会社の法人格を合同会社から株式会社へ、あるいは株式会社から合同会社へ変更できることはご存じでしょうか?各形態にはそれぞれメリットとデメリットがあるため、組織変更をするなら各々の特徴をよく理解したうえで実行することが大切です。
今回は会社の組織を変更する目的やそのメリットとデメリット、変更手続き方法について解説します。自社の目的や規模に合わせて最適な企業形態を作れるようになりましょう。
この記事を監修した税理士
しんこう会計事務所 - 愛知県名古屋市中村区
会社の組織変更を実行する目的
会社組織を変更するということは、単に「株式会社」や「合同会社」などといった商号の頭につく文言が変わるだけではありません。どのような目的で会社の組織を変更するのか、組織形態の変更にかかる費用はどの程度なのか詳しく見ていきましょう。
合同会社から株式会社へ
合同会社から株式会社へ変更する目的は以下のようなものがあります。
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合同会社の場合では社員以外の人間が出資をすることができないので、外部から資金を集めたい場合や上場したい場合には株式会社へ変更したほうがいいでしょう。
また、一般的に合同会社は株式会社と比べて社会的な認知度が低いです。そのため、自社が合同会社であることによって対外的な信用度が向上しない場合は、株式会社へ組織変更することで信用度の向上を図ることがあります。
株式会社から合同会社へ
株式会社から合同会社へ組織変更する目的は以下の通りです。
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合同会社は決算公告などでコストがかからないため、コストパフォーマンス重視で株式会社から合同会社へ組織変更する場合があります。
また、合同会社は基本的に出資者=経営者です。そのため会社経営を迅速かつコンパクトに行う目的で株式会社から合同会社へ組織変更することも少なくありません。
組織変更にかかる費用
組織変更にかかる費用は、株式会社から合同会社へ変更した場合でも、合同会社から株式会社へ変更した場合でも同じです。
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会社組織の変更をするには、変更後の会社の設立登記に加えて変更前の会社の解散登記を行う必要があります。計10万円前後の費用がかかるものと理解しておきましょう。
組織変更と同時に行えること
会社組織を変更する際には変更登記という手続きを行わなければなりません。実は組織変更の登記を行う際、同時にほかの登記事項についても追加の登録免許税なしで変更できることをご存じでしょうか?ここでは、変更登記の際に変更可能な事項について確認していきましょう。
商号・会社名の変更
商号だけでなく、会社の名前自体を変えることも可能です。ただしこの場合は、会社の実印(代表印)も変更となることに注意してください。
事業目的の変更
登記されている事業目的も変更することができます。組織変更に伴って事業方針を転換する場合には、ここで一緒に変更してしまいましょう。事前に法務局に向かうことをオススメします。
構成される役員の変更
株式会社には取締役が最低1人、合同会社には代表社員が最低1人必要です。変更前と変更後の取締役や代表社員を同じ人にすることも、外部から他の人を取締役や代表社員にすることもできます。役員を追加したい場合や変更したい場合にも、組織変更の時に同時に手続きすることが可能です。
合同会社から株式会社に組織変更する手続き
実際に合同会社から株式会社へ組織変更する際にはどのような手続きを行ったらよいのでしょうか?ここでは組織変更のために必要な事務手続きについて詳しく解説していきます。
組織変更計画書の作成
合同会社から株式会社へ組織変更する場合、まず組織変更計画書を作成しなければなりません。組織変更計画書とは会社組織をどのように変更するのかを箇条書きにしたものです。この計画書には以下の内容を記載します。
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合同会社の総社員から「組織変更計画書」へ同意を得る
合同会社は、総社員の同意を得なければ組織変更を行うことができせん。組織変更計画書と同時に同意書を作成し、効力発生日の前日までに社員全員から同意書に署名と捺印を受けましょう。
債権者の保護手続き
合同会社の債権者は、会社組織の変更に対して意義を申し立てる権利を有しています。そのため、会社の組織変更をする際には債権者へ事前に通知しなければいけません。
この「債権者の保護手続き」には「催告」と「公告」の2つのステップがあります。前者は会社が把握している債権者へ個別に通知すること、後者は官報への組織変更公告を行うことです。
基本的に債権者の保護手続きは、たとえ債権者がいない場合でも行わなければなりません。官報への組織変更公告については、最低でも1ヶ月以上の広告掲載が必要です。
効力の発生
