自宅の近くで大きい蜂を見かけると、巣があるのではないか、刺されるのではないかと不安になります。しかし蜂の危険度は種類によって異なり、大きい蜂がすべて危ないとは限らないため、判別することが大切です。大きい蜂の見分け方や対処法を解説します。
大きい蜂=危険とは限らない
日本には数多くの蜂が存在していますが、危険度は種類によって異なります。サイズが大きいからといって、必ずしも危ない蜂とは限りません。危険度別の蜂の種類や毒針について解説します。
蜂には花蜂(ハナバチ)と狩蜂(カリバチ)がいる
蜂の種類はハナバチとカリバチに大別できます。花粉や花の蜜を食べる蜂がハナバチ、狩りをして獲物を捕らえる蜂がカリバチです。
日本に生息する主なハナバチには、ミツバチ・クマバチ・マルハナバチなどがいます。いずれも頻繁に花を訪れるため、植物の受粉にとって重要な役割を果たしている生き物です。
カリバチは単独性カリバチと社会性カリバチに分けられます。主な単独性カリバチはアナバチやベッコウバチです。スズメバチやアシナガバチは社会性カリバチに属しています。
これらの蜂のうち危険度が高いのは、スズメバチやアシナガバチを代表とする社会性カリバチです。ほかの種類と異なり、蜂のほうから人間を刺すことがあります。
毒針とアナフィラキシーショック
蜂の毒針はメスの産卵管が変化したものであり、メスのみが持つものです。オスの蜂も刺すそぶりはみせるものの、毒針を持っていないため実際に刺されることはありません。
ミツバチの針には返しがついており、いったん刺すと体から針が離れ、蜂は死んでしまいます。一方スズメバチの針には返しがないため、何度も刺せることが特徴です。
ミツバチに代表されるハナバチの仲間は、めったに刺しませんが刺されると危険です。特にニホンミツバチは、スズメバチを殺せるほどの強力な毒針を持っています。
人間が蜂の毒針に刺されると、アナフィラキシーショックにより血圧低下や意識障害を引き起こす恐れがあります。蜂による死亡事故は、ほとんどがアナフィラキシーショックによるものです。
スズメバチの仲間
スズメバチは蜂の中でも特に攻撃性が高く、毒性も強い点が特徴です。追跡距離も長く毒針を何度も突き刺してくるため、最大限注意しなければなりません。代表的な大型のスズメバチを紹介します。
日本で最も大きな蜂「オオスズメバチ」
危険度が高いスズメバチの中でも、特に凶暴な種類の蜂です。サイズ・毒の量・攻撃力のどれをとっても、スズメバチの中で最高レベルを誇っています。
女王バチの大きさは40~50mm、働きバチは27~38mmです。大きなあごで攻撃対象にかみつき、約6mmもの長い針を突き刺します。
オオスズメバチの巣は土の中に作られることが多く、自力での駆除は困難です。山林では木の穴などに巣があるため、山登りの際は注意しなければなりません。
巣の大きさは直径が1mを超えることもあります。活動時期は5~11月で、エサが少なくなる秋には、ほかの蜂を襲うほど凶暴になります。
警戒心の強い大型種「ヒメスズメバチ」
スズメバチの中でも、オオスズメバチに次ぐサイズの大きさを誇ります。女王バチ・働きバチともに、体長は24~37mmです。
警戒心が強いため、人間が巣に近づくと即座に威嚇します。ただし毒性は弱く、攻撃性もそれほど強くありません。
巣を作る場所は、人間の生活圏なら屋根裏や床下などの閉塞空間が一般的です。アシナガバチの巣にいる幼虫のみをエサにするため、活動時期もアシナガバチと同じ5~10月です。
体全体が茶色っぽく、腹端の色が黒いため他のスズメバチと容易に区別できます。よほどのことがない限り、ヒメスズメバチに刺される心配はありません。
夜間も活動する「モンスズメバチ」
ほかのスズメバチと異なり、夜間に活動する習性を持つ蜂です。凶暴性が高く、人間に対しても比較的好戦的に襲ってきます。
体長は女王バチが約30mm、働きバチは20~28mmです。お尻の部分にある黒い波打つ模様が特徴ですが、飛んでいる成虫を見分けるのは難しいでしょう。
屋根裏や壁のすき間など、閉塞空間に営巣するのが基本です。巣のある場所が狭くなると、より開放的な場所へ引っ越す習性があります。
アシナガバチの仲間
アシナガバチは、スズメバチと同様に人を刺すタイプの蜂です。巣に近づいただけでは攻撃されることが少ないものの、人間の生活圏によく営巣するため、思いがけず刺激を与えてしまうことがあります。アシナガバチの中でも大型の仲間を紹介します。
背中が黒いのが特徴「セグロアシナガバチ」
アシナガバチのなかでも、特に高い攻撃性を持つ部類の蜂です。活動期間は3~11月で、7~8月に活動が最も活発化します。
模様がなく真っ黒な背中が見た目の大きな特徴です。触角は全体的に黄色っぽく、足の先端の色も黄色になっています。
体長は21~26mmと、アシナガバチのなかでも大型です。軒下・木の枝・岩陰など、開放的な空間に営巣します。巣の形状は円盤状で、大きさは最大約15cmです。
人間が巣に近づくと、巣を守るために攻撃してくることがあります。うかつに巣へ近づくと危険です。
攻撃性・毒性が強い「キアシナガバチ」
体長が18~26mmと、アシナガバチの中でも大型の部類に属します。攻撃性・毒性ともに強く、巣を刺激すると攻撃してくることがあるため注意が必要です。
