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税務調査の流れ|事前通知から調査当日の流れ、異議申し立てまで

最終更新日: 2019年10月05日

税務調査どんな個人事業主、どんな法人経営者にもある日突然やってきます。

では、税務調査が行われる企業はどのような会社で、調査はどのような流れで行われるのでしょうか?突然税務調査がやってきても困ることがないように、よく理解しておきましょう。

この記事を監修した税理士

税理士法人better - 東京都中央区日本橋人形町

税理士法人better-東京都中央区 大下宏樹(おおしたこうき)代表社員 1982年香川県高松市出身。明治大学商学部卒業。会計事務所にて相続税申告業務を経験、大手監査法人勤務の後、相続税専門税理士法人better設立。 香川県で3代続く公認会計士・税理士一族の次男。3兄弟全員が同業。独自のシステムである「better相続」により、従来の高額でアナログなサービスを見直し、低額かつ定額の相続税申告を提供。

1. 準備調査|調査にいく法人や個人が選定される

サングラスをかけている男性
準備調査|調査にいく法人や個人が選定される

税務調査に入る前に、税務署は事前にターゲットにした企業の調査を行います。

税務調査により行う調査には以下のような調査があります。

机上調査 申告書に異常がないか、過去の推移や独自のデータを合わせて分析する調査
外観調査 立地条件や、車、自宅、客の出入りなどを見る調査
内偵調査  実際に店舗などに入って調べる調査。

机上調査、外観調査、内偵調査などの調査を経て、実際に税務調査を行う法人や個人事業主が選定されることになります。

飲食店などの現金商売は休日も調査されている!

「税務署の職員は公務員だから平日しか調査に入ることはない」と思っていないでしょうか?

そのようなことはありません。

飲食店などは休日の方が売上も大きいため「売上の計上が適正か」を調査するために、休日に内偵調査が行われることもあります。休日でも私服の税務調査官がいる場合があります。「休日だから大丈夫」と油断してはいけません。

飲食店などの現金商売をしているお店では「レジ打ちをしないで売上金の一部を除外する」などの不正な行為はやめましょう。

税務調査の対象になりやすい法人

では、税務調査の対象になりやすい法人とはどのような法人なのでしょう?

どのような企業が対象になるのかということについて、具体的なことを国税庁は公表していません。ただし、事業規模が大きい場合や、不動産の売買や新工場建設などの目立つ動きのあった場合は調査対象になりやすいと言われています。

ちなみに、不正発見割合の高い法人トップ5は以下の通りです。

順位 業種目 不正発見割合(%)
1 バー・クラブ 66.4
2 外国料理 48.1
3 大衆酒場、小料理 41.8
4 その他の飲食 36.2
5 土木工事 30.0

出典:平成29事務年度 法人税等の調査事績の概要 – 国税庁

やはり、売上を隠しやすい現金商売である飲食店が不正が発覚することが多い業種です。

不正発見割合の高い業種はその分税務署に目をつけられやすく、税務調査を受ける可能性が高いです。

税務調査の対象になりやすい個人事業主

では調査の対象になりやすい 個人事業主はどのような業種でしょうか?

個人事業主は法人よりも税務調査を受ける確率は低いです。また、現金商売で売り上げが極端に伸びた個人事業主なども調査される可能性は高まります。

個人の申告漏れの割合が高いトップ5は以下の通りです。

順位 業種目 不正発見割合(%)
1 キャバクラ 93.7
2 風俗業 89.7
3 バー 71.7
4 人材派遣 65.8
5 ダンプ運送 64.5

出典:事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種-国税庁

不正発見割合、申告漏れ金額、そして売上高も大きい業種の個人事業主は税務署に目をつけられやすくなります。よって、税務調査への対策はしっかりとしておく必要があります。

2.事前通知|税務調査には通知がないこともある

事前通知|税務調査には通知がないこともある
事前通知|税務調査には通知がないこともある

税務調査の対象になった法人経営者や個人事業主には原則電話で事前通知が行われます。

しかし、事前通知をして、証拠を隠されてしまう可能性がある場合には必ず事前通知が届くわけではありません。

事前通知なしに、突然税務署が調査に来る場合はどのようなケースなのでしょうか?また、税務署から届く事前通知にはどのような内容が記載されているのでしょうか?

