枕飾りとはお通夜まで故人の枕元に設置する、仮の祭壇です。故人のたましいの依り代として、一時的に祭祀ができるようにした簡易的なしつらえとなっています。
枕飾りは宗教・宗派に関わらず設置するのが一般的です。枕飾りの設置方法や費用、注意点を確認しましょう。
この記事を監修した専門家
日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
二村 祐輔
枕飾りとは
枕飾りとは、故人の枕元に飾る小規模な祭壇です。逝去からご遺体を移送し安置した後に設置し、お通夜の準備を始めるまで祭祀する仮の場所としての役割があります。
必要最小限の葬具や仏具を置きます。通常は経机、小机くらいの大きさです。
枕飾りの役割
枕飾りは簡易的な祭壇の役割を持っており、故人の供養のために設置します。お通夜や葬儀・告別式の会場に設置する大規模な祭壇は、準備に時間がかかります。また設置は会場でないと行えません。
火葬の予約がとれず、安置期間が長くなることもあるでしょう。そこで枕飾りが葬儀を行うまで故人に手を合わせる仮の祭壇として、重要な役割を担います。
枕飾りに花やしきびの枝を備えるのは、「依り代」として、故人の魂をそこに依り付かせてく意味もあります。同様にご飯や団子、果物などをお供えする理由もそのためです。
枕飾りの費用
枕飾りにかかる費用は宗教や宗派、お供え物の種類によって変わりますが、一般的に1万~3万円です。葬儀社に葬儀を依頼する場合は、枕飾りも費用に含まれていることが多いので、事前に確認しておきましょう。
枕飾りを葬儀社に依頼せず自分で用意する場合は、費用が高くなる傾向にあります。準備する品目が多く、香炉のような高額な物も用意しなければならないためです。何を用意すればいいか菩提寺や葬儀社に確認する必要もあるため、葬儀社にお任せするよりも手間がかかるでしょう。
葬儀の準備は慌ただしくなるため、手間や時間を考慮すると、葬儀社に任せるのがおすすめです。
【宗教別】枕飾りの設置の仕方
宗教によって枕飾りに飾る内容は異なります。仏教・キリスト教・神道における枕飾りの内容を紹介します。
仏教の枕飾り
仏教における枕飾りに必要となるものは、以下の通りです。宗派による大きな違いはほとんどありません。
- 白木台(なければ白色の布を掛けた台でも可)
- 一膳のご飯
- 枕団子
- 水
- 香炉
- 線香
- ろうそく立て
- 花瓶(しきみの枝や、菊の花など)
- 鈴と鈴棒
机は大きくても3尺くらいです。白木でなければ白布をかけ、礼拝する人のために座布団をおきます。一膳のご飯は茶わんに山形になるように盛り、中央には箸を立てます。
線香は香炉の中心に1本だけ立てるようにしましょう。ろうそく立てはなるべく、白を基調とした色のものを使用します。
花瓶に入れるのは基本的にしきみ(樒)の枝ですが、菊やユリ、スイセンなど、いわゆる一輪花として供えます。宗派によって禁止されているものもあるため、事前に確認しましょう。
キリスト教の枕飾り
キリスト教徒には親族が亡くなっても、枕飾りの習わしはありません。しかし日本では故人を想う意味で、キリスト教であっても、枕飾りをする場合があります。
飾るものとして聖書と十字架は必須です。白い花を飾りろうそくに火を灯しましょう。仏教と異なり供えるのはパンと水です。枕飾りの台は通常は黒布ですが、白で覆ったものでも構いません。
これらのほかに聖油つぼが飾られる場合があります。キリスト教の「終油の秘跡」という儀式になぞらえ、聖油を用意するのです。
この儀式は故人が亡くなる前に、神父が故人の顔に聖油を塗り、神に生前の罪の許しを乞うという意味を持ちます。
カトリックとプロテスタントでは異なるので注意しましょう。
キリスト教徒には親族が亡くなっても、枕飾りをする習わしはありません。しかし日本では故人を想う意味で、キリスト教であっても、枕飾りをする場合があります。
飾るものとして聖書と十字架は必須です。白い花を飾りろうそくに火を灯しましょう。仏教と異なり供えるのはパンと水です。枕飾りの台は白、または黒い布で覆ったものを使用します。
