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パートの社会保険の加入条件と手続き~いくらから?シミュレーションで確認!

最終更新日: 2024年06月28日

パートの社会保険の加入条件が2022年10月に改正されました。法改正後の加入条件に該当すると、本人が加入したいか加入したくないかに関わらず強制加入となります。

自分が加入条件に該当するのか、何か手続きは必要になるのか、パートで働く人は事前に確認しておきましょう。この記事ではパートの社会保険の加入条件について紹介します。社会保険料がいくら引かれるのか、シミュレーションも行うので参考にしてください。

パートの社会保険加入条件と2022年10月の改正ポイント

パートの社会保険加入条件と2022年10月の改正ポイント
パートの社会保険加入条件と2022年10月の改正ポイント

パートで働く人の中には、2022年10月の法改正後に社会保険の加入義務が生じる人がいます。

「社会保険料を払いたくない」「社会保険に加入したくない」と考えて家族の扶養に入っている人でも、改正後の加入条件に該当すると、自分で社会保険に入って保険料を払わなければいけません。

今回の改正で自分が対象となり影響を受けるのかどうか、パートで働く人は社会保険の加入条件や改正内容を理解しておく必要があります。

そもそも社会保険とは?仕組みと加入条件

会社で働くときに関係する主な社会保険は、健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険の4つです。

一般的に社会保険とは、この4つの制度すべてを指す場合と健康保険・厚生年金保険の2つを指す場合があり、前者は広義の社会保険、後者は狭義の社会保険と呼ばれます。

2022年10月に加入条件が改正されてパートで働く人に影響するのは健康保険と厚生年金保険の2つです。2022年3月現在のルールでは、パートなど労働時間が正社員の4分の3未満の人でも、次の5つの加入条件に該当する場合は社会保険に入ることになっています。

  1. 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 雇用期間が継続して1年以上見込まれること
  3. 賃金の月額が8.8万円以上であること
  4. 学生でないこと
  5. 常時500人を超える被保険者を使用する企業(特定適用事業所)または500人以下で加入について労使合意した企業に勤めていること

健康保険では、普段から保険料を払うことで医療費がかかった場合でも必要な給付を受けることができ、原則3割負担で済んで自己負担額を抑えられます。また厚生年金保険では、働いているときから保険料を払うことで老後に年金を受け取ることができ、一定の要件に該当すると障害年金や遺族年金を受け取れます。

参考:社会保険の加入義務| 対象となる会社と従業員(正社員・パート・アルバイト)の条件

2022年10月の改正ポイントは「雇用期間」と「従業員数」

上で紹介した社会保険の5つの加入条件のうち、2022年10月に改正されるのは「雇用期間」と「従業員数」に関する条件の2つです。雇用期間に関する条件は「1年以上」から「2ヶ月超」に、従業員数に関する条件は「500人超」から「100人超」に、それぞれ変更になります。

2022年10月以降、パートやアルバイトなどの短時間労働者で社会保険への加入義務が生じるのは、次の条件に該当する人です。

2022年10月以降のパートの社会保険加入条件
2022年10月以降のパートの社会保険加入条件(出典:厚生労働省

勤務先の従業員数が101人~500人の場合、2022年10月以降は新たに社会保険の加入対象になる可能性があります。パートで働いている人は、勤務先の規模(従業員数)によって法改正の影響を受けるかどうかが変わるので、気になる場合は勤務先に確認しましょう。

また2024年10月以降は従業員数の要件が「100人超」から「50人超」に変わる予定です。勤務先の従業員数が50人以下であれば影響はありませんが、51人~100人の場合はこのタイミングで新たに社会保険の加入条件に該当する可能性があります。

なお加入条件のうち「88,000円」が「68,000円」に改正される可能性があると一時期話題になりましたが、2022年3月時点では、そのような法改正が行われる予定はありません。

パートで社会保険に加入したくない場合の条件

パートで社会保険に加入したくない場合の条件
パートで社会保険に加入したくない場合の条件

社会保険に加入したいか加入したくないかに関係なく、パートで働く人が社会保険の加入条件に該当すれば社会保険への加入は義務となります。加入するかどうかは選べず、加入後に自由に辞めることもできません。未加入だと罰則の対象になります。

