初七日(しょなのか/しょなぬか)とは逝去日を入れて7日目のことです。この日、没後初の法要を営みます。
昨今では必ずしも7日目ではなく、葬儀と同日に行うケースも一般的です。実質、死去日から見れば葬儀施行終了が、早くても5日目くらいが普通ですので、ほとんどが同日になされるようです。
初七日で法要をする意味や、いつ行うのか、またお布施や香典といったマナーを抑えておきましょう。
この記事を監修した専門家
日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
二村 祐輔
初七日とは?
故人が亡くなってから7日目に行う法要が「初七日忌」で、故人が往生するための大切な儀式です。
初七日忌法要の由来は「人間は亡くなった後、生前に善行を積んでいれば極楽浄土へ、悪行を重ねていれば地獄へ行く」という仏教の教えからきています。
初七日は三途の川を渡る大事な日
仏教では亡くなった日から49日目までの期間を「中陰(ちゅういん)」と呼び、7日ごとに7回、故人を極楽浄土に行かせるか否かの審判がそれぞれの仏さまによって行われると言い伝えられています。
初七日は初審判の日であり、また故人が三途の川を渡り、あの世への行き先を決める大事な日でもあります。
三途の川は悪行を重ねてきた人ほど、川底が深く流れが速い場所を渡らなければなりません。一方で生前の善行が多い人ほど、浅瀬の流れがゆるやかな浅瀬を通って、苦労せず向こう岸に渡れるとされています。
そのため初七日忌法要では、故人が無事に三途の川を渡り切り、往生できるように祈られてきました。
近年は葬儀と同日に実施する
初七日忌法要は、現在では以下いずれかのタイミングで行われています。
- 葬儀と同日の火葬前「式中初七日忌法要」「繰り込み初七日忌法要」
- 葬儀と同日の火葬後「繰り上げ初七日忌法要」
- 従来通り、葬儀の後日の7日目当日「初七日忌法要」
本来亡くなってから7日目の法要が初七日忌ですが、近年は葬儀と同日に行う「繰り上げ初七日忌法要」や「式中初七日忌法要」「繰り込み初七日忌法要」が増加傾向です。
その背景には、都市部では参列者の減少や、仕事との兼ね合いなどの事情があります。地方においても、親族が葬儀や法要のたびに集まるのは難しいでしょう。
葬儀と同じ日であれば、改めて集まる必要がなく、また喪主の負担も減らせます。
実際のタイミングは式次第にもよるため、葬儀社と相談のうえ決めると良いでしょう。
初七日忌法要の流れ
初七日忌法要では読経の後に、遺族・親族の焼香、喪主の挨拶という流れが一般的です。法要の後の会食は行わないこともあります。
「式中初七日法要・繰り込み初七日法要」「繰り上げ初七日法要」「初七日法要」それぞれの当日の流れを確認しましょう。
式中初七日忌法要・繰り込み初七日忌法要
「式中(しきちゅう)初七日忌法要」「繰り込み初七日忌法要」は葬儀・告別式の直後に行う法要です。
当日は以下のような流れで行われます。
- 葬儀・告別式の読経(40分)
- 初七日忌法要の読経(10分)
- お別れ・出棺・火葬(180分)
- 精進落としなどの会食(90分)
所要時間 : 約5時間(※時間は目安)
火葬場に移動する前のタイミングであるため、葬儀に続いて法要をまとめて済ませられます。特にそのための移動が少ない点が「式中」や「繰り込み」法要のメリットです。
繰り上げ初七日法要
葬儀同日、火葬後に行う初七日が「繰り上げ初七日法要」です。
1.葬儀・告別式の読経(40分)
- お別れ・出棺・火葬(180分)
- 初七日忌法要の読経(20分) 還骨法要も含む
- 精進落としなどの会食(90分)
所要時間 :5時間半(※時間は目安)
繰り上げ初七日法要の場合、葬儀・告別式の後一度火葬場へ移動します。火葬が終わったら、再び葬儀場に戻って法要をする流れです。
移動を多く挟むため、「移動が面倒」「所要時間が長い」と感じる人もいるかもしれません。
初七日忌法要
従来通り、葬儀・告別式とは別日に初七日法要を行うパターンであれば、当日は以下の流れになります。
- 初七日法要(30分~60分)
- 会食(90分)
所要時間 : 3時間程度
