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社会保険とは 社会保険料の計算方法や加入条件、加入手続きを解説

最終更新日: 2024年06月28日

社会保険の任意継続とは? 退職後の手続きや国保との違いを解説!|ミツモア社会保険とは、病気や死亡などの不測の事故や老後の生活に備えるために、働く人たちがその収入に応じて保険料を出し合い「共通の準備財産」を作っておくことで、いざという時にこの「共通の準備財産」から、医療、介護や年金・一時金など決められたお金やサービスが支給されて生活の安定をはかるという仕組みです。

この記事では、社会保険制度の概要や加入条件、加入・喪失の手続き、保険料の計算方法や被扶養者の要件などについて順を追って紹介していきます。

社会保険とは

社会保険 労働保険
社会保険とは

日本の社会保険には、業務上での病気、けがや失業に備えるための「労働保険」(労災保険・雇用保険)、業務外での病気、けがに備えるための「医療保険(健康保険)」、年をとったときや病気やけがで障害が残ったとき、家族の働き手が亡くなったときの「年金保険」、加齢に伴って介護が必要になったときの「介護保険」の5種類があります。

ここでは、この5種類の社会保険の内容と、広義・狭義の社会保険について見ていきましょう。

社会保険の種類

働く人が加入しなければならない社会保険には以下のような種類があります。

(1)労災保険

労災保険は、正式名を「労働者災害補償保険」と言います。業務中や通勤途中で発生した事故や災害などによる病気・けが・障害・死亡などに対して必要な給付を行います。保険給付には、年金形式と一時金形式があり、条件によって受給方法が異なります。

(2)雇用保険

雇用保険は、失業や出産・育児などのために一時期会社を離れた労働者に対して、再び職場復帰ができるよう必要な給付を行ないます。具体的には、労働者向けの給付としては、失業した際に一定期間受給できる「休職者給付(失業保険)」、厚生労働大臣が指定する教育訓練を要件通りに受講終了した場合に受給できる「教育訓練給付」、育児や介護で休業する場合に受給できる「育児休業給付」「介護休業給付」などがあります。

(3)医療保険(健康保険)

医療保険は、業務外で発生した事故や災害などによる病気やけが、また、出産、死亡などに対して必要な給付を行います。日本では、いざというときでも安心して医師の診察が受けられるように全ての国民が何らかの公的医療保険に加入することが義務付けられています。これを「国民皆保険」といいます。

(4)厚生年金保険

年金保険は、会社員や公務員及び私立学校教職員を主な対象としており、老後の生活や死亡に備えるための年金制度で、老齢年金は積み立てた金額に応じた年金を老後に受け取ることができる制度です。また、病気やけがで障害が残った場合には障害年金、加入者本人が死亡した場合には加入者の遺族に対して遺族年金などが支給されます。

(5)介護保険

介護保険は、介護が必要になった人を社会全体でサポートする制度です。単に被介護者の身の回りの世話だけでなく、被介護者の自立サポート、被介護者本人の自由選択での介護サービスの享受、納付保険料に応じたサービスや給付を基本に、地域社会で支え合いながら介護サービスの充実を目指すのが基本理念です。

なお、介護保険に関して会社で行う手続きは40歳以上65歳未満の被保険者からの保険料の徴収のみです。

社会保険と労働保険

社会保険は、「広義の社会保険」、「狭義の社会保険」と言われることがあります。

「広義の社会保険」とは、病気、けが、失業や老後の生活などに備えて、国民の生活を保障する目的の公的保険で、前述した「労災保険」、「雇用保険」、「医療保険(健康保険)」、「厚生年金保険」、「介護保険」の5つを指し、狭い意味の社会保険としては後者の3つを指します。

つまり、社会保険(広義)は次の(1)と(2)に大きく分けられます。

(1)「労働保険」 (2)「社会保険(狭義)」
・労災保険(労働者災害補償保険)

・雇用保険

・医療保険(健康保険)

