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【社会保険】40歳~75歳の年齢に応じた変更手続き一覧

最終更新日: 2024年06月28日

厚生年金保険に加入できる上限年齢は70歳、健康保険の上限年齢は75歳となっており、それぞれで手続きが必要となる場合があります。タイミングによっては対応を間違いやすく、会社や従業員にとって負担になることもあるので注意が必要です。

この記事では、40歳60歳64歳65歳70歳75歳それぞれの年齢で必要な手続きや処理について解説します。実務においての参考にしていただければ幸いです。

社員の年齢の節目で変わる社会保険への対応

社員の年齢の節目で変わる社会保険の対応

会社が給与を計算する際には、健康保険・厚生年金・雇用保険・介護保険の保険料を社会保険料として控除しています。社会保険料は、従業員の年齢によって計算方法の変更や手続きが必要になる場合があり、それぞれ変更内容や届け出先などが異なるため注意しなければなりません。

まずは、下記の表をご覧ください。

年齢手続き概要必要書類提出先
40歳介護保険料の控除開始--
60歳:定年退職の場合社会保険・雇用保険の資格喪失手続き・被保険者資格喪失届
・雇用保険資格喪失届(離職票の交付も必ず行う)
社会保険:年金事務所
雇用保険:ハローワーク
60歳:継続再雇用の場合高年齢雇用継続給付の手続き・六十歳到達時等賃金証明書
・高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書
ハローワーク
社会保険の同日得喪の手続き・被保険者資格喪失届
・被保険者資格取得届
・(被扶養者がいる場合)健康保険 被扶養者(異動)届
年金事務所
64歳雇用保険料の控除終了※--
65歳介護保険料の控除終了--
70歳厚生年金保険の資格喪失・70歳到達届(被保険者資格喪失届・70歳以上被用者該当届)年金事務所
75歳健康保険の資格喪失・被保険者資格喪失届年金事務所

※令和2年度の4月から64歳以上の人に関しても雇用保険料の徴収が開始されます

このように、40歳・60歳・64歳・65歳・70歳・75歳のタイミングで給与計算の変更や届け出の手続きが発生します。

社会保険の年齢到達日に注意

節目の年齢ごとに手続きが必要になるわけですが、「年齢到達日」に注意しなければなりません。社会保険制度における年齢到達日は、原則誕生日の前日と定められています(例外として75歳到達時の到達日は誕生日当日となります)。「到達月」に関しては到達日が属する月、つまり、誕生日の前日が属する月になります。

では、具体的に各節目の年齢に達した際の手続きについて詳しくみていきましょう。

40歳:介護保険料の徴収開始

介護保険料の徴収期間

介護保険料は、40歳を迎えたすべての国民が負担しなければなりません。介護保険の対象は、40歳以上65歳未満の「第2号被保険者」と65歳以上の「第1号被保険者」に分かれます。40歳になると第2号被保険者となり、到達月(前述したように誕生日の前日の属する月)より介護保険料の徴収が開始されます

届け出や手続きは不要ですが、介護保険料を給与から控除することになるため、給与計算の際には注意が必要です。到達月分の給与から介護保険料の徴収が行われるようになるので、到達月の翌月に支払われる給与から介護保険料を控除します

2号被保険者の場合、介護保険料は、標準報酬月額に介護保険料率を掛けて算出します。会社と従業員の負担割合は健康保険や厚生年金保険の保険料と同様それぞれ50%ずつです。また、介護保険料は、賞与にも係るので賞与の支払い時には忘れないようにしましょう。

賞与に関しては支給日を基準にして考えるため、到達月の分から控除を開始します。

【介護保険料の計算方法】

介護保険料=標準報酬月額×介護保険料率

賞与に係る介護保険料=標準賞与額(税額控除前の賞与総額から千円未満を切り捨てた額)×介護保険料率

地域ごとの介護保険料率に関しては以下の協会けんぽのホームページで確認できます。

参考:平成31年度保険料額表(平成31年4月分から)|協会けんぽ

60歳:従業員が60歳に達したときの手続き

社会保険 60歳
60歳:従業員が60歳に達したときの手続き

従業員が60歳に達した場合、定年退職するか、継続再雇用を行うかで手続きが変わります。

定年退職する場合の手続き

従業員が60歳で定年退職する場合、他の従業員が退職する場合と同じく社会保険と雇用保険の資格喪失手続きを行います。添付書類にも変わりはありません。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)資格喪失手続きに関する詳しい記事はこちら>>>

