互助会(ごじょかい)とは、いずれやってくる冠婚葬祭の経済的な負担に備え、月々の掛け金を事前に積立しておくシステムです。正式には「冠婚葬祭互助会」と呼びます。
残された家族に金銭的な負担をかけたくない場合は、互助会への加入も役立つでしょう。互助会の仕組みやメリット・デメリットについて詳しく解説します。
この記事を監修した専門家
日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
二村 祐輔
互助会の仕組み
互助会は国から営業許可番号を与えられた企業のみ行える事業です。互助会の大半は、業界団体である「一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)」に加盟しています。
互助会が提供するサービスと費用
互助会が提供するサービスは、主に結婚式とお葬式です。会員になって事前に掛け金をためておけば、結婚式や葬儀が必要となった際にサービスを利用できます。
月々1,000~5,000円の掛け金を、60~120回払いで準備金として積み立てるのが一般的です。積み立ての途中でサービスを利用する場合、契約金額との差額を一括で支払えば対応してもらえます。
互助会の仕組み
互助会の「互助」は「相互扶助」を指します。戦後の経済が混乱する中、互いに助け合って冠婚葬祭を行おうという精神から、ビジネスとして誕生しました。
たとえば生命保険が現金を受け取るのに対して、互助会は現金ではなくサービスを受けられます。会員から集めたお金を一括管理し、冠婚葬祭が必要になったタイミングで預け入れた掛け金を充当する仕組みです。
互助会に加入するメリット
互助会に加入すると得られる主なメリットを紹介します。本人以外もサービスを利用できることや、会員特典が用意されていることを押さえておきましょう。
本人以外の冠婚葬祭も利用可能
積立金の満額を支払い終わると、契約者はサービスを利用できる権利を得ます。このサービス利用の権利は、契約者から家族や友人に譲渡することが可能です。
たとえばご自身の葬儀を行うつもりで積み立てていても、孫が結婚式を行うことになった場合、互助会の権利を孫に譲渡すれば結婚式の費用に充てられます。
ただし1つの権利でサービスを利用できる回数は1回のみです。家族や友人に権利を譲渡した後、葬儀のために備えたくなった場合は、再度積み立てを行う必要があります。
会員特典が用意されている場合も
互助会によっては冠婚葬祭以外にも会員特典を受けられるケースがあります。全国のレジャー施設やレストランを優待価格で利用できる特典が代表例です。
会員向けのサービスは契約者本人だけでなく、家族が利用できることもあります。家族で頻繁に外食や旅行をしているのなら、会員特典をお得に活用できるでしょう。
会員特典の内容は、費用を追加すればアップグレードすることも可能です。葬儀や結婚式以外に、七五三や成人式で利用できる特典が用意されている場合もあります。
互助会のデメリットや注意点
互助会には結果的に割高になることがある、解約手数料がかかるといったデメリットもあります。
リスクや注意点を理解した上で、利用するかどうか慎重に検討しましょう。
すべての費用を賄えるわけではない
互助会の目的はあくまでも冠婚葬祭の費用を積み立てておくことです。サービス利用料が無料になるわけではなく、不足分は自己負担で支払わなければなりません。
葬儀の種類・内容によっては、互助会に加入していてもある程度まとまったお金が必要です。積立金とは別に葬儀用の資金もためておく必要があるでしょう。
互助会に希望のプランがあるとは限らない点にも注意が必要です。サービスを利用する場合は、互助会が用意するプランからしか選べません。
希望の葬儀を行いたい場合、結果的に一般的な葬儀社に依頼するよりも高くなる可能性があります。
解約時に手数料がかかる
互助会のサービスを利用しないまま解約する場合は、解約手数料が発生します。積立金の金額から解約手数料を引いた金額が戻ってくるため、満額を返してもらえるわけではありません。
