モニエル瓦とはヨーロッパ発祥の屋根材で、日本では1970年代から1980年代にかけて人気がありました。大きく括ればセメント瓦の一種にあたり、材料はセメントと砂利を混ぜ合わせて作る「乾式コンクリート」です。
材料も見た目もセメント瓦と非常に似ていますが、表面の処理の違いによって「モニエル瓦」と「セメント瓦」とで区別されるのが一般的です。
デザインがおしゃれで色のバリエーションが豊富なことから、多くの一般住宅で使用されていましたが、2010年に生産が中止されています。
この記事ではモニエル瓦についての基本的な特徴から、塗装・葺き替えなどのメンテナンス方法、費用相場について解説していきます!
モニエル瓦の特徴は?
モニエル瓦の正式名称は「乾式コンクリート瓦」といいます。日本の「和瓦」が陶器(粘土)で出来ているのに対し、その名の通りコンクリートで作られている瓦です。
ヨーロッパで普及している瓦を輸入したもので、洋風なたたずまいとカラーバリエーションの豊富さが特徴。販売していた会社名が「モニエル」だったことから、この名前が定着しました。
セメントの特性によって耐用年数が長く、また軽いため耐震性に優れているうえ、断熱性や防音性も高いことから人気の建材でした。
ただしセメント自体はに防水性がなく、水分を吸収することで劣化してしまうというデメリットがあります。そのため、定期的な塗装メンテナンスが必要です。
モニエル瓦は、着色スラリーと呼ばれる着色剤で塗装しており、表面には「スラリー層」という層が出来ています。
この「スラリー層」という特徴ゆえに、リフォームでモニエル瓦の再塗装をするときには細心の注意が必要です。
スラリー層が残っているまま塗装するとすぐに新しい塗膜が剥がれてしまう原因になるため、塗装する前に丁寧な剥がし作業が必要となります。
モニエル瓦の寿命・メンテナンス時期は?
一般的にモニエル瓦の寿命(耐用年数)は20~30年と言われています。
また塗装などのメンテナンスは10年に1度くらいが目安です。
耐用年数はきちんとメンテナンスをした場合の寿命を指します。
塗装することの目的は外観をよくするためだけでなく、建材の性能を上げて長持ちさせるためでもあるのです。
どんな屋根材・外壁材でも経年劣化は免れないので、定期的に点検しましょう。
モニエル瓦のおもな劣化症状
症状 | 原因や影響 |
---|---|
瓦表面の色あせ | 表面の塗装が弱くなり、瓦が水を吸う原因になる。 |
カビやコケが生えている | 防水性が失われ、瓦が水を吸う原因になる。 |
ひび割れ | 台風や地震などが原因。雨漏りが起きやすくなる。 |
チョーキング | 被膜が劣化して粉状になっている。瓦の割れや水を吸う原因になる。 |
漆喰の劣化 | 瓦がずれたり、雨漏りしたりする原因になる。 |
モニエル瓦の高い耐久性は表面の「スラリー層」塗装によるものです。
屋根が風雨や紫外線に晒されることで劣化し、塗装が剥がれてくると防水性が失われて瓦が水分を吸ってしまうことに。
上記のような劣化症状がみられたときには、すぐにモニエル瓦の塗装を行いましょう。
劣化がひどいときは葺き替え(ふきかえ)
瓦や屋根全体の劣化が進み、下地の板や防水シートまで破損している場合は、葺き替え(ふきかえ)工事を行います。
葺き替えとは、既存の瓦や防水シートなどをすべて取り外し、まるごと新しい下地、防水シート、瓦に張り替えることです。
ちなみにモニエル瓦は2010年で生産終了しているため、同じ瓦が手に入らないことがほとんど。そのため一部だけ瓦を取り換えることができません。
耐用年数までモニエル瓦の屋根を維持するために、メンテナンスを怠らないようにしましょう。
モニエル瓦の塗装方法と注意点
モニエル瓦の塗装メンテナンスを行う場合は、表面の「スラリー層」を完全に剥がす必要があります。
そのため、普通のセメント瓦とくらべても、塗装するのはかなり厄介で手間がかかるのです。
塗装の手順と注意点を詳しく見ていきましょう。
塗装の手順
1.高圧洗浄
モニエル瓦を塗装する工程の中でもっとも重視すべきは、高圧洗浄です。
ここで劣化したスラリー層を完全に取り除くことができなければ、残ったスラリー層が新しい塗料ごと、すぐに剥がれてしまうことに。
そのため通常より水圧を上げて洗浄したり、最終的にはブラシやスクレイパーで塗装を剥がす作業が必要です。
洗浄が終わったら、しっかりと乾かします。
2.下地の補修
瓦部分を超えて下地が劣化している場合には、浸水や木材の腐敗につながってしまいます。
そのため塗装する前に下地をチェックして、もし必要であれば下地から補修しましょう。
3.塗装(下塗り、上塗り)
最後に塗装です。下塗りと本塗装(一般的には2回塗り)とに分けるのが一般的。
塗料をたっぷり塗布し、塗りムラや塗り残しがないか確認します。
モニエル瓦に適した専用塗料
モニエル瓦は専用塗料を使う必要があります。
業者から見積書をもらった際には、塗料名を確認し、モニエル瓦に使用できる塗料なのかを調べるとよいでしょう。
- スラリー洋瓦用シーラー/水谷ペイント
- ヤネフレッシュSi/エスケー化研
- マイティーシリコン/オリエンタル塗料工業
- モニエルパワープライマー/アステックペイントジャパン
- マイルドシリコン/大同塗料
上記はおもな塗料です。モニエル瓦に使うことができる塗料はそう多くはないので、業者に相談しつつメリット・デメリットを確認して選びましょう。
モニエル瓦の葺き替え方法
モニエル瓦は日本での生産が終了しているため、瓦が破損してしまうと同じ瓦に交換することはかなり難しくなり、葺き替え(ふきかえ)しか選択肢がないこともあります。
また耐用年数を過ぎていたり、瓦だけでなく下地などの屋根材も劣化してしまったりするときには、全面張り替えです。
葺き替えの場合はすべての屋根材を取り外すので、比較的規模の大きな工事になり、費用も高くなります。
【モニエル瓦の葺き替え手順】
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葺き替えでは、防水シートや野地板もすべて張り替えるためコストが大きくなります。一般的に100~200万円の費用が必要です。
リフォームで人気の屋根材は、ガルバリウム鋼板(金属屋根)やアスファルトシングルなどです。
参考:ガルバリウム鋼板とは? |
モニエル瓦の代替品はあるの?
