西洋瓦とは、その名の通り屋根瓦のなかでも西洋由来ものを指します。
日本においては明治時代に製造されたフランス型の瓦や、大正時代にスペインから輸入されたスパニッシュ瓦がルーツとなります。
洋風なつくりの住宅だけでなく、和風の家に使用してもおしゃれな外観にすることができ、日本での人気も高まってきています。
この記事では洋瓦の種類を紹介しつつ、メリット・デメリットや施工費用、メンテナンス方法まで詳しく見ていきます。
洋瓦(ようがわら)の種類
「洋瓦(ようがわら)」はひとくちに西洋風とはいっても、発祥地や形状によって様々な種類があるのが特徴です。
形状によって3種類、主原料によって4種類に大きく分けることができます。
それぞれ耐用年数やデザイン性、メンテナンス性に違いがあるので、しっかりとチェックしておきましょう。
洋瓦の形状「S型」「F型」「M型」
洋瓦の形状は「S型」「F型」「M型」の3種類に大別することができます。
S型(スパニッシュ瓦)とM型(ふた山瓦)は、瓦の断面がそれぞれのアルファベットのような形をしていることが特徴。
F型(平板瓦)に関しては、「平ら」という意味の英語「Flat(フラット)」から取られたという説があり、平らな形状をしています。
S型(スパニッシュ瓦)
- 洋風建築に適している
- 凹凸が大きく立体感・高級感が出る
- 施工難易度が高いため工期・費用がかかる
F型(平板瓦)
- 和風・モダン建築にぴったり
- 凹凸が少なく平らなものが多い
- 比較的施工難易度が低いため工期が短め
M型(ふた山瓦)
- Mのような波形
- 和洋折衷をはじめとしたどんな建物にも似合う
- 板張り・漆喰の外壁にもぴったり
- 軽量で耐震性に優れている
F形・M形はともに和風建築にも似合うデザインで、S形に比べて施工難易度も下がります。
特に短い工期での施工を希望する場合はF形を選ぶのがおすすめです。
また耐震性を重視する場合はM形の洋瓦を選ぶと良いでしょう。M形は他の瓦に比べて軽いため、自身などの負荷に強いのです。
洋瓦の素材
洋瓦の素材は主に以下の4種類に分けられます。
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粘土
- 耐用年数が50年~100年と長い
- 断熱性に優れている
セメント
- 耐用年数は20年~30年
- 10年~20年で塗装によるメンテナンスが必要
- 重いため耐震性が弱い
- 現在ではごく一部のメーカーでしか生産されていない
コンクリート(モニエル瓦)
- 耐用年数は20年~30年
- 15年~20年で塗装によるメンテナンスが必要
- 現在はほとんど生産されていない
金属
- 使用する金属の種類によって耐用年数が変わる
- 耐震性・防水性に優れている
- サビに弱い
寿命(耐用年数)を基準に選ぶ場合は粘土瓦がおすすめです。施工費用は高いものの、メンテナンスの手間がかからず耐用年数は50年~100年と長いため、長期的なスパンで考えればお得になる場合があります。
また粘土と金属の洋瓦は塗装が必要ありませんが、セメントとコンクリート(モニエル瓦)は塗装メンテナンスが必要である点にも注意しましょう。
「混ぜ葺き仕様」で独特な色合いに
「混ぜ葺き(まぜぶき)」とは、S型やF型の洋瓦に複数の色を焼き付けわざと焼きムラを出して仕上げることです。
単調になりがちな屋根のデザインに変化が出るので、おしゃれな印象に仕上げたい場合におすすめです。
しかし単色の瓦よりも費用が高くなる傾向にあり、また建物によっては外壁のデザインとのバランスを考慮する必要があります。
混ぜ葺き仕様を検討する場合は、事前に仕上がりイメージについて施工業者とよく相談しておくようにしましょう。
洋瓦と和瓦との違い
和瓦(J型)と洋瓦の最も大きな違いはその形状にあります。
和瓦は波形の緩やかな曲線状であるのに対し、洋瓦は平らなものやS字形なのです。
また洋瓦はカラフルなものが多く、デザイン性にも富んでいるという特徴があります。
洋瓦のメリット・デメリット
