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【税理士監修】法人税の還付金の仕訳方法|申告の流れも解説

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最終更新日: 2024年01月16日

法人税の還付金が発生した場合、適切な勘定科目を選択して正確に仕訳をする必要があります。

この記事では仕訳方法について具体例を用いて解説するほか、どのような場合に還付金が生じ、いつ申告を行う必要があるのかについても説明します。仕訳方法や年間の法人税の申告納付スケジュールを押さえて、業務をスムーズに行いましょう。

この記事を監修した税理士

京浜税理士法人 横浜事務所 - 神奈川県横浜市青葉区青葉台

 

法人税の還付金の仕訳方法

還付の仕訳方法の画像
(画像提供:PIXTA)

法人税の還付金の仕訳には主に次の3つのケースがあります。

  • 中間申告で納付した税金が還付される場合の仕訳
  • 確定申告時に見込納付した税金が還付される場合の仕訳
  • 還付加算金を受け取った場合の仕訳

正しい仕訳のためにも、それぞれの違いや具体例を交えながらやり方を解説します。

中間申告で納付した税金が還付される場合の仕訳

年度末の確定申告において、決定した税額が中間申告時に納付した金額よりも少ない場合は、その差額が還付されます。したがって、中間納付時には「税金を仮に支払う」という点を踏まえて「仮払法人税金等」に計上するケースが多いです。

その後、確定申告により年間の税額を確定することで、還付予定の金額を算出し「未収還付法人税等」に計上します。決算日後に実際に還付金を受領したら、この「未収還付法人税等」を現金預金勘定に振替えます。

例として中間納付時に300万円の仮払法人税を支払い、決算において確定した法人税の税額が180万円であったため、120万円が還付される場合を見ていきます。

【中間納付時】

借方 貸方
仮払法人税等 3,000,000 現金預金 3,000,000

【決算時】

借方 貸方
法人税等 1,800,000 仮払法人税等 3,000,000
未収還付法人税等 1,200,000

【翌期の還付時】

借方 貸方
現金預金 1,200,000 未収還付法人税等 1,200,000

確定申告時に見込納付した税金が還付される場合の仕訳

ここでの還付金は見込納付により納めた税額が確定額よりも多かったことにより後日返還されるというものです。

見込納付で200万円を納付したが、確定税額が180万円のため、20万円が還付されたというケースを見ていきます。

【決算時】

決算では、法人税等として200万円を計上します。

借方 貸方
法人税等  2,000,000 未払法人税等   2,000,000

【翌期の見込納付時】

見込納付にて、決算時の計上に基づき法人税200万円を納付します。

借方 貸方
未払法人税等  2,000,000 現金預金  2,000,000

【翌期の還付時】

見込納付後に提出した確定申告書では法人税が180万円となったため、20万円が還付されました。還付時の仕訳は法人税等のマイナスになります。この場合、税務調整は別表4で減算となります。

借方 貸方
現金預金     200,000 法人税等   200,000

還付加算金を受け取った場合の仕訳

還付加算金は受取利息ではなく雑収入に計上します。還付加算金が5万円あった場合の仕訳は下記の通りです。

借方 貸方
現預金 250,000 法人税等 200,000
雑収入 50,000

還付金の種類

還付の画像
還付金の種類(画像提供:PIXTA)

支払いすぎた税金に対して返金されるものが還付金ですが、還付金にはいくつかの種類があります。

「還付金」「過誤納金」「還付加算金」の3種類は覚えておくと良いでしょう。国税の還付における法律は国税通則法でまとめられており、同法によると還付金と過誤納金はひとまとめで還付金等とされることが多いです。

還付金と過誤納金

国税の還付には「還付金の還付」と「過誤納金」の二種類があります。この2つを合わせて「還付金等」と呼ばれ、国税通則法でまとめられるようになりました。

還付金は下記のような条件で発生します。

  • 中間納付の還付金
  • 欠損金繰戻還付
  • 災害等による還付
  • たばこ税などによる還付

一方で過誤納金が還付される条件は以下のようになります。

  • 過納金
  • 誤納金

「過誤納金」は納付すべき原因がないにも関わらず納付された金額のことを指します。言い換えると不当利得に係る返還金です。このような還付金等を還付する場合には、原則金銭での還付ですが、未納国税がある場合には「充当」という形をとります。

