棟板金(むねばんきん)とは、屋根の頂点部分にある金属製の板です。屋根材の隙間を多い、雨などを防ぐ役割があります。
日本でもっとも普及率が高い「スレート屋根」(コロニアル、カラーベスト)や、ガルバリウム鋼板などの金属屋根に使われます。
屋根の中でも劣化しやすい部分であり、放置しておくと台風などで壊れてしまうこともあります。
この記事では棟板金について、構造などの基礎知識から劣化原因、補修方法などについて紹介していきます。
棟板金の構造は?
上の写真は、屋根棟をとらえたものです。右上には棟板金(むねばんきん)が残っていますが、残り2枚は取れてしまっています。
この写真からわかるように、屋根の面と面のつなぎ目などを守る役割をしているのが棟板金です。
屋根の接合部の上に「貫板(ぬきいた)」という木材をあて、さらにその上から金属板を被せるという構造になっています。
棟部分にあてた棟板金は、横から釘やビスで固定されており、これらが浮いてきてしまうことが原因で劣化症状につながることが多いです。
ちなみに、棟(むね/屋根の接合部のこと)部分に金属材が使われているときには「棟板金」、瓦が使われているときは「棟瓦(むねがわら)」と呼ばれます。
棟板金の役割は大きく分けて以下の2つです。
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棟板金が台風などで飛ばされてしまったり、劣化して浮いてしまったりすると雨漏りや屋根材のずれといった家のトラブルにつながってしまいます。
棟板金の素材
棟部分を覆う板金は、2000年代より前はトタンが主流でした。トタンは錆びやすいため、棟板金といえばすぐに劣化してしまうイメージの方も多いと思われます。
現在は、ガルバリウム鋼板が使われることが多くなっています。
ガルバリウム鋼板は、屋根面や外壁などにも使われる金属建材で、サビに強く長持ちするため、棟板金は昔ほど劣化が早くはありません。
また鉄釘に代わって固定強度の高いビスという留め具を使ったり、下地には樹脂製の腐りにくいものを使ったりと、丈夫なものが主流になっています。
【ちなみに】屋根棟の見分け方
屋根の材質や商品名の見分け方は下記の通りです。
棟の種類 | 分類 | 屋根の材質・商品名 |
棟板金(むねばんきん) | 金属 | トタン |
ガルバリウム鋼板 | ||
ジンカリウム鋼板 | ||
ステンレス | ||
銅 | ||
スレート | (化粧)スレート | |
コロニアル | ||
カラーベスト | ||
厚型スレート | ||
棟瓦(むねがわら) | 和瓦、洋瓦 | 陶器瓦 |
コンクリート瓦 | ||
モニエル瓦 | ||
アスファルトシングル | 棟材と屋根材の区別なし |
また棟部分は棟板金と棟瓦の2種類に大別され、それぞれ修理方法が異なります。
棟部分 | 修理方法 | 特徴 |
棟板金
(スレート屋根、金属屋根) |
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棟瓦
(和瓦・洋瓦) |
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棟板金の寿命(耐用年数)と、釘の劣化
棟板金の寿命(耐用年数)は15~25年といわれています。
ただその前に釘が抜ける、棟板金が浮くといった不具合がでてくるので、7~10年を目安にメンテナンスを行うのが一般的。
まず釘が抜け、棟板金自体が浮き、強風でめくれてきて、最終的には飛ばされることもありえます。
なるべく初期の段階で修理・メンテナンスを行うのが棟板金を長持ちさせるコツです。
板を止めている釘が抜けてくる
棟板金でもっとも気を付けるべきなのが、釘が抜けてしまう症状です。築7年を過ぎると棟板金を固定する釘が抜ける箇所が出始めてきます。
棟板金の釘が抜けてしまう原因は、板金が熱膨張と収縮を繰り返すためです。
金属の性質上、太陽の熱などで膨張し、夜の冷えによって収縮します。
棟板金が膨張するときに釘も外に引っ張られますが、収縮するときは板金だけが収縮するため、経年によって釘は少しずつ緩んでいくのです。
そしてこれが長期間続くことで、最終的には釘が抜けてしまいます。
土地柄や立地条件によっては、日当たりがよいところだと膨張度合いも大きくなり、さらに釘がぬけやすくなります。
またそのほか、強風、貫板の腐食、釘穴のサビといった原因も考えられ、これらすべてを考慮に入れておく必要があります。
そのため、目立った症状がみえなくても、目安と言われている7年程度に1回くらいは業者に点検してもらうのがおすすめです。
釘が抜けることで連なる劣化症状
棟板金の釘が抜けてしまうと、連なってさらなる劣化症状を引き起こしてしまいます。おもな症状は以下です。
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棟板金の釘が抜けてしまうと隙間から雨水が入り込んでしまうため、下地となっている貫板(ぬきいた)が腐食してしまいます。
また棟板金の釘が抜けてしまうと棟板金が浮くため、風が吹くとパタパタと異音が発生します。
さらに釘が抜け、棟板金が浮いていると台風などの強風時に棟板金が飛ばされてしまうこともあります。
棟板金が飛ばされてしまうと雨漏りの原因になりますし、棟板金の剣先(端の部分)は鋭く人や家を傷つけるおそれもあり、大変危険です。
いざ台風が来てから慌てないように、日ごろから点検やメンテナンスをしておく必要があります。
日頃チェックするべきポイント
棟板金の釘が抜けているかどうかは、目に見えづらいのが難点。下記のような症状がみられたら、メンテナンスを検討しましょう。
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棟板金の補修方法と費用相場
棟板金の交換工事
費用相場 | 工期 | |