これらのほかに聖油つぼが飾られる場合があります。キリスト教の「終油の秘跡」という儀式になぞらえ、聖油を用意するのです。
この儀式は故人が亡くなる前に、神父が故人の顔に聖油を塗り、神に生前の罪の許しを乞うという意味を持ちます。
神道の枕飾り
神道の枕飾りで一般的に用意するものは、以下の通りです。
- 八足机
- 三方(三宝)
- 御霊代
- 花瓶(榊を飾る)
- ろうそく立て
- 水
- 塩
- 洗米
- お神酒
神道では儀式で使う八足机が必要です。用意が間に合わない場合は、白布掛けの机で代用します。さらにお供え物を載せる台として三方を用意し、塩と洗米、水を供えましょう。
供え物は基本的なものに加え、故人が生前に好きだった食べ物を、用意する場合もあります。普段の食事と同じものを供えてもよいため、肉や魚を準備しても問題ありません。
枕飾りの注意点
枕飾りにはいくつかルールが決められています。故人をしっかりと見送るためにも、以下の点を抑えておきましょう。
火を絶やさないようにする
枕飾りに使うろうそくの炎は、亡くなった人を納棺するまで、絶やさないようにしましょう。ろうそくの火を頼りにする、故人の魂が迷わないようにするためと言われています。
また線香の火も絶やさないのがルールです。亡くなった人の遺体を無縁の霊から守り、しっかり供養するために線香をたくとされています。昔はドライアイスなどはなかったので、線香で遺体の腐敗臭を抑えるためでもありました。
なおあくまでもできる限りのルールであり、絶やしたからといって本当に悪いことが起きるわけではありません。遺族でしっかり故人を見守り、送り出してあげることが大切です。
浄土真宗では枕団子や枕飯などが不要のケースも
仏教では枕飾りの内容にあまり違いはないとされていますが、浄土真宗では異なる場合があります。
浄土真宗の枕飾りでは、故人に対する枕団子や枕飯などの供え物は、基本的に必要ありません。枕飾り以外にもいくつか他の宗派と異なる点があるため、事前に確認すると良いでしょう。
宗派だけでなく地域によっても慣習は異なります。宗派を伝えたうえで葬儀社に設置をまかせれば安心ですが、ご自身で設置する場合はよく親戚と話し合いましょう。
適切な枕飾りで故人を送り出そう
枕飾りは仮の祭壇とはいえしっかり供え物をして、故人を供養するためのものです。宗教によって内容が異なりますが、枕飾りの意味や目的はほとんど変わりません。
仏教では菊の花や水、米などが準備されます。キリスト教では十字架と聖書を基本として、ろうそくなどを用意しましょう。神道は米や塩などに加え、故人が生前好きだったものをお供えするケースもあります。
ろうそくや線香の火をなるべく絶やさないようにし、しっかり故人を送り出してあげましょう。
監修者:二村 祐輔
日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
『葬祭カウンセラー』認定・認証団体 主宰
東洋大学 国際観光学科 非常勤講師(葬祭ビジネス論)
著書・監修
- 『60歳からのエンディングノート入門 私の葬儀・法要・相続』(東京堂出版) 2012/10/25発行
- 『気持ちが伝わるマイ・エンディングノート』 (池田書店) 2017/9/16発行
- 『最新版 親の葬儀・法要・相続の安心ガイドブック』(ナツメ社) 2018/8/9発行
- 『葬祭のはなし』(東京新聞) 2022年現在連載
など多数
コメント
仏式の枕飾りには壮大な意味があります。仏教では宇宙を含めたすべての構成を地・水・火・風・空の五つの要素で成立していると考えます。枕飾りの机は地、水は花(花瓶)、灯明は火そのもの。香炉の線香の煙は風を視覚化させます。お鈴(りん)の音は、まさに音波として空気の波で伝わります。この5つのエレメントをいち早く枕元にしつらえることは、故人の魂を仏教世界の根源にいざなうことを暗示しているように思います。