ペットを埋葬する方法は、大きく分けて3種類あります。方法によっては異臭が発生する可能性もあるため、適切に埋葬できるよう、それぞれの手順や注意点などを解説します。近隣へ配慮しつつ、気持ちの整理をしやすい方法を選びましょう。
ペットの埋葬方法の種類
ペットの埋葬方法は、土葬・埋骨・納骨の3種類に分けられます。それぞれの埋葬方法の特徴を紹介します。
土葬
ペットの遺体をそのまま土に埋めるのが、土葬です。古くから行われている埋葬方法で、海外では土葬が一般的な国・地域も多くあります。
遺体が土へ還るまでには、小さな動物でも数年、大きな動物なら数十年かかる点に注意が必要です。その間に異臭・虫の問題が発生する可能性もあります。
また土葬する場所にも、注意しなければいけません。自宅の庭・土地などの私有地や、許可を取っている場所でのみ行える埋葬方法です。
埋骨
火葬後に遺骨を土に埋める方法が、埋骨です。埋骨には「遺骨を骨壷に入れたまま埋める方法」と、「遺骨を骨壷から出して埋める方法」の2通りがあります。
直に遺骨を土へ埋める際は、火葬後の遺骨をそのままの状態で埋めるか、粉状にしてから埋めるかを選べます。粉状にしてから埋める場合、非常に細かくなっている分、土へ還りやすいのがメリットです。
埋骨は火葬後に行うため、異臭・虫の心配はありません。自宅の庭でも安心して埋葬できます。
納骨
遺骨を骨壷に入れ、お墓・納骨堂へ納める納骨も選べます。納骨のタイミングは火葬後すぐでも、気持ちの整理がついて落ち着いたタイミングでも構いません。
納骨できるのはペット専用の霊園・民間の施設などです。永代供養を行っている施設を選べば、自分が行けなくなったとしても供養が続きます。
納骨をすることで安心し、気持ちが少しずつ落ち着いていく人は少なくありません。お墓・納骨堂へのお参りを習慣にすれば、ペットロスも徐々に軽減されていくことが期待できるでしょう。
ペットを土葬・埋骨する方法
私有地がある人は土葬・埋骨を選択でき、費用を抑えつつペットを供養できます。土葬・埋骨は、どのように行えばよいのでしょうか?それぞれの方法ごとに解説します。
自分の庭・土地に土葬
- 地面に穴を掘る:異臭・虫の発生や、野生動物による掘り返し防止のため深さは「1~2m」
- 石灰をまく:ペットと同じ重さの石灰を用意し、半量をまく。腐葉土・炭でも代用可能
- ペットを穴へ寝かせる:布で包むときには、綿・麻など自然素材100%のものを使う
- 石灰をまく:用意した石灰の残り半量をまく
- 土を戻す:掘る前より高く盛る
- 目印を置く:石を置くほか、花・木などを植えてもよい
石灰をまくのは、殺菌と有機物の分解が期待できるためです。また土葬する場所は、日当たり・水はけのよいところを選びます。
プランターへの土葬
庭がない場合でも小さな動物であれば、以下の手順でプランターへ土葬する方法もあります。地面と比べ土が少ない分、土に還るまでの時間は長くなりがちです。
- 30cm以上の深さがある陶器製のプランターに、鉢底ネット・鉢底石を入れる
- 園芸用の土と腐葉土を混ぜ、プランターの1/3まで入れる
- 土の上にペットを寝かせる
- 腐葉土と肥料をかぶせる
- 腐葉土と肥料の上に鉢底ネットを敷く
- 土を入れ、植物を植える
プランター葬で植える植物には、根が深くまで張らず、植え替えの必要もない1年草が向いています。植物の手入れ・管理が難しい場合には、置き物・フェイクグリーンなどで飾るのもおすすめです。
自分の庭・土地に埋骨
火葬後の遺骨を埋める埋骨の手順は、土葬とほぼ同じです。遺骨を骨壷から出して埋める場合の方法を紹介します。
- 骨壷から遺骨を出す ※自分で粉状にして埋める場合は、かなづち・乳鉢を用意し砕いておく
- 地面に深さ1mほどの穴を掘る
- 遺骨を穴に入れる
- 掘る前より高く盛り上がるように土を戻す
穴を深めに掘ることで、埋骨した場所がはっきり分からなくなっても、間違えて掘り返してしまう心配が少なく安心です。
遺骨を自然に返す自然葬
埋骨の一種に、自然葬があります。代表的なのは以下の3種類です。
- 樹木葬:墓石の代わりに樹木を植える
- お花畑葬:墓石の代わりに花を植える
- 散骨:海・山に粉状にした遺骨をまく
樹木葬・お花畑葬を行う場合には、対応している霊園に依頼するか、自宅の庭・所有している土地で行います。
散骨はできる場所が限られている点に、注意しましょう。海洋散骨は散骨できる場所まで、クルージングで移動してからまく方法です。また山での散骨は、所有者の許可がなければしてはいけません。
ペットを納骨する方法
納骨するときはペット専用の施設を選ぶほか、飼い主と入れるお墓を探す選択肢もあります。それぞれどのような埋葬方法なのでしょうか?
