骨壷にはさまざまなサイズや素材があります。夫婦で揃えたい場合や家族にそれぞれ分骨したい場合など、どういう基準でそれらの拾骨容器を選べばよいのでしょうか。
ここでは火葬後の拾骨容器を「骨壺」と呼び、サイズや値段といった基本事項を抑えたうえで、骨壺の選び方を解説します。骨壷を新しく新調するなどで、もとの骨壺が不要になった場合の処分方法も確認しましょう。
この記事を監修した専門家
日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
二村 祐輔
骨壺はサイズごとに使用用途が異なる
骨壺にはさまざまなサイズがあり、大きさは「寸(すん)」、個数は「個」や「一口(いっく・いっこう)」で数えます。
小さいもので2寸(直径約6cm)から、大きいものでは尺寸(直径約31cm)です。使用用途によってサイズが使い分けられます。
一般的な1名分の骨壺の大きさは7寸です。7寸の骨壺の場合、直径が約22cm、高さが約25cm、容量は9430ccという大きさです。
【骨壷のサイズと使用用途】
骨壷のサイズ | 使用用途 |
2~3寸 | 分骨用 手元供養用 |
4~5寸 | 納骨用 |
6寸 | 主に西日本で利用 |
7寸 | 主に東日本で利用 |
8寸 尺寸 |
改葬、合葬収納の場合など |
東日本と西日本で一般的なサイズが異なる理由は、納める骨の量にあります。東日本の火葬では骨壺に全ての骨を納めるのに対し、西日本の火葬では主要部分の骨のみを納めるのが一般的です。そのため西日本で使用する骨壺は、東日本に比べると小さいサイズが主流となっています。
なお男女で骨壷の大きさは変わりありません。しかし体格の大きな男性の場合は、8寸の骨壺を使用することもあるようです。
火葬時は別々の骨壷ですが、後日移し変えてまとめることで、「夫婦で1つの骨壺に入れる」こともあります。2名分の遺骨を入れる場合は尺寸を選びます。または粉骨するといった方法もあるため、葬儀会社に相談すると良いでしょう。
納骨・埋蔵するお墓や納骨堂のサイズによっても、選ぶべき骨壷のサイズは異なります。納骨する場所が決まっているのであれば、先にそのサイズを確認しましょう。
骨壺の形や素材は?
形状は大きくわけて2種類
骨壺には、蓋の形状が異なる「白並タイプ」「切立タイプ」の2種類があります。白並タイプは本体の内側に蓋が入り込む形、切立タイプは本体に蓋を覆いかぶせる形です。
切立タイプの方が湿気が入り込みやすいと言われています。遺骨にカビが生える心配を減らせるでしょう。
なお骨壷本体の形は円筒型が基本ですが、現代では球体や四角形など、形状の種類も増えています。また手元供養用の骨壺の場合、どんぐりのような形、雫のような形などデザインが豊富です。
骨壷に使われる素材の種類
骨壺の主な素材には、主に以下があります。
- 陶磁器
- 天然石
- ガラス
- 真鍮(銅と亜鉛の合金)
- 木材など
陶磁器はオーソドックスな骨壷の素材です。土でできていることから「自然に還る」という意味合いをもちます。また火葬したばかりで熱い遺骨を入れても問題ないことから、古くから陶磁器が使われてきました。
天然石の骨壺には、白・黒大理石などがあり、耐久性が高く見た目も上品です。
またガラスは、主にミニサイズの骨壺でよく使われる素材です。割れやすく、慎重な扱いが必要となります。
真鍮は加工がしやすく、耐久性に優れた合金です。デザイン性の高い形をした骨壷によく使われるでしょう。
骨壺の費用はどのくらい?
骨壺の価格帯は非常に幅広く、選択肢は豊富です。ある程度の予算を決めておき、素材・デザインの方向性を決めていくと良いでしょう。
5,000円~10万円が一般的
骨壺の価格帯は広く、一概に価格を述べることはできません。一般的な7寸サイズの骨壺でも、1,000円~100万円までバリエーションは豊富です。
ただし一般的に販売されている骨壷は数万円程度のものが多く、7寸であれば2~3万円で購入できることが多いでしょう。
オーソドックスな無地・白磁・7号サイズの骨壺であれば、5,000円台で購入可能です。模様入りやデザイン性の高い骨壷の場合、値段が上がります。
素材により費用が大きく変わる
価格を決める要素は様々ですが、とくに大きな影響を与える要素は骨壷の素材です。陶磁器の骨壺は無地のものなら数千円と安価ですが、有名な窯元や作家が作ったものは数万円・数十万円するものもあります。
天然石は全体的に高額なものが多い印象です。ガラスやは、主にミニサイズの骨壺でよく使われる素材です。安価なものから高価なものまでありますが、当然ながら割れやすく、慎重な扱いが必要となります。
ミニサイズの骨壺の需要が増えている
家族構成やライフスタイルの変化とともに、葬送方法も多様化しています。墓じまいや散骨葬といった選択もされる中、大切な人の遺骨をミニ骨壺に入れて、自宅で供養する手元供養を選ぶ人も増えています。
手元供養とは遺骨の一部をミニサイズの骨壺に入れて自宅で安置・保管、そして祭祀することです。手のひらに収まる程度のサイズ感のため、自宅での置き場所を選びません。
手元供養が増えている理由と注意点を確認しましょう。
故人を常に身近に感じられる
