日頃の生活でハチと遭遇することは少なくありません。全ての種類のハチが同じように攻撃性や毒性を持っているわけではなく、それぞれに特性があります。
ときおり見かける「クロアナバチ」の生態や駆除方法に加え、よく似たハチについても紹介します。
クロアナバチはアナバチの仲間
ハチと出会うと反射的に刺されることへの不安を感じ、つい慌ててしまう人もいるでしょう。
一口にハチといっても、その種類は多様です。攻撃性が旺盛なものもいれば、体が小さく毒性がないものもいます。
国内に生息する1種である「クロアナバチ」は、どのような習性を持っているのでしょうか?
アリによく似たクロアナバチ
体長は比較的大きく黒色をしていることが特徴です。地面に穴を掘りますが、その姿は大きなアリのようにも見えます。黒い姿で穴を掘ることからその名が付けられました。
アシナガバチやスズメバチなどは、集団で生活する種類のハチです。これに対してクロアナバチは、単独で行動しながらウマオイやツユムシ、クダマキモドキといった大型バッタを捕獲します。
毒針で獲物を仕留め、巣穴に持ち帰り産卵に臨むという行動形態です。孵化した幼虫は、巣に運ばれたバッタを食べて育っていきます。毒針はあるものの人を襲うことはめったにないので、特におそれる必要はありません。
アナバチにくくられるハチは、畑などで栽培物を食い荒らすバッタやガの幼虫を捕食します。そのため人に害をおよぼすどころか、益虫としてとらえられているのです。
アナバチは土の中に巣をつくる
土の中に営巣するのも大きな特徴です。庭などでクロアナバチを見かけ、地表にポツリポツリと穴が開いていたり、こんもりと膨らむ部分があったりしたら、そこに巣がつくられている可能性があります。
アナバチは種類によって巣のつくり方が異なります。幼虫を育てるうえでひとつの部屋だけをつくる「単房室型」と、複数の部屋をつくる「多房室型」がありますが、個々の幼虫を別々に育てるクロアナバチは多房室型です。
休眠期に幼虫は巣の中で、地上から運ばれた昆虫などを食べて成長し、成虫は樹木の蜜を吸って生活します。巣づくりは主杭と呼ばれるそれぞれの房室をつなぐ道をつくらなければならないため、非常に時間がかかるのです。
スズメバチとも似ているため、遭遇すると慌ててしまう人は多いでしょう。しかし進んで人を襲うことはないので、それほど警戒する必要はありません。
毒性と刺された際の対処法
攻撃性が低く人に対する毒性も極めて弱いアナバチは、危険性が低い安全なハチといえます。それゆえ身の回りに現れても、さほど不安を抱く必要はありません。
毒は有しているものの、バッタなどの昆虫を麻痺させ、動けない状態にして巣に持ち帰るために使われます。外敵を攻撃するためのものではありません。
オオスズメバチのように近づいただけですぐに人を攻撃するような性質ではなく、反対に離れていくことの方が多いでしょう。しかし巣を踏むなどして危害が加えられたと判断したら、襲ってくる場合もあることは知っておきましょう。
クロアナバチの駆除方法
比較的安全で益虫に位置づけられる存在とはいえ、いない方がよいと考える人も多いでしょう。そこで駆除の仕方について解説します。
クロアナバチは駆除すべきか?
農作物を食い荒らす虫をエサとして仕留める刈りバチであり益虫であるため、環境面を中心に考えれば、むやみに駆除しない方がよいともいえます。しかし生活に支障を来すようであれば、駆除すべきです。
たいていは土中に営巣しますが、まれにコンクリートの壁に巣をつくる場合もあります。また地面に穴を開けることから低い場所に生息すると思いがちですが、屋根裏などの高所に営巣するケースもあるのです。
このような状況になると、建材の破損・劣化につながり、ひいては建物の安全性にも影響を与える危険性があります。また室内にハチが入り込む原因にもなり得るので、駆除が必要になるでしょう。
ほかのハチの巣と間違える可能性も
地上で巣づくりを行うハチであっても、ときに土の中で営巣するケースもあります。刺されると場合によっては人命にかかわるスズメバチも、土中に巣をつくることもあるのです。
クロアナバチの生態を知って「巣があっても安心だ」と思い込んでしまうと、もしそれが別の種類のハチの巣であった場合に、思わぬリスクとなります。それがスズメバチだとしたら、気づいたときにはとても危険な環境になってしまうでしょう。
知らぬ間にリスクが大きくなってしまうことを避けるという点では、駆除することの意味は小さくありません。
クロアナバチに似たハチに要注意
国内に生息するハチには数多くの種類があります。その中から注意すべきものについて紹介しましょう。
クロスズメバチ
性質は比較的に温和で、攻撃性や威嚇性に関しては弱いながらも、人を刺すことがある点には注意が必要です。体長は10~15mmで、光沢のない黒色の体に白い斑紋があります。
6月頃になると働きバチが羽化し、その後10~12月にかけて新女王やオスが羽化します。巣は大きな規模になり、8~12の巣盤数に、8000~1万2000もの育房数を有しているのです。
オオハキリバチ
木材や竹筒に穴を開けて巣をつくる習性があります。切り取った葉によって営巣することから「ハキリバチ」と呼ばれることもある種類です。似た名前のオオハキリバチは、巣の材料に葉は使用しないので混同しないようにしましょう。
成虫になると22~25mmほどの体長になります。全体的に黒色の体色で、胸部を薄い黄色い毛が覆います。薄茶色の翅(はね)があり付け根は透明で、頭が丸く大きいことも特徴です。
ドロバチ
7~9月にかけての夏場に巣づくりを行うハチです。地上で青虫を捕まえ、それを巣の中に持って帰ります。巣に青虫を引き込んだら産卵し、孵化した幼虫はその青虫を食べて成長していくのです。
青虫を持ち帰り産卵をした後には、親は外に出て、巣穴をふさいでしまいます。そして親自らも巣に戻ることがなくなるのです。残された幼虫は青虫を食べ、翌春にさなぎから羽化して、自分の力で巣を飛び立ちます。
正体不明のハチの駆除は慎重に
ハチにはつい恐怖心を抱いてしまいがちですが、全てがおそれるべき対象ではありません。逆に人に利益をもたらす益虫としてのハチも存在します。
しかしながら、瞬時に危険なハチかそうでないかを見分けるのも難しいでしょう。安全性や特性が分からなければ慎重に対処して、ときには駆除も検討しましょう。
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