最近は起業を志す人が多くなってきていますが、会社設立に必要な費用を考えたときに尻込みする人も中にはいるのではないでしょうか。しかし、現在は1円で起業できるということを皆さんはご存知でしょうか。
そこで今回の記事では、1円起業の概要や手続き、起業のための費用について詳しく説明します。
この記事を監修した税理士
竹田健司税理士事務所 - 東京都豊島区南池袋
「1円起業」とはどういうこと?
実際に1円起業とはどういうことなのでしょうか。言葉のとおり、費用1円で会社を設立することなのでしょうか。ここでは1円起業の概要について説明します。
「1円起業」とは資本金1円で会社を起業すること
会社設立をする際、資本金を払込む必要があります。資本金は会社の事業運営に必要な資金として起業者が設立時に払込むものです。1円起業とは、払込む資本金の金額を1円で会社を設立するということです。
1円起業は会社法上可能ということですが、実際に1円で会社の事業活動をすることは一般的には不可能ですし、資本金1円というのは現実的ではありません。
2006年の会社法改正で1円起業が可能になった
2006年に会社法の改正があり、1円起業が可能になりました。
それ以前は「最低資本金制度」といって、株式会社と有限会社の設立にはそれぞれ資本金1,000万円と300万円が最低必要でしたが、会社法の改正があったため当該制度は廃止されました。
元々、最低資本金制度は会社に対する債権者保護のために資本金の最低額を定めたものでしたが、実効性に乏しく、また、新規企業参入の阻害要因になっている理由から廃止されており、現在は資本金1円から起業ができることになりました。
会社を設立する方法と必要な費用
払込む資本金の金額が1円で会社設立できるというのが「1円起業」ということは前述したとおりです。しかし、実際に会社の設立が1円できるというわけではありません。当然、会社設立の手続きには費用も掛かります。
ここでは、株式会社と合同会社の設立に必要費用と設立方法を詳しく解説します。
株式会社の場合
まずは株式会社から見ていきましょう。
株式会社設立のために必要な費用は下記のとおりです。
- 登録免許税 :150,000円
- 定款認証手数料 : 50,000円
- 定款謄本手数料 : 2,000円
- 法人実印作成費用 : 5,000円~
- 設立者の印鑑登録証明書: 300円(×必要部数)
- 会社登記簿謄本発行費 : 500円(×必要部数)
- 資本金の払込み : 1円~
上記1~3までを法定費用といい、株式会社設立に当たって定額で掛かる費用になります。ちなみに、資本金が2,142万円を超える場合は210,000円の登録免許税が掛かるので注意が必要です。
続いて、株式会社設立の方法を見ていきましょう。株式会社の設立に当たっての流れは以下のとおりです。
(1)会社の基本事項の決定
まずは社名に当たる商号や役員報酬・資本金額などの基本事項を決めます。今後の手続きに必要な法人印鑑も併せて作成します。
(2)定款の作成
基本事項を決めたら定款を作成します。定款には会社の事業目的や商号、本店所在地などの必要事項を定めます。絶対的必要事項など定款で定めなくてはいけないものが抜けていると定款自体が無効になることもあるので過不足がないように注意しましょう。
(3)資本金の払込み
基本事項で決めた資本金を実際に払込みます。資本金はお金で払込む必要はなく、現物出資という方法で払込むことも認められています。
(4)登記関係書類の作成
続いて、会社設立に必要な登記関係書類を作成します。代表取締役選定書や発起人決議書・議事録などの会社設立に必要な申請書類を準備します。
(5)登記の申請
登記関係書類の準備ができたら、法務局に会社設立の登記申請を行います。登記申請は資本金払込後、2週間以内に行う必要があるので遅滞なく申請するようにしましょう。登記申請日が会社設立日になります。
(6)各種行政手続き
会社が無事に設立した後も行う手続きがいくつもあります。会社設立したら、税務署に法人設立の届出を提出するなど、年金事務所やハローワーク等で社会保険の加入手続きを行う必要があるので、忘れずに行うようにしましょう。
以上が、株式会社の設立方法です。
上記のとおり、決める事や手続き等が多岐に亘るため、事前準備を怠らず計画的に進めるようにしましょう。
合同会社の場合
次に合同会社設立に掛かる費用を見ていきましょう。
合同会社の設立に際して、定款認証は不要です。
そのため、株式会社と比べるとかなり設立費用が抑えられます。
合同会社設立のための費用は下記のとおりです。
- 登録免許税 : 60,000円
- 法人実印作成費用 : 5,000円~
- 設立者の印鑑登録証明書: 300円(×必要部数)
- 会社登記簿謄本発行費 : 500円(×必要部数)
- 資本金の払込み : 1円~
見て頂くと分かると思いますが、合同会社の場合、法定費用が登録免許税60,000円だけのため設立費用が低くなります。
なお、登録免許税は株式会社と同様に資本金の大きさによって変わってくるので注意しましょう。
続いて、合同会社の設立手続きについて下記のとおり見ていきましょう。
株式会社と同様に基本的な流れは変わりませんが、合同会社の方が決定事項が少ないなど、株式会社の設立のための手続きと比較すると簡単になっています。
(1)会社の基本事項の決定
初めに会社の商号や本店所在地などの基本事項を決定します。株式会社と違い、取締役等の機関設計は不要なため、決定事項が少なくなっています。
(2)定款の作成
