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【パソコンの減価償却】価格帯別に解説!耐用年数と計減価償却費の計算法

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最終更新日: 2024年01月16日

個人事業主はパソコンを仕事で使用することが多いでしょう。そんなパソコンを経費にできるのは知っているけど「どうやってパソコンを減価償却すればよいのか」疑問に思う方も多いのではないでしょうか?

10万円未満のパソコンであれば「消耗品費」として一括で経費計上できますが、10万円を超えると分割して少しずつ経費計上する減価償却が原則必要です。

しかし、特例や制度を活用すると10万円以上のパソコンでも一括で費用計上が可能となる場合もあるんです。

本記事では「パソコンの減価償却方法」を中心に、毎年の減価償却費の計算方法や仕訳例を価格帯別に解説します。

この記事を監修した税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

パソコンの減価償却とは|取得価額と耐用年数がポイント

パソコンを操作しながら微笑む女性

10万円未満のパソコンは消耗品として一括経費に計上できますが、10万円以上のパソコンは減価償却を行なって少しずつ経費に計上します。

サーバーとして使用するパソコンは5年それ以外の用途で使用するパソコンは4年にかけて、使い始めたときから月単位で償却を行ないます。

減価償却の際、パソコン本体の購入代価に加えて、周辺機器の代価や付随費用を合算して取得価額を算出するのがポイントです。

パソコンの取得価額が異なると減価償却の要否や使用できる制度が変わるため、適切に算出することが大切です。

パソコンの法定耐用年数

省令で定められている固定資産の使用可能な期間を「耐用年数」といいます。

サーバーとして使用するパソコンの耐用年数は5年で、それ以外の用途で使用するパソコンの耐用年数は4年と定められています。

デスクトップとラップトップの区別はされておらず、サーバーとして使用していない場合、どちらの耐用年数も4年です。

実際のパソコンの寿命は約10年と言われていますが、実際は3~4年に一度のソフトウェアバージョンアップのタイミングで買い替えることが多いため4、5年の耐用年数となっているのです。

そのため、パソコンの耐用年数4年は実情とあまり乖離しない年数と言えるでしょう。

減価償却の仕組み

減価償却とは取得した固定資産を使用可能な耐用年数で分割して経費にしていく方法です。

10万円以上のパソコンは固定資産として扱われるため、経費計上するには原則、減価償却が必要です。購入した年にすべて経費にすることはできません。

耐用年数は省令で定められており、購入した金額(取得金額)と耐用年数をもとに減価償却をして「減価償却費」という経費を計上します

取得価額の算出方法

キーボードやマウス・ヘッドホンなどパソコンの周辺機器
パソコンの周辺機器代も取得価額に含める!

パソコンの減価償却における取得価額は以下の計算式で求めます。

取得価額=購入代価+付随費用

※付随費用:購入手数料、運送料等

なお取得価額は商品の購入価格とは異なり、1台を1単位として数える点に注意しましょう。

例えば7万円のパソコンを5台まとめて購入した場合、35万円でなく7万円が1単位の取得価額となります。

取得価額に含めるもの

パソコン本体に加えてモニターやソフトウェア等、以下のような周辺機器を購入する場合もあるでしょう。

これらをパソコン本体と一緒に購入した場合、パソコンの取得価額に含めて計上・減価償却を行ないます。

【取得価額に含める周辺機器の例】

  • モニター
  • キーボード
  • マウス
  • ソフトウェア
  • ウェブカメラ
  • マイク
  • USBメモリー

例えば、パソコンに加えて以下の周辺機器等を購入したとします。

  • パソコン本体:70,000円
  • ソフトウェア:20,000円
  • モニター:20,000円
  • キーボード:5,000円
  • 送料・購入手数料:5,000円

この場合の取得価額は「70,000円+20,000円+20,000円+5,000円+5,000円=120,000円」です。

税込み・税抜きどちらで記帳する?

会計処理には消費税込みの金額で処理を行なう「税込経理」と、仮受消費税・仮払消費税という科目で税抜処理を行なう「税抜経理」があります。

どちらの経理処理で記帳するかは事業者が選択することができますが、一度決めた方法を途中で変更することはできません。

預かった消費税から支払った消費税を差し引いた消費税を納税するという消費税のシステム上「税抜経理」を採用する方が自然な会計処理です。

また、「税抜経理」を行なうことで、固定資産の取得価額の金額判定が「税抜価額」で判定されます。

税込10万円を超えていても、税抜で10万円未満であれば一括経費計上ができるので「税抜経理」の方が有利になることもあります。

関連記事:パソコンの経費計上|仕訳での勘定科目、10万円以上のものの処理方法を解説|ミツモア

【10万円未満のパソコン】減価償却は不要

パソコンの前でバツのポーズを取る男性
10万円未満のパソコンは減価償却しなくていい!

