
人気品種を写真付きで3つ紹介するので、植栽選びの参考にしてみてはいかがでしょうか。
丸みを帯びた葉をつけるのが特徴です。
マルバシャリンバイはシャリンバイの変種で、シャリンバイと同じ花として扱われることが多々あります。区別するときには、原種を「タチシャリンバイ」と呼ぶこともあります。
樹高は1.5m程度でシャリンバイよりも低く、枝の幅も横に広がっていく傾向があります。
花の写真からもわかる通り、花の見た目は通常種とさして変わりません。
マルバシャリンバイは半日陰でも育つため、少し日当たりの悪い場所へ植え込みにもおすすめです。
本州、四国、九州のほか、朝鮮半島に分布しています。
ヒメシャリンバイはピンク色の花が印象的で、こちらもシャリンバイの変種です。
樹高は1~3mほどで、指先ほどの小さな葉をつけるので、小さな庭や狭い場所での植栽におすすめです。
開花期は3~4月で、たくさんの花を枝先から上向きに咲かせます。
ベニバナシャリンバイはその名の通り、赤みを帯びたピンク色の花を咲かせる品種です。
通常種と中国を原産地とするインディカ種の交雑種が広く流通しています。
樹高や葉の形、育てやすさはシャリンバイと同様のため、ピンク色の花弁を楽しみたい方におすすめです。
シャリンバイは和風な見た目をしていますが、洋風の庭にも合わせることができる万能な樹木です。
さらに樹高の高いシャリンバイであれば生垣として目隠しにしたり、枝が密生するマルバシャリンバイであれば潮風を抑えるために植えるといった実用性も兼ね備えています。
またシャリンバイは常緑性なので、盆栽にするという楽しみ方もあります。
盆栽の作り方としては、挿し木や取り木が一般的です。
用土の少ない小鉢を使うと、10年経っても樹形はあまり変わらないようです。
シャリンバイによく似た花に「トベラ」という花木があります。
トベラはトベラ科トベラ属の常緑低木でほとんど関係がないにも関わらず、葉や花をつけるその姿は上の写真のようにまるでそっくり。
しかしトベラの方が花が大きく、シャリンバイが1~1.5cmほどの大きさの花をつけるのに対し、トベラは2cmほどの平たい花をつけるのが特徴です。
また実が熟すと表面が裂けて、中から赤色の種子が飛び出してくるのも違いのひとつです。
シャリンバイは丈夫なため、初心者でも育てやすい花木です。地植えの場合、成長すれば水やりも必要なくなるため、日頃からあまり手がかからない植物ともいえるでしょう。
またガーデニング初心者の方には、植えっぱなしで毎年同じ時期に花を咲かせる「宿根草」の栽培もおすすめです。手入れが簡単で育てやすいため、シャリンバイとあわせた植栽を検討してみてはいかがでしょうか。
日当たりの良い場所に植えたり、必要に応じて手入れしたりといったポイントを押さえて、たくさんの花木に囲まれたガーデニングを楽しみましょう。