合同会社と株式会社どちらにした方が良いのかは、会社を設立する個人事業主の方にとって、大きな悩みの1つとして挙げられると思います。
どちらを選択するかは、2つの会社の違いを正しく理解しなければなりません。そこで、今回は合同会社と株式会社の違いとは何かわかりやすく解説していきます。
会社設立を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
監修してくれた税理士
大原政人税理士事務所 - 神奈川県川崎市川崎区
合同会社と株式会社10ポイントの違い
簡単に説明すると合同会社と株式会社の大きな違いは、規模や責任、資本金に関する事柄であると言えます。
とはいえ、一言で2つの会社の違いを理解することは難しいため、具体的な合同会社と株式会社の違いについては、10個のポイント用いて1つ1つ見ていきましょう。
下記は、10ポイントの違いを簡単に表にまとめたものです。
1.信用力
会社の規模からもなんとなく想像つく方が多いと思いますが、合同会社よりも株式会社の方が信用力が高いという大きな違いがあります。
ここで言う信用力というのは「認知度」のことを指します。合同会社は近年制定された会社形態であるためそもそも世間の認知度が低いのです。
信用力が高いということは金融機関からも融資を受けやすく、株主を募るなどの資金調達にも有利に働きます。
2.設立費用の違い
会社の設立にかかる費用も違い、株式会社に比べて合同会社の方が会社設立費用が安いです。
具体的に会社設立の初期費用で必要な実際に各会社にかかる金額を下記の表にまとめました。
株式会社 | 合同会社 | |
登録免許税 | 15万円 | 6万円 |
定款認証代 | 5万円 | 0円 |
それぞれにかかる費用の合計は、株式会社が20万円、合同会社が6万円となりました。
総額から見ても、かなり合同会社が安いのがわかります。定款認証は会社設立には必要とされていますが、合同会社の場合には不要なため費用もかかりません。
また、定款認証代よりも大きく違うのが登録免許税です。2倍もの差があるので、コストを抑えて会社を設立したい事業主は合同会社設立を選んだ方が良いでしょう。
3.ランニングコストの違い
法人を存続させるために必要なランニングコストですが、株式会社より合同会社の方が安いという違いがあります。
株式会社は2つの義務により毎年約6万円以上のランニングコストがかかります。
・官報掲載費
国の発行する文書である「官報」に決算情報を公示する義務。費用は毎年約6万円。
・定款の書き換え
会社の規則を定める定款。役員の任期による変更時にはこの手続きが必要。書き換えの際には6万円の費用が必要。
合同会社は決算公示の義務がなく、役員の任期に制限がないため手続きの必要がありません。そのため、株式会社と比べて約12万円もランニングコストを削減することができます。
4.出資者と経営者
株式会社と合同会社は出資者と経営者の関係性が異なります。この違いによって、経営できる立場の人間が大きく変わってくるのです。
・株式会社=出資者と経営者が分離している
・合同会社=出資者と経営者が同じ
分離しているというのは出資をしていなくても経営することができるということなので、ある程度経営者を自由に選ぶことが可能です。
出資者と経営者が一緒である合同会社は、経営に参加する条件として必ず出資していなければなりません。また、第三者に出資をしてもらった場合は、その人も経営に参加するということになるので注意が必要です。
5.意思決定の速さ
会社の運営をしていく上で必要になってくる意思決定ですが、合同会社と株式会社のシステムが違うためそのスピードも変わってきます。
株式会社の会社運営には法律により株主総会の開催や取締役の設置が定められているため、意思決定がなされるまで相当の時間が必要です。
それに比べて合同会社は、法律による規制もないため、定款において合意されているルール内であれば意思決定を自由に行うことが可能となります。これは、合同会社の出資者と経営者が同じというシステムであるからこそできる経営方法なのです。
意思決定のスピードは経営には必要で、会社の利益にも大きく関わってきます。迅速に意思決定がなされる合同会社はそれだけ柔軟な経営が可能になってくるということです。