釘打ちコーキング | 15,000~30,000円/1軒 | 半日~1日 |
貫板の交換 | 6,000~10,000円/m | 1~2日 |
棟板金の交換 | 7,000~12,000円/m | 1~2日 |
※別途足場代などの諸経費が掛かります。
釘が抜けてしまったが、貫板や棟板金の補修までは必要ない場合、釘を再度打ち付けてコーキングで固定する施工で対処できます。
しかし下地部分にあたる貫板の腐食が進んでいる場合には、一度棟板金を剥がしたうえで、貫板を取り替えることに。木材の下地は腐食が早いため、腐食しにくい樹脂製の下地に交換するのがおすすめです。
また、台風の影響や強風などで棟板金が飛んでいってしまった場合には、新しい棟板金と交換する工事をします。この際、貫板も一緒に交換することに。
その他の諸経費
棟板金修理に含まれるのは主に以下の内容です。
費目 | 金額目安 | 備考 |
足場代 | 150,000円 | ・高所作業の補助に必要 ・不要なケースもあるが大半は設置される |
養生代 | 40,000円 | 足場や周辺部分の保護 |
諸経費 | 25,000円 | 工事費の10%と仮定 |
足場の作り方や棟板金の長さによって費用は変わりますが、およそ30万円程度が相場です。
棟板金修理の費用を安く抑えるポイント
棟板金修理の総費用を大きく左右するのは、以下。
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ただこの2点は絶対に削減してはいけない部分です。
家の構造上足場が不要だったり、屋根の勾配が緩かったりすれば足場がいらないこともありますが、基本的には足場なしの作業はできません。
工事の安全性を損なわない範囲でできる、価格削減ポイントは以下の2つです。
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トータルの費用は大きくなりますが、棟板金だけでなく、屋根全体の補修・点検を依頼すると、1施工あたりのコストは抑えられます。
また、前回のメンテナンスから10年以上経っている場合、外壁などの足場を必要とする作業を同時に依頼するのもおすすめです。
棟板金はDIYで補修できるのか
屋根工事は費用も高額ですし、できるならDIYで直したいと思う方も多いのではないでしょうか。
しかし結論から言うと棟板金のDIYを素人が行うのは危険です。
屋根の上は滑りやすく転落のおそれがあり、プロの業者でさえ死亡事故は毎年起きています。
転落以外にも電柱との距離や、隣家への配慮など、プロのノウハウに任せることで安心安全に補修を行うのがおすすめです。
緊急の応急処置もプロに依頼
台風で棟板金が飛ばされてしまった場合や住めないほどの状態になった場合など、緊急の応急処置もプロに任せるべきです。
応急処置や部分修理だけならば比較的費用も安く、工期も短くてすみます。
台風などの大規模災害時は依頼が集中するため、待ち時間が長くなりがちですが、慌てずに待ちましょう。
強風で棟板金が飛ばされてしまったときには?
棟板金の修理に使える保険がないか調べる
棟板金修理の自己負担を少なくする最大のポイントは火災保険です。
台風などで棟板金が破損した場合は火災保険が適用される可能性があり、費用をまかなうことができます。
申請は非常にシンプルな上、高確率で申請は通ります。問い合わせだけでも試してみて損はありません。
棟板金の破損に気付いたらまずは保険会社に資料請求を行いましょう。災害時は問い合わせも集中するため、資料請求だけでも早めに行っておくのがベストです。
なお、地震が原因の場合は地震保険の範疇になるため注意が必要です。
災害時の棟板金交換工事の流れ
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1.屋根の修理業者に依頼
台風などの災害時、「棟板金が飛ばされてしまった」「壊れてしまったようだ」と気づいたら、まず屋根専門の修理業者に依頼して現場を確認してもらいましょう。
その際、「被害写真」「見積書」の作成も同時に依頼します。仮に火災保険が適用できないケースでも、点検写真や施工写真を残してくれる業者は信頼できるのでおすすめです。
2.保険会社に連絡
保険会社への連絡は、被害に気付いた段階ですぐに行うのがベターです。資料請求に時間がかかる可能性もあります。
3.業者に応急処置をしてもらう
保険会社に連絡したら、業者にひとまず棟板金の応急処置をしてもらいましょう。
すぐに直したいところですが、保険金が下りるまではブルーシートや防水シートの応急処置でしのぎましょう。
4.修理工事を開始
保険会社から回答が来たら修理工事を改めて依頼し、工事してもらいましょう。
保険金は満額出るとは限りませんが、高確率で申請は通ります。
交通事故などと異なり、加害者が存在しないため審査もスムーズです。早ければ2週間ほどで回答が得られるでしょう。
5.修理完了、保険会社に報告
修理が完了したら、あらためて保険会社に報告します。
悪徳業者に注意!
ちなみに災害時には、すぐに補修したいという心理につけこみ、悪徳業者の営業も横行します。
とくに「実質0円で棟板金を直そう!」というような過激な謳い文句の業者は注意が必要です。
おもに以下のようなリスクが考えられます。
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ミツモアで屋根のプロに見積もりを依頼しよう!
今回は、屋根の肝心要である「棟板金(むねばんきん)」について紹介してきました。
いくらオシャレで機能性が高い屋根を構えていても、棟板金が浮いてきてしまうと雨漏りや飛散などにつながってしまいます。
釘が浮いていないか、また棟板金が揺れていないかなどに気を付け、劣化症状をみつけたときにはすぐに業者に依頼して補修しましょう。
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