バラの剪定はバラを健康的に育てるうえで欠かせない作業です。しかしバラには数多くの品種があり、剪定方法がそれぞれで異なります。
この記事ではバラの剪定で失敗しないためにも、正しい剪定時期や方法、品種別のポイントなどを紹介します。バラの剪定を適切に実施して、大切なバラの健康的な成長を実現しましょう。
バラの種類と開花時期

バラは古くから世界中の人々に愛され続け、現在2万種あるといわれています。
また育ち方で大きく分けると3種類に分類され、それぞれの特徴によって剪定の時期や方法も異なります。特徴や開花期をおさらいして、正しい剪定を実施できるようにしましょう。
バラの種類は大きく分けて3種
バラにはたくさんの品種が存在しており、育ち方で大きく分けると3種類に分類されます。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 木立性 | ・土に根を張り自立しながら成長する ・中輪から大輪の花を付ける ・環境がよければ、春から秋にかけて花を楽しめる |
| つる性 | ・枝を長く伸ばして成長するが自立はできない ・小輪から大輪の花が付く ・枝が伸びてきたら誘引が必要 |
| ミニバラ | ・木立性でコンパクトなバラ ・極小輪から中小輪の花を付ける ・病気になりやすく、こまめな手入れが必要 |
バラを剪定する際には、それぞれの特徴に合わせた剪定方法を実施するのが大切です。
開花時期は主に5〜6月
バラは品種によって開花周期も異なりますが、どの品種も5~6月に1度は花を咲かせて見頃を迎えます。品種による開花の違いと特徴は以下の通りです。
| 品種 | 特徴 |
|---|---|
| 四季咲き性バラ | ・春から秋まで繰り返し花を咲かせる |
| 返り咲き性バラ | ・まれに、春から秋にかけて繰り返し花を咲かせる |
| 一季咲き性バラ | ・開花は1年に1度 ・5~6月に花を咲かせる ・原種に近い |
花を長く楽しみたい場合は四季咲きのバラを選びましょう。しかし、その分こまめな手入れが必要です。年間を通して、どの品種も冬は成長を休める休眠期になります。
バラの育て方

バラは「花の女王」とも呼ばれ、「園芸初心者では育てるのが難しそう」と思う人も多いでしょう。しかし、基本を抑えれば、誰でもバラを育てられます。
また効果的な剪定を行うには、株が元気である必要があります。弱った株や小さな株は強い剪定で、かえって元気をなくしてしまうことも。剪定でバラの健康的な生長を促すためにも、育て方をしっかりと抑えておきましょう。
水やりは土の表面が乾いたら行う
バラへの水やりは、土の表面が乾いたタイミングでたっぷりと行います。
夏場は乾燥しやすいためたっぷりと水を与えたくなりますが、太陽が高い時間帯に与えると、水が温まって根を腐らせる原因になります。なるべく太陽が顔を出さず、気温も高くない早朝に水やりをしましょう。
冬場は休眠期となるため、控えめに与えるのがポイントです。
肥料はバラ専用のものがおすすめ
「肥料食い」とも呼ばれるバラを育てるうえで、肥料は欠かせません。与える際は、バラ専用のものを与えましょう。肥料を与えるタイミングは、以下のとおりです。
- 元肥(もとごえ):植え付けのとき、すべてのバラに与える
- 寒肥(かんごえ):12~2月に、すべてのバラに与える
- お礼肥:5~6月下旬の開花後、四季咲き性や若い苗、鉢植えのバラに与える
- 追肥(ついひ):四季咲き性と若い苗に与える肥料、8月下旬から9月上旬に施す
このほかに鉢植えの場合は、定期的に液体の肥料を施すのがおすすめです。
植え付けと植え替えは休眠期に行う
バラの植え付けと植え替えは、花を咲かせる時期ではなく休眠期に行いましょう。
休眠期に入ると、バラの葉は抜け落ちて光合成しません。そして必要最低限の水分のみ吸うようになるので、根にも安心して触りやすくなります。
そのため休眠期は苗を植えたり、植えていた土を変えたりするのに適した時期といえます。同時に元肥を施し、新芽を出すのに必要な養分の補充もしましょう。
また鉢植えのバラは、同じサイズの鉢で育てていると根詰まりするため、3年に1度は一回り大きな鉢に変えてあげましょう。一方で地植えの場合、空気を送り込むのは根の生育によい影響を与えるので、土を掘り起こします。
バラの剪定で失敗しないための3つのポイント