ペット霊園へ納骨
ペット専用の霊園・寺院のお墓に納骨する場合、共同墓地・個別墓地のどちらへ埋葬するかを決めなければいけません。
費用を抑えられるのは、共同墓地です。「ほかのペットと同じお墓で、寂しくなさそう」という理由で選ぶ人もいます。
「専用のお墓を建てたい」「多頭飼いのため、ゆくゆくは同じお墓へ埋葬したい」と考えている場合には、個別墓地を選ぶとよいでしょう。
また霊園を選ぶときには、今後ずっとペットの供養ができるかも見極めが必要です。霊園の経営上の問題がないかも、確認しておきましょう。
霊園などを選ぶポイント
霊園を選ぶときには、「お参りできる時間帯が自分のライフスタイルと合うか」をチェックしておくと、納骨後にもしっかり供養しやすくなります。
中には24時間お参りが可能な霊園もあるため、出勤前・仕事帰りに立ち寄りたいといった場合には、探してみるとよいでしょう。
管理状況が良好な霊園へ供養を依頼できるよう、清掃や水の入れ替えが小まめに行われているか確認します。管理状況を正確に知るには、現地を訪れてチェックするのが確実です。
飼い主と同じお墓へ納骨
「将来的にはペットと同じお墓に入りたい」と考えているなら、人間と同じお墓に納骨できる場合もあります。法律上ペットの遺体は廃棄物として扱われるため、同じお墓へ入るときは飼い主の「副葬品」として入れられます。
先祖代々のお墓にペットの遺骨を一緒に入れたいなら、家族・親戚へ事前に相談しておかなければいけません。
また家族から了承を得られたとしても、宗派や霊園によっては、ペットの遺骨を副葬品とできないケースもあります。
ペットを埋葬する際の注意点
土葬・埋骨でペットを埋葬する場合には、必ず法律を守らなければいけません。法律を守っている場合でも、近隣住民への配慮や、先々のことを考えた上で埋葬する必要があります。
自分の土地以外に埋めるのは法律違反
ペットの遺体を土葬したり、遺骨を埋骨したりできるのは、自分の土地のみです。ペットの遺体・遺骨は、法律上では一般廃棄物として扱われるので、自分の土地以外へ許可なく埋葬できません。
例えば他人の土地へ勝手に土葬・埋骨をすると、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に違反することとなり、5年以下の懲役か1,000万円以下の罰金、もしくはこの両方が科される恐れがあります。
また埋葬したのが公園・道路・学校など公共の場であれば、「軽犯罪法」に触れる可能性があります。この場合に科されるのは勾留か科料、もしくはこの両方です。
引っ越す場合は埋葬は向いていない
たとえ現在自分の家・土地がある場合でも、将来的に引っ越す可能性がある場合には、土葬・埋骨は避けるのが無難です。
土地を手放した後に、工事のタイミングなどで埋葬したペットを掘り起こされ、トラブルに発展してしまう恐れがあります。不動産会社から、違約金を請求されるケースもあるでしょう。
遺骨として手元に置いておけば引っ越し先へも持っていけますが、土葬・埋骨すると掘り起こさなければいけません。
腐敗してしまう可能性を考慮する
大きなペットを土葬すると、遺体が土へ還るまで数十年かかります。その間に遺体が腐敗し、異臭が発生したり害虫が湧いたりしてしまうことがあるかもしれません。死臭がすると野生動物を呼び寄せ、掘り起こされる可能性もあります。
また自宅の庭に土葬していれば法律違反にはならないものの、異臭がもれ出てしまうと近隣住民に迷惑がかかります。配慮のなさからトラブルへ発展するケースもあるため注意が必要です。
さらに土葬する際には、河川・井戸・畑などが近くにないか、必ず確認しなければなりません。それらが近くにある場合、遺体から発生した菌などによる水質汚染・土壌汚染を引き起こしてしまう可能性があります。
愛犬を埋葬した後の手続き
ペットの埋葬後に、手続きが必要な場合もあります。手続きはどのようなペットが対象なのでしょうか?