・厚生年金保険

・介護保険

社会保険の加入義務

社会保険 加入義務
社会保険の加入義務

社会保険の加入義務が発生する事業所の条件を知っていますか? ここでは、社会保険の加入義務、労働保険の加入義務に加えて、社会保険に未加入の場合の罰則についても見ていきたいと思います。

社会保険の加入義務

社会保険の加入は事業所を単位に適用されます。社会保険の適用を受ける事業所を適用事業所といい、法律によって加入が義務づけられている強制適用事業所と、任意で加入する任意適用事業所の2種類があります。

(1)強制適用事業所

・国、地方公共団体または法人の事業所
・一定の業種(※)であり、常時5人以上を雇用する個人事業所
※一定の業種・・・製造業、土木建築業、鉱業、電気ガス事業、運送業、清掃業、物品販売業、金融保険業、保管賃貸業、媒介周旋業、集金案内広告工業、教育研究調査業、医療保険業、通信報道業など。

(2)任意適用事業所

・強制適用事業所とならない事業所で厚生労働大臣の認可を受けて健康保険・厚生年金保険の適用となった事業所

労働保険の加入義務

労働保険は、正社員、パート、アルバイトに関わらず、労働者を1人でも雇っている事業場は加入義務があります

社会保険未加入の場合の罰則

社会保険に加入しなければいけない事業所で社会保険への未加入が発覚してしまった場合、どのようなリスクがあるのでしょうか?

法的な罰則としては、該当する事業所には「6ヶ月以下の懲役、または50万円以下の罰金」が課せられます。その他にも、最大で過去2年に遡って、社会保険料を労働者とともに折半して納付する必要がでてきます。もしも該当する労働者が行方知れずだった場合には、会社側で全額負担しなければなりません。

その上、刑罰や保険料の遡及以外に、社会的な信用を失ってしまうという大きなリスクを負うことにもなるため、社会保険に未加入の状態にならないように気をつける必要があります。

事業所の社会保険の加入手続き

社会保険 加入手続き
事業所の社会保険の加入手続き(画像提供:PIXTA)

ここでは、事業所が社会保険に加入する手続きに必要な書類、書類の提出先、提出期限、添付書類として必要な書類について説明してきます。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)

必要書類 提出先 提出期限 添付書類
健康保険・厚生年金保険新規適用届 事業所を管轄する年金事務所 会社の新規設立や未加入事業所の加入などの事由発生から5日以内 法人登記簿謄本など

労働保険(労災保険・雇用保険)

必要書類 提出先 提出期限 添付書類
労働保険保険関係成立届 事業場を管轄する労働基準監督署またはハローワーク 労働者を一人でも雇用したとき等、保険関係成立の日から10日以内 法人登記簿謄本、住民票など
労働保険概算保険料申告書 事業場を管轄する労働基準監督署または都道府県労働局 労働者を一人でも雇用したとき等、保険関係成立の日から50日以内 不要
雇用保険適用事業所設置届 事業所を管轄するハローワーク 事業所を設置した日の翌日から10日以内 事業所の法人登記簿謄本など

従業員の社会保険の加入条件

社会保険 加入条件
従業員の社会保険の加入条件

先ほどは事業所の社会保険への加入義務や加入する際の手続きについて見てきましたが、今度は従業員の社会保険への加入条件について、パート・アルバイトを含めて見ていきます。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)

適用事業に使用される者は、1週間の所定労働時間および1月の所定労働日数が常用雇用者の4分の3以上の場合、原則として、健康保険(介護保険)・厚生年金保険の被保険者となります。ただし、以下の者については適用されません。

①日々雇用される者
②臨時に2ヶ月以内の期間を定めて使用される者
③事業所の所在地の一定しない事業に使用される者
④季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用される者
⑤臨時的事業の事業所に6ヶ月以内の期間を定めて使用される者
⑥国民健康保険組合の事業所に使用される者(厚生年金保険のみ適用)
⑦保険者または共済組合等の承認を受けた者