組織変更の効力が発生するのは、組織変更計画書で定めた効力発生日です。しかし、債権者保護手続きが組織変更計画書で定めた効力発生日に終了しない場合には、債権者保護手続きが終了した日が効力発生日になります。
株式会社として登記申請
債権者保護手続きを行って、債権者から異議申し立てがない場合、もしくは異議申し立てに対処した場合には組織変更計画書に明記した日から組織変更の効力が発生します。効力発生日から2週間以内に、法務局で株式会社設立登記と合同会社解散登記を行いましょう。
組織変更の登記に必要な主な書類は以下の通りです。
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合同会社から株式会社に組織変更するメリット
合同会社から株式会社へ変更するとどのようなメリットを得られるのでしょうか?ここでは2つのメリットについて詳しく見ていきましょう。
株式会社を新設するよりも費用が安く抑えられる
法人立ち上げの際、株式会社を最初から設立すると以下の費用がかかります。
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株式会社を設立するためには約21万円〜25万円の費用が掛かります。
一方、合同会社設立の費用は以下の通りです。
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合同会社は設立時最低6万円の費用で設立することが可能です。さらに、合同会社から株式会社へ変更する場合には約10万円の費用がかかります。よって、合同会社を設立してから株式会社へ変更するまでに必要な費用は合計16万円です。
したがって、合同会社から株式会社へ変更した方が株式会社を最初から設立するよりも費用が安くなります。
社会的信用度・認知度が上がり融資を受けやすくなる
一般的に、株式会社の方が合同会社と比較して手続きが煩雑で組織構造も複雑な分、社会的な信用は高くなる傾向にあります。そのため取引先や銀行からの信用を得やすいです。
また、合同会社は社員しか出資することができません。しかし株式会社は株式を発行することでどんな人からも出資を受けることができるので、株式会社の方が外部からの資金調達をしやすいです。
合同会社としてある程度軌道に乗り「これから会社を大きくしていこう」という場合には、株式会社への組織変更を検討すべきタイミングと言えるかもしれません。
合同会社から株式会社に組織変更するデメリット
合同会社から株式会社に変更するとデメリットも発生します。今度はそのデメリットについて詳しく見ていきましょう。
手続きが完了するまで時間がかかる
株式会社へと組織変更をするためには、上記の必要書類を揃えて、債権者保護手続きを行う必要があります。債権者保護手続きは最低でも1ヶ月は必要です。
また、自分で組織変更計画書を作成するだけでも時間はかかりますので、組織変更するまでには2ヶ月以上の時間がかかってしまうことも珍しくありません。
役員任期と決算公告をする義務が発生する
株式会社の役員任期は取締役の場合2年以内、監査役の場合4年以内(非公開会社は定款に登記すれば最長10年とすることが可能)と決まっているため、同じ役員が再任することになってもその都度変更登記をしなければなりません。変更登記には登録免許税1万円が発生します。
また合同会社には決算公告の義務はありませんが、株式会社には決算公告の義務があり、官報に決算公告を出す場合には6〜7万円程度の費用がかかってしまいます。資金力に乏しい中小企業にとって、経済的な負担は決して軽くはありません。
税務上の注意が必要!
合同会社から株式会社へ組織変更を行うと、合同会社の社員は全員株主になります。株式の配分比率は合同会社への出資比率とは関係なく自由に決めることができますが、出資比率とは無関係に多くの株式を配分すると贈与と見なされて贈与税の課税対象になってしまうことがあります。
株式の比率には注意を払う必要があるということを頭に入れておきましょう。
株式会社から合同会社に組織変更する手続き
次に株式会社から合同会社へ変更する具体的な手続きについて詳しく見ていきましょう。
基本的には株式会社へ組織変更する手続きと同じですが、株式会社から合同会社へ変更する場合には株主の同意が必要です。そのため、合同会社が株式会社へ組織変更するよりも手続きとしてはやや煩雑になります。
組織変更計画書の作成
合同会社から株式会社へ変更する時と同様に、株式会社が合同会社へ変更する場合にも組織変更計画書の作成が必要です。
組織変更計画書には以下の内容を記載しなければなりません。
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組織変更計画に関する書面の備え置き
組織変更計画書が完成したら、組織変更計画に関する書面を本店に備え置かなければなりません。組織変更の効力が発生するまでは株式会社ですので、株主がいつでも閲覧できる状態にしておく必要があるのです。
債権者保護の手続き
債権者保護の手続きは合同会社から株式会社へ組織変更する場合と全く同じです。債権者それぞれに対して個別に催告を行うと同時に、官報で公告を行う必要があります。
株券等提出公告