しかし法定の加入条件に該当しないように調整することで、結果的に社会保険に加入しないことは可能です。パートで働くとき、社会保険に加入したくない場合にはどうすれば良いのか、以下では具体的な対処法を紹介します。

年収106万円、月収8万8千円未満に抑える

パートで社会保険の加入義務が生じるのは、前述の5つの加入条件を満たす場合です。裏を返せば、いずれか1つでも満たさなければ加入義務は生じません。

たとえば加入条件の1つである「月収8万8千円以上」を満たさないように収入を抑えれば、義務は生じないので社会保険への加入は不要です。パートで社会保険に加入したくない場合には、収入を月収8万8千円未満・年収106万円未満に調整して抑えれば加入せずに済みます。

勤務時間を週20時間未満に抑える

パートが社会保険に加入する条件の1つに「週の所定労働時間20時間以上」があります。この条件を満たさないように勤務時間を抑えれば、社会保険への加入義務は生じません。

所定労働時間とは、就業規則や雇用契約書などに記載された労働時間のことで、休憩時間を除く時間です。1週間の所定労働時間と1ヶ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上だと社会保険への加入義務が生じますが、そうでない場合は、勤務時間を週20時間未満にすれば社会保険に入らずに済みます。

パートが社会保険に加入した場合、保険料の負担はいくら?

パートが社会保険に加入した場合、保険料の負担はいくら?
パートが社会保険に加入した場合、保険料の負担はいくら?

パートが社会保険に加入したくない場合の対処法として、収入や勤務時間を抑える方法を紹介しました。しかし人によっては、無理に収入を抑えて保険料が引かれずに済む場合よりも、社会保険に加入して保険料を引かれるほうが、手取りが増えることがあります。

2022年10月以降に加入条件に該当すると社会保険料がいくら引かれるのか、計算方法を紹介するので、事前にシミュレーションをしてどちらが手取りが増えるのか確認しておきましょう。

健康保険料

給料から天引きされる健康保険料は次の式で計算できます。

  • 健康保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率 ÷ 2

保険料率は加入する健康保険制度などによって異なります。たとえば協会けんぽ加入者(神奈川)の場合、令和4年度の保険料額は以下の表のとおりです。健康保険料率は、40歳以上65歳未満で介護保険第2号被保険者に該当する人と、それ以外の人で異なり、それぞれ保険料率は11.49%と9.85%です。

表の左側の「報酬月額」のうち、自分のパート収入(月額)が該当する箇所を見つけて、保険料計算で使う「標準報酬月額」を確認することになります。

令和4年度 保険料額表(協会けんぽ・神奈川)
令和4年度 保険料額表(協会けんぽ・神奈川)(出典:協会けんぽ

35歳(協会けんぽ・神奈川)でパート収入が月10.5万円の人であれば、健康保険の等級は6で標準報酬月額は10.4万円、保険料率は9.85%です。

  • 健康保険料 = 104,000円(標準報酬月額) × 9.85%(保険料率) ÷ 2 = 5,122円

なお、社会保険料がいつから引かれるのかは会社ごとに異なりますが、ある月の社会保険料は翌月に引かれることが一般的です。そのため2022年10月からパートが社会保険に入る場合は、翌月控除の会社であれば11月の給料から社会保険料が引かれることになります。

参考:社会保険加入でいつから保険料支払いが発生するのか?

厚生年金保険料

給料から天引きされる厚生年金保険料は次の式で計算できます。

  • 厚生年金保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率 ÷ 2

保険料率は一律18.3%です。35歳(協会けんぽ・神奈川)でパート収入が月10.5万円の人であれば、厚生年金保険の等級は3で標準報酬月額は10.4万円となり、次のように計算できます。

  • 厚生年金保険料 = 104,000円(標準報酬月額) × 18.3%(保険料率) ÷ 2 = 9,516円

健康保険料5,122円と厚生年金保険料9,516円を合わせて、14,638円の社会保険料が毎月の給料から引かれることになります。

ここで、もしも「社会保険料を引かれたくない」「社会保険に加入したくない」ということであれば、月収を10.5万円から8.8万円未満に減らすことになりますが、そうすると手取りが大幅に減ってしまうので得策ではありません。

