家族葬とは、一般的に家族や親戚を中心に執り行われる葬儀です。ただし参列者の範囲に明確な決まりはありません。
叔父、叔母、甥や姪といった血縁の近い近親者のみで執り行われることが多いですが、故人が生前親しくしていた人や、お世話になっていた人を呼ぶこともあります。そのため家族葬の案内があった際、参列すべきか迷う方も多いのではないでしょうか。
家族葬と伝えられた際の参列基準や、参列する際のマナー、参列しない場合にできることについて解説します。
この記事を監修した専門家
HIROKO MANNER Group/一般社団法人 マナー&プロトコル・日本伝統文化普及協会 マナー講師
須藤 悦子(すどう えつこ)
家族葬と言われたら参列する?
家族葬を行うことを伝えられた際には、「会場や日時の案内があれば参列する」「案内がなければ参列しない」と考えると良いでしょう。
呼ばれたら参列して問題ない
家族葬で葬儀を行うと伝えられた際には、まず参列願いの有無を確認しましょう。家族葬ではご遺族が呼びたい人に声を掛けることが多いため「参列してほしい」と伝えられたなら参列して問題ありません。
また葬儀会場や日程をご遺族から知らされている場合も、参列して良いと考えられます。判断に迷った際には、ご遺族に直接確認しましょう。
葬儀会場や日程がわからないときは参列しない
葬儀の場所や日程が書かれていない、または伝えられていない場合、近親者のみで葬儀を執り行う可能性が高いです。生前親しくしていた方であっても、家族葬への参列は辞退しましょう。
また参列を辞退してほしい旨をはっきり伝えられている場合は、案内に従って参列を控えます。
お通夜には参列するべき?
家族葬のお通夜に参列すべきか迷う場合も、基本的には「呼ばれているか否か」で判断しましょう。ご遺族から直接参列をお願いされたり、訃報連絡の中にお通夜の案内があれば参列しても問題ありません。
ただし会場や日程の案内がない際には、近親者のみでのお通夜を望んでいると考え、参列を控えるのが良いでしょう。
最近では家族葬であっても、お通夜に「一般弔問」の時間を設けている場合があります。「一般弔問」の案内があればどなたでも弔問することが可能です。
家族葬に参列する場合のマナー
家族葬に呼ばれた場合の、服装や香典のマナーを確認しておきましょう。家族葬が行われることを、むやみに拡散しないようにするのもポイントです。
服装は準喪服を着用
家族葬に参列する服装は準喪服が基本です。家族葬だからといって、服装に特別な決まりがあるわけではありません。
男性の場合は白のシャツを着用し、スーツ・ネクタイ・靴・靴下は全て黒を揃えます。女性は肌の露出を控え、服・靴・ストッキング・バッグは黒で統一しましょう。
未成年者の方は普段着用している学生服で構いません。学生服がない場合は、大人と同様に黒や紺など暗めの服を選びましょう。
お通夜に参列する場合も基本は準喪服です。お通夜の場合は「急いで駆けつけた」という意味合いで、黒に近いスーツやワンピースなどの略喪服でも良いとされています。
しかし現代では亡くなってからお通夜まで日数が開くことも多いため、問題なく用意できるのであれば準喪服を着用しましょう。
香典は基本的に用意する
家族葬に参列する場合、香典は基本的に持参します。ただし家族葬ではご遺族が香典の受け取りを辞退するケースもあるため、案内をよく確認しておきましょう。辞退の連絡があれば香典は必要ありません。
家族葬の香典費用は一般的な葬儀と同じです。故人が両親なら5万~10万円、祖父母や兄弟なら3万~5万円、親戚の場合は1万~5万円が相場です。
故人が友人・知人・職場関係の場合、香典は5,000~1万円が良いでしょう。香典の金額は、故人との生前の関係性や経済的な理由を考慮して、相場と異なる額でも問題ありません。
家族葬があったことを周りに広めない
家族葬が執り行われることを知った際は、安易に周囲へ広めるのは控えましょう。
家族葬は呼ばれる人が限られます。そのため呼ばれなかった人が後から知った場合に、傷ついたりトラブルになったりする恐れがあるためです。
ご遺族の対人関係に関わる話題であるため、非常に慎重になるべきです。家族葬が執り行われた後も、参列したことを自分から周囲に話すのは避けましょう。
家族葬に参列しない場合にできる対応
家族葬に呼ばれなかった際や参列できない際には、どのように対応すべきでしょうか。香典に関するマナーと、お悔やみを伝える方法を紹介します。
呼ばれなかったら香典は不要
家族葬に参列しないのであれば、香典の用意は必要ありません。せめて香典だけは渡したいと考えていても、参列をお願いされていない場合は香典も控えましょう。
後からどうしても香典を渡したい場合は、現金書留で送る方法があります。しかし郵送する場合も「ご迷惑でなければ」と声をかけるのがマナーです。
香典を辞退しているケースもあるため、事前の確認は必須と言えます。
お悔やみを伝えるため供花・弔電を送る
葬儀に参列できないが弔意を伝えたい際には、供花や弔電を送るのがおすすめです。
ただし供花と弔電は、高価になり過ぎないように注意しましょう。供花には「お返しは不要」のメッセージを添えるとご遺族に負担をかけません。場所を取らないように、小ぶりの供花を選んでも良いでしょう。
家族葬では喪主が誰なのか知らされないケースもあるため、喪主名が分からない場合は「〇〇家御遺族様」の宛名で送ります。
ご遺族の意向を最優先に考える
家族葬に限らず、お葬式ではご遺族の意向を最優先に考えましょう。ご家族によっては供花や弔電も辞退している場合もあります。
何かしたいと考えても、ご遺族の負担になる可能性があるのなら、そっとしておくのがおすすめです。
どうしてもお悔やみの気持ちを伝えたい場合は、四十九日を過ぎて落ち着いた時期に電話をかけたり、手紙を送ったりすると良いでしょう。
葬儀の後に弔問するのはOK?