過納金は減額更正や裁決などにより国税が消滅したとき、誤納金は納付されたが、これに対応する国税債務がないときに発生します。

還付加算金

還付加算金は国税の支払いが遅れた場合に発生する延滞税の反対の位置づけになります。還付加算金とは、納め過ぎた税金の納付期限日等の翌日から還付金の支払い決定までの日数に応じて加算される金額のことです。利息として認識されることが多い還付金と言えるでしょう。

還付加算金は還付金と一緒に入金されるといった特徴があります。そのため、還付金が入金された場合には、内訳を確認し、還付加算金については雑収入として営業外収益にするのが良いでしょう。ちなみに還付加算金は非課税取引となります。

参考:延滞税の割合|国税庁

法人税が還付されるケース

還付される理由の画像
法人税が還付されるケース

還付金等は、還付金と過誤納金の2種類あります。過誤納金のうち、誤納金はよく起こりますが、過納金は減額更正や不服審査の裁決によって取消等がなされ税額が還付されるもので、あまりよく起こるケースとはいえません。では還付金等についてはどうでしょうか?起こりがちなケースを取り上げて解説します。

中間申告で多く納めていた場合

法人税は事業年度の中間に、中間納付をすることとなっています。中間納付制度は、納税者の負担軽減を目的とし、国や地方自治体などにとっては均等化され安定した税収が見込める制度です。

中間納付には2通りの方法があります。前期の納税額の1/2を納税する方法(前期実績よる場合)と事業年度の中間に中間決算(仮決算)を行い、その中間決算に基づいて申告する方法です。

どちらの方法で納付しても、確定申告する税額よりも中間納付額のほうが多いケースが発生します。例えば、前期は黒字で当期は赤字の場合などです。

このような場合は税金を払いすぎているため、中間申告で納付した法人税は還付されます。

申告期限延長後の見込み納付金が確定金額と差がある場合

確定申告の期限は決算日から2カ月以内ですが、申告期限の延長手続きによって決算日から3カ月以内とすることができます。しかし、申告期限の延長を行っても税金の納付期限は延長されません。そのため決算日から2カ月以内に税金を納めないと、利息の性質をもつ利子税が課されます。

2カ月経過時点では納付すべき税金の額が固まっていないケースがあり、その場合は「見込納付」により概算額を納付します。この見込納付の金額が確定納付額より上回った場合、払い過ぎた法人税は還付されます。

例えば、3月末決算の法人で6月に株主総会を予定している場合、確定申告書の提出のためには、株主総会での決算報告書の承認を待たなくてはいけません。そこで、確定申告については申告の期限延長をしておき、納付については5月末までに法人税の「見込納付」をするというケースです。

災害によって損失を出してしまった場合

法人税には、災害によって被害を受けた法人については、災害により滅失・損壊した資産の損金算入を認める等の規定があります。災害による災害損失金がある場合には、中間納付の法人税額から控除しきれなかった金額について、その災害損失金額を限度に還付を受けることができます

つまり、中間納付で支払った法人税だけでは足りず、前期支払済みの法人税の還付を受けるということです。この場合は、申告時に欠損金の繰戻還付請求書を提出します。

また、還付金のたばこ税などに係る還付というのは、たばこなど国内で特殊な税金がかかる課税済み物品を輸出した場合に税金が還付されるものです。

欠損金が生じた場合

欠損金額とはその事業年度の課税所得がマイナスになった時の絶対値を指します。生じた欠損金額は翌事業年度以降に繰り越したり、前期に繰り戻して法人税額の還付請求をすることも可能です。

事業プランに合わせて臨機応変に対応するようにしてください。青色申告法人の確定申告書を提出する事業年度で生じた欠損金額があるなら、欠損事業年度から1年以内に開始したいずれかの還付所得事業年度の所得に対する法人税額の還付を請求することができます。