株券を発行している会社は、株主に対して「株券を提出してください」という旨を官報で公告します。また、株主にも個別に通知します。
この手続きは効力発生日の1ヶ月以上前までに行わなければいけません。なお、株券を発行していない会社はこの手続きは不要です。
総株主の同意
効力発生の前日までに株主全員からの組織変更に関する同意が必要です。同意書をもらったり、株主総会を開催して議事録を作成するなどして同意を証明する書類を用意したりしなければいけません。
登記申請
合同会社から株式会社へ組織変更する時と同様に、効力発生日の2週間以内に株式会社の登記解散と合同会社の設立登記をする必要があります。
以下は登記の際に必要になる主な書類です。
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なお、登記の手続きは本店住所地の法務局で行う必要があります。
株式会社から合同会社に組織変更するメリット
合同会社へ組織変更するメリットには以下のようなものがあります。
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会社組織が小さい場合、合同会社の方がメリットが多いこともあります。ここでは、株式会社が合同会社へ組織変更するメリットを詳しく見ていきましょう。
決算公告が不要
株式会社は毎年決算公告をしなければならず、官報へ決算公告する場合には6万円〜7万円程度の費用が必要です。しかし、合同会社の場合には決算公告の義務はありません。決算公告の費用を抑えることができるので、税金対策などで会社を設立したい場合などには有効でしょう。
余剰金分配が無制限
株式会社の場合、出資者である株主への分配は株式の保有比率に比例します。しかし、合同会社は余剰金の分配を自由に決めることが可能です。そのため、例えば出資の比率は少ないが、業績向上に大きく貢献した社員に対して多くの分配をすることもできます。
出資はしていなくても会社内部で自由に分配の割合を決定することができるので、社員の意欲を高める効果を期待するような分配体系を作ることが可能です。
意思決定が迅速になる
株式会社の場合、重要な意思決定をする際には株主総会において株主の同意が必要です。もしもここで株主が反対してしまえば、たとえ経営側が決めた事項であってもこれを実行することはできません。そのため、意思決定にはどうしても時間がかかってしまいます。
しかし合同会社の場合は重要な意思決定をスピーディーに行うことができます。企業の規模が大きくなってもこのメリットは変わらないので、たとえ組織規模の大きい会社であっても、合同会社へ組織変更することにで意思決定のスピードは格段に上がるでしょう。
役員の任期を更新しなくてよい
株式会社における役員の任期は、取締役の場合2年以内、監査役の場合4年以内(非公開会社が定款で定める場合には10年以内)と決まっています。同じ役員が再任する場合でも任期ごとに変更登記が必要になり、その都度登録免許税1万円が必要です。
一方、合同会社では役員の任期を無制限に設定することができるので、変更登記の手間や費用がかかりません。この点もスモールビジネスで不要な支出を抑えたい経営者にとってはメリットがあると言えるでしょう。
税制上・責任上のメリットがある
株式会社と合同会社は税務上同じ扱いを受けるため、合同会社は株式会社と同様に経費の算入が認められます。また、社員が有限責任を負うという点も株式会社と同じです。そのため、会社が倒産した際のリスクも低くなります。
株式会社から合同会社に組織変更するデメリット
合同会社は株式会社と比較して、規模が小さい点がデメリットです。これにより、対外的な信用や資金調達の面ではどうしても株式会社と比較して劣るのも事実です。
合同会社へ変更を希望する場合には、デメリットもしっかりと理解しておきましょう。
信用度の低下による資金調達の制限
合同会社の認知度はいまだ高いとは言えません。近年、合同会社の割合は徐々に増加しているものの、いまだその割合は約2割です。そのため、合同会社というだけで「この会社はしっかりとした会社なのだろうか?」と疑われてしまうことがあります。
また、今では株式会社を設立する際に必要な資本金はたったの1円ですが、以前は1,000万円以上の資本金がないと設立することができませんでした。そのため、「株式会社の方が資金力がある」という先入観が残っていることも事実として存在します。
このため、どうしても会社の対外的な信用度は株式会社よりも合同会社の方が低くなりがちです。取引先に対する信用はもちろん、銀行からの信用も低下してしまう可能性もあるので、融資などで資金調達を受けることが難しくなる可能性があります。
上場することができなくなる
合同会社へ出資できるのは社員のみであるため、合同会社は上場することができません。そのため、不特定多数の投資家から資金を集めるために上場することは不可能です。幅広い人から資金を集めて会社を大きくしようという場合には合同会社は全く適していないと言えるでしょう。
監修税理士からのコメント
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