パート・アルバイトの加入条件

パートタイマー・アルバイト等の資格取得については、常用的な雇用関係にあり、勤務時間および勤務日数が一般社員の4分の3以上である場合、被保険者となります。

上記4分の3基準を満たさない場合でも、被保険者数が501人以上の企業や500人以下で労使合意に基づきする企業等に勤務し、下記の労働者の条件を満たす者は被保険者となります。

①週の所定労働時間が20時間以上ある
②雇用期間が1年以上見込まれる
③賃金月額8.8万円以上(年収106万円以上)である
④学生(昼間部の学生)でない

雇用保険

次に労働保険関係の加入条件について見ていきます。

労災保険ですが、労災保険は従業員を1人でも雇用している事業所は加入の義務があります。ただし、労災保険は従業員個人が加入するのではなく、事業所単位で事業主が加入する保険になります。

次に、雇用保険の加入条件についてですが、下記のような条件があります。

①31日以上引き続き雇用されることが見込まれること
②1週間の所定労働時間が20時間以上の者であること
③学生ではないこと(例外あり)

従業員を雇ったときの社会保険の加入手続き

従業員を雇ったときの社会保険の加入手続き

ここでは、従業員を雇ったときの社会保険への加入手続きに必要な書類、書類の提出先、提出方法、提出期限、添付書類として必要な書類について、社会保険、労働保険に分けて見ていきます。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)

必要書類 提出先 提出方法 提出期限 添付書類
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 事業所を管轄する年金事務所、健康保険組合 窓口への持参、郵送、電子申請 事実発生から5日以内 原則不要
健康保険被扶養者(異動)届

※従業員に扶養家族がいる場合

事業所を管轄する年金事務所または健康保険組合 窓口への持参、郵送、電子申請 資格を取得した日から5日以内 続柄・収入・同居・内縁関係などがわかる書類

雇用保険

必要書類 提出先 提出方法 提出期限 添付書類
雇用保険被保険者資格取得届 事業所を管轄するハローワーク 窓口への持参、郵送、電子申請 被保険者となった日の属する月の翌月10日まで 原則不要

従業員が退職したときの社会保険の手続き

社会保険 退職
従業員が退職したときの社会保険の手続き

続いて、従業員が退職したときの社会保険の手続きについて見ていきますが、従業員が退職する際に必要になるのが退職日と被保険者でなくなる日である「資格喪失日」です。ここでは、この「資格喪失日」と社会保険の喪失手続きについて解説していきます。

資格喪失日

退職等により被保険者でなくなる日を「資格喪失日」と言いますが、被保険者でなくなる日は次のとおりです。

①適用事業所に使用されなくなった日の翌日
②被保険者から適用除外される自由に該当した日の翌日
③任意適用事業所が任意脱退の許可を受けた日の翌日
④死亡した日の翌日

※ただし、上記①~③の前日に他の事業所で使用されて被保険者となったとき等は、その日に被保険者でなくなります。

社会保険料の控除はいつまで?

資格喪失日に関連して、退職日と社会保険料の控除に関する注意点をあげておきます。

社会保険料は1ヶ月単位で計算し、日割計算はしません。

社会保険の資格喪失日は「退職日の翌日」となり、「資格喪失日が属する月の前月」までが被保険者期間となります。そのため、月末の退職日の場合は資格喪失日が翌日の1日になり、資格喪失日の前月まで社会保険料がかかります。それに対して、月の途中での退職の場合、資格喪失日が退職月と同じ月になるため、その月の社会保険料はかからないということになります。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の資格喪失の手続き

社会保険の被保険者が、退職・死亡・他の事業所に転勤・適用除外に該当などの理由により社会保険の被保険者の資格を喪失するときは、下記の書類を準備して手続きを行います。

必要書類 提出先 提出方法 提出期限
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届 事業所を管轄する年金事務所、健康保険組合 窓口への持参、郵送、電子申請 資格喪失日から5日以内