関連記事:【社会保険】被保険者資格喪失届の書き方、提出方法を徹底解説

雇用保険資格喪失手続きに関する詳しい記事はこちら>>>

関連記事:雇用保険被保険者資格喪失届の書き方 従業員が退職したときの手続き

継続再雇用する場合の手続き

60歳を迎えた従業員が継続再雇用された際に60歳時点と比較して賃金が低下した場合には、雇用保険と社会保険でそれぞれ手続きが必要となります。

高年齢雇用継続給付受給のための手続き

60歳を迎えて、引き続き会社に雇用継続される人は、下記の条件を満たせば「高年齢雇用継続給付の高年齢雇用継続基本給付金」を65歳になる月まで受給できます。

●60歳以上65歳未満の雇用被保険者

●60歳時点と比較して賃金が75%未満になる人

●雇用保険の被保険者であった期間が5年以上あったこと

一般的に60歳を迎えて再雇用された従業員は給与が減額されることが多いため、その減額分を一定額補填する目的として支給されます。高年齢雇用継続給付受給のための手続きは以下のようになります。

必要書類 雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書
高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書
添付書類 六十歳到達時等賃金証明書の記載内容が確認できる書類(賃金台帳、労働者名簿、出勤簿(タイムカード)等)
被保険者の年齢が確認できる書類(運転免許証、住民票の写し)等
提出先 ハローワーク
提出期限 支給の対象となる月の初日から4カ月以内

①「六十歳到達時等賃金証明書」を提出

60歳に到達したときの賃金額を証明するために「六十歳到達時等賃金証明書」をハローワークに提出し、賃金月額を登録します。

仮に継続再雇用される会社で60歳以降の給与が75%未満にならなくても、65歳までに再就職する場合、転職先での会社での給与が60歳到達時の賃金の75%未満であれば「高年齢雇用継続給付の高年齢再就職給付金」を受給できます。

継続再雇用時での高年齢雇用継続給付の有無に関わらず、従業員の年齢が60歳に到達した時点で「六十歳到達時等賃金証明書」を作成・提出しておくことが望ましいといえます

②「高年齢雇用継続給付受給資格確認票」の提出

初めて高年齢雇用継続給付を申請する場合、「六十歳到達時等賃金証明書」と併せて高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書」を支給対象月の初日から4カ月以内にハローワークに提出し、受給資格の確認と、初回の支給申請を行います。

手続き後、事業主に通知用の書類が交付されると同時に次回の申請に使用する「高年齢雇用継続給付支給申請書」も交付されます。

社会保険の同日得喪の手続き

必要書類 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届

健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届

(被扶養者がいる場合)健康保険 被扶養者(異動)届

添付書類 定年日が記載されている就業規則や退職辞令の写しなど退職したことがわかる書類及び継続再雇用を確認できる雇用契約書または事業主の証明
提出先 年金事務所
提出期限 再雇用された日から5日以内

60歳を迎えて継続再雇用された従業員の給与が減額された場合、社会保険料の改定が必要になります。しかし、通常の方法(随時改定)で社会保険料の改定を行った場合、改定が行われるのは4カ月後となり、それまでの期間中給与の額に対して高すぎる社会保険料を支払い続けることとなってしまいます。

そこで、60歳以降の継続再雇用で給与額が下がった場合には、一度資格喪失手続きを行い、その後間をおかずに資格取得を行うことで下がった後の給与額に見合った標準報酬月額を決定します。この一連の手続きを「同日得喪」の手続きと呼びます。

なお、添付書類の中の「事業主の証明書」は、特に様式は指定されていません。退職日、再雇用された日を記載し、事業主の押印がされていれば問題ありません。以下の年金事務所のホームページの「事業主の証明」を参考にされてもよいでしょう。

参考:Q. 60歳以上の厚生年金の被保険者が退職し、継続して再雇用される場合、どのような手続きが必要ですか。|日本年金機構

64歳:雇用保険料の免除(~2020年3月)

雇用保険 65歳
64歳:雇用保険料の免除(~2020年3月)

平成31年度現在、4月1日時点で64歳以上の人は雇用保険料を免除されています。会社が負担する額も同様に免除されます。ただし、短期雇用特例被保険者と日雇労働被保険者は含みません。

しかし、令和2年度の4月より64歳以上の人でも雇用保険の加入条件を満たしていれば雇用保険料を支払う必要があります。保険料の額もそれまでと変わりません。会社としては給与からの控除を忘れないようにすることが重要です。

余談ですが、上記の雇用保険の適用拡大は従業員には大きなメリットがあります。雇用保険に加入しているわけなので、雇用保険に関わる各種給付を受給する資格を得られるのです。要件さえ満たせば、離職した際に受給される「高年齢求職者給付金」や「育児休業給付金」、「介護休業給付金」等が受給できます。

これらの各種給付は、受給資格を満たしていれば何度でも受給可能。雇用保険の適用拡大は高年齢労働者にとっては大きなメリットでもあるのです。

65歳:介護保険料の徴収終了

介護保険料の徴収期間

介護保険においては40歳以上65歳未満の方は第2号被保険者ですが、65歳を迎えると第1号被保険者となり、介護保険料の給与からの控除が終了します

介護保険料の控除を行う必要があるのは、65歳到達月の先月分の給与までです。つまり、65歳到達月に支払われた給与まで控除を行います。賞与に関しては到達月分の賞与まで控除を行います。

