冬の雪道や凍結路面では欠かせない「スタッドレスタイヤ」にも寿命があります。夏のタイヤが10年ほどとされているのに対し、スタッドレスは約3~4年が目安です。
この記事では、スタッドレスタイヤの寿命や交換時期の見分け方、寿命をなるべく長持ちさせる方法などを解説していきます。適切な時期にタイヤ交換をして、安心安全なカーライフを送りましょう。
スタッドレスタイヤの寿命と交換時期の目安
スタッドレスタイヤをはじめとする冬用タイヤの寿命は、製造からおよそ4年ほどと言われています。交換時期も、新品での使用開始から3~4シーズンほどが目安。
しかし実際には年数ではなく、タイヤ製作メーカーが推奨している使用限度を守ることが大切です。車の使用環境や走行距離によっては、4年よりも寿命が短い場合もあるので注意してください。
法律上、溝の深さが1.6mm未満のタイヤは使用禁止
ドライバーならご存じの方も多いかもしれませんが、夏タイヤも冬タイヤも「タイヤの溝の深さが1.6mm未満の箇所がある場合は使用禁止」です。もちろんスタッドレスタイヤも、この法律は適用されます。
タイヤが使用限度を迎えると「スリップサイン」という目印が現れます。もしスリップサインが1か所でも出ている状態で走行すると、「整備不良」として罰せられることになるので注意してください。
スリップサインはあくまで限界ギリギリの目印なので、溝の深さが4mmを切ったあたりでタイヤ交換するのが目安です。
スタッドレスの場合は、「プラットホーム」も確認
スタッドレスタイヤの寿命を見る場合は、「プラットホーム」も確認しましょう。プラットホームは一部の海外メーカー品を除いて、ほとんどのスタッドレスタイヤで採用されています。
スタッドレスタイヤが積雪路面や凍結路面でもグリップ性能を発揮できるのは、タイヤの接地面(トレッド)にある細かな切れ込み(サイプ)のおかげ。
しかしタイヤが摩耗してトレッドがすり減ると、当然このサイプが浅くなり、除水機能やグリップ性能が落ちてしまいます。この状態で走行すると危険性が増すので、ブリジストンなどのメーカーは「50%摩耗したときに交換」することを推奨しているのです。
それを確認できるのが「プラットホーム」という部分。スリップサインと同じ仕組みで、摩耗が50%を超えると現れます。
【バス・トラック運送業者の場合は確認必須】
一般の車両であれば、プラットホームはあくまで交換時期の目安です。しかし2021年1月の改正により、バス・トラック運送事業者はメーカーが推奨する使用限度(50%のすり減り)を超えた状態で走行してはいけないということが厳正化されました。そのため当該事業者は、雪道走行時のタイヤが50%よりもすり減っていないか、乗車前に必ず確認する必要があります。 |
製造年月日から4年程度経っていたら交換時期
あまり使用していない場合や、未使用で溝が十分に残っている場合でも、スタッドレスタイヤの製造から4年経っていたら使用を避けましょう。
タイヤはゴム製です。ずっと放置していた輪ゴムを想像するとわかりやすいですが、タイヤも経年劣化によってひび割れや破裂が起こる危険性があります。
おもな劣化原因は、紫外線などによってゴムが硬化してしまうこと。保管方法にもよりますが、スタッドレスタイヤが未使用であっても最大3~4シーズンまでが限界です。
タイヤの側面にある数字を見ることで、製造年を確認することができます。
スタッドレスタイヤの寿命サイン確認方法
スタッドレスタイヤの寿命を見極めることができる場所は、「スリップサイン」「プラットホーム」「製造年月日」の3つ。それぞれの確認方法を解説します。
スリップサインの確認方法
スリップサインがある場所は、上画像のように「△」マークで示されています。
上画像の赤丸で示した部分がスリップサインです。凸部がなだらかなので、プラットホームと見分けることができます。
タイヤ1周の間に4~9個付けられていますが、このうち1か所でもトレッド面と同じ高さまですり減っていたら、必ず交換しましょう。
ちなみにスタッドレスタイヤは、ノーマルタイヤと比較すると溝が深く作られています。そのためプラットホームが露出してもまだ溝が深く残っているように見えることも。
しかし溝が残っているように見えても寿命であることは間違いないので、新しいスタッドレスタイヤと交換するようにしましょう。
プラットホームの確認方法
プラットホームの目印は、スリップサインよりも内側のほうにあります。上画像の赤丸で囲った「↑」マークの位置を探しましょう。
プラットホームは、上画像のように凸部がギザギザしています。トレッド面(地面と接する面)がすり減ってくると、プラットホームと同じ高さに。
プラットホームとトレッド面との段差がないということは、新品の状態から50%以上すり減ったということなので、積雪路面や凍結路面での性能がかなり下がっている証拠です。
メーカーが推奨する使用限度に達している証拠なので、すぐに新品のスタッドレスタイヤと交換するようにしましょう。
製造年月日の確認方法