見た目は全体的に黄色く、背中の上に模様があります。背中の後方にも黄色い模様が2本入っており、触角は半分暗色です。背中の模様の有無で、セグロアシナガバチと区別できます。
キアシナガバチは、さまざまな場所に巣を作ることが特徴です。人間の生活圏においては、軒下や壁面、車庫などに営巣します。人が目にすることの多い種類の蜂です。
アナバチの仲間
単独性カリバチであるアナバチの仲間は、性格が穏やかで危険度は低い蜂です。アナバチの中でも大型のクロアナバチについて解説します。
バッタを専門に狩る「クロアナバチ」
アナバチの仲間であるクロアナバチは、昆虫を好んでエサにする蜂です。体長は25~30mmと大型ですが、とても温和な性格の蜂として知られています。全身は真っ黒で白い顔をしていることが特徴です。
攻撃性は非常に低く、蜂や巣へ故意に触れなければ、刺されることはほとんどありません。毒性も、エサとなる昆虫をしびれさせる程度の弱さです。
他の蜂と異なり、クロアナバチは土の中に巣を作る習性があります。水はけや日当たりのよい場所に営巣し、アリのように巣へ昆虫を運び込み、幼虫のエサにしています。
ハナバチ・クマバチの仲間
ミツバチの仲間であるハナバチやクマバチは、おとなしい性格の持ち主であり、人を攻撃することはほとんどありません。大型のクマバチやクロマルハナバチについて、特徴を解説します。
羽音は大きいが性格は温厚「クマバチ」
体長が約23mmと大型で、熊のようなずんぐりした体形であることから、クマバチと名付けられています。大きな羽音をたててホバリングをするのが特徴です。
地方によってはスズメバチのことを『クマンバチ』と呼ぶことがあるため、クマバチは凶暴なイメージをよく持たれます。しかし、見た目や羽音によらず非常に温厚な性格の持ち主であり、めったに人を刺しません。
花に穴を開けて蜜だけを吸い取る「盗蜜」を行うことが特徴です。藤の花と関係性が深く、固い花弁を持つ藤の花は、クマバチに穴を開けてもらうことで初めて受粉します。
黒毛に覆われた丸い蜂「クロマルハナバチ」
体中に黒色の毛が密生している蜂です。体長は19~23mmと大型で、クマバチと同様に大きな羽音をたてますが、温厚な性格でめったに人を刺しません。
ミツバチと同じく花の蜜をエサにし、受粉活動も行います。ミツバチは体に花粉を付けて運ぶのに対し、クロマルハナバチは花にぶら下がって揺らし、落ちた花粉をおなかで受け止めて集めます。
蜜のないトマトやナスの受粉には欠かせない益虫です。またミツバチに比べ、低温や低照度の状況でもよく活動します。1匹あたりの訪花数が多く、30分間で約300花を訪れるほどです。
大きな蜂を見かけたときの対処法
近くに大きな蜂がいた場合の、気を付けるべきポイントを解説します。刺激を与えないことや巣の場所を確認することが重要です。
種類を特定して静かにその場を離れる
大きな蜂を見かけたら、まずは可能な範囲で種類を特定しましょう。蜂の種類がわかれば巣の駆除が必要かどうか、その後の対処をしやすくなります。
どのような蜂の種類であれ、誤って刺激してしまうと刺される恐れがあるため、静かにその場を離れることが重要です。姿勢を低く保ち、ゆっくりと立ち去りましょう。
大声で叫んだり追い払うような動きをしたりすると、蜂を刺激することにもなりかねません。スズメバチなど仲間を呼び寄せる蜂もいるため、長居は禁物です。
蜂は自分自身や巣を守るために人を攻撃します。誤解を与えるような行動をとらないことを意識するのが大切なポイントです。
敷地内に危険な蜂の巣がないかを確認
蜂をよくみかける場合、高い確率で近くに巣があります。巣を駆除しなければ蜂はいなくならないため、敷地内に蜂の巣がないか確認しましょう。
蜂の営巣場所は種類にもよりますが、主に開放的な空間と閉鎖的な空間の二つにわけられます。蜂の種類が分かれば、巣の場所を特定しやすくなるでしょう。
木材に穴を掘って巣を作るクマバチがいる場合、放っておくと家屋の木材が穴だらけになり、深刻な被害を与えかねません。早めに駆除する必要があります。
駆除は業者に依頼する
蜂の巣駆除を自分で行うのは大変危険です。専門的な技術を必要とするため、必ず業者へ依頼しましょう。専門業者なら安全かつ確実に巣を駆除してくれます。
迅速に対応してくれる業者や、どのような種類の蜂でも対応してくれる業者がおすすめです。現地確認費用や見積もり費用、追加費用がかからないかもチェックしましょう。
よさそうな業者を数社ピックアップしたら、それぞれに連絡して相見積もりを取ることが大切です。現場を見なければ見積もってくれない業者は、上限額だけでも確認しておきましょう。
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蜂の種類を見極め、安全な方法で対処しよう
蜂には数多くの種類が存在し、大きい蜂だからといって危険度が高いとは限りません。見た目の特徴や危険性を知り、蜂の種類を特定できるようになることが重要です。
ただし性格が温厚な蜂でも、蜂や巣を刺激すると攻撃してくることがあります。蜂を見かけたらその場を離れ、巣の場所を特定した後はすぐに業者へ駆除を依頼しましょう。
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