お通夜の受付係を担うのは、基本的にご遺族が依頼した親戚や知人です。
受付係はご遺族の代わりとなる重要な役割のため、基本的なマナーを守り、失礼のないように弔問客を出迎えましょう。
葬儀に参列される方に挨拶し、芳名帳に記帳してもらい、香典を受け取り、会葬御礼品・香典返し(即日返し)を渡すのがお通夜の受付係の業務です。場合によっては会計係も兼務します。
受付前の準備から、受付中の受け答え、受付後の対応まで確認しましょう。
この記事を監修した専門家
葬送儀礼マナー普及協会 代表理事
岩田昌幸
お通夜の受付前の準備
お通夜当日までに準備しておくもの、受付直前に確認することを解説します。受付をスムーズに行うには、事前準備が大切です。
【喪主】芳名帳・筆記具・香典受けを用意する
受付の備品は、基本的には葬儀社が準備してくれます。必要な備品は芳名帳(芳名カード)や筆記用具、香典袋を入れる箱、切手盆などです。
喪主が準備する場合、文具店や百貨店、バラエティショップで芳名帳を購入できます。ただし結婚式と違って個性が求められず、前もって準備をしておくことが難しいので、葬儀社が準備したものを使用するのが一般的です。
【受付係】お通夜開始の1時間前には到着
お通夜では一般的に、開始時間の30分前に受付開始します。受付を担当する人は、余裕を持ってお通夜開始の1時間前までに到着するようにしましょう。
①必要な備品のチェック
受付前には担当の振り分けを行い、必要な備品が揃っているかをチェックします。また筆記具の位置や、ペンのインクが問題なく出るかも確認しておくと安心です。
参列者に会葬御礼品・香典返し(即日返し)を渡す場合は、スムーズに渡せるよう、動線を確保しましょう。
②お焼香を済ませる
受付の準備が終わったら、喪主に了解を得て、お焼香を先に済ませます。複数の受付担当がいる場合、受付が一段落してから順番にお焼香をするように指示される場合もあるので、喪主の指示に従いましょう。
③香典を受け取るかどうか
香典の整理方法について喪主に確認しておきましょう。
近年は故人や親族の意向により、香典を辞退するケースも増えています。香典辞退をする際は、あらかじめ喪主が参列者に知らせているはずです。
ただし参列者の中には、どうしても渡したいという姿勢を見せる人もいるかもしれません。そうしたときどう対応すればよいかも、喪主に相談しておきましょう。
④会葬御礼品・香典返し(即日返し)の渡し方
会葬御礼品・香典返し(即日返し)は紙袋に入れて渡す場合もあるので、どのように渡せばよいのか喪主に確認しておきます。また団体名や連名の香典をいただいたときの香典返し(即日返し)の渡し方も、喪主に確認しておきましょう。
香典の表書きが「株式会社○○」のような団体名のときは1つ、連名のときは人数分を渡すのが一般的です。参列できなかった人の香典を持参した人がいた場合も、人数分の香典返し(即日返し)を渡すのが基本となります。
④トイレやクローク、駐車場の位置
受付をしていると、参列者からトイレや駐車場の位置を聞かれることがあります。お通夜の会場に着いたら、以下がどこにあるかを確認しておきましょう。
- トイレ
- 駐車場
- クローク
- 待合室
- お通夜の会場(受付から離れている場合)
クロークは手荷物やコートなどを預かる場所のことです。受付の背後などに、荷物の預かりスペースを設けている場合もあれば、会場内に持ち込み、参列者自身で管理する形式になっている場合もあります。
またお通夜の会場が受付から離れている場合、会場まで案内できるようにしておくと安心です。
場所が分からないときは、葬儀社や会場のスタッフに尋ねましょう。
お通夜の受付中の流れ・受け答え
お通夜開式の30分前になったら、受付開始です。弔問客が来た際の対応と、受け答え方法を見ておきましょう。
まずは丁寧に挨拶
お通夜に参列する人が受付に訪れたら軽く目礼し「御記帳をお願いします」と芳名帳への記帳を案内します。笑顔での挨拶や、明るい声は控えましょう。
参列者も軽く目礼するか、「この度はご愁傷様です」「この度はお悔やみ申し上げます」と挨拶するのが一般的です。
記帳の案内をする
芳名帳や芳名カードに、住所と氏名を記帳してもらいます。中には受付で香典を渡してすぐに会場へ行こうとする参列者もいるので、「こちらにお名前とご住所をお願いいたします」と、ひと声かけましょう。また芳名帳への記帳が初めてだと、どこに何を記入したらよいか悩む人もいるため、丁寧に案内します。
参列者の記録がなければ、誰が来てくれたのかを喪主が後から確認できません。葬儀後に香典返しを送るケースもあるので、正確に記帳してもらうことが重要です。また会場によっては、必要事項を記載した芳名カードを持って、受付へ進む形式になっていることもあります。