雇用保険の資格喪失の手続き

前述と同様に雇用保険の被保険者が、退職・死亡・取締役への就任などの理由により雇用保険の被保険者の資格を喪失するときは、下記の書類を準備して手続きを行います。

なお、従業員が離職票の交付を希望する場合や59歳以上の場合には、「離職証明書」をハローワークに提出します。

必要書類 提出先 提出方法 提出期限
雇用保険被保険者資格喪失届 事業所を管轄するハローワーク 窓口への持参、郵送、電子申請 離職日の翌日から起算して10日以内
雇用保険被保険者離職証明書 事業所を管轄するハローワーク 窓口への持参、郵送、電子申請 離職日の翌日から起算して10日以内

健康保険資格喪失証明書

社会保険の被保険者が退職等で社会保険の資格を喪失し、国民健康保険に加入することとなった場合、市区町村役場の窓口に社会保険を喪失したことを証明するために「健康保険資格喪失証明書」を提出する必要があります。

手元にない場合には、住所地を管轄する年金事務所へ行き、健康保険資格喪失証明書を発行したい旨を伝えて確認請求書を提出することにより発行してもらえます。

なお、年金事務所の窓口での発行を希望する場合には、身分証明書、年金手帳などが必要になりますので、事前に年金事務所に持参する書類を確認してから行くようにしてください。

社会保険(健康保険)の任意継続

健康保険の任意継続とは、健康保険の被保険者が事業所を退職や労働時間の短縮等によって被保険者資格を喪失したときに、一定の条件のもとに個人の希望(意思)によって、個人で継続して加入できる制度です。

加入するには次の2つの条件を満たしていることが条件です。

  • 資格喪失日までに健康保険の被保険者期間が継続して2ヶ月以上あること
  • 資格喪失日から20日以内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出すること

加入できる期間は、退職日の翌日から2年間です。保険料率などは都道府県によって異なりますので、詳しくは加入していた協会けんぽ、または、健康保険組合にお問合せ下さい。

社会保険料の計算方法

社会保険料の計算方法

社会保険料の計算をする際に指標となるものが「標準報酬月額」です。ここでは、標準報酬月額の解説を行い、実際に発生する社会保険料の計算方法、労使負担割合や納付方法などについて見ていきます。

社会保険料を決定する「標準報酬月額」

社会保険 標準報酬月額
保険料額表(東京都)より一部抜粋 出典:協会けんぽ

標準報酬月額とは、健康保険や厚生年金保険において毎月の保険料や保険給付の計算をするときに用いるもので、被保険者が事業主から受ける報酬をいくつかの幅(等級)に区分した仮の報酬月額表(標準報酬月額等級区分表という)に当てはめて決められます。

上記の保険料額表を見てもらうとわかるように、健康保険の標準報酬月額は第1級の58,000円から第50級の1,390,000円までの50等級に、厚生年金保険の標準報酬月額は、第1級の88,000円から第31級の620,000円の31等級に区分されています。

令和元年度(平成31年度)現在の都道府県ごとの保険料額表は以下の協会けんぽのホームページから確認できます。

この「標準報酬月額」の決定は、通常、定時決定(年1回の「算定基礎届」の届出)で行ないます。この届出は、毎年7月1日現在で、在籍する健康保険・厚生年金保険の全被保険者の報酬月額について、保険者が標準報酬月額の見直しを行い、その年の9月以降の標準報酬月額を決定する手続きに使用するものです。

「報酬」とは

被保険者が事業主から受ける報酬とは、標準報酬月額の算定のもととなるもので、その名称を問わず、労働者が労働の対償として受けるものをいいます。金銭に限らず、現物で支給される食事や住宅、通勤定期券も報酬に含まれます。臨時に受けるものは報酬の対象となりません。年3回以下支給される賞与は標準賞与額の対象となります。

標準賞与額・・・税引き前の賞与総額から千円未満を切り捨てた金額(健康保険は年度の累計額が573万円、厚生年金保険は1ヶ月あたり150万円が上限)

【報酬となるもの】

通貨で支給 現物で支給
基本給、残業手当、通勤手当、住宅手当、家族手当、役付手当、賞与(ただし、年4回以上支給されるもの) など 通勤定期券・回数券、食事・食券、社宅・独身寮など