製造年月日を見るには、タイヤ側面に記載されているセリアル記号(シリアルナンバー)を確認しましょう。
上画像のように「アルファベット数文字 + 数字4ケタ」の部分があれば、そこが製造年月日を示しています。
画像のように「2120」と記載されている場合、前半の「21」は製造年の週数を表しています。後半の「20」は製造年のことで、西暦の下2桁の数字です。
つまり「2120」であれば、2020年の21週(5月頃)に製造されたタイヤということが分かります。
製造年が4年以上前だと判明した場合は、すでにタイヤのゴムから油分が揮発して硬化している可能性が高いです。ブレーキやハンドリングに悪影響を与えるので、使用を避けましょう。
100円玉で手軽にチェックすることも可能
タイヤの溝に100円玉を入れると、簡単に交換時期の目安がわかります。
100円玉に書かれている数字の「1」のほうから、タイヤの溝に差し込みましょう。このとき「1」が溝に隠れていれば、まだ溝の深さは6mm以上あります。
逆に「1」が見えている状態なら、溝は残り約5mm。タイヤ交換を安全にできるタイミングは約4mm前後までなので、そろそろ交換時期です。
スタッドレスタイヤの寿命は、走行距離では判断しづらい
スタッドレスタイヤの寿命を走行距離に換算すると、1万~1.5万kmほどと言われています。実際に計算してみると、往復30kmの雪道を1シーズン4カ月にわたって走り続けると、3年で10,800kmになる計算です。
ふだんの走行距離がもっと長い場合には、3シーズン未満で交換時期がくる可能性もあるので、上記の計算を目安にしてみてもよいでしょう。
しかしタイヤの寿命を、走行距離だけで判断するのは避けるのが無難です。タイヤが摩耗するスピードは使用状況によって大きく変わります。
とくにスタッドレスタイヤの接地面はノーマルタイヤと比べて柔らかく、耐久性が低いのが特徴。負荷の大きい状況下では走行距離が短くても劣化するため、スタッドレスタイヤのプラットホームを目視で点検するのがおすすめです。
スタッドレスタイヤの劣化・寿命は性能にどのような影響を与える?
スタッドレスタイヤの性能は、「ライフ性能」と「効き持ち性能」との2つに分けることができます。
摩耗によって訪れるタイヤとしての一般的な寿命は「ライフ性能」、そして走行の快適さという面でみた寿命は「効き持ち性能」です。
スタッドレスタイヤのライフ性能の寿命がまだでも、「ブレーキがききにくい」「ハンドルが取られる」など、効き持ち性能に影響がある場合はタイヤ交換をしましょう。
雪道での性能低下
スタッドレスタイヤの効き持ち性能が下がってくるのは、ゴムの硬化が進んでいくタイミングです。
スタッドレスタイヤは、地面と接する部分(トレッド面)のゴムがとても柔らかく作られています。そのため車の重量がかかると、接地面が伸びて広くなり、雪道や凍結路面でも十分に摩擦が起こるのです。
しかし経年劣化によってゴムの油分が揮発すると、タイヤが硬くなって接地面積を広げる性能が落ちてしまいます。その結果、路面との密着力が弱くなるので、雪上や氷上でスリップしやすくなるのです。
バースト(破裂)する危険性がある
タイヤは劣化すると無数の亀裂が入ります。とくにスタッドレスタイヤの場合は素材が柔らかいので、バースト(破裂)する可能性が高くなるのです。
また亀裂が進行して深くなると空気が漏れたり、タイヤが変形したりする恐れも。使用状況によって亀裂の入り方や度合は異なりますが、4年を経過したタイヤは定期的に点検することをおすすめします。
劣化状況によっては、急ブレーキや急ハンドルをすることで溝がすり減り、そこから亀裂が入ることも。タイヤの状態確認も大切ですが、安全運転を心がけることもタイヤの効き持ち性能を伸ばします。
スタッドレスタイヤの寿命を長持ちさせるコツ
スタッドレスタイヤを少しでも長持ちさせるコツをご紹介します。定期的にタイヤの位置交換をしたり、空気圧を適正に保ったりする対策が有効です。
長持ちのコツ①:空気圧を適正に保つ
タイヤの空気圧が低すぎる状態だと、タイヤの接地面が激しく変形してしまうため、タイヤの両肩部分がはやくすり減ってしまいます。
また空気圧が高すぎても、タイヤの中心部だけが接地面になってしまうので、そこだけ摩耗が早まるのです。
このように部分的にかたよってタイヤがすり減ることを、偏摩耗(へんまもう)と言います。偏摩耗を起こすと寿命が短くなったり、振動・騒音が発生したり、排水性が落ちたりといった影響が考えられます。
そのためスタッドレスタイヤを長持ちさせるには、常に適正な空気圧をキープすることを心がけましょう。タイヤは風船などと同じように空気が勝手に抜けてしまうので、1ヶ月に1回は空気圧をチェックすると安心です。ガソリンスタンドに寄った際にお願いしてみましょう。
長持ちのコツ②:ローテーションをする
タイヤは車に履かせる位置によって負荷のかかり方が違います。たとえば前に付いているタイヤと後ろに付いているタイヤとでは、摩耗のスピードや偏りが異なることも。