「どうしてもモニエル瓦の雰囲気を残したい」「1だけ割れたので差し替えたい」という場合は、どうすればいいのでしょうか。
生産は終了しているものの在庫さえ残っていれば、同寸法・同形状のものなら代用できることもあります。
ただし、既存の屋根にあわせて加工する必要があり、通常の瓦差し替えに比べれば費用がかかるので注意しましょう。
モニエル瓦のリフォーム費用相場
モニエル瓦を塗装する場合の費用は、施工する屋根面積に応じたものになります。
使用する塗料によっても異なりますが、2階建て30坪くらいの一般的な家屋であれば、足場代なども込みで約40~80万円程度が相場です。
ちなみに葺き替え工事をする場合は、新しい屋根材によって費用は上下しますが、約100~220万円程度を見積もっておきましょう。
既存の屋根の処分費用などもかかるため、他のメンテナンス方法に比べても高額です。
モニエル瓦のリフォーム業者の選び方
モニエル瓦のリフォーム経験があるか?
モニエル瓦のリフォームには、「スラリー層」という特殊な表面加工についての知識が不可欠です。
相談の際には、必ずこれまでにモニエル瓦リフォームの経験があるかを確認しましょう。
安心できる屋根のリフォーム業者は、施工前と施工後の仕上がりを依頼主に説明・報告するために、写真を撮影しているのが一般的。
事前に写真を見せてもらいながら工法の説明をしてもらえる業者がおすすめです。
詳細な見積もりと説明があるか?
見積もりの出し方には、それぞれの項目を「一式」として出す場合と「単価」を出して詳細に金額を出す場合があります。
どんな手順で工事をするのか、また、どんな塗料や資材を使うのか確認するためにも、単価がわかる詳細な見積もりを出してもらいましょう。
見積もりに不明な点がある場合、その場で質問して説明してもらうことも重要です。
経験のある業者であれば、その経験を踏まえてわかりやすく説明してくれるはず。なにもわからないからといって「おまかせ」にせず、分からないことを正直に話して、説明を求めましょう。
コミュニケーションが取りやすいか?
見積もり担当者や施工職人さんとのコミュニケーションが取りやすいかどうかという点にも気を付けておきましょう。
事前の打ち合わせだけでなく、施工中も気になったことは何でも話せる関係ができていれば、より満足できる屋根リフォームが実現できます。
洗浄や下塗りなど、モニエル瓦ならではの重要な施工についてしっかり確認させてくれる事業者を選びましょう。
【豆知識】モニエル瓦とセメント瓦との見分け方
セメント瓦の一種でありながら、着色スラリーという特殊な塗料によって普通のセメント瓦とは異なる「モニエル瓦」。
見た目がよく似ているため、モニエル瓦と普通のセメント瓦とを見分けるのは難しいですが、小口と呼ばれる瓦の側面部分に以下の違いがあります。
モニエル瓦:小口がザラザラ
セメント瓦:小口はツルツル |
砂利を加えたコンクリートが原料のモニエル瓦は、小口がザラザラとしていて、凹凸があります。
セメント瓦には砂利が入っていないので、小口はツルツルしています。
また裏面を見ると、モニエル瓦を製造していたモニエル社の刻印「M」または「MONIER」があるのも見分けるポイントです。
【豆知識】アスベストとは?
かつてセメント瓦には、耐久性を高めるためにアスベスト(石綿)が混ぜられていた時代がありました。
アスベストは発がん性などの健康被害が懸念され、2006年に禁止されることになりました。
ただしそれ以前に建てられた家屋にはアスベストが含まれているものが多くあったのです。
「自分の家の屋根がアスベスト入りだったらどうしよう」と不安になる人も多いですが、モニエル瓦にはアスベストは含まれていません。
モニエル瓦は大きく括ればセメント瓦の一種ではありますが、厳密にはコンクリート瓦に分類されています。その製法や耐久性などの機能上、アスベストを混ぜる必要がなかったのです。
また海外では日本より早くアスベストが禁止されていたため、海外の製法で作られているモニエル瓦にはアスベストが使われていませんでした。
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今回はモニエル瓦について、基本的な特徴をおさえつつ特殊な塗装方法や注意点を紹介してきました。
製造販売が終了しているモニエル瓦は、今後、塗装や葺き替えなどのリフォームが必須です。
専門的な知識も必要になり、経験豊富なリフォーム業者を見つけることが、屋根と住まいを長持ちさせるポイントになります。
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