家族葬に参列できなかった場合、葬儀後の弔問はマナー違反にならないのでしょうか。弔問したい場合の対応について解説します。
事前に弔問してもよいか確認する
葬儀の後に弔問する際は、事前に確認するのがマナーです。葬儀の後片付けが落ち着くころから四十九日までの間が、弔問に適したタイミングと言えます。
弔問する際には、あくまでもご遺族の都合に合わせなければなりません。自身が弔問できる日程が限られている場合や、弔問を断られた場合はご遺族の意向をくんで諦めましょう。
また弔問したときに長居をするのはマナー違反です。故人の思い出話で盛り上がりそうでも、自分から早めに切り上げるようにしましょう。
後日に弔問する場合の注意点
後日の弔問では喪服を着用する必要はありません。派手過ぎない普段着を着用していきましょう。
香典は持参しても問題ないですが、家族葬の場合、弔問での香典も辞退しているケースが多いです。心配な場合は弔問しても良いか聞く際に、確認しておきましょう。
供花やお供え物を持っていくのもおすすめです。故人が好きだったお花や果物、日持ちするお菓子などを用意しましょう。
ご遺族の気持ちを尊重して参列しよう
家族葬への参列を迷うときは、ご遺族の気持ちに寄り添って行動するのがマナーです。参列願いを伝えられている場合、ご遺族の意向をくんで参列すると良いでしょう。葬儀会場や日程を案内されていないのであれば、参列や香典は控えます。
家族葬を執り行う立場の場合、参列者は自由に呼んで構いません。故人との関係性を重視し、参列いただきたい方には親戚ではなくとも声をかけると良いでしょう。
監修者:須藤 悦子(すどう えつこ)
HIROKO MANNER Group
一般社団法人 マナー&プロトコル・日本伝統文化普及協会 マナー講師
メンタルリンク.代表
葬儀会社など企業のマナーコンサルティングなどを行うマナーコンサルタント。
心を形にすることを提唱しているマナーコンサルタント西出ひろ子のマナー論に感銘を受け、同氏に師事。学生からビジネスパーソン、主婦や高齢者まで、幅広くマナーを伝授。新潟を拠点に全国の企業や自治体、学校などにて講演・研修・コンサルティングをおこなっている。ヒロコマナーグループ正規認定講師。
コメント
コロナによって葬儀の形態が変わり、家族葬を執り行うことが多くなりました。生前親しくしていたとしても家族葬と伝えられたらご遺族の気持ちを優先させ、ご負担やご迷惑をかけないようにしましょう。家族葬であっても、お通夜に「一般弔問」の案内があればどなたでも弔問できます。その場合は、弔問時間を守ってお別れを告げましょう。また、弔電や供花などで弔意を伝えることもできます。どのようなかたちで弔意を表すのが良いか、ご遺族の立場で考えることが大切です。
監修統括
ヒロコマナーグループ・一般社団法人マナー&プロトコル・日本伝統文化普及協会 代表 西出ひろ子
西出ひろ子 著書・監修
国内外でマナー本100冊以上。著者累計100万部以上のマナーの専門家。
- 『お悔やみのマナー』 (アドレナライズ) 2013/9/24発行
- 『知らないと恥をかく 50歳からのマナー』(ワニブックス) 2020/8/25発行
- 『気くばりにいいこと超大全』(宝島社)2022/6/15発行
など多数