6.利益分配
会社のビジネスによって生み出された利益は各会社によって配分が異なります。
株式会社は出資額に応じて利益配分が決められるため、出資力の大きい人ほど利益を多く受け取ることが可能です。逆に、会社への出資額が低い場合には、利益を受け取れる可能性は低くなってしまいます。
これに対して合同会社は、会社設立時の「定款」に定められているルール通りに利益が配分されます。つまり、最初に定めたルールが「均等配分」である場合、出資額に関係なく利益を均等に受け取ることができるのです。
また、合同会社では出資額のみで判断される株式会社と違い、「能力による利益配分」などといった柔軟な対応をすることも可能になってきます。
7.内部機関の違い
株式会社は会社法によって定められている規定があるため、それに従った会社運営を行わなければなりません。
・取締役、監査役の設置
・株主総会の開催
・決算公告義務
また、株主総会開催時には必ず議事録も作成しければならず、小規模の企業の場合には無駄な作業が多いと言えるでしょう。
合同会社の場合は法律によって強制されることはないので「定款」に定められたルールが全てとなります。会社設立時の定款の内容によって、柔軟な経営や意思決定の迅速化などをはかることが可能です。
8.取締役の任期
株式会社での取締役の任期は2年が原則ですが、条件次第で最長10年まで延長することが可能です。
合同会社はそもそも取締役という役職はありませんが、役員の任期は無制限となっています。
さらに、任期がある株式会社では役員が変更するたびに定款などの変更と登録の必要があり、費用と手間がかかります。
定款の書き換えには6万円の費用がかかるため、合同会社はその分のコストを抑えることが可能なのです。
9.代表者の肩書
肩書には代表社員や社長、CEOなど様々なものがあります。肩書はあくまで会社が定めるもので法的な決まりはないため、ある程度自由に決めることが可能です。
しかし、例外なのが「代表取締役」です。この肩書は株式会社の代表が必ず使用しなければならないものなので、合同会社は使用することができません。
株式会社の代表者は必ず「代表取締役」と定められ、合同会社は「代表社員」「社長」「CEO」の肩書を使用するのが一般的です。
10.上場できるか
そもそも上場とは会社の株式を誰でも自由に購入することができることを言います。つまり、上場企業とは証券取引所で株式を公開している会社のことです。
知名度の上昇や金融機関からの信用度が上がることにより資金繰りに苦労しなくなるなど、上場すると様々なメリットが発生します。つまり、上場することで会社全体のレベルが上がる仕組みになっているのです。
この上場ができるのは、株式会社のみです。合同会社は上場することができないため、さらなる事業の拡大は難しいでしょう。
合同会社 株式会社それぞれ向いている業種
まず、どのような業種にしても「会社を大きくしたい」「株式で上場したい」などの考えがあるのであれば、株式会社を設立すべきです。
また、株式会社には以下の業種が向いています。
・自動車メーカー、製薬会社などの開発系
・ベンチャーキャピタルなどの資金調達を行う企業
いずれも、資金調達や多額の研究開発費が必要な業種です。
合同会社に向いているのは以下の場合です。
・小売店、飲食業などのサービス系
・コンサルタント、デザイナーなどの技術系
・地域おこし事業
小規模なお店などには合同会社が合っています。また、個人事業主の方が会社を設する場合も、低コストで設立できる合同会社の方が良いです。
合同会社と株式会社違いのまとめ
合同会社と株式会社の違いを10個のポイントで見てきました。大きく関係してくるのは会社にかかる費用や規定です。
今回の記事を見てくださった方は会社設立をどちらでするべきか悩まれている方が多いと思います。両者の違いを理解したことで、自分が設立する会社の将来をしっかり計画した上で検討しなければならないことがわかっていただければ幸いです。
会社の未来像が決まったら、ぜひ、今回の記事を参考にして合同会社、株式会社どちらにするか検討してみてください。
監修税理士のコメント
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