洋瓦には使用するうえでのメリット・デメリットは下記の通りです。
メリット | デメリット |
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洋瓦は色やデザインの種類が豊富なほか、耐用年数が40年~60年、メンテナンス頻度も10年~20年です。そのため手間や費用があまりかからないという点が主なメリット。
また断熱性や通気性にも優れ、夏の暑い気候にも、梅雨のじめじめとした気候にも強い優れモノです。
その反面、洋瓦の施工には高い技術が必要となるため、施工費用が高額になるというデメリットもあります。
またスレートや軽量瓦に比べると重さが2~3倍あるため、耐震性では劣ってしまうことに。
もう1点注意すべきは、デザインが廃版になる頻度が多いことです。もし一部分だけ修復したくても、そのときには同じデザインのものが製造されていないかもしれません。新築の際に予備の瓦をもらっておきましょう。
洋瓦の劣化症状とメンテナンス方法
洋瓦のメンテナンスは10~20年に1度
洋瓦のメンテナンス時期は、一般的に10年~20年に1回程度とされています。
施工から20年以上経ってしまうと不具合が起こる確率が高くなるので、定期的に業者に依頼して点検・修繕を行うことが大切です。
とくに「屋根瓦標準設計・施工ガイドライン」が設定される2001年より前に施工された建物には、不具合が起こりや傾向があります。
不具合や劣化症状のある屋根瓦を放置しておくことは、屋根全体のダメージへと繋がります。
屋根にひび割れやゆがみなど気になる点がある場合は、メンテナンス時期より前であっても早めに修繕してもらうようにしましょう。
洋瓦の劣化症状
- 割れ
- 瓦のズレ
- 漆喰(しっくい)の劣化
- 雨漏り
上記のような劣化がみられる場合、メンテナンスが必要となります。
割れ
耐久性に優れている洋瓦ですが、物がぶつかる衝撃には弱く、台風や強風による飛来物で割れてしまうことがあります。
メンテナンス方法は、瓦の一部交換です。
ただし、耐用年数を過ぎている場合には屋根全体が劣化している可能性があるので、しっかり点検してもらいましょう。
瓦のズレ
瓦がずれてしまっていると、隙間から雨水などが浸水しやすくなり、雨漏りなどの原因に。
瓦のズレには「積み直し」で対処しましょう。
一度既存の瓦を取り外し、漆喰(しっくい)や下地の補修を行います。
最後に瓦を積み直して終了ですが、新しい瓦と交換する工法ではない点に注意。
漆喰(しっくい)の劣化
漆喰(しっくい)とは、瓦を固定する土などの上に塗布するものです。
新しい状態では白い見た目をしていますが、もし劣化して崩れているときには中の土などが露出してしまいます。
漆喰が崩れると雨漏りなどにもつながるため、漆喰を詰めなおして補修しましょう。
雨漏り
洋瓦の屋根が雨漏りなどの深刻な症状を起こしている場合、すぐさま対処する必要があります。
雨漏りするということは、瓦の下にある防水紙や木材が劣化していると考えられます。
そのため、「葺き直し(ふきなおし)」または「葺き替え(ふきかえ)」を行う可能性が高いです。
屋根の葺き直し・葺き替えの違いは、既存の洋瓦をそのまま使って葺き直すか、撤去して新しい瓦で屋根を葺くかという点にあります。
葺き直しの目的は、瓦の下にある防水紙や木材の補修です。瓦自体には問題がないため、既存の洋瓦をつかって修復します。
一方、葺き替えは屋根の内部だけでなく洋瓦も寿命を迎えているときに行います。すべての屋根材を取っ払い、新しい屋根に張り替えるので、屋根リフォームのなかではもっとも費用がかかる施工法です。
洋瓦のメンテナンス費用相場
洋瓦の工事内容別メンテナンス費用の相場は下記の通りとなっています。
瓦の一部交換 | 20,000~50,000円/枚 |
漆喰の補修 | 2,000~7,000円/㎡ |
積み直し | 8,500~19,000円/㎡ |
葺き直し | 8,000~15,000円/㎡ |
葺き替え | 15,000~20,000円/㎡ |