バラの剪定はバラの花つきをよくしたり、健康的な成長を促すためにも必要不可欠な作業です。とはいえ「剪定方法がよくわからない」「失敗しそうで不安」といった方も多いのではないでしょうか。
バラの剪定で失敗しないための3つのポイントを抑えて、大切なバラを長く育てられるようにしましょう。
バラの種類に合わせた剪定を行う
バラの剪定は種類によって剪定方法が異なります。それぞれのバラにあわせた剪定を実施するようにしましょう。例えば木立性のバラは、木の外側についている芽の上を中心に切り落としていきます。
種類にあった剪定方法を取らないと、かえってバラが弱ってしまう可能性もあります。剪定を実施する前に、適切な方法をしっかりと確認しておきましょう。
正しい剪定時期を守る
バラの剪定には適した時期があります。年に2回、夏剪定と冬剪定を中心に剪定を実施するようにしましょう。例えば花が咲き始める開花期に剪定を行ってしまうと、バラに余計な負担をかけてしまうことにつながります。
剪定のタイミングを謝ると、樹木が弱って花芽がつかなくなってしまったり、最悪の場合枯れてしまったりするおそれもあります。バラの健康的な成長を実現するためにも、正しい剪定時期に剪定を実施することが大切です。
残す枝と切る枝を見極める
バラの剪定のコツは、残す枝と切る枝を見極めることです。弱く細い枝や枯れてしまった枝を中心に切り落とし、大きく太い枝や新しい枝は残して剪定するようにしましょう。
適切な枝を残しておけば成長に必要な養分が効率よく行き渡り、バラを元気にのびのびと育てられます。
バラの「夏剪定」の方法

木立性で四季咲き性のバラは、夏剪定を行うことで秋の花付きがよくなります。育てているバラの一部を切り取るのは心もとないかもしれませんが、美しい花を咲かせるのには欠かせません。
正しい剪定時期と剪定方法を抑えて、大切なバラを健康的に育てましょう。
夏剪定を行う時期と目的
夏剪定は8月下旬から9月上旬に行います。弱った枝や不要な葉を取り除くことで、秋にきれいな花を咲かせられるようになります。また風通しがよくなり、病害虫の発生の予防にもなるので、しっかりと行うことが大切です。
剪定は「元気のある株」だけにします。新しい株や弱った株を剪定すると、枝がいじけてしまい、花芽が付きづらい細枝ばかりが出てきやすくなります。
夏剪定は外芽の上を切る
夏剪定で抑えておきたい3つのポイント
- 「外芽」の上を切り落とす
- 株全体の2/3ほどの高さで枝を切りそろえる
- 剪定終了時点で、葉がたくさんついている状態を保つ
夏剪定は基本的に外側に付く「外芽」の上を切り落とします。ハサミで枝先やつぼみ、花を丁寧に取り除き、株全体の2/3ほどの高さで枝を切りそろえ、丸い形になるよう整えましょう。
花芽が付かない「ブラインド」を起こして5cm以上伸びている枝は先端を、弱く細い枝や枯れた枝は根元から切り落とします。黄色く変色した葉や枯れた葉は取り除きますが、夏剪定が終わった時点で葉がたくさん付いている状態に保つのがポイントです。
また大きく太い枝や2年以上前からある枝、前の年からある新しい枝は残して剪定しましょう。
剪定を行う際、清潔な刃先でないと病気を引き起こすかもしれないため、ハサミの消毒は必須です。よく切れるハサミを使用し、切れ味が悪いものは砥石で手入れしておきましょう。
バラの「冬剪定」の方法