香典を受け取り記録・保管する
香典を出されたら「お預かりいたします」と言ってお盆で受け取ります。会計係がいる場合はその場で渡しましょう。
金額の記録まで任されている場合は、参列者がその場から立ち去った後に中身を確認し、金額を記録します。香典袋に書かれている費用と実際の金額が異なることもあるため、なるべくすぐに確認するのがおすすめです。
返礼品を手渡す
香典の受け取りが済んだら、会葬御礼品・香典返し(即日返し)の引換券を渡します。
引換券を手渡した後は、お通夜の会場に進んでもらいましょう。案内係がいない場合は、受付担当が会場案内をします。
お通夜の受付後の対応
お通夜は急遽駆けつける方も多いため、閉式ぎりぎりまで受付を開きます。お通夜が終了したら、香典の整理や受付場所の片付けを行いましょう。
まずは香典袋と芳名帳を見比べて、記入漏れがないかチェックします。また会葬礼状・香典返し(即日返し)が残っている場合は、まとめておきましょう。
香典袋の開封と、香典帳への記入をこのタイミングで行うこともあります。間違いがないかをよく確認の上記入することが重要です。
香典袋や芳名帳などの整理が完了したら、葬儀社や世話役の方に手渡します。心配事がある際には必ず伝えるようにしましょう。
全ての片付けが終了後、喪主または責任者に挨拶をして、帰宅します。
受付担当の服装・挨拶に関するマナー
受付担当者はご遺族の代理の役割であるため、マナーに配慮することが何より重要です。服装や言葉遣いに関するマナーを確認しましょう。
喪服を着用する
お通夜の受付をする際は、ほかの参列者と同様に「喪服」を着用します。男性はスーツ、女性はワンピースやツーピースなどです。
足元は黒い革靴か、光沢のない黒いパンプスを身に付けます。女性はメイクが派手にならないように注意しましょう。手元は意外に目立つ部分なので、派手なネイルも避けます。
結婚指輪以外のアクセサリーは、身に付けないことが基本です。身に着けるなら真珠かジェットの一連ネックレスにします。二連のネックレスは「悲しみを重ねる」という意味に捉える人もいますので避けましょう。
言葉遣いは丁寧に
受付では喪主の代理であることを意識し、丁寧な言葉遣いをします。です・ます調の丁寧語で話し、フォーマルな言葉遣いを心掛けましょう。
お通夜は亡くなった方を悼む場面であることを意識し、「落ち着いたトーン」が好まれます。またお通夜には、年配の方が参列することが多いので、ゆっくりと丁寧な発声をしましょう。
縁起が悪い言葉は使わない
お通夜では使ってはならない言葉もあります。縁起が悪いとされる言葉は、使わない方が無難です。
お通夜では「くれぐれも」「重ねがさね」「ますます」などの、重ね言葉は縁起が悪いとされます。「続く」「再び」などの、連続して不幸が起こることを連想させる言葉も控えましょう。4や9などの不吉とされる数字も避ける傾向があります。
挨拶は短く済ませる
喪主の関係者が受付をする際は、知り合いが参列することが珍しくありません。久々に会った場合、長話をしたくなりますが、受付で余計な話は控えましょう。
受付が混雑しているときは、後に続く人々に迷惑をかけてしまいます。参列者に挨拶されたら、丁寧な言葉で、短く返すように心がけましょう。
喪主は受付係へのお礼を忘れずに
自分が喪主となり受付を誰かに頼んだ場合、引き受けてくれた人に対する謝礼を忘れてはいけません。
確実にお礼を渡すためには、お通夜直前の手渡しが安心でしょう。
葬儀の後は何かとやらなければならないことが多く、お通夜の受付を依頼した相手へのお礼が、後回しになりがちなためです。
「本日は受付を引き受けてくださりありがとうございます。よろしくお願いいたします。」といったお礼の言葉とともに、現金を入れた封筒を手渡します。
受付係へのお礼の費用相場
謝礼は3,000~1万円程度が相場です。白無地の封筒の表に、目上の人には「御礼」、親しい相手なら「寸志」と書きましょう。
金額は相手との関係性や、住んでいる地域などによって異なります。適切な金額が判断できない場合、事前に葬儀社の人に相談しましょう。
当日渡せなかった場合
当日間に合わなかった場合は、翌日か翌々日まで、遅くとも「初七日」が済むまでには、しっかりとお礼を述べる機会を作りましょう。
できれば直接家に訪問して渡します。訪問できない事情があるときは、確認を取ったうえで、現金書留で郵送する形でも構いません。
隣組や近所の人にお通夜や葬儀の手伝いをしてもらった場合は、お礼に対するルールが設けられている場合があります。地域のルールに従いましょう。
お通夜の受付は誰が行う?