取得価額が10万円未満のパソコンは減価償却をする必要がありません。

固定資産として扱わず「消耗品費」として購入時に一括で経費に計上することができます。

1年間に全額を費用計上できるので、その年に限定すると節税効果は最大になります。

しかし消耗品費に算入することは義務ではありません。固定資産や一括償却資産として計上し、減価償却する処理も認められています。

購入年度に利益が出ていない場合や、実際の利用期間に合わせて費用計上をしたい場合は減価償却するのがおすすめです。

【10万円以上のパソコン】原則減価償却で処理

パソコンの前でお金を数える男性

取得価額が10万円以上のパソコンは原則として減価償却が必要となります。

しかし取得価額が30万円未満であれば、一括での費用計上や短い期間での減価償却ができる場合もあります。

取得価額 減価償却 一括償却資産 少額減価償却資産の特例
10万円以上20万円未満
20万円以上30万円未満 ×
30万円以上 × ×

正しい知識を身に付け、自分は特例や制度を活用するべきか否かを判断することが大切です。

20万円未満のものは短い期間で減価償却も可能

取得価額が20万円未満のパソコンは「一括償却資産の3年均等償却」を用いれば、3年で減価償却を終えることもできます。

一括償却資産の3年均等償却とは、資産の耐用年数に関わらず3年間で均等に固定資産を償却ができる制度です。

当制度は白色申告でも活用ができ本来の耐用年数よりも短い期間で償却可能なため、1年で少しでも多くの額を費用計上して節税したい方におすすめ。

また固定資産税に含まれる償却資産税の対象外となる点も魅力です。

一方で一括償却資産に計上した資産を売却や除却した場合でも、売却損等に算入できない点に留意しましょう。

一度計上したら強制的に3年間の均等償却となります。

30万円未満のものは特例で一括計上ができることも

30万円未満のパソコンは「少額減価償却資産の特例」を用いて一括で減価償却することが可能です。

取得価額が10万円から20万円であれば、3年での均等償却か一括での償却を任意に選択できます。

利用できるのは青色申告者に限定されていますが、1年で全額費用計上できるため大きな節税対策となります。

しかし、一括償却資産とは異なり一定の制限がある点に注意が必要です。

【少額減価償却資産の特例の規制】

  • 青色申告個人事業主または青色申告書を提出する中小企業者等が対象
  • 適用できる資産は年間300万円まで
  • 固定資産税(償却資産税)が課される

なお、少額減価償却資産の特例は現時点で令和6年3月までの制度となっている点に留意しましょう。

30万円以上のものはすべて減価償却

30万円以上のパソコンは「一括償却資産」や「少額減価償却資産の特例」の対象外なので、会計処理は減価償却一択です。

30万円以上のパソコンの購入は全て通常の減価償却資産として、決められた耐用年数で減価償却を行なわなければなりません。

パソコンの減価償却方法・仕訳例【定額法・定率法】

パソコンを使いながら資料を確認する女性

パソコンの減価償却方法は「定額法」と「定率法」の2つです。一般的に個人事業主は定額法、法人は定率法を使います。

定額法は毎年一定の額で償却する一方、定率法は毎年異なる額を経費計上していきます。

いずれの方法で減価償却するにせよ、取得時と減価償却費の計上時に仕訳をする必要があります。そのため自身が使用するべき減価償却の方法と仕訳方法を理解し、会計処理に活かしてください。

定額法

「定額法」とは毎年定額を減価償却費として計上する減価償却の方法です。

定額法での減価償却費=取得価額÷耐用年数

例えば業務用で40万円のパソコン(耐用年数4年)を現金で購入したとします。

【購入時の仕訳】

借方 貸方 概要
器具備品 400,000 現金 400,000 パソコン

【減価償却時の仕訳】

借方 貸方 概要
減価償却費 100,000 器具備品 100,000 減価償却費の計上

2年目以降も1年目と同様、100,000円ずつ減価償却費として計上していきます。

なお年の途中でパソコンを購入した場合は、その年の減価償却費が月割で計上される点に留意しましょう。

また、個人事業主であっても「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」を提出すれば定率法が使用可能です。

定率法

パソコンを定率法で減価償却する際は以下の計算式で減価償却費を求めます。

減価償却費=未償却残高×償却率(A)