これらの単価相場に、足場費用や諸経費などが加わります。
また棟瓦の施工を行う場合には漆喰の補修も併せて必要となるので、見積書に「漆喰の補修」が含まれているか確認しましょう。
塗装メンテナンス(セメント、コンクリートの場合)
材料がセメント、もしくはコンクリート(モニエル瓦)の場合は、定期的な塗装メンテナンスが必要になります。
ウレタン、シリコン、フッ素がおもに使用され、それぞれ性能や費用相場は異なります。
ウレタン系塗料 | 1,400~3,000円/㎡ |
シリコン系塗料 | 1,700~3,500円/㎡ |
フッ素塗料 | 2,800~4,500円/㎡ |
上記が塗料ごとの費用相場です。業者と相談しながら、どの塗料にするのか考えましょう。
瓦屋根の施工ガイドライン<地震、災害対策>
地震や台風といった災害に強い屋根瓦の施工法をまとめた「屋根瓦標準設計・施工ガイドライン」が2001年に定められました。
ガイドラインに掲載されている方法で施工することを「ガイドライン工法」と呼び、研修課程を修了した事業者のみが行うことができます。
災害対策が気になる場合は一般社団法人全日本瓦工事業連盟の公開するwebページから「認定店」を探して工事の相談をすると良いでしょう。
また従来の施工方法と比べると費用が約20~30%ほど高くなります。地域環境などよく考慮して決めましょう。
洋瓦のおもなメーカー
丸栄陶業㈱
自社ブランドの「栄四郎瓦」を展開する丸栄陶業は、防水機能に優れた洋瓦を取り扱っています。
中でも「プラウドプレイン」と呼ばれる平板瓦(F形)は、瓦の隙間からの漏水にも備えることで、高い防水性を実現しています。
ホームページでは3Dカタログが公開されており、実際に洋瓦を葺いたイメージをより具体的に見ることができます。
比較的ナチュラルな色味の洋瓦の展開が多いメーカーですので、南欧風の屋根をご希望の方にもおすすめです。
マルスギ株式会社
「三州瓦」の製造販売を行うマルスギ株式会社は、大正2年創業の老舗・粘土瓦メーカーです。
遮熱対応の瓦のラインナップが多く、瓦ごとの赤外線反射率も公開されていますので、省エネ対策をお考えの方は参考にしてみると良いでしょう。
ホームページには各商品の施工例が掲載されているほか、葺き替え工事費用の概算を計算することも可能です。
東洋瓦㈱
東洋瓦株式会社は、愛知県を拠点とする瓦メーカーです。日本瓦はもちろんS型・M型・F型の洋瓦各種の取扱いがあります。
展開されている洋瓦は防災瓦となっており、耐風性・耐震性に優れています。
また「トラッドⅢ防災」は業界で初めての防汚・防藻・防水・大気浄化能力のあるスーパーコーティングが施された瓦です。
三ツ星貿易株式会社
三ツ星貿易株式会社は、アルミ製屋根材である「スーパールーフ」を展開する会社です。
スーパールーフはF型の洋瓦で、30年使用しても色あせが少ないほど耐久性が高く、メンテナンス費用を大幅に抑えることができます。
また耐火・防風性に優れているほか、豪雨や塩害に強く遮熱性も備えています。そのためご自宅が海に近い場合や台風が多い地域でも安心して使用することができます。
新東株式会社
新東株式会社が取り扱っているF型の洋瓦は、防災機能に優れているほか、雪止めが着いているものもオーダーが可能な点が特徴です。
「SHINTOかわらS」をはじめとしたカバー工法で取り付けが可能な洋瓦もラインナップもそろっています。
こちらも台風・地震に加え積雪にも強く、全天候耐久性テストをクリアした高機能な屋根瓦です。
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今回は、洋瓦(ようがわら)の種類を紹介しつつ、メリットやデメリット、メンテナンス方法まで解説しました。
西洋風でおしゃれ外観にできる洋瓦、好みや性能によって様々な形・素材を選ぶことができます。また耐久性に優れているので、長期的にみても安心の屋根材です。
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