お墓が遠方にあると、どうしても墓参りに行く時期が限られ、行きたいときに行くというのが難しくなります。
手元供養であればいつでも好きなときに、大切な故人を想うことができるでしょう。常に故人を身近に感じられ、故人に見守られているような安心感を得られるのは手元供養のメリットです。ペンダントのようなデザインであれば、身に着けて持ち運ぶこともできます。
一方自宅に供養品を置くことで、自宅が災害などに見舞われた際に、紛失してしまう可能性がある点には注意しましょう。万が一に備えて、仏具の置き場所や置き方に気を配る必要があります。
おしゃれなデザインでインテリアに溶け込ませられる
現在はインテリアに溶け込むような、デザイン性の高い仏具が増えています。中でも骨壺は仏具として重要な存在なので、デザインや素材を幅広い選択肢から選択可能です。
そのため自宅に立派な仏壇がなくとも、リビングなどの部屋に仏具を祀り、手元供養をするという家庭も増加しています。
他の仏具も小さいサイズにそろえることで、インテリアに溶け込んだ、供養の空間を作れるでしょう。骨壺として作成された商品であれば、中の遺骨を長期間保管する上で欠かせない気密性など、機能面も安心です。
骨壺を新調するときの注意点
新しい骨壺に遺骨を移し替える場合、元の骨壺は不要になります。遺骨を移し替えるときの注意点と、もともと使っていた骨壷の処分方法について見ていきましょう。
新しい骨壺に移し替える際の注意点
小さな骨壷は、その入口も狭い造りになっています。現在使っている骨壺よりも、小さなサイズの骨壺に移し替える場合、遺骨はその入口に入る大きさまで細かくする必要があるでしょう。また小さな遺骨はもろいため、取り扱いに注意が必要です。
なお遺骨を2つの骨壺などに分骨する場合は「分骨証明書」を用意しておく必要があります。必ず事前に霊園に行き、証明書を取得しましょう。
遺骨が骨壺に入りきらなかった際には、残りの遺骨は寺院の無縁供養塔や樹木合葬の墓所、霊園の残骨処理施設などに収めます。また定められた規則に従って海洋散骨することもあります。
骨壷は中身が入ったまま処分しない
骨壺は故人の遺骨が入っている容器なので、処分する際に「供養が必要なのか」「お寺に持っていくべきか」と悩む人も多いでしょう。
骨壺はゴミとしての処分が可能です。ただしゴミとして出す場合には、骨壺に入っている遺骨を全て取り除き、空の状態にしておかなくてはいけません。
遺骨の取り扱いは法律により定められており、勝手に遺棄や埋葬をすると、法律で罰せられる可能性があります。骨壺をゴミとして出す際は、中身が空になっている点を確認してから、出すようにしましょう。
骨壷は一般廃棄だと回収されないケースも
一般的な骨壺の素材は陶器です。遺骨を保管するための骨壺は特別な装置などは付いていないため、一般の陶器製の容器と同様に扱います。骨壺は自治体のゴミ出しのルールに基づいて処分できますが、注意点もあります。
ゴミの収集業者によっては、骨壺と分かるものは回収してくれないケースがあることを、頭に入れておきましょう。とくに大きめの骨壺には、故人の名前などが書いてあり、骨壺だと分かりやすいので注意が必要です。ハンマーなどを使って細かく砕いてからゴミに出します。
故人の遺骨が保管されていた骨壺には、思い入れがあり、砕くことに抵抗があるという人も少なくありません。骨壺の処分を自分で行うのが難しい場合は、専門の業者に依頼するのもおすすめです。
骨壺は用途に合わせてサイズやデザインを選ぼう
骨壷にはさまざまなサイズがありますが、サイズごとに使用される目的は、おおよそ決まっています。お墓の収蔵庫や自宅祭祀の場合は、スペースの大きさなどに配慮して適切なサイズの骨壺を選びましょう。
費用はサイズだけではなく、骨壺の素材やデザインにより大きく変わります。骨壷の購入は葬儀社だけでなく仏具店や石材店、火葬場、インターネットでも購入できるため、事前にデザインや費用感を確認可能です。
事前に「こんな骨壷にしたい」とイメージを持っておくと、いざ購入する際にスムーズでしょう。
監修者:二村 祐輔
日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
『葬祭カウンセラー』認定・認証団体 主宰
東洋大学 国際観光学科 非常勤講師(葬祭ビジネス論)
著書・監修
- 『60歳からのエンディングノート入門 私の葬儀・法要・相続』(東京堂出版) 2012/10/25発行
- 『気持ちが伝わるマイ・エンディングノート』 (池田書店) 2017/9/16発行
- 『最新版 親の葬儀・法要・相続の安心ガイドブック』(ナツメ社) 2018/8/9発行
- 『葬祭のはなし』(東京新聞) 2022年現在連載
など多数
コメント
大きく東日本と西日本では火葬場においての拾骨量が異なります。不思議ですね。私が調査した時には列島を分断する地層の断層線に沿ってその慣習が分かれるようでした。その境はうどん汁の濃さや近代では電気のサイクル数まで異なり、生活意識も大きく変わります。拾骨量の違いから骨壺のサイズが慣習的に異なるので、とくにお墓が関西にある人が関東で火葬されると、骨壺が大きくてお墓のカロートに入らないこともあります。