70歳:厚生年金保険の資格喪失

厚生年金保険の資格喪失年齢
提出書類 70歳到達届(「厚生年金保険 被保険者資格喪失届 / 厚生年金保険 70歳以上被用者該当届」)
添付書類 なし
提出先 年金事務所
提出期限 到達日から5日以内
備考 70歳到達日における標準報酬月額が到達日以前と変わらない場合には手続き不要

厚生年金保険は、70歳の到達日に被保険者の資格を喪失し、その後は厚生年金保険70歳以上被用者となります。被保険者の資格を喪失するため、70歳到達月の分の給与から厚生年金保険料の控除を終了します

平成31年4月から手続きが簡略化され、原則手続きは不要となりました。70歳到達日における標準報酬月額が到達日以前と変わる場合のみ、「70歳到達届」を年金事務所に提出します。70歳到達届は、事前に日本年金機構から送られてきます。

新たに70歳以上の従業員を雇用する場合

必要書類 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 / 厚生年金保険 70歳以上被用者該当届
添付書類 なし
提出先 年金事務所
提出期限 資格取得日から5日以内
社会保険 70歳 厚生年金
70歳以上被用者該当届

70歳以上の従業員を雇用する場合、「厚生年金保険 70歳以上被用者該当届」を年金事務所に提出します。

なお、「厚生年金保険 70歳以上被用者該当届」に関しては「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」と同一の用紙です。⑩備考欄の「1. 70歳以上被用者該当」を〇で囲みます。

用紙は以下の日本年金機構のホームページからダウンロードできます。

参考:従業員を採用したとき|日本年金機構

75歳:健康保険被保険者の資格喪失

健康保険被保険者の資格喪失
必要書類 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届
添付書類 ①本人及び被扶養者の健康保険証
②高齢受給者証、健康保険特定疾病療養受給者証、健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証
※②については、交付されている場合のみ
提出先 年金事務所
提出期限 資格喪失日(75歳の誕生日)から5日以内

75歳の誕生日を迎えた時点で後期高齢者医療制度の被保険者となり、健康保険被保険者の資格を喪失します。被保険者の資格を喪失するため、健康保険の保険料の控除を終了します。注意が必要なのが喪失日。他の年齢とは異なり75歳の誕生日の前日ではなく、75歳の誕生日当日が喪失日です。

社会保険 75歳 健康保険
被保険者資格喪失届

健康保険の資格喪失手続きは自動では行われないため年金機構から送られてくる「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」を年金事務所に提出する必要があります。⑤の喪失年月日欄には75歳の誕生日を記入し、⑥の喪失(不該当)原因は、「7. 75歳到達(健康保険のみ喪失)」を〇で囲みます。

参考:従業員が退職、死亡したとき|日本年金機構

添付書類として、従業員及びその被扶養者の健康保険証・高齢受給者証、健康保険特定疾病療養受給者証、健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証を併せて提出します。

健康保険証を紛失したなどの理由で提出できない場合は、「健康保険被保険者証回収不能届」を添付します。

参考:被保険者証の添付を必要とする届書提出時に添付ができないとき|日本年金機構

まとめ)社会保険の手続きは特定の年齢に注意!

社会保険は、特定の年齢を節目として手続きや給与計算が煩雑になるケースもあり、理解しているつもりでも間違ってしまうことがあるでしょう。

特に中小企業で労務担当になったばかりなど、労務管理の初心者においては多くの手間を要す場合もあるかもしれません。しかしながら、従業員の給与に関することなので、間違いなく慎重に計算、確認をしたいところです。

もし、実務が困難な場合には、社会保険労務士に資格喪失の手続きや給与計算を依頼すると手続きにかける手間を減らすことができます。

この記事を監修した社労士

ドラフト労務管理事務所 - 大阪府大阪市東成区中道

社会保険労務士資格を取得後、人材派遣会社の本社勤務を9年経験。 その後、「問題を解決するためのドラフトを提案する」という理念を基に独立開業し13年目を迎える。前職の経験を活かし、派遣元責任者講習の講師を担当。派遣元・派遣先の双方の立場など派遣業界の仕組みを理解しての講義には定評がある。同一労働同一賃金・ハラスメントのセミナーも年間数十回実施。また、海事代理士事務所を併設することにより陸上労働者のみならず海上労働者の働き方改革にも従事している。 ●重点取扱分野 労務相談/過労等の疾病・過労死の労災申請・障害年金申請代理 派遣元責任者講習講師/労働局・労働基準監督署等の監査立会業務 派遣業・職業紹介業の許可申請業務 ●働き方改革推進支援センターアドバイザー/教えて!goo・Yahoo!知恵袋 認定専門家/経済産業省後援ドリームゲートアドバイザー。 ●ドラフト労務管理事務所 代表社会保険労務士 鈴木圭史 〒537-0025 大阪市東成区中道 JR玉造駅から東へ徒歩3分

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