強制調査は事前通知が来ない

強制調査が行われる場合には事前通知は届きません。

強制調査とは、申告漏れが巨額で、隠蔽などの不正がある場合に行われる調査で、一般人にはあまり関係がありません。

ドラマなどで会社中をひっくり返して調査を受けているシーンを見たことがある人も多いかもしれません。強制調査があのような調査で、実際には全体の1%にも満たない割合でしか行われません。

任意調査にも必ず通知が来るわけではない

任意調査では基本的には2週間ほど前に通知があります。ただし、飲食店などの現金商売は事前通知なしで任意調査が来ることが多くなります。

アポなしでの任意調査を求められた際は、言われるがままに税務調査官を中に入れるのではなく、顧問税理士に連絡をした後に対応した方がよいでしょう。

任意調査とはいえ、税務調査を完全に拒否してしまうと「1年以下の懲役または50万円以下の罰金(国税通則法127条 )」が科せられてしまいます。

アポなしでの税務調査当日に日程の都合が悪い場合には「今は都合がつかないので、日を改めて来てください」と税務調査には協力する意思があることを示しつつ、日程の都合が悪いと断りましょう。

事前通知の内容

税務署から届く事前通知の内容は国税通則法に明記されるようになりました。以下11項目が、原則電話にて通知されます。

  1. 実地調査を行う旨
  2. 調査官の所轄官署と氏名
  3. 調査を受ける者の氏名と住所
  4. 調査日時
  5. 調査場所
  6. 調査日と調査場所は合理的理由があれば変更を協議可能という説明
  7. 調査の目的
  8. 調査の対象となる税目
  9. 調査対象期間
  10. 調査の対象となる帳簿書類や物件
  11. 通知事項以外に非違が疑われることとなった事項は、改めて通知しなくても質問検査できるという説明

このように、税務調査の時間や場所は合理的な理由があれば変更することができますので、事前通知が来たら必ず顧問税理士へ相談するようにしましょう。

3.実地調査|税務調査当日の流れ

実地調査|税務調査当日の流れ

それでは、税務調査は実際にどのような流れで行われるのでしょうか?

税務調査の期間は短く、調査のうちの約6割が1日〜2日間で終わると言われています。

この記事では1日目午前・1日目午後・2日目以降という3つの段階に分けて、税務調査の流れを説明していきたいと思います。

1日目午前

1日目の午前の流れは以下の通りです。

  1. 午前10時に調査開始
  2. 事業内容の聞き取り

1日目午前に主に行われることは、聞き取りです。

会社の内容や組織の構図などを聞かれるので、1日目午前は会社経営者が同席するほうが良いでしょう。また、説明をスムーズに行うためにも、会社の概要が記載されたパンフレットやホームページの組織図の印刷などを用意しておいた方がよいでしょう。

1日目午前は聞き取りだけで終わることが多く、12時になったら昼食となります。

1日目午後

本格的な調査は午後から行われます。

・法人や個人事業主の場合

法人経営者や個人事業主の場合、調査される項目は以下の通りです。

  1. 売上計上時期のずれ
  2. 実地棚卸の方法や担当者
  3. 仕入、外注費のチェック
  4. 人件費の正当性
  5. 交際費
  6. 固定資産の購入時期や金額
  7. 在庫計上漏れ

これらの項目について実際に帳簿などを見ながら確認していきます。

調査官からの質問事項がある場合には、その都度、社長や経理が呼ばれて回答しなければなりません。

また交際費に関しては、支出時の取引先の相手先、出席者の人数等を調査官から質問され、当該交際費の妥当性を確認されます。所得の金額と比較して交際費の支出額が大きい場合には注意が必要です。

16時になると調査官から初日の調査のまとめの報告や、質問事項などの説明がありますので、翌日以降の調査に備えて準備しておきましょう。

・相続税申告を調査される個人の場合

ちなみに相続税は税務調査が行われる可能性が非常に高い税金ですが、相続税調査の際には以下の書類等がチェックされます。

  • 預金通帳(相続人と被相続人のもの)
  • 有価証券
  • 土地の権利証
  • 不動産の関連資料
  • 相続人の認印

また、質問される内容とその意図の例は以下の通りです。踏み込んだ質問もありますが、答えられる範囲で良いので答えましょう。

質問内容 意図
死亡した時の状況は? 入院の有無や病院名、介護等を受けていたかの確認
被相続人の両親や出身大学・職業は? どのように資産形成を行ったいたかの確認
相続税を納税した金融機関はどこ? 相続財産として申告していない金融機関がないかの確認
生前に贈与(資金援助)を受けたことがある? 不動産購入や、進学、結婚等に際して贈与がないかの確認

相続税の実地調査は通常1日で終わります。

2日目以降

調査する項目によっては場所が本社や事務所から、工場や店舗などに変わることもあります。例えば、棚卸資産を調べたい場合には本社よりも工場や店舗に行った方がより確実に調べることができるためです。

調査の結果、計上漏れが大きい場合は、反面調査(取引先に対する調査)や連携調査(同族会社や関係会社の調査)を行う場合もあります。

前述したように調査のおよそ6割は2日以内に調査が終わります。3日目以降も調査が続いてしまう場合には、何かしらの大きな問題があると判断されていると考えた方がよいかもしれません。

4.税務調査後|修正申告や更生処分の流れ

税務調査後|修正申告や更生処分の流れ

税務調査を受けた結果、「申告漏れがある」と判断された場合には、修正申告をする必要があります。

修正申告をする場合にはどのような流れになるのでしょうか?