10.5万円から8.8万円未満に抑えると月収が1.7万円も減ってしまうので、それならば月収を10.5万円にしたまま社会保険料14,638円を払うほうが手取りは多くなります。

年収が130万円以上になった時の社会保険料の負担額

2022年10月から新たに社会保険が適用されるのは、パート先の従業員数が100人超500人以下の場合です。この要件に該当しなければ、仮に年収が106万円以上でもパート先で社会保険に入ることにはなりません。現在家族の扶養に入っている人は、引き続き扶養家族として家族の社会保険の適用を受けられます。

しかし年収が130万円以上になった場合は扶養から外れます。扶養に入れる家族は原則として年収130万円未満の人だからです。家族の扶養に入らず、パート先でも社会保険に入らない場合は、健康保険制度では国民健康保険に加入し、年金制度では国民年金の第1号被保険者になります。

国民健康保険料は自治体ごとに異なり、国民年金保険料は約1.6万円/月です。それぞれ保険料を払わなければいけません。

パートが社会保険に加入するときに必要な手続き

パートが社会保険に加入するときに必要な手続き
パートが社会保険に加入するときに必要な手続き

パートで働く人のうち、2022年10月の法改正によって新たに社会保険の加入条件に該当する人は、自分で手続きをしなければいけない場合があります。

手続きの種類は人によって異なるので、自分の場合にはどのような手続きが必要なのか、事前に確認しておきましょう。必要な社会保険手続きは漏れなく行うようにしてください

国民年金に加入している場合

国民年金の第1号被保険者として保険料を払っている人や、配偶者の扶養家族として第3号被保険者にあたる人が、パート先で社会保険の加入条件に該当して厚生年金保険に加入する場合、勤務先が手続きを行います。

従業員本人による手続きは基本的に不要です。ただし社会保険の加入手続きを勤務先が行う際、書類の提出を求められることがあります。その場合は指示に従って書類を提出するようにしてください。

配偶者の健康保険に加入している場合

扶養家族として配偶者の勤務先の健康保険制度の適用を受けている人が、パート先で社会保険に加入する場合、次の2つの手続きが必要です。

  1. 自分の勤務先で行う、社会保険への加入手続き
  2. 配偶者の勤務先で行う、扶養家族から外れるための手続き

1つ目の自分のパート先で行う手続きは、基本的に事業主が行います。勤務先から書類等の提出を求められた場合はその指示に従ってください。

2つ目の配偶者の勤務先で行う手続きでは、扶養家族ではなくなることの届出や健康保険証の返却などを行います。必要な手続きや書類については配偶者の勤務先に確認しましょう。

国民健康保険に加入している場合

国民健康保険に加入している人は、パート先で新たに社会保険に加入するときに次の2つの手続きが必要です。

  1. 自分の勤務先で行う、社会保険への加入手続き
  2. 市区町村役場で行う、国民健康保険から脱退するための手続き

1つ目の自分のパート先で行う手続きは、基本的に事業主が行います。勤務先から書類等の提出を求められた場合はその指示に従ってください。

2つ目の国民健康保険から脱退する手続きは住んでいる自治体で行います。手続き方法や必要書類は自治体に確認するようにしてください。市区町村役場の窓口に行って直接相談しても良いでしょう。

社会保険加入のメリット

社会保険加入のメリット
社会保険加入のメリット

パートで働く人の中には、社会保険料を払うことを負担に感じて「社会保険に加入したくない」という人もいるかもしれません。しかし社会保険に加入すると、老後の年金が増えるなどさまざまなメリットがあります。

2022年10月以降、新たに加入条件に該当して社会保険に入る人は、どんなメリットがあるのかをしっかりと理解した上で加入するようにしましょう。

老齢年金や障害年金、遺族年金が増える

パートが厚生年金に加入して保険料を払うと老後に受け取れる年金が増えます。国民年金の場合は満額受給でも年間約78万円ですが、厚生年金の場合は、働いていたときに納めた保険料の額や期間に応じて老後の年金が増える仕組みです。

