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【税理士監修】法人化の3大メリット!100万円以上の節税も可能?

最終更新日: 2023年01月06日

節税のために法人化を検討している人も多いのではないでしょうか。法人化すると節税に役立つだけでなく、金銭面事業の拡大における場面人材獲得の面などでさまざまなメリットを得られます。具体的なメリットを知っておくと、会社設立に向けて大きな一歩を踏み出せますよ。

ここでは、法人化することで得られる3つのメリットと、実際に会社設立する際にかかる費用をまとめて紹介していきます。

この記事を監修した税理士

多田紘大税理士事務所 – 兵庫県

大手監査法人で多様な業種、規模の上場企業、非上場企業の監査業務に従事。併せて、同じ監査法人でコンサルティング業務(決算早期化支援、内部統制構築支援、システム導入支援等)を実施してきました。その後、大手監査法人を退所、独立開業。独立開業後は中小企業、個人事業主を中心に税務に関して全般的にサービスを提供しています。

法人化を考える3つのポイント

3つ 女性
法人化を考える3つのポイント(画像提供:PIXTA)

節税目的に法人化を考える人は少なくありません。個人事業の売上がアップしていくにつれて、税金の負担もどんどん大きくなっていくので、法人化したほうが節税対策には有効的です。

ただ、法人化におけるメリットは節税だけではありません。法人化を考える上で重要となってくるのは、

・金銭的なメリット(節税)

・事業拡大のメリット(信用力)

・従業員獲得のメリット(制度面)

の3つのポイントです。

次の段落から順を追って説明していきます。

金銭的なメリット 500万以上の利益で節税効果!

お金
500万以上の利益で節税効果がある

法人化すると節税対策ができたり、消費税納税が免除されたり、損金を10年間繰り越しできたりするなどの金銭的なメリットを得られます。

では具体的に、どのくらいの利益を得たところで法人化を検討すべきなのでしょうか。法人化するタイミングと、得られるメリットについて紹介していきます。

その1:利益500万以上で節税効果アリ

個人事業主の場合、所得に応じて税率が増える「超過累進税率」が適用されるため、所得が増えるほど税率の負担もどんどん増えていきます。一方、法人は固定税率なので、個人のように税率が上がっていくことはありません。

利益が500万を超えてくるあたりから税率に差が出始め、法人のほうが節税効果を得られるようになります。

【所得税】

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え 4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

【法人税】

法人の状態 税率(平成31年4月1日以後 開始事業年度)
中小法人(資本金1億円以下)で年800万円以下の部分 15%
中小法人で年800万円超の部分 23.2%
普通法人

個人:超過累進課税(一般的な所得税)、住民税、事業税を合わせた実効税率は18~61%。

法人:(会社の規模によるが)実効税率は約34%

個人の場合、所得が330万円を超えると所得税率が20%となり、最高で45%の税率を負担することになります。また、住民税は均等割、所得割(一律10%)の2つの計算方法で算出した合計金額を納税します。

個人事業を営んでいて、年間利益が500万以上あるなら、法人化したほうが節税のメリットを受けられるかもしれません。すべてのケースに当てはまるわけではありませんが、500万円が法人化の一つのボーダーラインと見ておきましょう。

*節税シミュレーション

では実際に、法人化するとどれくらい節税できるのでしょうか。年商3600万の飲食店を経営している場合を例に、以下ような条件でシミュレーションをしてみました。

  • 個人事業主と法人の利益の差分は全額役員報酬とします
  • 令和元年10月1日以降開始事業年度開始とします
個人事業主 法人
年商 3600万
利益 1200万 360万
経費 2400万 3240万
実効税率 31%

(所得税+住民税+個人事業税)

25%

(法人税+法人住民税+法人事業税+地方法人税+特別法人事業税)

シミュレーションした結果、税額は以下の通りとなります。

・個人事業主:約364万円

・法人:約252万円(個人の所得税も考慮します)