社会保険料の計算方法

具体例として東京都のIT企業に勤務する41歳、健康保険は協会けんぽに加入している月給34万円賞与50万円の被保険者の社会保険料を計算していきます。

健康保険料

健康保険料の計算式は以下のようになります。

毎月納める健康保険料=標準報酬月額 × 健康保険料率

賞与から納める健康保険料=標準賞与額 × 健康保険料率

月給は34万円ですので、標準報酬月額は第24級の340,000円になります。また、東京都の協会けんぽの健康保険料率は、令和1年度現在9.90%です。よって、健康保険料は、以下のように算出できます。

毎月納める健康保険料 = 340,000円 × 9.90% = 33,660円(事業主と被保険者が16,830円ずつ負担)

賞与から納める健康保険料 = 50万円 × 9.90% = 49,500円(事業主と被保険者が24,750円ずつ負担)

厚生年金保険料

厚生年金保険料の計算式は以下のようになります。

毎月納める厚生年金保険料=標準報酬月額 × 厚生年金保険料率

賞与から納める厚生年金保険料=標準賞与額×厚生年金保険料率

厚生年金保険料率は、現在一律18.3%で固定されています。

標準報酬月額は第21級の340,000円になるので、厚生年金保険料は、以下のように算出できます。

毎月納める厚生年金保険料 = 340,000円 × 18.3% = 62,220円(事業主と被保険者が31,110円ずつ負担)

賞与から納める厚生年金保険料 = 50万円 × 18.3% = 91,500円(事業主と被保険者が45,750円ずつ負担)

介護保険料

介護保険料は40歳以上65歳未満の被保険者のみ保険料の徴収があります。

介護保険料率の計算式は以下のようになります。

毎月納める介護保険料=標準報酬月額 × 介護保険料率

賞与から納める介護保険料=標準賞与額 × 介護保険料率

東京都の協会けんぽの介護保険料率は、令和1年度現在1.73%です。

毎月納める介護保険料 = 340,000円 × 1.73% = 5,882円(事業主と被保険者が2,941円ずつ負担)

賞与から納める介護保険料 = 50万円 × 1.73% = 8,650円(事業主と被保険者が4,325円ずつ負担)

労働保険料の計算方法

労働保険料(雇用保険料と労災保険料)には、社会保険料のような「標準報酬月額」という基準はなく、毎月の給与額を基に保険料が計算されます。

雇用保険料

雇用保険料の計算式は以下のようになります。

毎月納める雇用保険料=毎月の給与額 × 雇用保険料率

賞与から納める雇用保険料=賞与額 × 雇用保険料率

雇用保険料は労使の負担割合が異なります。例えば、一般の事業の場合は、被保険者負担が3/1,000、事業主負担が6/1,000、建設の事業の場合は、労働者負担が4/1,000、事業主負担が8/1,000です。

雇用保険料率
雇用保険料率表 出典:厚生労働省

具体例として東京都のIT企業に勤務する41歳、健康保険は協会けんぽに加入している月給34万円、賞与50万円の被保険者の雇用保険料を計算していきます。

上記で示した雇用保険料率表を参照すると雇用保険料率は被保険者負担が3/1,000、事業主負担が6/1,000になります。

よって、雇用保険料は、以下のように算出できます。

毎月納める雇用保険料 = 340,000円 × 9/1,000 = 3,060円(被保険者負担:1,020円、事業主負担:2,040円)

賞与から納める雇用保険料 = 50万円 × 9/1,000 = 4,500円(被保険者負担:1,500円、事業主負担:3,000円)

労災保険料

労災保険料の計算式は以下のようになります。

労災保険料=賃金総額 × 労災保険料率

以下のような具体例で労災保険料を計算してみましょう。

従業員が10人、平均給与が25万円、平均年間賞与が50万円の小売業

小売業の労災保険料率は、上記の【厚生労働省 平成31年度労災保険料率】を参照して「98:卸売業・小売業、飲食店又は宿泊業」を見ますと労災保険料率は「3/1000」です。

