嘔吐した人に適切な処置をし、車内の汚れものを片付けるにはどうすればよいのでしょうか?外出先で行うべき応急処置を解説します。またなかなか悪臭が落ちない吐瀉物のクリーニング方法や、業者に頼む場合の相場もチェックしましょう。
車内で嘔吐してしまった!その場での応急処置
外出先で急に嘔吐する人が出たら、あわててしまうかもしれません。まずは落ち着き、冷静になって対処しましょう。嘔吐した人への応急手当と、車内の嘔吐物を取り除く方法、そしてノロウイルスの可能性を踏まえた対応も解説します。
- 吐瀉物を取り除く
- 濡れ雑巾やウェットティッシュで拭き取る
1.嘔吐物を取り除く
車内で嘔吐した人がいたら、まず安全な場所に停車し、車内を換気します。嘔吐した人は車から降ろし、新鮮な空気を吸わせて休ませましょう。明らかに車酔いや飲酒が原因でない場合には、ノロウイルスなどの感染症に備えて以下のように対処します。
- マスクと手袋(ビニール袋でも可)を装着する
- ウェットティッシュで吐瀉物を覆い飛沫感染を防ぐ
- 濡れ雑巾やウェットティッシュで固形物を取り除く
- 汚れものは二重にしたビニール袋に入れ、密封する
嘔吐物は臭いが残りやすいので、早めに取り除くことが大切です。汚れが生地に入り込まないよう、固形物を包むようにしてすくい取るのがコツです。
2.濡れ雑巾やウェットティッシュで拭き取る
嘔吐した後の固形物を取り除いたら、濡れ雑巾やウェットティッシュで、汚れをさらに拭き取ります。通常の除菌は消毒用アルコールで十分ですが、ノロウイルスの恐れがある場合はアルコールが効かないので、次亜塩素酸ナトリウム(0.05%)を用意します。
次亜塩素酸ナトリウムに浸した雑巾などで、吐瀉物のあった場所から半径2m程度を円の外から内側へ拭くなど、適切な処理で2次感染を防ぎましょう。
嘔吐した人も含め、車に乗っていた人は約48時間は体調を観察し、ノロウイルスの恐れがあれば病院に行く必要があります。
帰宅後に車のシートの嘔吐跡を掃除する方法
外出先では応急処置の片付けしかできないでしょう。帰宅後にもう一度、車のシートの嘔吐跡を掃除する必要があります。頑固な臭いや汚れを落とすための、重曹を使った布製シートの掃除方法と、革製シートの掃除方法を詳しく紹介します。
布製のシート掃除方法
本格的な清掃は帰宅後に行います。布製シートを掃除する場合は、脂肪酸を中和できる重曹がおすすめです。
以下のものを用意しましょう。
- バケツ
- ゴム手袋
- 重曹150g
- 約40度のお湯3L
- 雑巾4~5枚
掃除方法は以下の通りです。
- お湯に重曹を溶かしてバケツに重曹水を作る
- 雑巾を重曹に浸して軽く絞り、残りの吐瀉物を拭き取る
- 同じように軽く絞った別の雑巾をシートに押し当て、重曹水を染み込ませる
- 乾いた雑巾で水分を吸い取り、臭いが残っていないか確認する
- 約1日、車の窓やドアを開けてシートを乾燥させる
水分が残ると悪臭の原因になるので、きちんと乾かしましょう。臭いが落ちなかったら、翌日にもう一度掃除を繰り返します。
革製シートの掃除方法
革製シートの場合には応急処置で吐瀉物がきれいに取り除けていたら、本革用のクリーナーでケアします。
クリーナーの使い方は以下の通りです。
- 革の表面に少量をスプレーし、柔らかな布でもむように汚れを落とす
- それでも落ちない場合は、濡れたスポンジで軽くこする
- 約数分後に、大きめのきれいな布で水拭きする
- 布はこまめに水でゆすぎ、きれいな状態を保つ
- 最後に乾いた布で水分を拭き取る
- 革の油分を補うために保湿用クリームを塗る
アルコールや重曹は革を硬くしたり変色させたりする恐れがあります。本革はデリケートなため、適切に扱いましょう。
車内の嘔吐物を掃除するときにやってはいけないこと