株主や株式という概念が合同会社にはありません。そのため、定款には(1)の決定事項を盛り込むことになります。
(3)資本金の払込み
株式会社と同様に定款作成後は資本金を払込みます。
(4)登記関係書類の作成
次に合同会社設立のための登記関係書類を作成します。作成する書類は基本的には株式会社と同様ですが、合同会社の場合は「登記用紙と同一の用紙」を追加で作成する必要がありますので、忘れないようにしましょう。
(5)登記の申請
株式会社と同様、資本金払込み後、2週間以内に登記関係書類を作成し法務局に提出する必要があります。
(6)各種行政手続き
合同会社設立後に行う手続きがあります。税務署への法人開設届の提出や年金事務所等での社会保険の加入手続きなど、株式会社と行うことは変わりません。
以上が合同会社設立のための流れになります。
基本的には株式会社と同じですが、決定する基本事項が少なくなっており、株式会社よりも手軽に設立することができるのが大きな特徴です。
気軽に始められる1円起業…その反面デメリットも
確かに1円の資本金払込みで起業できるというのは大変お手頃ですが、その反面、デメリットもあります。ここでは、1円起業のデメリットについて説明するとともに、1円起業のメリットについても紹介していきます。
銀行からの融資が受けられず、資金繰りに苦労する
一つ目のデメリットは、銀行融資が受けられず資金繰りに苦労するという点です。前述したとおり、資本金とは会社の運営に必要な資金のことを指します。
会社設立時は設立者の自己資金を資本金に充てることが多いのですが、資本金1円の場合、銀行から自己資金が少ないとみなされるため、銀行融資を得られない可能性があるのです。
このことからも、1円起業の成功例は多くないと言われています。会社にとって資金調達の手段として、銀行融資が利用できないのは大きな痛手です。運転資金を確保することもできないので、1円起業で失敗するケースは多いのです。
対外的な信用が不足し、取引に支障が生ずる
取引相手となる会社を選定する際、資本金は大きな武器になります。
なぜなら、対外的に見たとき、資本金は会社の元手になるため金額が大きければ大きいほど、会社の信用度も高くなるからです。逆に、資本金が少ないと会社の運営上、危ういとみなされることがあるため、取引に支障が生ずる可能性があるのです。
資本金は対外的尺度になることを理解しましょう。
採用活動にも影響を及ぼす
資本金は対外的な尺度ということは説明したとおりです。これは、取引先だけでなく就職活動者に対しても同じことが言えます。
資本金1円のため、会社経営が悪くなった時に倒産する可能性も高いのではと就職活動者も考えるので、結果として企業の採用活動にも悪影響を及ぼすことがあるのです。
もちろん1円起業にはメリットもある
1円起業のデメリットと失敗するケースが多いということは前述のとおりです。それでも1円起業するメリットは確かにあります。
まず第一に、資本金1円の払込みで起業ができるため、経営者としてスタートラインに早くから立つことができます。
また、1円起業の場合は税制上のメリットもあり、資本金1,000万円未満で設立した会社は、設立から最大2年間は消費税の納付が免除されるのです。
デメリットだけでなくメリットもあることをしっかり覚えておきましょう。
1円起業はどんな人でもできる?
これまでは1円起業の概要やメリット・デメリットについて解説してきました。起業のハードルが低い1円起業ですが、誰でも資本金1円で起業することができるのでしょうか。
ここでは、1円起業は誰ができるのか、そして1円起業の留意点について解説します。
1円起業は、だれでも可能!
実際に1円起業は誰ができるのでしょうか。結論から言いますと、1円起業は誰でもできます。会社員であっても1円起業することができるのです。
ただし、1円起業には会社設立のために設立者の印鑑登録証明書が必要になるため、15歳未満の者が設立者になるためには、親権者である法定代理人を発起人に立てる必要があります。
また、設立者が15歳以上でも未成年の場合は、法定代理人の同意がないと発起人になることはできないので注意が必要です。
個人事業主なら0円でも始められる!
1円起業であれば基本的に誰でも会社を設立できることが分かりました。しかし、会社を設立すると社会保険の加入義務や交際費の取扱いなどに制限があるため、会社設立がかえって不利になることもあります。そんなときは、個人事業主での開業を選択肢として考えてみてはどうでしょうか。
個人事業主であれば、資本金0円から始められますし、社会保険の加入要件や交際費の取扱いなどで有利になるケースもあります。
ぜひ、双方のメリットとデメリットを把握した上で、会社設立するのか、個人事業主として開業するのか選択するようにしましょう。
1円起業の経営者は節約に全力投球を
1円起業はリスクも高いですが、もし、1円起業を選択する場合は経営者として節約するよう心がけましょう。
資本金というのは会社運営のための資金です。運営に投入できる資金が1円のため、経費をどこまで削れるかが会社存続の鍵になります。
そのため、従業員の社会保険料や販促費用、その他消耗品費などを必要最小限に抑えて、会社経営に支障がないように節約に全力投球しましょう。
監修税理士からのコメント
竹田健司税理士事務所 - 東京都豊島区南池袋
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この記事の監修税理士
竹田健司税理士事務所 - 東京都豊島区南池袋