賃金総額は、(10人 × 25万円 × 12ヶ月)+(10人 × 50万円) = 3,500万円になります。

よって、労災保険料は以下のように算出できます。

労災保険料 = 3,500万円 × 3/1000 = 105,000円

社会保険料は労使双方で負担

社会保険料は、社会保険事業の費用を賄うため、被保険者とその事業主が負担して支払うこととなっています。それでは、被保険者と事業主がどの程度の割合で負担するものなのかを個別に見ていきたいと思います。

健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料

健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料の負担割合は、被保険者負担が2分の1、事業主負担が2分の1です。

雇用保険料

雇用保険料は、年度ごとの雇用保険料率から労働者負担と事業主負担の割合を求めることができます。平成31年度は以下の通りです。

雇用保険料率
雇用保険料率表 出典:厚生労働省

労災保険料

労災保険料は、全額事業主が負担することになっています。

社会保険料の納付方法

次に、社会保険料の納付方法について、社会保険と労働保険それぞれについて見ていきます。

社会保険

納付に関しては、毎月20日頃に送付されてくる「保険料納入告知書」に記載されている金額を確認して、基本的にその月の末日までに保険料額を納付する事になります。

労働保険

労働保険は、新規加入時にまず年度更新という手続きを行って概算保険料の申告を行います。

その後の年度更新は、事業主が新年度(今年の4月1日から来年の3月31日まで)の概算保険料(雇用保険料、労災保険料)を納付するための申告・納付と前年度(昨年の4月1日から今年の3月31日まで)の保険料を精算するための確定保険料(雇用保険料、労災保険料)の申告・納付を行う手続きです。

社会保険料を滞納した場合の罰則

もしも、納付期限までに社会保険料を納めることが出来なかった場合には、延滞金が課せられる可能性があったり、所有財産の調査やその財産の差し押さえなどがなされる可能性があるため注意が必要です。

毎月20日頃に送付される「保険料納入告知書」が届いたら、金額と納付期限を確認して、期限までに支払いを完了できないと予想される場合は、速やかに管轄の年金事務所等に出向いて相談する方が良いでしょう。

社会保険における扶養制度

社会保険 扶養
社会保険における扶養制度

社会保険には「扶養」という考え方があり、被保険者にメリットがある場合もあります。ここでは、扶養について考え方、その範囲、条件、手続きについて順番に見ていきます。

社会保険の扶養とは

社会保険の扶養とは、年収が130万円未満であるなどの条件を満たした場合に、被保険者の配偶者や、父母、祖父母、子供が被保険者の扶養に入ることで各種の給付が受けられるようになるという制度です。

メリットとしては、被扶養者は個別に社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料)を納めることなく保険の給付を受けられることが挙げられます。

社会保険の扶養の範囲

社会保険 扶養 範囲
被保険者の家族とは 出典:協会けんぽ

社会保険の被扶養者の範囲は法律で定められており、一定範囲内の親族となっています。この「一定範囲内の親族」には、被保険者と同居でなくてもよい人と、同居であることが条件の人がいます。

(a)同居でなくてもよい人
1.配偶者(内縁を含む)
2.子(養子を含む)、孫、兄弟姉妹
3.父母、祖父母、曾祖父母

(b)同居であることが条件の人
1.上記以外の3親等内の親族
2.配偶者の父母及び子(配偶者の死後、引き続き同居する場合を含む)

社会保険の扶養の条件

社会保険の扶養の条件としては「収入要件」があげられます。

認定対象者の年間収入(見込み)が130万円未満(満60歳以上の者又は障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)で、かつ被保険者の年収の2分の1未満であれば、被扶養者になれます。

