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合同会社を設立するときの資本金とは?目安の金額と知っておきたいこと

最終更新日: 2023年01月13日

合同会社を設立するときの資本金の目安は?

ひとつの目安として3~6ヵ月ほどの運転資金を資本金として設定するのがおすすめです。

資本金が少ないとどんなデメリットがあるの?

「信用を得られにくい」「金融機関に口座を開設できない」といったデメリットが考えられます。

合同会社の設立必要な資本金額と現物出資

合同会社の設立に必要な資本金額と現物出資
合同会社の設立に必要な資本金額と現物出資

合同会社を設立するには、一体いくらの資本金を準備するといいのでしょうか?ここでは実際に必要な資本金の額や現物出資、許認可事業のケースについて解説していきます。また資本金は手を付けてはいけないお金ではないことについても触れていきます。

合同会社の資本金は300万円未満が多い

実際に合同会社を設立したケースから、資本金額をみていきましょう。下のグラフは、2017年1月~12月に設立された合同会社の資本金分布です。

政府統計の総合窓口データ参照
政府統計の総合窓口データ参照

資本金100万円未満がもっとも多く、次いで100万円以上、500万円以上、300万円以上となっています。次は同じものを資本金別の割合でみてみましょう。

政府統計の総合窓口データ参照
政府統計の総合窓口データ参照

100万円未満と100万円以上(300万円未満)の部分で全体の80%を占めています。

このことから、300万円未満の資本金で合同会社を設立するケースが多いといえます。

合同会社は資本金1円で起業できるが、デメリットも

合同会社は制度上、資本金が1円以上あれば設立できます。ただし1円などの極端に少ない金額で設立すると、次のようなデメリットが考えられます。

(1)信用を得られにくい

資本金は、会社を信頼できるかどうかの指標の一つになります。そのため資本金が少ないと、銀行などからの公的融資を受ける際にマイナス要因となってしまうのです。

(2)金融機関に口座を開設できない

メガバンク(都市銀行)をはじめとする金融機関で、法人口座を開設できません。資本金10万円でも、金融機関に法人口座がつくれないということが起こっています。

以上のことから、3~6ヵ月ほどの運転資金を資本金として設定するのがおすすめです。

資本金には現物出資も可能

資本金は現金でなければいけないというわけではありません。モノや債権などの現物の出資額を資本金として計上できるのです。これを現物出資といいます。

現物出資として認められるのは、次のようなものです。

  • 不動産(土地・建物)
  • 動産(自動車、パソコン、機材、備品、原材料、在庫商品など)
  • 有価証券(株券、国債など)
  • 債権(貸付金など)
  • 無形財産権(漁業権、特許権、著作権など)
  • 仮想通貨(所得税が課税される可能性がある)

許認可の必要な事業には注意

先ほど合同会社の設立資本金は1円以上と解説しましたが、一部例外があります。それは一般建設業や一般労働派遣事業などの許認可事業です。

許認可事業には最低資本金額が設定されており、この資本金額を超えなければ許認可を受けられません。例えば

  • 一般建設業:自己資本額500万円以上(または500万円以上の資金調達能力があること)
  • 一般労働派遣事業:2,000万円×事業所数以上

というように、それぞれの事業で最低資本金額が決まっています。

資本金は使ってよい

資本金は手を付けてはいけないお金ではありません。資本金は「使ってよいお金」なのです。会社設立時には一度金融機関に預けますが、登記手続きが終わったら、開業資金や運転資金として使えます。登記手続き終了後の使い方も考えた上で、資本金を設定することも必要です。

また資本金を使ったあとで、使った分だけ補充する必要はありません。

【注意!払込証明書の保管が必要】

資本金は使っていいのですが、会社設立時、確実にお金が振り込まれたという証明書を保管しておく必要があります。そのため、

  • 払込証明書(設立時に発起人となった人が発行)
  • 設立時の銀行通帳のコピー

の2つを保管しておくようにしましょう。

合同会社の資本金増資方法

合同会社の資本金増資方法
合同会社の資本金増資方法

はじめに設定した資本金額を増やしたい場合はどうするといいのでしょうか?合同会社は社員からの出資により成り立つ会社形態なので、

  • 現在会社に勤めている社員から増資してもらう
  • 新しく社員になった人から増資してもらう

という2つの方法があります。ここでは、資本金の増資方法と手続き、登記の必要性について解説していきます。

登記の必要がある

新たな出資で資本金を増やす場合、方法は次の2つがあります。一つは既存の社員による増資、もう一つは新たな社員による増資です。このどちらで増資を行っても、かならず登記をしなければいけません。