死亡届を自治体に提出する
犬を飼い始めると、原則30日以内に登録の手続きをしなければいけません。登録をしているため、死亡したときにも30日以内に届出が必要です。
死亡届は保健所・市区町村の窓口などへ提出します。提出期限は死亡から「30日以内」です。自治体によっては犬の鑑札番号を使い、オンラインで死亡届を提出できる場合もあります。
同じペットでも、飼い始めるときに登録が必要ない猫・ほかの動物なら、死亡届の提出は必要ありません。
届出が必要な理由
死亡届を提出するのは、そのままでは犬が生きているとみなされるためです。狂犬病の予防接種についてのお知らせが毎年届き、義務である予防接種をしなかったと考えられてしまう恐れもあります。
狂犬病の予防接種は「狂犬病予防法」で定められており、受けさせなかった場合には20万円以下の罰金が請求されるかもしれません。また同法で死亡時の届出についても定められているのも、届出が必要な理由です。
ペットを埋葬以外で供養する方法
土葬・埋骨・納骨のどの方法で埋葬したとしても、ペットとはお別れになってしまいます。生きた姿で会えなくなっても、身近にペットを感じていたい場合には、埋葬以外の供養の仕方を検討するとよいでしょう。
遺骨を手元供養
遺骨を自宅で供養する手元供養なら、いつでもペットのそばにいられるため、好きなタイミングで手を合わせられます。手元供養のためのグッズを用意し整えればできるため、費用を抑えやすいのもメリットです。
インテリアになじみやすいシンプルなデザインの骨壷や香炉、写真立てなどグッズが多く販売されているため、ペットに似合う色・デザインのものを選べます。普段過ごすリビング・自室に置いていても自然です。
手元供養で何をするかについて、決まりはありません。生前に気に入っていたフード・おやつを供えたり、お気に入りのおもちゃを置いたりと、「喜びそうだな」と思うことをするとよいでしょう。
遺骨をアクセサリーにする
自宅ではもちろん出かけるときも一緒にいたいなら、遺骨をアクセサリーにする選択肢もあります。
遺骨を納められる小さなケースが、ペンダント・キーホルダーになっているタイプなら、購入し中へ遺骨を入れるだけで完成です。ケースの形状によっては、火葬前に切り取っておいた毛を入れられるものもあります。
遺骨を樹脂加工しアクセサリーの一部へ納めるタイプなら、デザインの自由度が高く、日常的に身に着けたくなるアクセサリーを見つけやすいかもしれません。
また遺骨の成分から作る、人工のダイヤモンド・サファイアもあります。加工に時間・コストがかかりますが、通常のジュエリーのような、繊細な仕上がりのアクセサリーとして身に着けられます。
ペットを適切に埋葬して後悔のない見送りを
大切なペットが死亡したときには、後悔しない見送りができるよう、埋葬方法の確認が必要です。土葬ならコストを抑えられますが、近隣に迷惑がかかる可能性があります。
火葬後に埋骨すれば、土葬のデメリットを避けつつ、身近な場所にペットを埋葬できます。しかし引っ越すときには、掘り起こして一緒に持っていかなければなりません。
納骨は永代供養を依頼できる施設もありますが、費用が高額になることもあります。「いつも身近にペットの存在を感じていたい」という希望がある場合には、手元供養も候補に入れて検討するのがおすすめです。