法要のみ行う場合は、読経後、解散で所要時間が短いでしょう。
わざわざ遠方から参列に訪れるのは負担が大きいと考えられることから、別日に法要を執り行うケースは、近年減少傾向にあります。
初七日から四十九日までの過ごし方
初七日から四十九日までの期間は「忌中(きちゅう)」とされ、一般的に慶事や祭事への参加や出席は慎むべきとされています。
- 神社への参拝:神道の忌中は50日間。忌中の間は神社参拝など「鳥居をくぐる」のを避ける。
- 正月の飾り付け・年賀状など:年始の挨拶は喪中はがきで。鏡餅などは飾りなしで、餅だけを供えてもよい。雑煮もよいが、おせちなどは避けるのが一般的。
- 結婚式:出席はしない。(先方が「忌み」を嫌うから)、よって慣例的な慶事ごとは控える。他にも成人式や祝賀会も可能な範囲で控える
- 旅行・レジャー:忌中の間は「謹慎期間」として遊びごとは控える。仕事での出張などは問題ない
四十九日までは故人の冥福を祈り、慎ましく生活することが大切です。忌中の期間は後飾り祭壇と呼ばれる祭壇に、線香やお水、生花やお菓子を供えて、心静かに過ごすようにしましょう。
なお初七日までの期間中は特に謹慎を強いられる期間ですので、十分注意して「忌み籠り」に徹しましょう。
初七日忌法要のお布施の用意について
葬儀同様に、初七日忌法要でもお布施を用意します。初七日法要で渡すお布施の基本ルールや、マナーを解説します。
法要のお布施は葬儀とは別に用意する場合も
一般的には同日の初七日忌法要のお布施は、葬儀時のお布施に含めてお包みすることが多いです。ただし、葬儀のお布施と別包みでお渡しするケースや慣例もあります。
葬儀と同日に行う場合は、葬儀で渡すお布施と初七日の法要で渡すお布施を、1つの封筒にまとめて渡しても問題ありません。別日に法要を行うのであれば、その都度お布施を渡します。
金額は地域やお寺との関係によって異なる
お布施でいくら包むかは、地域やその家の宗派、菩提寺との関係などによって大きく異なります。葬儀と同日に行うかによっても変わるでしょう。
菩提寺がある場合、まずはお寺の住職に、葬儀時のお布施に法要分を含めての目安の金額を聞くのが無難です。「お気持ちで」と言われた場合も、「その目安を教えていただければ」と伺いましょう。菩提寺がない場合は、周囲の経験者や葬儀社に相談するのがおすすめです。
一般的には、葬儀全体で包むお布施は30万~を1つの目安にしているようです。もし初七日の法要を別包みするならば、単体で3万~5万円と考えておきましょう。
お布施はあくまでお寺に対する「寄進」であり、司祭に対する「感謝」をあらわすものです。本来「この金額ではNG」ということはありませんが、あくまでも寺院とコミュニケーションを取ったうえで、納得し、適切な額をお包みできるように心掛けると良いでしょう。
中袋のない無地の白封筒を使用
お布施を包む際は、中袋のない無地の白封筒か奉書紙を使用し、黒墨で「お布施」または「御布施」と表書きします。
中袋のないタイプの封筒を選ぶ理由は、中袋があるものは封筒が二重になっているためです。不幸ごとが「重なる」ことを連想させ、縁起が悪いとされています。
水引がついたのし袋は原則使いませんが、使用する場合は白黒か双銀のものを選びましょう。
お布施以外に御車代や御膳料を用意する
僧侶に渡す心付けはお布施の他にもあります。代表的なものが「御車代」と「御膳料」です。
御車代とは
「御車代」は法要を行う会場までの交通費です。通常は僧侶各々へ5,000円を目安に差し上げますが、遠方からの実費がかかる場合は、それに上乗せした形でお包みします。葬儀と同日の法要ならば、「御車代」は用意した1回分で済みます。
ただし喪主や法要の施主、またはその家族などが直接送迎をした場合や、タクシーをチャーターしてその料金をタクシー会社に直接支払った場合においては、御車代を渡す必要はありません。
御膳料とは
法要後の会食を僧侶が辞退した場合に渡すのが「御膳料」です。会食自体を執り行わなかった場合にどうするかは地域によるため、葬儀社に確認すると良いでしょう。
法要の後に行う会食では、感謝の気持ちを込めて僧侶も誘います。会食参加の可否は、かならず事前に確認しておきましょう。