法人の方が約112万円の節税ができることがわかりますね。上記のシチュエーションはあくまで概算ですが、法人化するときの一つの目安とすることができます。

その2:売上1000万以下で消費税の納税免除

個人と法人どちらの場合も、顧客から受け取った消費税は税務署に納めなければなりません。ただし、条件次第では納税義務が免除される場合があります。

事業開始から2年以内や2期前の売上高が1000万円以下、または事業開始の日以降6ヶ月間で売上が1000万円を超えていない場合には免税事業者となり、消費税の納税義務が免除されます。

個人事業主の場合、売上が1000万円を超えないケースが多いため、ほとんどは免税事業者となっています。個人事業を引き継いで会社を設立したとしても、2年間は消費税の納付が免除されます。

法人化することには、消費税の納税義務を免れるメリットもあるのです。

その3:損金を10年間繰り越しできる

個人事業の場合、損金の繰り越しは3年までとなっています。一方、法人は平成30年4月より10年間繰り越すことができるようになったため、個人よりも赤字の繰越期間が長くなります。

仮に設立1年目に赤字で2期目に黒字だった場合、1期目の赤字と相殺して所得金額を0円にすることも可能です。法人なら最長10年にわたって赤字が繰越控除されるので、個人よりも納税負担を減らすことができ、事業を運営しやすくなります。

事業拡大のメリット 信用力増大!

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信用力が増大する(画像提供:PIXTA)

事業の売上が伸びてくると、事業拡大を考え始めますよね。法人なら社会的な信用が得られるだけでなく、有限責任にできる、事業継承が容易にできるなどのメリットがあります。

個人と法人では社会的信用力が異なるので、早めに法人化したほうが事業拡大をしやすくなりますよ。

その1:対外的信用力が増す

法人の場合、登記による公示によって取引の安全性や社会的信用力が向上するため、銀行による融資を受けやすくなったり、取引先の幅が広がるなどのメリットを得られます。

資金調達をするときも、個人事業主よりも信用力のある法人のほうが有利です。審査があるので、法人であれば必ず融資を受けられるわけではありませんが、同じ収益力なら法人のほうが信用力は高くなります。

「〇〇会社」とあるだけで印象が良いので、事業拡大をする際は法人化を検討しましょう。

その2:有限責任にできる

個人事業の倒産時は、債務の弁済に経営者個人の全財産を処分する可能性が出てきます。これを「無限責任」と言い、事業に失敗したときは個人がすべての責任を負うことになります。

一方、法人化した場合には、その債務弁済に対して経営者は出資した範囲内での責任に限定されます。これを「有限責任」といい、事業に失敗したとしても個人の全財産を処分する必要はありません。

その3:事業継承が容易に

法人と個人は別人格であるため、経営者がなくなっても事業は継続されていきます。そのため、預金口座が凍結されるようなことはありません。

また、役員変更で経営者の交代は行われるので、親族でなくても後継者となり、事業を継続することができます。

さらに相続税についても、法人であれば株式を相続するだけで足りるため、事業用資産の凍結などの問題が発生することもありません。生前に少しずつ株式を移行しておけば、相続税の節税にもなります。

従業員獲得のメリット 優秀な人材の確保を!

リクルート
優秀な人材が集まるように

事業を拡大するときに必要となるのは、従業員です。法人化すると信用力が増すため、優秀な人材を確保しやすくなります。他にも、社会保険の保障を受けられ、退職金の支払いが可能になるなど、法人化には優秀な人材を確保しやすい条件が整っています。

その1:優秀な人材を確保するのに有利

会社設立によって社会的信用力が増大し、社会保険への加入が可能になることから、法人化したほうが人材確保の面で有利となります。

個人事業主は信用がすべてといっても過言ではないため、高い信用がないと優秀な人材を確保するのは困難です。優秀な人ほど、条件のいい法人のほうに流れていってしまいます。

採用活動をする際は、組織としての安定感もある法人のほうがメリットがはるかに大きいと言えるでしょう。

その2:社会保険の保障が受けられる

健康保険は、病気や怪我、出産や死亡による負担を軽減するための医療保険のことです。また、厚生年金保険は老後に関する給付、病気や怪我をして障害が残った場合の給付される保険制度です。厚生年金の対象となる障害や死亡については、健康保険と異なり、業務上による場合であっても給付されます。

