ガルバリウム鋼板とは、亜鉛・アルミ・シリコンを組み合わせた合金(ガルバリウム)で鋼板にメッキ加工した建材のことです。
トタンなど他の金属屋根に比べてもコストパフォーマンスがよい建材とされ、耐久性や錆びにくいというメリットから、屋根にも外壁にも使用されることが増えています。
ただし自然環境に弱い、凹みがつきやすいなどのデメリットも。
この記事では、ガルバリウム鋼板の基本的な特徴からメリット・デメリット、メンテナンス方法まで詳しく解説します。
ガルバリウム鋼板とは?
ガルバリウム鋼板とは、「ガルバリウム」でメッキされた鉄(金属板)のことを指します。
ガルバリウムは亜鉛・アルミ・シリコンが組み合わさったものです。
亜鉛には溶けて穴あき拡大を防ぐ「防食作用」、アルミには亜鉛が溶けた部分の穴を埋める「保護作用」があるため、自己修復して錆を防ぐという特徴があります。
またガルバリウム鋼板は、屋根・外壁のどちらの場合でも耐用年数は20~30年と長く、ほかの金属素材に比べても長持ちです。
日本では1990年代から注目されはじめ、2020年現在に至ってはもっとも一般的な屋根材と言っても過言ではありません。
加工のしやすさが特徴で、屋根や外壁だけなく雨どい、物置やポストなどにも使われています。
耐熱性・遮音性は弱い?
ガルバリウム鋼板の詳しいメリット・デメリットについては後述していきますが、もっとも注視すべき「断熱性」や「遮音性」について紹介します。
通常、ガルバリウム鋼板は0.35~0.5mmほどの薄さです。軽くて施工しやすいというメリットにつながる一方で、外気の熱が伝わりやすく暑い、薄いため音が響きやすい、といったデメリットになってしまうこともありました。
しかし現在主流となっているガルバリウム鋼板は、「断熱材一体型」になっています。デフォルトで鋼板に断熱材が張り付いているため、断熱性や遮音性はほかの屋根材や外壁材と比べてもそん色ない性能です。
もし自宅にガルバリウム鋼板を使用する際には、一応のために知っておくとよいでしょう。
ガルバリウム鋼板のメリット
ガルバリウム鋼板を使う屋根・外壁のメリットは以下。
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1.耐用年数が長い
屋根材 | 耐用年数 |
ガルバリウム鋼板 | 約20年〜30年 |
トタン | 約10年〜20年 |
スレート屋根 | 約10年〜20年 |
ガルバリウム鋼板の耐用年数は他の屋根材や外壁材と比べても長いのが特徴です。
より耐用年数が長い建材は、耐用年数が60年と言われる瓦屋根があります。
3.耐震性に優れている
ガルバリウム鋼板はとても軽い屋根材です。外壁の主流であるサイディングと比べると4分の1の重量。また屋根材の中でも軽いとされるアスファルトシングルと比べても半分くらいの重量しかありません。
家の一番上にある屋根が重厚だと地震のときに家に大きな負担をかけてしまいますが、屋根が軽量なら建物の揺れが大幅に減少してくれます。
また外壁材にも同じことが言えるので、地震大国の日本では、重宝される性能です。
3.断熱性・遮音性に優れている(断熱材一体型)
普通の金属であれば断熱の性能は弱くなります。
しかし断熱材一体型のガルバリウム鋼板であれば、他の建材にも勝るほどの断熱効果があります。
また、金属屋根などでは雨音がうるさいというイメージもありますが、断熱材一体型のガルバリウムであればそういったデメリットも小さくなります。
騒音を示すdB(デシベル)という単位がありますが、快適に日常生活を送るには45dB以下が望ましいとされています。
断熱材一体型のガルバリウム鋼板を採用した屋根は70dBの雨音を31dBまで抑え、また外壁から伝わる外の音を80dBから28dB(ささやき声と同程度)まで抑えるのです。
さらにいっそう遮音性を高めるためにカバー工法という選択肢も。
4.ひび割れ・汚れが生じにくい
ガルバリウム鋼板はよく、「メンテナンスフリー」と言われます。
もちろん実際には定期的なメンテナンスをしたほうが長持ちしますが、ひび割れが生じにくく汚れが付きづらいという特徴があるのです。
瓦やスレートといった屋根材、またサイディングやモルタルといった外壁材とは違い、ガルバリウム鋼板は金属なので経年劣化によるひび割れが起こりません。
また、湿気や雨水を吸収することもないので、汚れも付きにくい点が特徴です。隙間が少ないためにカビの発生率も小さくなります。
とくに屋根材で採用する場合、フッ素塗膜のものを使うとより汚れにくくなります。
5.シンプルなデザイン性
ガルバリウム鋼板は薄く瓦のように凹凸がないので、すっきりした印象の家にできるのが魅力です。
金属ならではのシックでシンプルなたたずまいは、都会の街並みにも、自然豊かな風景にもマッチします。
