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個人事業主の「開業費」の範囲は?開業費に関する基礎知識

最終更新日: 2019年11月26日

個人事業主の場合、開業費には具体的に詳細な決まりがあるわけではなく、基本的に開業のために支出したものであれば全て開業費にすることができますが、基本的な考えを理解しておかなければ税務署に指摘されてしまうこともあります。

また開業費を活用して節税を行うこともできますので、収入が不安定な開業後の時期に開業費を活用することは経営において重要です。

開業費の基本的な考え方、会計処理、また開業費を使った節税方法について詳しく解説していきます。

この記事を監修した税理士

横浜青葉税務会計事務所(税理士 宮澤明宏事務所) - 神奈川県横浜市青葉区

宮澤明宏(みやざわあきひろ)公認会計士・税理士・相続診断士 宮澤明宏(神奈川県横浜市青葉区)1976年 愛知県丹羽郡出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。2018年11月税理士登録。税理士登録後、ミツモアを通じて半年間で20件以上の確定申告業務を受託。デザイナー、一人親方、小売、ITエンジニア、不動産業等、多様な業種のお客様に対して丁寧なサービスを提供している。また、相続診断士として活動しており、エンディングノートの書き方セミナーを通じて「生前から相続へ備えることの大切さ」を多くの人に広める活動を行っている。
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個人事業主の「開業費」とは

開業費とは?
開業費とは?

個人事業主の開業費とは、開業のために必要な支出です。開業費の概要や開業費に含めることができる期間、開業費の上限などについて解説していきます。

個人事業主の「開業費」とは

開業費は「開業のために特別に支出する費用」とされています。

法人の場合には登記のための設立費用が数十万円必要になりますが、個人事業主の場合には登記までの創立費がないので、その代わりに広い範囲の費用が開業費として認められているのです。

所得税法第7条には開業費について以下のように規定されています。

第七条法第二条第一項第二十号(繰延資産の意義)に規定する政令で定める費用は、個人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち次に掲げるものとする。
開業費(不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用をいう。)
開発費(新たな技術若しくは新たな経営組織の採用、資源の開発又は市場の開拓のために特別に支出する費用をいう。)
前二号に掲げるもののほか、次に掲げる費用で支出の効果がその支出の日以後一年以上に及ぶもの
自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用
資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用
役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
イからニまでに掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用
引用元:所得税法施行令

つまり、開業費は事業を始めるにあたって特別に支出する費用や、事業を始めるために獲得した経営資源や開発費、市場開拓費などが該当するということになります。

開業費に含めてもよいものに関しては、詳しく後述します。

いつまでの費用を開業費とする?

開業費はいつからいつまでにかかった費用なのでしょうか?どこから開業日までの費用を開業費としてよいのかどうかについて明確な決まりはありません。そのため開業日後に請求が来た場合でも、開業準備にかかった費用であれば開業費として計上することができます。

重要なのは「本当に開業のために使った費用」だと説明できることです。そのため、支出したのが数年前の費用であってもそれが開業に使われた費用であることを証明できるのであれば、開業費に含むことができるのです。例えば、5年前に電話やファックスなどを開業のために5年前に購入したのであれば、その費用は開業費にすることができます。

ただし、開業のために支出したと主張するだけで開業費になるわけではありません。税務署から問い合わせがあった時に、開業費として計上した費用が本当に開業費であることを客観的に証明できる資料や証拠を提出することが必要になります。

逆に言えば、個人事業主の場合、客観的に証明さえできればどのような費用でも開業費とすることができます。とは言え、実務的には数年前の支出まで開業費に含めることはほとんどありません。

開業費の上限はある?