互助会によっては積立金の半額程度しか戻ってこないケースもあります。何らかの事情により冠婚葬祭でお金を使わないことも考えられるため、加入前に解約手数料をきちんと確認しましょう。
家族の加入を知らずに、別の葬儀社と契約してしまうパターンもあります。互助会に加入する際は、加入していることを家族と共有しておく必要があるでしょう。
互助会の倒産リスクがある
互助会が倒産するリスクもあります。互助会は民間企業が運営している以上、倒産してしまう可能性はゼロではありません。
家族葬や一日葬など小規模な葬儀が選ばれるようになっていることや、人口の減少を受けて会員数が減っていることにより、経営が悪化している会社が増えているのも事実です。
国が定めたルールに基づき、互助会は倒産に備えて供託金をプールしていますが、倒産した際に戻ってくるお金は積立金の一部ということもあります。互助会を選ぶ際は、可能な限り経営状況を調べることも大切です。
互助会を選ぶときのポイント
互助会への加入を考えた際、確認しておきたいポイントについて解説します。数ある会社の中から、自分に合った互助会を選びましょう。
地域にある互助会を探す
互助会は営業地域が決まっているため、自分の住んでいるエリア内で探す必要があります。葬儀は地域の風習が色濃く関わるので、営業地域外の互助会ではサービスの提供が難しいためです。
魅力的なサービスを提供している互助会を見つけたとしても、お住まいの地域外なら加入できない点に注意しましょう。
全互協加盟の互助会に加入すれば、引越しをした際に転居先の全互協加盟会社へ契約を引き継いでもらえます。転居の可能性があるなら、引越し後のことも考えて加入する会社を選びましょう。
積立金やプランを比較する
互助会で選べる葬儀のプランは会社ごとに異なります。互助会を選ぶ際はプランの内容を比較し、希望する葬儀プランがあるかどうかチェックすることが大切です。
小規模な葬儀で済ませたい場合、高額な掛け金を支払い続ける必要はないでしょう。葬儀プランごとに積立金も異なるため、プランと併せて積立金や掛け金を比較することも重要です。
葬儀プランを途中で変更したくなったときに、変更が可能かどうかも確かめましょう。変更できる回数が決まっていたり、変更可能なプランが限られていたりする場合があります。
互助会は終活の選択肢の1つ
互助会へ加入すると、契約者本人以外の冠婚葬祭にも利用できたり、会員特典を利用できたりといったメリットがあります。
一方、希望する葬儀プランが無い場合は葬儀社に依頼するよりも費用がかかったり、解約金が発生したりする点がデメリットです。
これから互助会へ加入するのであれば、メリットとデメリットを踏まえて検討するとよいでしょう。
互助会の費用と、葬儀社のプランを比較するのもおすすめです。ミツモアでは、無料で希望する葬儀プランの見積もりを、最大5社に依頼できます。
葬儀費用の負担を抑えたい場合は、相場を事前に確認しておくとよいでしょう。
監修者:二村 祐輔
日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
『葬祭カウンセラー』認定・認証団体 主宰
東洋大学 国際観光学科 非常勤講師(葬祭ビジネス論)
著書・監修
- 『60歳からのエンディングノート入門 私の葬儀・法要・相続』(東京堂出版) 2012/10/25発行
- 『気持ちが伝わるマイ・エンディングノート』 (池田書店) 2017/9/16発行
- 『最新版 親の葬儀・法要・相続の安心ガイドブック』(ナツメ社) 2018/8/9発行
- 『葬祭のはなし』(東京新聞) 2022年現在連載
など多数
コメント
冠婚葬祭互助会システムを取り入れている葬祭企業は、事前に他者からお金を預かるということから一般的に会社規模が大きく、一定の預り金の担保をしておかなければならない規則があります。「終活」の事前準備という点で、リアルな生前対応です。消費者として十分にそのメリットやデメリットを把握したうえで、なおかつ家族の中で十分に話し合ってから加入の判断をしましょう。