それを防ぐためには、履き替えや車の点検・車検などのタイミングでタイヤのローテーション(位置交換)をするのがオススメ。
4つのタイヤの位置を入れ替えることで、劣化や摩耗具合をある程度均等にすることができます。新しいタイヤを用意せずに対策でき、3,000円前後で依頼することが可能です。
ただし回転方向・左右が決まっているタイヤもあるので、もし自分でやる場合は逆向きに履かせてしまわないように注意しましょう。タイヤ側面を見れば、回転方向を示す矢印が付いています。
長持ちのコツ③:正しい方法で保管する
冬のシーズンが終わり、ノーマルタイヤに履き替えた後の保管方法にも注意が必要です。
- 横向きに寝せて保管する
- 直射日光や雨水が当たらないように、タイヤカバーをかける
- 石油や灯油から離れた場所に置く
- ストーブなどの熱源から離れた場所に置く
これらを守ることで、タイヤの劣化を防ぎましょう。タイヤはゴム製品なので、紫外線やオゾン、油類などは劣化を招いてしまいます。
またシーズンが終わったタイミングで、スタッドレスタイヤを洗ってから保管するようにしましょう。油分などを落とすことで、劣化を防ぎます。ただし洗剤を使うとタイヤに傷がついて「劣化防止剤」まで流してしまうので、ブラシで水洗いするのがオススメです。
保管場所は屋内の冷暗所がベストですが、屋根のない屋外で保管する場合は必ずタイヤにカバーをかけましょう。
長持ちのコツ④:「急」が付く運転をしない
スタッドレスタイヤで雪道を走行するとき、「急発進」や「急ブレーキ」「急旋回」をしないように注意しましょう。
いずれもタイヤに余分な負荷がかかり、摩耗が早まる原因になってしまいます。安全運転を心がけることで、タイヤの長持ちにもつなげましょう。
長持ちのコツ⑤:夏はノーマルタイヤに履き替える
夏にスタッドレスタイヤを使っても問題ありませんがおすすめできません。前述の通りスタッドレスタイヤはノーマルタイヤと比べて柔らかいため、消耗が早いです。つまり寿命が早まるということ。
そのほかにも以下のようなデメリットがあります。
- ノーマルタイヤと比べて燃費が悪い
- 乾いた路面、濡れた路面などでの走行性能が悪い
雪道以外での性能はノーマルタイヤの方が高いので、春になったら早めに履き替えるようにしましょう。
なかにはそろそろ寿命を迎えそうなスタッドレスタイヤを、夏のシーズンにそのまま使用して履きつぶすという方もいるでしょう。そうすると1シーズン分の夏タイヤの消耗を抑えることができます。
しかし劣化状態によっては危険が伴うので要注意。前述のスリップサインの露出や深い亀裂が入っていないかを確認し、夏タイヤとしての使用が可能か必ず確認しておきましょう。
また費用面でも燃費が悪くなってガソリン代がかさむことを考慮すると、そこまで大きなメリットはありません。
スタッドレスタイヤを交換・履き替えするときの注意点
「スタッドレスタイヤを新しいものに交換しよう」という方に、知っておいていただきたい注意点を解説します。
履き替えのタイミングは雪が降る1か月前
スタッドレスタイヤに履き替えるタイミングの目安は、例年雪が降りだす時期の1か月前です。できるだけ早いタイミングで、余裕を持って履き替えておきましょう。
スタッドレスタイヤが必要なシーズン(11月末~12月にかけて)になってくると、どこの業者にも交換や履き替えの予約が殺到します。新品に交換する人も多いので、人気の銘柄は欠品してしまうことも。
さらに問い合わせても「すでに予約で埋まっており断られてしまった」というケースも珍しくありません。特に予約が集中するのは、シーズン始めの天気予報で雪マークが付いたタイミングです。
新品のスタッドレスタイヤは、慣らし運転するとベター
新品のスタッドレスタイヤには、表面に薄皮が張っています。この薄皮をあえて摩耗することで、氷雪上での走行がより快適になるのです。
国産メーカーであれば、ほとんどの製品は表面に微細な溝をつけることで、新品のまま雪道を走行しても十分な性能を発揮できるようになっています。しかしやはり薄皮の下にあるトレッドゴムのほうが、氷雪上での性能は上がるのです。
雪が降るよりも少し早めに履き替えておいて、乾いた路面で100~150km程度の慣らし運転しておくのをオススメします。
またドライバーにとっても、運転の感覚をつかむという点で慣らし運転は大切です。ノーマルタイヤとスタッドレスタイヤとでは素材の柔らかさがかなり違うので、当然ブレーキの利きやハンドルの切りごたえも、感覚をつかむまでに時間がかかります。
いざ雪が積もったときにある程度慣れた状態で運転できるので、こちらもメリットのひとつと言えるでしょう。
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この記事では、スタッドレスタイヤの寿命について紹介してきました。「スリップサイン」「プラットホーム」「製造年月日」という3つの観点で寿命を見極め、適切な時期に交換しておきましょう。
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