結果連絡は1週間〜1ヶ月後

税務調査が終わると、1週間〜1ヶ月程度で税務署から調査結果の連絡が届きます。この結果連絡によって、否認事項(申告内容の誤り)があるかないかを知ることができます。

是認(否認事項のない)の場合は、何もする必要はありません。一方で、否認事項の見つかった場合には修正申告をする必要があります。

修正申告と追徴課税

税務調査結果に否認事項があり、それに納得した場合は修正申告を行います。ただし、修正申告をした場合は処分に納得したとされ、以後不服申し立てなどをすることはできません

修正申告時にはペナルティとして以下の追徴課税が課せられます。

延滞税 税金を遅れて納付する場合に課せられる 納付期限日の翌日から2ヶ月以内は7.3%、それ以降は14.6%
過少申告加算税 税額を過少申告した場合に課される 調査終了前までは5%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分は10%)

調査終了後は10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分は15%)

無申告加算税 正当な理由なく期限までに申告をしなかった場合に課せられる 調査通知前までは5%

調査終了前までは10%(50万円超の部分は15%)調査終了後は15%(50万円超の部分は20%)

不納付加算税 源泉徴収税を納付期限までに納めなかった場合に課せられる 10%
重加算税 悪質な不正が認められる場合に加算税に代わり課せられる 35-40%

追徴課税の支払いを延期させるための条件

上記の加算税は原則期限内に支払う必要がありますが、以下のいずれかに該当した場合には、1年以内の支払猶予を得られる可能性もあります。

  • 本来の期限から1年以上経過したあとに、修正申告で納付すべき税額が確定した場合
  • 納税者が一括で納付することができないと認められる場合
  • 納付期限までに申請書が提出されている場合
  • 担保の提供がある場合

更生処分

指摘事項に納得ができず修正申告を行わない場合は、国税庁から一方的に課税率を決められる「更正処分」がなされます

税務調査が終了してから数ヵ月後に税務署から送られてくる「更正通知書」に記載された税額、追加税額、更正の理由などを受け入れ、修正申告をすると税務調査が終了します。

前述したように、修正申告に応じてしまえば、後から異議申し立てをすることはできないので、税務署は修正申告を勧めてくることが多いようです。

5.税務調査の結果に対する不服申し立ての流れ

税務調査の結果に対する不服申し立ての流れ

税務調査結果に納得することができない場合には、不服申し立てをすることができます。以下が不服申し立ての大まかな流れです。

  1. 再調査の請求または審査請求
  2. 再調査後の審査請求
  3. 審査請求後の取消訴訟

それぞれについてもう少しく詳しく見ていきましょう。

1.再調査の請求

国税庁によると、更正などの課税処分や差押えなどの滞納処分に不服がある場合には税務署に対して「再調査の請求」を行うことができます。

再調査請求の期限は、更正処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内とされています。

再調査の請求があると、税務署長が更生などの処分が正しかったかどうかについて改めて見直しを行います。そして、その結果を「再調査決定書」により納税者に通知します。

2.審査請求

再調査にも納得のいかない場合は、再調査決定書の通知を受けた日の翌日から1か月以内に国税不服審判所へ審査請求を行うことができます。

また、更生処分の通知を受けた日の翌日から3ヶ月以内であれば、「再調査の請求」を飛ばして「審査請求」を行うことができます。

審査では、国税不服審判所長が税務署長の処分が正しかったかどうかを調査して、結果を「裁決書」という形で納税者と税務署長に通知されます。

3.税務訴訟

「審査請求」の裁決にまだ不服のある場合は、裁決書を受けとった日の翌日から6か月以内に裁判所に「訴訟」を起こすことができます。

ただし納税者が勝利する確率は10%くらいと言われており、ほとんどの異議申し立てでは訴訟まで行くことなく、日本では稀なケースです。

異議申し立てをしても追徴課税を免れることができる可能性は低いと言えます。

監修税理士のコメント

税理士法人better - 東京都中央区日本橋人形町

税務調査のポイントは支払う税金が正確に正しい金額で納付されていることを確認することです。領収書・請求書等の証憑が適切に管理されていない場合、調査官の心象も悪くなります。常日頃から領収書・請求書の整理、月次記帳等を適切に行い、急に調査に入られても慌てないよう、適切に管理しておくことが重要です。

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