一部、和瓦のように作られたガルバリウム鋼板もあり、耐震性と耐久性の高さから浅草寺などの神社仏閣でも採用されているそうです。
6.改修にかかる時間と選択肢
ガルバリウム鋼板を張り替えるときには、他の建材よりも工期が短いという特徴があります。軽い素材で加工もしやすいためです。
補修も比較的簡単なので、もし台風や地震などの有事に家が破損したときには、短い時間と少ない費用で済む可能性があるのです。
また、軽いという特徴によって「カバー工法」というリフォームという選択肢があるのも魅力のひとつ。
カバー工法とは、劣化した屋根や外壁などを補修する際、既存の建材の上から新しい屋根材を被せることです。
あとかららリフォームするときにカバー工法ができる建材かどうかは、家を建てるときにも重要な指標になります。
7.メーカー保証がもらえる(リフォーム時)
屋根材として人気のスレートなどは、葺き替え(ふきかえ/張り替え)の際にメーカーの製品保証を受けることができません。
そのため、もし想像していたよりも早く修理・補修が必要となったときには費用がかさんでしまいます。
その点、ガルバリウム鋼板はリフォーム時にメーカー保証をつけることができるのです。
標準的な保証内容は、穴あき10年保証など。保証がついているのとついていないのでは、長期的にみてコストパフォーマンスを大きく左右します。
ただし、金属建材加工メーカー以外の製品には保証がつかないので注意しましょう。
ガルバリウム鋼板のデメリット
メリットが多く、コストパフォーマンスに優れているガルバリウム鋼板ですが、もちろんデメリットもあります。
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1.施工費用が高め
ガルバリウム鋼板は、スレート屋根やセメント系の屋根材に比べて価格が高めのため、おもに初期費用にあたる施工費用が高くなります。
屋根材の施工費用
屋根材の種類 | 施工費用(㎡) |
---|---|
スレート | 4,500円/㎡ |
ガルバリウム鋼板(断熱材無し) | 5,500円/㎡ |
ガルバリウム鋼板(断熱材入り) | 6,500円/㎡ |
外壁材の施工費用
外壁材の種類 | 施工費用(㎡) |
---|---|
サイディング | 5,000円/㎡ |
ガルバリウム鋼板(断熱材無し) | 5,500円/㎡ |
ガルバリウム鋼板(断熱材入り) | 7,000円/㎡ |
このように他の建材と比べても割高ではあります。
しかし耐用年数が長いこと、またリフォームの際には費用の少ないカバー工法を選択できることなどを考えると、費用対効果の高さは揺るぎません。
新築で家を建てるときには初期費用だけでなく、後のリフォームなども見据えておくとよいでしょう。
2.凹みやすい
軽くて地震に強いガルバリウム鋼板ですが、その反面、外部の衝撃には弱いという特徴があります。
台風の飛来物などに注意が必要です。また、近所に公園や広場がある場合は、ボールなどが飛んでくる可能性もあります。
凹みを和らげる手段としては、比較的厚みがあるガルバリウム鋼板を選ぶ、また断熱材一体型を選ぶなどしましょう。
3.塩害など自然環境の影響を受けやすい
ガルバリウム鋼板は金属の建材のなかでは錆に強いという特徴があります。
しかし潮風(塩害)に弱いという一面があり、海に面した地域などでは錆が発生してしまうことがあります。
ほかにも、異種金属との接触で起こる「電食」という腐食や、工場の排気ガスや落ち葉などがガルバリウム鋼板に触れることが原因で錆になってしまうことも。
ただし、沿岸部にそびえる工業地域ではほとんどの工場や倉庫は金属で作られています。それを考えると、しっかり定期メンテナンスさえしていれば、そこまで心配する必要はないかもしれません。
4.専門業者が見つかりづらい
ガルバリウム鋼板は、板金工事業者が取り扱う屋根材です。
専門的な知識と技術が必要なため、瓦の張り替えやリフォーム塗装を行う業者では取り扱えないことがほとんどです。
また板金業者自体も少ないので、質の高い工事は順番待ちになってしまうこともしばしば。
5.見切縁(みきりぶち)が生じる
屋根や外壁において、板などのような建材を貼り合わせて施工するものは釘やボルトで固定したり、シーリング材で隙間を埋めるのが普通です。
ガルバリウム鋼板も、板と板の継ぎ目にシーリング材を打つことになりますが、多くの場合は「見切縁(みきりぶち)」というものを上から覆いかぶせます。
見切縁が被さることでシーリング材の劣化が進みにくいというメリットはありますが、若干の段差がデメリットと考えられることも。
しかしあまりに細部のデザインなので気にする必要はほとんどありません。むしろ見切縁がもたらす防水性などのメリットに目を向けましょう。
縦葺きと横葺き、縦張りと横張り
【屋根】縦葺き(たてぶき)とは?