社会保険とは健康保険と厚生年金保険を合わせたもので、法人化して社会保険に加入すると、上記の保障をすべて得られるようになります。

個人は社会保険に加入することはできないため、万が一のときの保障が限定されてしまいます。その点、法人であれば病気や怪我をしても手厚い保障を受けられるので安心です。

その3:退職金の支払いが可能に

法人化すると、自分自身に退職金を支払えるようになります。家族従業員にも退職金を支払うことができ、さらに損金として計上できるため、節税にも役立ちます。

退職金は退職所得として課税されますが、老後の資金であるという観点から優遇されているので、大きな税負担がのしかかる心配はありません。

個人事業主は自分に退職金を支給することができず、家族従業員への退職金も経費とすることができません。退職金の観点から見ても、法人化するほうがメリットは大きいと言えるでしょう。

いくつかのデメリット

負担
デメリットもある

法人化にはたくさんのメリットがある一方で、いくつかデメリットも存在します。売上や事業規模によっては、メリットよりもデメリットのほうが大きくなる可能性もあるので注意が必要です。

具体的にどんなデメリットがあるのか、チェックしていきましょう。

その1:設立に費用がかかる

会社を設立するとなると、定款認証、登録免許税、司法書士報酬などを合わせて最低でも20万円のコストがかかります。個人事業を始める場合と比べて、会社設立費用のほうが高くなるので、資金に余裕がない人には大きな負担になってしまいます。

資本金1円でも会社設立は可能ですが、今後の事業運営を考えると、最低でも数十万円〜数百万円は用意しておきたいところです。

事業を拡大する予定がないというのであれば、まずは負担の少ない個人事業主から始めたほうがいいでしょう。

その2:会計や事務手続きの増加

法人は設立時にさまざまな手続きが必要になるだけでなく、設立後もさまざまな手続きに追われることになります。

煩雑な登記手続き、複雑な会計(複式簿記)、事務手続きが必要となり、そのたびに時間とコストがかかります。税理士などの専門家に依頼すれば、事務負担はある程度軽減できますが、専門家を雇う費用が新たに必要になってきます。

税理士を雇うことを考えているなら、顧問料なども事前に算出しておきましょう。法人化したほうがお得かどうか、よく考えて判断しなければなりません。

その3:社会保険料の費用負担

法人は社会保険への加入が義務付けられています。給与や報酬が高ければ高いほど、保険料の負担も増していきます。

個人事業主が加入する国民健康保険であれば、一世帯当たり年間89万円以上の支払いは求められません。一方、健康保険は給与の月額と通勤交通費の合計、適用事業所所在地の保険料率によって決まり、料率は一般的に10%前後となっています。

厚生年金保険料は平成31年度の東京都で料率18.300%、よって給与に対する社会保険料の料率は約30%、事業主が負担するのは15%となります。

資金に余裕のない段階で法人化してしまうと、保険料が大きな負担となってくる可能性があるので注意が必要です。

法人化のメリット:まとめ

まとめ
法人化するメリットのまとめ

金銭的な面だけでなく、事業拡大の意図、それに関わる優秀な従業員獲得の意図がある場合には、法人化したほうがメリットは大きいと言えます。逆に、親族中心で事業規模も小さく、取引先も少数で、さらに取引先とも家族ぐるみで付き合っているような場合には、法人化は向きません。すべての個人事業主が法人化に適しているわけではないので注意が必要です。

メリットだけでなくデメリットもを踏まえたうえで、法人化を検討しましょう。

監修税理士のコメント

多田紘大税理士事務所 – 兵庫県

法人化した場合は、社会保険料、法人事業税等税金の一部、事務処理コスト等利益の大小に関わらず生ずるコストのための資金が必要になってきます。法人化した際に資金繰りに頭を悩まさないためにも事前にどういった費用が発生するかを把握しておくことが重要です。

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