開業費には上限はありません。しかし、常識の範囲内に留めておかないと税務署から指摘されてしまうことがあります。例えば飲食業などでは、店舗の改装費や厨房機器購入のために開業費が高額になってしまうこともありますので、開業費が高額になっても疑問をもたれることはないでしょう。

しかし、飲食店などとは異なり初期投資があまり必要ない業種であるにもかかわらず、開業費が高額になっている場合には税務署から問い合わせがあった時に説明ができるようにはしておかなければならないでしょう。

個人事業主の「開業費」の範囲

どこまでが開業費?
どこまでが開業費?

個人事業主が開業費を算出する際に最も悩むのは、「どこからどこまでを開業費とすることができるのか?」ということではないでしょうか?

個人事業主は開業前にかかった費用のほとんどを開業費とすることができますが、絶対に開業費に含んではいけないものも存在するので注意が必要になります。

開業費に含まれるものと、含んではならないものは具体的にどのようなものなのでしょうか?

個人事業主の開業費に含まれるもの

個人事業主の開業費には詳細な定義がないので、開業のために支払った費用は広告費なども含めて、すべて開業費とすることができます。

例えば以下のような費用は開業費とすることが可能です。

  • 開業のために参加が必要なセミナーへの参加費用
  • 市場動向などの調査のための旅費やガソリン代
  • 通信費用
  • 打ち合わせ費用
  • 関係先への手土産の代金
  • 開業までの借入金に伴い発生する利子
  • 開業前に配布するチラシや名刺などの広告宣伝費
  • 開業に必要なパソコン購入費用
  • 開業に必要なWEBサイト構築費用

このように、開業に必要な経費はセミナーや調査代、広告代だけに留まらず、開業前に開業のために必要な通信費まで開業費とすることができます。

個人事業主の開業費に含まれないもの

前述したように、個人事業主の開業費は「開業のために特別に支出したもの」であれば特に制限なく計上することができます。しかし、以下に該当するものだけは、開業費として計上することができないので注意して下さい。

  • 10万円以上のもの
  • 敷金・礼金
  • 仕入代金

敷金・礼金・仕入のための支出、また1つ10万円以上の資産は開業費に含むことはできません。開業時に10万円以上の資産を購入した場合には、その資産は開業費ではなく固定資産として計上します。例えば開業時に100万円の自動車を購入した場合には開業費ではなく、固定資産となります。

上記のもの以外には個人事業主は幅広く開業費とすることができます。例えば以下のような支出は開業費として計上してよいか悩ましい所ですが、説明さえできれば開業費として計上することができます。

  • コピー用紙など日常的に使用する備品
  • 通信費
  • 水道光熱費

開業のために必ずしも必要ない通信費などの支出は開業費に含めることができませんので、上記の費用は「開業のために特別必要だった」と証明できる証拠を用意した上で開業費に含めるようにして下さい。

開業費は繰延資産として償却する

開業費は資産として計上する
開業費は資産として計上する

開業費は費用ではありません。資産になります。また、資産の中でも不動産や自動車のような固定資産ではなく、繰延資産という特別な資産に属するのが開業費です。

繰延資産は、償却方法が固定資産と比較して自由度が高いので、大きな節税効果があります。繰延資産の概要と、繰延資産を活用した節税方法をご紹介していきます。

開業費は経費ではなく繰延資産になる

開業費は繰越資産として扱われます。繰延資産は年々「償却」していく資産です。償却とは、資産の価格を毎年少しずつ費用化していくことです。例えば、100万円の自動車を残存価格0円、5年間で償却する場合には、毎年20万円ずつ償却していきます。これは、自動車によって得られる経済的効果が購入した1年ではなく、数年間にわたって及ぶためです。

開業のために支出した費用も、開業年の利益だけでなく、数年間に渡って効果を及ぼします。このため、開業費は繰延資産として、開業日に資産の科目で処理しておき、毎年少しずつ償却して経費にしていきます。

開業費は任意償却できる

繰越資産の償却は会計上5年均等償却とされていますが、税法上は任意となっています。任意償却とは、その年に償却する金額を0円から開業費全額までの範囲で事業主が自由に決めることができる償却方法です。