縦葺きとは、屋根の仕上げ方法のひとつ。簡単に言うと、屋根の傾きに沿って屋根材が並んでいるものを指します。
横葺きよりと比べたときのメリットは以下。
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ただし板金の長さが一定にならないような、複雑な形状の屋根には採用できない点に注意が必要です。
【屋根】横葺き(よこぶき)とは?
横葺き(よこぶき)とは、屋根の傾きに対して並行に施工する方法です。
おもな特徴は以下。
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リフォームの際には、基本的に横葺きで施工されます。
その理由は、縦葺きに比べて断熱や台風などの性能が付加されている商品が多いためです。
初期費用が抑えやすいため新築に多い縦葺きと違って、リフォーム時には費用対効果の高い横葺きが多く採用されます。
【外壁】縦張りとは?
縦張りとは、地面から垂直方向に長く板金をあしらった外壁仕上げです。
継ぎ目が少なく、壁一面がすっきりとしたシックな印象になります。近年はスパン系と呼ばれるデザインが人気だそう。
【外壁】横張りとは?
横張りとは、地面に対して平行な向きで板金が敷かれている外壁仕上げです。
施工性に優れているため、縦張りよりも安く施工できることが特徴。また種類が多く、デザインの選択肢が豊富です。
縦張りにするか横張りにするかは、基本的にデザインの好みで決めてよいでしょう。
ガルバリウム鋼板のメンテナンスについて
ガルバリウム鋼板はメンテナンスフリーと言われることがありますが、他の屋根材とおなじく定期的なメンテナンスは必須です。
一般的にガルバリウム鋼板の耐用年数は約20年〜30年。同じ金属のトタンが約10年〜20年なのに比べて長持ちする屋根材です。
しっかりメンテナンスをして、寿命まで長持ちさせましょう。
ガルバリウム鋼板のメンテナンス方法は?
一番のメンテナンス方法は、専門業者に定期的に点検の依頼をすることです。
ガルバリウム鋼板を扱っているほとんどのメーカーでは、年1回の点検を推奨していますが、実際には新築から10年、その後は5年ごとに点検している方が多いようです。
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主なメンテナンスは上記。
それ以外には、「大きな台風の後」「地震の後」「大雪の後」などもできるだけ点検をしてもらいましょう。
だいたいの汚れを雨が流してくれるガルバリウム鋼板ですが、雨水がかかりにくい部分は水洗いで十分対応できます。
しかし屋根の上に登らなければならない箇所は、危険なので絶対に自分で登らないようにしましょう。
ガルバリウム鋼板はどんな方におすすめ?
デザイン性の高い家にしたい方
ガルバリウム鋼板はカラーが豊富ですっきりした印象なので、スタイリッシュで都会的な外見の家にできます。
また瓦に見立てて作られたガルバリウム鋼板もあるので、和風にしたいけど軽さも欲しい方にもおすすめです。
コストパフォーマンス重視の方
屋根や外壁にはたくさんの種類と性能がありますが、費用対効果を求めるならガルバリウム鋼板がおすすめです。
初期費用こそ若干かさむものの、耐震性など高性能な特徴を備えており、そのうえ長持ち。
カバー工法でリフォームすることまで長期的に見据えると、コストパフォーマンスは抜群です。
雪が多い地域にお住まいの方
雪の多い地域では、吸水率が低く雨漏りしづらいことが屋根・外壁の条件なので、メジャーな屋根材となっています。
金属板のガルバリウム鋼板は、気密性が高く、水が入り込みにくいのでおすすめです。
地震に強い家にしたい方
ガルバリウム鋼板は軽いので、建物の揺れを大幅に減少させます。
揺れを抑えられれば、家の中の被害も最小限に抑えられます。
「地震対策を重視したい」「耐震性が大切」と考える方には、ガルバリウム鋼板は理想の屋根材・外壁材と言えるでしょう。
ガルバリウム鋼板以外の優秀な金属建材は?
エスジーエル鋼板
エスジーエル鋼板とは、元来のガルバリウムの材料(亜鉛・アルミ・シリコン)にマグネシウムを少量加えた鋼板です。
亜鉛は溶けだして錆の拡大を防ぐ効果がありますが、マグネシウムは亜鉛の消耗を抑えてくれます。
そのため、従来のガルバリウム鋼板よりもさらに錆に強く、塩害などの影響も受けにくい建材なのです。
徐々にエスジーエル鋼板が金属製の屋根・外壁の主流になっていくかもしれませんね。
アルミ
アルミはガルバリウム鋼板よりも前から建材としては存在してています。
ガルバリウム鋼板に比べても、錆への強さ、建材の軽さという面で秀でていますが、唯一デメリットを挙げるとすれば高価な点です。
石粒付き鋼板
石尽き粒鋼板は、ガルバリウム鋼板の表面に石粒を塗布した屋根材です。
品質自体はどちらが勝るとも言えないため、ガルバリウム鋼板よりも温かみのあるデザイン性を求める場合に採用します。
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今回は、屋根や外壁につかわれるガルバリウム鋼板について、基本的な特徴からメリット・デメリット、メンテナンス方法まで詳しく紹介してきました。
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