ただし増資分全額を資本剰余金に計上する場合は、登記事項の資本金額は変わらない=増資分の登記は必要ありません

既存の社員による増資の場合

既存社員が増資を行う場合、手続き費用や必要書類は次のようになります。

増資手続き費用】

  • 登録免許税3万円(もしくは増資金額の1000分の7)
手続きに必要な書類

  • 出資の価額を増加した定款の変更にかかわる総社員の同意書
  • 業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面
  • 資本金額の計上に関する証明書
  • 変更登記申請書
  • 払込証明書(通帳の「出資者の名前と払込金額がわかるページ」、「通帳の表裏表紙」、「口座番号、支店名がわかるページ(開いて1ページ目)」の3ページをそれぞれコピーして綴じ、会社代表印で各ページに割印を押す)

新たな社員による増資の場合

新たな社員が増資を行う場合の手続き費用や必要書類は、次のようになります。

増資手続き費用

  • 増資分:登録免許税3万円(もしくは増資金額の1000分の7)
  • 追加社員分:登録免許税1万円(資本金1億円未満の場合)
手続きに必要な書類

  • 出資の価額を増加した定款の変更にかかわる総社員の同意書
  • 業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面
  • 資本金額の計上に関する証明書
  • 変更登記申請書
  • 払込証明書(通帳の「出資者の名前と払込金額がわかるページ」、「通帳の表裏表紙」、「口座番号、支店名がわかるページ(開いて1ページ目)」の3ページをそれぞれコピーして綴じ、会社代表印で各ページに割印を押す)
  • 印鑑登録証明書(追加社員が代表社員に就任する場合のみ)

合同会社の資本金と税金の関係

合同会社の資本金と税金の関係
合同会社の資本金と税金の関係

合同会社を設立する際に気をつけたいことの一つは、資本金をいくらにするかということです。資本金の金額によっては、法人税などの税額が高くなってしまったり、逆に消費税を免除されたりすることになります。

ここでは資本金額と税金の関係について、詳しく解説していきます。

850万円を超えると登録免許税が増える

登録免許税の金額は、次の計算式で求められます。

登録免許税額=資本金額×0.007(6万円未満の場合は6万円)

登録免許税の金額は資本金額に応じて変わります。しかし計算上の登録免許税額が6万円未満の場合は、一律6万円となるのです。つまり、

資本金800万円の場合

登録免許税額=資本金額800万円×0.007=56,000円

6万円未満なので、登録免許税は6万円

資本金850万円の場合

登録免許税額=資本金額850万円×0.007=59,500円

6万円未満なので、登録免許税は6万円

資本金900万円の場合

登録免許税額=資本金額900万円×0.007=63,000円

6万円を超えているので、登録免許税は計算式のまま63,000円

ということになります。

1,000万円未満で起業すると免税事業者に

資本金が1,000万円未満の場合、起業後2年間(2期)消費税が免除されます。ただし、

  • 1期目が7か月を超える
  • 設立日から6か月間の課税売上(消費税抜きの売上)が1,000万円を超える

この両方を満たす場合、2期目の消費税は免除されなくなります。

1,000万円を超えると法人住民税が高くなる

法人住民税には、法人の所得に関係なく資本金額と従業員数によって定額課税される「均等割」と、法人税額に税率を乗じて算出される「法人割」があります。

「均等割」は、資本金が1,000万円を超えると高くなってしまいます(地方自治体によって異なる)。

東京都を例にしてみてみましょう。

東京都の例

・資本金1,000万円以下、従業員数50人以下:一律7万円

・資本金1,000万円超1億円以下、従業員数50人以下:18万円

資本金1,000万円を超えると、「均等割」が11万円高くなります。

一方の「法人割」は税率に条件が付いており、前年度が赤字の場合は課税対象となりません(地方自治体によって異なる)。

こちらも東京都を例にしてみてみましょう。

東京都の例

・資本金1億円以下、法人税額1,000万円以下:12.9%

・どちらかの条件を超える場合:16.3%

資本金と法人税額の条件をどちらか超えると、「法人割」が3.4%高くなります。

資本準備金・資本剰余金との関係

資本準備金・資本剰余金との関係
資本準備金・資本剰余金との関係

会社を設立する際に必要なのは、資本金の準備だけではなく、資本準備金や資本余剰金についても知っておかなければいけません。合同会社を設立する場合に限定すると、そもそも資本準備金というものはありません。その代わり、資本余剰金というものが関係してきます。