また、被保険者の年収の2分の1以上であっても、130万円未満である場合に、被保険者の収入によって生計を維持されていると認められれば被扶養者となる場合もあります。

ここで、「年間収入130万円未満」、「年間収入180万円未満」という収入限度額が出てきますが、収入証明として、直近3ヶ月の収入から年収見込額を推測する際に、その3ヶ月分の中に1ヶ月分でも 108,334円(または150,000円)以上の月があった場合には、年収見込額が130万円(または180万円)未満であることが確認できないと判断され、他の手段(雇用契約書の確認など)での確認などが発生する可能性があります。

社会保険の扶養に必要な手続き

社会保険で家族を被扶養者にするためには、被扶養者になる資格を取得した日から5日以内に、事業所を管轄する年金事務所または健康保険組合へ「健康保険 被扶養者(異動)届」を提出して被扶養者認定を受けます。

被扶養配偶者の国民年金第3号被保険者への切り替えの手続きが必要な場合には、「健康保険被扶養者(異動)届」の3枚目にある「国民年金 第3号被保険者関係届」を同時に提出してください。

社会保険と国民健康保険の違い

社会保険 国民健康保険
社会保険と国民健康保険の違い

ここでは、社会保険の健康保険と市区町村が運営する国民健康保険との違いや会社に就職する、会社を退職する事により、社会保険と国民健康保管間で手続きの切り替えが発生した際の注意点について見ていきましょう。

社会保険と国民健康保険の違い

社会保険と国民健康保険の大きな違いはその運営者で、社会保険が全国健康保険協会(協会けんぽ)、または各健康保険組合であるのに対して、国民健康保険は各市区町村であることです。また、加入条件や保険料、扶養についての異なりますので、下記の表にまとめました。

社会保険 国民健康保険
運営者 全国健康保険協会(協会けんぽ)、または各健康保険組合 各市区町村
加入条件 会社で働いている正社員か、正社員の4分の3以上の勤務時間がある非正規雇用社員ならびにその家族 個人経営の会社に勤めている人や個人事業主とその家族、無職の人
保険料 個人単位で、収入などにより算出

基本的には、標準報酬月額×保険料率

世帯単位で、加入者数、年齢、収入などにより算出

基本的には、所得割・均等割り・合計額

扶養 扶養認定されれば何人でも保険料が同額 扶養という概念はなし

世帯内の加入者数により保険料が決まる

社会保険と国民健康保険の切り替え

社会保険から国民健康保険への切り替え、逆に国民健康保険から社会保険への切り替えでそれぞれ気をつけないといけないことがありますので見ていきます。

社会保険から国民健康保険への切り替え

社会保険から国民健康保険への切り替えについてですが、国民健康保険への加入は市区町村役場に社会保険の「資格喪失証明書」を提出することで加入することができます。資格喪失証明書 を持参しないで手続きに行っても手続きは受け付けてもらえませんのでご注意ください。

国民健康保険から社会保険への切り替え

国民健康保険から社会保険への切り替えについては、社会保険への加入は会社などが手続きをしてくれますが、国民健康保険の脱退手続きは自分で市区町村役場に出向いて行うことが必要です。

脱退手続きを忘れていると保険料の二重払いをすることになり、脱退手続きだけのはずが、返金手続きなど余計な手続きが発生するばかりか、手続き後に返金してもらえるとしても一時的に出費もかさみますので、国民健康保険の脱退手続き漏れには気をつけて下さい。

まとめ

社会保険は、我々が安定した生活を送るためには必要な制度ということが言えると思います。今回、社会保険の種類や加入・喪失手続き、社会保険料の計算方法や扶養制度について見ていきました。

これらの内容を頭の片隅に置いておきながら、自分の給与明細の社会保険料の項目を参照してみるのも確認のためには良いのではないかと思います。

この記事を執筆したライター

特定社会保険労務士 山本務 <やまもと つとむ>

やまもと社会保険労務士事務所代表の山本務です。
経営者・労働者からの労働相談・あっせん代理、労務環境調査・各種行政調査対応、人事労務管理、就業規則の作成・変更、有給休暇管理、労働保険・社会保険の各種手続き、給与計算代行、助成金申請支援などのお手伝いをさせていただいております。

やまもと社会保険労務士事務所

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