事業年度が1年である通常の法人なら、前期に繰り戻して還付の請求が可能です。

法人税が還付されるまでの確定申告の流れ

確定申告書の画像
法人税が還付されるまでの確定申告の流れ

法人においては、月次の処理を実施しながら、中間申告、決算、確定申告、納付などの各イベントについて、資金繰りを調整しつつ進めていかなければなりません。決算から、還付を受けるまでの実際の申告スケジュールについて、1年間に想定されるイベントを場合分けして考えてみましょう。

企業の1年間の確定申告までのスケジュール

一般に、企業の期首から確定申告までの手順としては、次のようになります。

税納付の年間スケジュール
一般的な企業の年間スケジュール

当事業年度のみを考えたときでは、まず期首から6か月を過ぎた日から2か月以内に中間申告・納付があります。ただし、中間決算を前期実績による場合としたときは、中間申告書の提出は省略可能です。

一般的に確定申告の延長と見込納付が必要になるケースが多い

確定申告について申告期限の延長を行っている場合は上記に加えて、見込納付や還付が想定されます。

申告期限延長後 見込納付し、還付がある場合の年間スケジュール

申告期限の延長申請については、最初に適用を受けようとする事業年度終了の日までに提出すれば、以後は提出不要です。実際には前期と当期の処理が重なっているので、申告期限を延長した場合のスケジューリングは必須となります。所得金額の変動によって、毎年スケジュールは異なってくるので、決算の際には申告スケジュールの見直しは大切です。

なぜ延長申請後に見込み納付をするのか

ここで、なぜ延長申請をしたのに見込納付をするのかという疑問を持たれる方もいるかと思います。

それは、法人税法75条の確定申告書の提出期限の延長の特例は、あくまでも法人税の確定申告書の提出期限についての特例であり、「納付」の特例ではないからです。

そして国税通則法では、納税申告書の提出期限の延長に係る国税については、その期間中、各税法の規定によりその国税にあわせて「利子税」を納付しなければならないとしています。つまり、申告期限を延長したので、その間はペナルティである延滞税を支払わなくてよいが、代わりに利子税なるものを支払わなければならないのです。

したがって、多くの法人ではこの利子税の支払いを回避するために、「見込納付」で先に税金を納めておき、払い過ぎた税金は、その後還付で戻してもらうのです。このとき、還付加算金もついてきます。

欠損金の繰戻し還付制度

欠損金の繰戻し還付制度

欠損金額が生じた場合、前期に繰り戻して、法人税額の還付を請求できます。欠損金の繰戻し還付制度を用いて少しでも税金を取り戻しましょう。

欠損金の繰戻し還付による仕訳方法

欠損金の繰戻し還付を受ける場合、仕訳は「請求を行った年度」と「請求の翌年度還付時」の2回行う必要があります。

欠損金の繰戻し還付請求を行った事業年度の仕訳

  1. 借方には還付される法人税額を未収還付法人税等または未収入金として記帳する
  2. 貸方には中間申告で納付した中間納付額を仮払法人税等として記帳する
  3. 差額を雑収入として貸方に記帳する

中間納付額がない場合は借方の未収還付法人税等と貸方の雑収入の金額が同額になります。

【仕訳例:還付される法人税額が120万円で、中間申告時に40万円納付していた場合】

借方 貸方
未収還付法人税等 1,200,000 仮払法人税等 400,000
雑収入 800,000

翌事業年度に法人税が還付された時の仕訳

  1. 借方には還付された法人税額を現金預金として記帳する
  2. 貸方には請求した事業年度に借方に記帳したものと同額の未収還付法人税等または未収入金として記帳する