また障害状態になった場合に受け取れる障害年金や、自分に万が一のことがあった場合に残された家族に支給される遺族年金も、納めた厚生年金保険料が多いほど増えます。

老後を迎えたときや障害状態になったとき、家族が残されたときに、年金を受け取れて生活費などに充てられる点が、社会保険の大きなメリットといえるでしょう。

医療保険の保障内容が充実する

パート先の企業で健康保険に加入すれば、万が一病気やケガで仕事を休んでも傷病手当金を受け取れます。原則として休業4日目から支給され、金額は給料の3分の2の額です。

一方で国民健康保険に加入している場合や家族の扶養に入っている場合は、仮に病気やケガでパートを休んでも傷病手当金はもらえません。

また出産手当金も傷病手当金と同じく国民健康保険ではもらえませんが、勤務先で社会保険に加入すれば支給されます。社会保険の加入条件を満たして勤務先で健康保険に入れば、医療保険の保障内容が充実する点がメリットです。

健康保険料・年金保険料の半分を会社が負担してくれる

自分で国民健康保険料や国民年金保険料を払う場合は全額自己負担ですが、会社で健康保険や厚生年金保険に入る場合は、自分が負担するのは半額です。社会保険料のうち残り半分は会社が負担してくれます。

全額自己負担となるケースのように負担が重くなることはなく、半分負担するだけで必要な保障を受けられる点が社会保険加入のメリットといえるでしょう。

ミツモアで社労士に見積りを依頼しよう!

パートで働いている場合、2022年10月の法改正によって新たに社会保険への加入義務が生じることがあります。自分が社会保険の加入条件に該当するのか、社会保険料はいくら引かれるのか、気になる人はパート先に早めに確認しましょう。

加入手続きは基本的に勤務先が行いますが、人によっては自分でも手続きが必要になる場合があります。社会保険のことで困った場合は社労士に相談してみましょう。専門家に依頼すれば必要な手続きをスムーズに終えられます。

この記事を監修した社労士

東京国際社会保険労務士事務所 - 東京都目黒区目黒

昭和57年東京都目黒区生まれ。青山学院大学卒業後、創業約5年の約100名規模のベンチャー企業にて、商品企画・開発・販売促進・広告・コールセンター・物流・経理・総務業務を経験する。その経験を活かし、業務推進グループにて予算を担当し、予算達成へ向けて、各部門との調整を進める。 その後、「働きやすさを改善すれば、企業はさらに発展する。」ことへの強い思いから、社会保険労務士試験を受験、合格。その間の2か所の社会保険労務士事務所にて、それぞれ、事務手続き・給与計算、顧問先への労務コンサルティング担当経験を経て、開業。 経験した業種は、製造・保育・教育・運送・派遣・介護・医科・歯科等多岐にわたる。従業員様の人数が10名未満のところから100名以上の規模も含め、オーダーメイドでの親身な対応を心掛けている。大切にしている思いは「気持ちに寄り添うこと」。 社長が一人で抱えている様々な課題に寄り添いながら、「会社を守り、従業員様が続けられる制度の醸成および周知」「煩雑な給与計算・手続きのアウトソーシング」をはじめとして、会社の発展につながる社労士でありたいと思います。 「経営者の方に、もっと身近に社労士に相談してほしい。そして、その会社で一緒に働く方達が、大変な時があってもこの会社でなら頑張れる、この会社のためなら頑張りたいとより思ってくれる会社にしたい。」という思いから開業しました。 働く上で、労働時間や休暇の制度・賃金等は、続くかどうかに直結しています。そして、会社に対して、積極的に会社をより良くしたいという思いを持ってもらえるかにも直結しています。 また、昨今、頻繁に煩雑な改訂が入り、種類も多く、要件も細かい、助成金の制度ですが、御社にあった助成金を東京国際社会保険労務士事務所がご提案・申請手続きをすることで受給へとつなげていきます。 資格 社会保険労務士、東京社労士会 介護労務管理アドバイザー、国家資格キャリアコンサルタント、年金アドバイザー3級、簿記2級

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