車内の嘔吐物を片付けるときにやりがちな失敗例として、大量の水で汚れを流そうとする、消臭スプレーをかけるといった方法が挙げられます。通常の掃除では効果があるかもしれませんが、車内掃除ではNGな注意点を見ていきます。
- 嘔吐した部分に大量の水をかけない
- 市販の消臭スプレーをむやみに使わない
- 重曹を直接シートに振りかけない
- アルコールを直接革製シートに吹きかけない
嘔吐した部分に大量の水をかけない
車内で清掃する際に大量の水分を吐瀉物にかけると、汚れが流れ出て被害が拡大する危険があります。例えば汚れたシートに水をかけることで、座席の下や床のプラスチック部分(モールド)の下まで汚れて、掃除しにくくなってしまう可能性があるのです。
帰宅後に汚れを取るため、シートを外して浴槽に浸けたり、大量の水をかけたりするのもやめましょう。かえって汚れがシートの奥まで染み込み、臭いが残ってしまいます。
掃除後にしっかり乾燥しないと、水分も悪臭の原因になってしまうので、嘔吐した部分に大量の水をかけるのは逆効果です。
市販の消臭スプレーをむやみに使わない
普通の掃除のように吐瀉物にも消臭スプレーを使う人がいるかもしれません。しかし一般的な消臭スプレーの多くは、マスキングタイプです。臭い成分を分解するのではなく、包み込んでもれないようにしているだけで、時間が経てば効果が切れて、悪臭が戻ってきます。
消臭スプレーの水分がシートなどに、汚れを染み込ませてしまう可能性もあります。芳香成分の強い製品だと、吐瀉物の悪臭と混じって、さらに状況を悪化させてしまいかねません。むやみに消臭スプレーを使うのは避けましょう。
重曹を直接シートに振りかけない
重曹はアルカリ性のため、嘔吐した跡のような酸性の汚れに重宝します。消臭効果もあるので、重曹の粉を嘔吐汚れに直接振りかける人もいるかもしれません。
しかし重曹の粉を直接振りかけたり大量に使いすぎたりすると、後始末が大変になります。ひどい臭いは取れても、重曹の粉がシートの生地に入り込み、染みになってしまう可能性が高いからです。
シート清掃の場合には重曹をお湯に溶かして布に染み込ませ、濡れ雑巾の状態で汚れを落とすのが適切です。正しい使い方で気持ちのよい車内環境を取り戻しましょう。
アルコールを革製シートに吹きかけない
革にアルコールをかけると、変形・硬化・変色などのダメージが予想されます。色落ち防止のコーティングがはがれてしまい、革の劣化が早まるリスクもあるのです。また革のシートを強くこすると、汚れが生地の中に入り込んで取れなくなってしまいます。
嘔吐汚れを片付ける場合には、固形物はすくい取るようにして取り除き、液体汚れも優しく拭き取り、後はたたくように掃除します。汚れを取り除いたら、革製品向けのクリーナーでケアしましょう。
嘔吐で汚れた車のシートを業者にクリーニングしてもらう料金
嘔吐物の汚れは特殊なクリーニングでないと落とせないため、費用は3万円程度が相場です。業者によっては基本料金に加え、オプション料金がかかる場合もあります。
プロの清掃方法は座席を取り外し、100度以上のスチームを使った熱処理や、薬剤処理での消毒です。家庭では難しい臭い落としや殺菌、細かい隙間に入り込んだ汚れの除去も可能です。
一般的に車体サイズが大きいほど、掃除費用は高額になります。費用を安くするには、複数の業者から見積もりを取って比較するのが効果的です。
車の嘔吐汚れは適切にクリーニングしよう
嘔吐の汚れをきれいに落とすには、できるだけスピーディに、汚れを染み込ませないように取るのがポイントです。とはいえ外出先の車内では限界があります。具合が悪くなった人への対応や、先延ばしにできない予定もあるでしょう。
嘔吐による汚れは頑固な臭いが残りやすいため、汚れた場所の素材に応じて、正しいクリーニング方法を選ばなければなりません。もし自分で落とすのが無理だと判断したら、早めに業者に頼むのがおすすめです。