償却保証額=取得原価×保証率(B)

  • A>Bの場合は、Aの金額が減価償却費となります。
  • A<Bの場合は、はじめてA>Bになった年の期首未償却残高×改定保証率

※最終年度は未償却残高を1円残して全額償却(備忘価格)

定率法は、定額法に比べて早い時期に多くの減価償却費を計上することができますが定額法に比べて計算が複雑になります。

耐用年数
4年 5年
定率法の償却率 0.5 0.4
改訂償却率 1.000 0.5
保証率 0.12499 0.10800

一般的な用途のパソコンの耐用年数は4年のため、償却率は0.5となり1年目の減価償却で半分が経費に計上可能です。

パソコンの減価償却で知っておくべきポイント【中古品・修理代・プライベート兼用】

パソコンの内部をメンテナンスする男性
パソコンの修理代も経費にできる!

一概に「事業用のパソコン」と言っても実態は個々によります。中には「中古のパソコンを取得」「私用と兼用する」という方もいるでしょう。

そんな方は以下のポイントを知っておけば会計処理もスムーズになります。

  • 中古のパソコンは見積もり耐用年数で減価償却する
  • 20万円未満の修理代は全額経費にできる
  • プライベート兼用のパソコンは仕事で使う分だけ経費になる
  • 未使用のパソコンは減価償却資産にならない

中古のパソコンは見積もり耐用年数で減価償却

中古のパソコンを購入した場合は購入前に使用されていた期間を踏まえて耐用年数を求め、減価償却を行なう必要があります。

【中古パソコンの耐用年数】

耐用年数≤経過年数の場合 法定耐用年数×20%
耐用年数>経過年数の場合 法定耐用年数-経過年数+(経過年数×20%)

1年未満の部分は切り捨てで、2年未満と計算された場合は耐用年数を一律2年とする点に注意してください。

例えば法定耐用年数が4年で、6年使用されている中古のパソコンを購入したとします。

この際の耐用年数は「4年(法定耐用年数)×20%=0.8年」で2年未満の結果になるので、耐用年数は「2年」です。

一方、購入時に1年だけ使用された中古のパソコンで考えてみましょう。この場合の耐用年数は「4年(法定耐用年数)-1年+ 1年×20%=3.2」で「3年」となります。

20万円未満の修理代は経費にできる

修理をして使い続ける場合、通常の維持管理にかかる費用が20万円未満であれば修繕費として全て経費にすることができます。

機能が高いパーツに交換することでそのパソコンの価値が上昇する場合は資本的支出として資産計上を行ない、原則的に減価償却の対象になります。

しかし、資本的支出が20万円未満であれば減価償却は不要で、すべてその年の経費に計上可能です。

事業とプライベートどちらでも使うものは按分する

パソコンで動画配信を楽しむ女性
プライベートで使う分は経費にならない!

仕事だけでなく私用としてもパソコンを使用する場合は、仕事で使う分だけを経費計上します。

すべての使用量のうち、事業用の割合を求めて経費計上することを「按分」と言います。

例えば仕事と私用の使用割合が50%ずつで、年間の減価償却費が10万円である場合で考えてみましょう。

10万円のうち仕事で使用した部分(50%)のみを減価償却費とするため、5万円が事業での費用となります。

按分の方法は特段の決まりがありません。「使用日数」「使用時間」等、税務署に理論的に説明できる根拠を用いることが大切です。

未使用のパソコンは減価償却資産にならない

未使用のパソコンは減価償却資産になりません。年末セールなどでパソコンを購入し、箱を開封しないまま年を越してしまうと、そのパソコンは減価償却することはできません。

未使用のパソコンは「器具備品」の勘定科目ではなく「貯蔵品」という科目で会計上計上されます。

固定資産は事業に使用した時点から、減価償却の対象となる点に注意しておきましょう。

監修税理士からのコメント

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

パソコンはどなたでも事業に使うものでしょう。全く経費に入れられていない方などは非常に勿体ないので、今回の記事を読んで適切に経費に計上するようにしましょう。

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個人事業者のパソコンの減価償却は決して複雑なものではありません。

しかし、事業の利益を考えながら、どの費用(パソコン購入費用など)を資産計上し、どの費用を一括して経費にするかを判断することは税金の専門家の税理士ではないと難しいです。

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この記事の監修税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

安田亮(公認会計士・税理士・CFP🄬)1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格、2010年京都大学経済学部経営学科卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応等を経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。所得税・法人税だけでなく相続税申告もこなす。