その場でお召し上がりされないでお帰りになる場合は、会食相当のあつらえたお弁当などをお渡しすることもあります。その場合でも「お膳料」は3,000円くらいお包みするのが良いでしょう。
初七日忌法要の香典マナー
初七日忌法要へ参列するときは、葬儀と同様にあらためてお包みを用意する必要があります。香典の考え方や相場を確認しておきましょう。
葬儀とは別に初七日の香典を用意する
初七日忌法要に参列する場合、地域慣習であらためて香典を別途用意する場合があります。あらかじめそのしきたりなどを調べて、用意していきましょう。
葬儀と同日の法要の場合は、葬儀の香典の半額程度を、初七日法要の香典として追加で包むのが一般的です。一般的な参列者であれば、葬儀の香典が1万円で、初七日法要の香典が5,000円となるでしょう。これも地方慣例によりますので、十分聞いておく必要があります。
しかし初七日法要は、親族とごく近しい近親者のみで執り行われることが多いです。そもそも法要への出席依頼がなければ香典の準備は不要なので、その際は葬儀分だけ用意すれば問題ありません。
初七日忌法要のお包み金額について
初七日忌法要に参列する場合、地方慣例によって別包みを差し出す場合がありますが、それは主に5,000円~1万円を目安にしているようです。
表書きには「ご霊前」・「お供代」・「お香典」・「ご供養」等々として、「御仏前」とは書きません。またお包みする袋には「初七日忌供養」などの添え書きを必ず記しておきます。
香典の金額につては最近は、偶数・奇数などのこだわりはあまりしなくなりました。祝い事などは奇数を吉数としてたっとびますが、香典はもともと現金で授受するものではなかったため、あまり気にする事はありません。
初七日忌法要での服装
法要に参加する際の服装は、喪服が最も無難です。葬儀と同日に行われるのであれば、そのまま喪服で参加すれば問題ないでしょう。
なお別日に法要が執り行われる場合は、男性はダークスーツに白シャツ、女性はダークカラーで無地のワンピースなど簡易的な喪服でも問題ありません。露出の多い服装や明るいヘアカラー、派手なメイクなどはマナー違反です。
地域や宗派などによって、正しい服装の考え方は異なる場合もあります。弔事全般においては、喪服での参加に統一した方が印象は良くなるでしょう。
初七日に関する慣習は地域や宗派により異なる
初七日の数え方からお布施の金額、渡し方に至るまで、しきたりや慣行は宗派や地域によってさまざまです。
また浄土真宗においては、人は皆死んだ後すぐに極楽浄土へ行けるという教えがあるため、初七日の意味合いが異なります。同様の法要はありますが、故人に感謝の気持ちを捧げ、信仰を深めるための儀式として行われるでしょう。
わからないことは葬儀社や周囲の人へその都度確認することが大事です。それぞれのルールに準じた形でしっかりと執り行うことで、厳かに故人を見送ることができるでしょう。
監修者:二村 祐輔
日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
『葬祭カウンセラー』認定・認証団体 主宰
東洋大学 国際観光学科 非常勤講師(葬祭ビジネス論)
著書・監修
- 『60歳からのエンディングノート入門 私の葬儀・法要・相続』(東京堂出版) 2012/10/25発行
- 『気持ちが伝わるマイ・エンディングノート』 (池田書店) 2017/9/16発行
- 『最新版 親の葬儀・法要・相続の安心ガイドブック』(ナツメ社) 2018/8/9発行
- 『葬祭のはなし』(東京新聞) 2022年現在連載
など多数
コメント
習俗と宗教的対応は必ずしも一致していません。私たちは生活の中に仏教的な作法をうまく取り入れていますが、いまだに多くのしきたりが仏教とは無縁の慣習です。枕飯・枕刀・死装束のいで立ちなど。初七日や49日の考え方ももともとは、「殯(もがり)」という死と葬送儀礼との期間が基層にあったという説もあります。考えてみれば仏教の伝来は約千五百年前ですが、私たちの葬送観念は縄文弥生で形成されたといわれています。