国税庁は繰延資産の償却について以下のように規定しています。

任意償却が可能な繰延資産の未償却残高はいつでも償却費として必要経費に算入することができます。

繰延資産(開業費)の償却費の計算については、60か月の均等償却又は任意償却のいずれかの方法によることとされています(所得税法施行令第137条第1項第1号、第3項)。
任意償却は、繰延資産の額の範囲内の金額を償却費として認めるもので、その下限が設けられていないことから、支出の年に全額償却してもよく、全く償却しなくてもよいと解されます。
また、繰延資産となる費用を支出した後60か月を経過した場合に償却費を必要経費に算入できないとする特段の規定はないことから、繰延資産の未償却残高はいつでも償却費として必要経費に算入することができます。
なお、支出した開業費の内容及びその開業費の額が過年分において必要経費に算入されていないことを明らかにしておく必要があります。

引用元:償却期間経過後における開業費の任意償却|国税庁

つまり、繰延資産は支出した年に全額償却することもできますし、全く償却しないこともできます。

開業費の償却で節税できる

開業費は節税にも有効に活用することができます。開業費が節税になるというのは、任意償却が可能になるためです。例えば赤字の年に償却を行っても、赤字が大きくなるだけなので、所得を小さくすることはできません。利益が0円の場合の所得税は0円、マイナス10万円でも所得税は0円、マイナス100万円でも所得税は0円で変わらないわけです。

しかし、黒字の時に償却を行えば利益を小さくすることが可能です。例えば所得1,000万円の時に開業費200万円を償却すれば所得を100万円分小さくすることができ、その分節税することができます。開業費は黒字の年に償却、赤字の時には償却しないことで、所得税の節税が可能です

開業間もない資金的に余裕がない時に任意償却を行うことで、税金の支払いのために流出する資金を抑えることができるので、キャッシュフローも改善されます。

開業費の仕訳方法

開業費の仕分方法は?
開業費の仕訳方法は?

最後に開業費の仕訳方法について解説していきます。開業費は開業時と期末に仕訳を行わなければなりません。開業日前に開業費を仕訳する方法と、決算期に開業費を償却する際の仕訳をそれぞれご説明します。

開業日前の開業費の仕訳

開業日前に開業費を仕訳する場合には以下のような仕訳となります。

  • 開業日に開業費として100万円計上した
借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
開業費 1,000,000円 元入金 1,000,000円

借方には「開業費」という資産勘定を使用し、貸方には「元入金」という勘定科目を使用します。

元入金(もといれきん)とは個人事業主専用の勘定科目で、自営業・フリーランスのような個人事業主が開業する時に事業資金として確保するお金のことです。元入金は法人における資本金に該当します。なお、会計処理する際の日付は「開業日」となります。

また、開業費が複数になる場合でも、それらの費用をまとめて「開業費」として仕訳して問題ありません。

開業費を償却する時の仕訳

決算になり、期末に開業費を償却する場合の仕訳は以下のようになります。

  • 期末に開業費を20万円償却した
借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
繰延資産償却 200,000円 開業費 200,000円

借方「繰延資産償却」という費用の勘定科目を使用します。この費用があるために利益を圧縮することができます。

貸方には「開業費」という勘定科目を使用して、こちらは繰延資産の減少です。20万円分償却したので、残りの開業費は80万円ということになります。要するに繰延資産を償却によって減価させ、その分の費用が発生することになります。

監修税理士のコメント

横浜青葉税務会計事務所(税理士 宮澤明宏事務所) - 神奈川県横浜市青葉区

個人事業主の場合、開業費をうまく活用することで開業後の税金の支払額をコントロールすることができるため、開業費の内容を理解することが大切です。開業費の内容が分からない場合には、会計・税務の専門家である税理士に相談してください。開業費の内容だけでなく、どのように活用したらメリットがあるかについて、専門家の視点に基づくアドバイスを受けることができるでしょう。
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