ここでは、合同会社と資本準備金・資本余剰金について解説していきます。

合同会社は資本準備金がない

株式会社は会社法第445条2項が適用されるため、「資本金として出資された財産の額のうち、2分の1を超えない額は資本金ではなく資本準備金」となっています。

一方の合同会社は株式会社とは異なり、会社法第445条2項が適用されません。つまり資本準備金がないということになります。

計上しなかった資本金が資本剰余金となる

合同会社の場合、資本準備金がありません。また出資額全額を資本金に計上する必要もなく、資本金額は自由に決められます。このときに資本金として計上されていない分は、資本余剰金として計上することになります。例えば

  • 出資総額1,000万円
  • 資本金0円
  • 資本余剰金1,000万円

という、資本金0円の合同会社も設立もできるのです。また資本金は登記事項ですが、資本剰余金は登記事項ではありません。そのため、資本余剰金は登記不要です。

合同会社を設立した時の会計処理

合同会社を設立した時の会計処理
合同会社を設立した時の会計処理(画像提供:PIXTA)

合同会社の設立時にかならず必要なのが、資本金や創立費・開業費の会計処理です。会計処理に慣れている場合はいいのですが、慣れていない場合やそもそも経験がない場合はどうしたらいいのでしょうか?

ここでは資本金と創立費・開業費の会計処理について、簡単にご紹介していきます。

まずは払い込んだ資本金の処理

資本金の処理・記載方法は、次のとおりです。

発起人の普通通帳に資本金を振り込んだ場合
借方勘定科目 現金(銀行の別段預金に振り込んだ場合は「別段預金」)
借方金額 金額を記載
貸方勘定科目 資本金
貸方金額 金額を記載
摘要 資本金の払い込み

創立費や開業費の仕訳方

創立費と開業費は、状況に応じて

  • 初年度に全額償却(任意償却)
  • 数年に渡り経費として計上(均等償却)

のどちらでも扱えます。

(1)創立費

会社を設立する際に必要な費用のことを創立費と呼びます。創立費に含まれるものと含まれないものが下記のようにありますので、注意が必要です。

創立費に含まれるもの 登記の収入印紙・登録免許税、司法書士の報酬(登記手続きを司法書士に依頼した場合)、許認可代(人材派遣会社や飲食業・建設業などの許認可が必要な場合)など
創立費に含まれないもの 資本金

また創立費の処理・記載方法は、次のとおりです。

借方勘定科目 創立費
借方金額 金額を記載
貸方勘定科目 現金
貸方金額 金額を記載
摘要 創立費の支払

(2)開業費

会社の設立から営業開始までにかかった費用のことを開業費と呼び、次のようなものが含まれます。

開業費に含まれるもの 営業開始前にかかった名刺代・公告宣伝費・オフィス備品など

また開業費の処理・記載方法は、次のとおりです。

借方勘定科目 開業費
借方金額 金額を記載
貸方勘定科目 現金
貸方金額 金額を記載
摘要 開業費の支払

難しい場合は税理士に相談

経験がない状態で会計処理を行おうとすると、難しい場合があります。調べながらやろうと思っても、時間も手間も思いのほかかかってしまうものです。そのような場合は、会計処理の専門家である税理士に依頼してみるのもおすすめです。会計処理にかかわるさまざまな相談にも乗ってもらえます。

監修税理士からのコメント

EMZ国際投資税理士法人 - 東京都港区六本木

合同会社の設立の際に、現物出資することは、なかなか見られないレアなケースかと思いますが、合同会社の設立で気にすべき点は、合同会社は、株式会社と異なり、少ない資金で軽く会社を経営するという目的を果たすための器なので、如何に資本金を軽くするか、ということです。その意味で、資金を使わず、手元にある価値のある資産を出資に用いることも手かもしれません。

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この記事を監修した税理士

EMZ国際投資税理士法人 - 東京都港区六本木

東京港区で、11年目を迎えた会計事務所です。公認会計士2名・税理士2名が所属しています。個人、法人問わず、税務顧問を始め、確定申告、 経理アウトソーシング、会社設立、相続、など会計事務所を主軸に会計・税務のみに留まらないサービスをお客様にお届けしております。海外財産、海外不動産、仮想通貨など、複雑な申告もお任せください。