お通夜の受付係は誰がやるという決まりはありません。ただしお金の受け取りや管理が必要なので、喪主が信頼できる人物を選出する必要があります。
香典を受け取る係や返礼品を渡す係など、担当を分けてスムーズに対応できるように2名に依頼しましょう。
喪主の遠い親戚が行う
お通夜の受付は一般的に、故人の遠い親戚が行うのが望ましいです。兄弟の孫、お子様の配偶者などに頼むとよいでしょう。
故人の配偶者や子は、お通夜の準備や挨拶があるため受付を担当できません。その他の直系のご家族も、ご遺族席でゆっくりと過ごしたいでしょう。
ただし、頼みやすさから故人の直系の孫や、甥、姪が受付係を行うことは多いです。
親しい友人や会社の関係者が行う
また近所に住む人や親しい友人、職場の同僚など、血縁関係がない人にお願いするケースもあります。
地域によっては「隣組」と呼ばれる近所に住む人々で結成された組織で、葬儀の手伝いをすることがあり、慣習的にお通夜の受付を依頼できる場合もあるでしょう。
外部の代行サービスを利用する
葬儀社はお通夜の受付に必要な、芳名帳・筆記具・返礼品などの準備をしてくれることはあっても、受付業務は行わないことが一般的です。
ただしもし受付をお願いできる親戚や知人がいない場合は、葬儀社に相談の上、スタッフを手配してもらう手もあります。
またお通夜の受付や、現金管理などの業務を代行してくれる「葬儀受付代行サービス」を利用するのも1つの手です。まずは葬儀社に相談しましょう。
ただし会計係は現金を扱いますので、できるだけ遺族側で行うことをおすすめします。
マナーを押さえてスムーズな受付を
お通夜の受付を依頼されたら、焦らずに、落ち着いて対応しましょう。受付がやるべきことは事前に決まっており、一度流れを把握すれば決して難しい作業ではありません。
受付の途中で分からないことや困ったことが起きた場合は、あわてず葬儀社の人や喪主に確認することが大事です。自分が喪主側で受付を頼む場合も、流れの把握や、お礼を忘れないよう準備しておきましょう。
葬儀を執り行う際に、受付を含めたさまざまなサポートをしてくれる葬儀社に依頼できると安心です。信頼できる葬儀社を探すためには、相見積もりをしてサービス内容や対応を比較するとよいでしょう。ミツモアでは一括で最大5社から見積もりが取れるため、お急ぎの方でもスムーズに葬儀社を探せます。
監修者:岩田昌幸
葬送儀礼マナー普及協会 代表理事
葬送儀礼(臨終から葬儀、お墓、先祖供養等)が多様化している中で、「なぜそのようにふるまうのか」といった本来の意味を理解し、そうした考え方や習慣を身につけられるよう「葬送儀礼マナー検定」を実施しています。メディア監修多数、終活・葬儀・お墓関連セミナーも実施しています。
コメント
お葬式の受付では、参列者から名刺を預かることもあります。その際は名刺入れにまとめておき、受付終了後に、香典袋や芳名帳と一緒に葬儀社や世話役の方へ渡すようにしましょう。参列する代表者の名刺には「弔」または名刺が折り曲げてあったり、代わりに参列した方の名刺には「代」が記載されていることもあります