還付加算金がある場合は非課税取引となるので雑収入として記帳します。

【仕訳例:法人税額120万円が還付された場合】

借方 貸方
現金預金 1,200,000 未収還付法人税等 1,200,000

還付金額の計算方法

還付金額の計算方法

法人税が300万円、還付事業年度の所得が1,500万円、欠損事業年度の欠損金が900万円を例にすると還付金額は以下のように計算できます。

300万円×(900万円÷1,500万円)=180万円

ただし、欠損金額が所得金額を超えた場合は、欠損金の繰越控除制度を利用して翌期以降の9年間を上限に繰り越すことが可能です。

対象となる法人

  • 青色申告書を提出する法人
  • 災害損失欠損金を有する法人

青色申告書を提出する法人

青色申告法人の場合は、還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度までの各事業年度について連続して青色申告書である確定申告書を提出している必要があります

また、欠損事業年度の青色申告書である確定申告書をその提出期限までに提出、同時に欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出しなければ対象にはなりません。

災害損失欠損金を有する法人

災害損失欠損金を有する法人の場合は、還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度までの各事業年度について連続して確定申告書を提出していることが必要条件となります。

また、欠損金繰り戻し還付制度の対象となるためには欠損事業年度の確定申告書又は仮決算による中間申告書を提出し、同時に欠損金の繰戻しによる還付請求書も提出しなければなりません。

新型コロナ税特法の特例で対象法人が拡大

令和2年2月1日から令和4年1月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額については、通常の対象法人が拡大しました。

拡大した対象法人の例

  • 大規模法人
  • 大規模法人との間にその大規模法人による完全支配関係がある普通法人
  • 100%グループ内の複数の大規模法人に発行済株式又は出資の全部を直接又は間接に保有されている普通法人
  • 投資法人
  • 特定目的会社

大規模法人の定義としては、資本金の額又は出資金の額が10億円を超えている、相互会社及び外国相互会社、受託法人が該当します。

制度利用の注意点

欠損金の繰戻し還付制度を利用する際、還付請求書などの書類を提出しなければなりません。必要書類の提出に加え、申告をスムーズに進行するための注意点は以下の3つです。

  • 還付申告の期間は翌年から5年間であること
  • 更正の請求の期限も5年以内
  • 還付申告をするなら確定申告期間前後が最適

還付申告の期間は翌年から5年間であること

還付申告の期間は翌年から5年間と定められています。つまり、2022年分の還付申告の期間は、2023年1月1日~2026年12月31日ということです。

国が税金を受け取るべき金額以上に受け取りすぎている状態だと、納税者が損をしていることになります。

この5年という期間は還付申告についてゆとりを持たせるための期間として設定されました。ちなみに郵送で提出する場合は期間内の消印があれば申告可能となります。

更正の請求の期限も5年以内

更正の請求とは誤って受け取るべき還付金を少なく申告した場合に還付金の不足分を請求することを指します。更生の請求は最初の還付申告書の提出日から5年以内となっているので注意しましょう。

還付申告をするなら確定申告期間前後が最適

還付申告をするなら確定申告前後に行うのが最適です。なぜなら、このタイミングで申告をするとスムーズに申告が進行する可能性が高くなるからです。

確定申告期間中は混雑し、税務署の担当者とじっくり相談することが難しくなります。丁寧にミスなく還付申告書類を作成するなら確定申告の期限後の、シーズンオフのほうが落ち着いて相談できます。

一方、還付金を早く受け取りたいなら必要書類を揃えて、確定申告期間前の1月中に還付申告書を提出するのがおすすめです。

監修税理士からのコメント

京浜税理士法人 横浜事務所 - 神奈川県横浜市青葉区青葉台

法人税の還付時の仕訳を正しく行うためには、その還付金がどのような原因に基づいて発生したかを把握することが大切です。特に税効果会計を適用している会社では仕訳が複雑になるので、必要に応じて税理士や公認会計士といった専門家に相談するとよいでしょう。

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この記事の監修税理士

京浜税理士法人 横浜事務所 - 神奈川県横浜市青葉区青葉台

横浜市青葉区を拠点として、個人及び中小規模法人のお客様を中心に税務サービスを提供しております。 「小規模事務所ならではのフットワークの軽さ」「代表税理士の顔が見える安心感の提供」をモットーに、日々お客さんのお役に立てるよう業務に邁進しております。