冬剪定はバラを健康的に育てるために欠かせない作業です。正しい時期と方法で剪定を行えば、春になるとたくさんの花を咲かせられます。
冬剪定を行う時期と目的
バラの冬剪定は、1月上旬から2月下旬にかけて行います。しかし、つるバラは寒すぎると枝が固くなるため、少し早めの12月に誘引と同時に行うのがおすすめです。冬剪定をすると春にきれいな花がたくさん付きます。
冬剪定を行うと葉も伸びた枝もなくなり、株がさらにすっきりとします。やや寂しい印象になるかもしれませんが、春先にまた見事な花を咲かせるためにも、しっかり剪定しましょう。
冬剪定は全体の1/2〜1/3を切る
冬剪定で抑えておきたい3つのポイント
- 株全体が地面から1/2~1/3の高さになるように切る
- 「外芽」の上を切り落とす
- 枝の切り方で花の咲き方が変わる
冬に剪定する部分は夏剪定と同じ外芽の上ですが、樹高は低めに、株全体が地面から1/2〜1/3の高さになるよう切り詰めます。昨年の枝を残し、太い枝は長く、中くらいの長さの枝は短めに切り落としましょう。
新しい枝(ベーサル・シュート)は、30~50cmの高さで剪定します。基本的には弱った枝や枯れた枝、細い枝を根元から切り落としますが、細い枝は残したほうがよい品種も一部あるため注意が必要です。
また枝の切り方で花の咲き方が変わります。枝を半分程度に切り落とすと、花の付きが多くなり開花が早まるため、早い時期から花を楽しみたい人におすすめです。深く切り込むと花の付きは少なく開花も遅めですが、大きめの花を咲かせます。
バラの品種によって剪定方法が違う

バラには多数の品種があり、種類によって剪定のやり方が変わってきます。育てたいバラに合う手順・方法で行わないと、剪定した効果が出ない場合もあるため、品種別で最適なやり方を確認しておきましょう。
四季咲き木立バラは枯れ枝などを剪定する
四季咲き性の木立バラの剪定は、勢いがなくなった古い枝を切り落として樹形を整えると共に、元気のある新しい枝を伸ばすために行います。弱った枝や細い枝を切り、長い目で見て枝数を増やしていくのです。
剪定方法は前述通りの基本のやり方です。元気でよい状態の芽は残し、不要な枝葉や内側に向かって伸びている枝は根元から切り落としましょう。幹へ風通しがよくなるよう、樹形全体を見たとき不要だと感じた枝は間引きます。
枝を伸ばす主幹は剪定しませんが、10年以上経過して先端の小枝が弱まっていると主幹自体が弱まっている証拠です。その場合は思い切って根元から切り落としましょう。
つるバラの冬剪定は誘引も行う
つるバラの剪定は「切り落とす」よりも「枝を間引く」作業です。また冬剪定では伸びていく枝の方向性を決める「誘引」も一緒に行います。つるバラは寒すぎると枝が固くなり、また2月ごろに新芽が動き出すため、12月中に作業を終えましょう。
剪定する枝に残った葉や花は取り除き、細い枝や枯れた枝を根元から切り落とします。新しく太い枝は、芽の上5〜10mmを水平になるよう切りましょう。複数の芽が先端になるよう高さ調節をするのは、先端の芽に養分が集中する習性があるためです。
つるバラで夏剪定を行うのは四季咲きの品種か、木立性のようにも育てられる半つる性の一部品種のみです。秋に美しい花を咲かせるよう、不要な枝葉を間引きましょう。一季咲き性は春だけに開花するため、夏剪定をしても効果があまりありません。
つるバラの剪定方法は次の記事で詳しく紹介しています。あわせて参考にしてみてくださいね。
ミニバラは切り戻し剪定を行う
ミニバラは切り戻し剪定を行います。次の花や新芽を育てたり、樹形を美しく整えたりするために、伸びすぎた枝や茎を切り落としましょう。
1度目の剪定タイミングは一番花が咲き終えた5〜8月ごろです。幹から伸びて5枚ほどの葉が付いた「5枚葉」の5~10mm上で茎を切り落としましょう。次の剪定は8月下旬から9月下旬に行い、株全体が2/3の高さになるよう枝の長さを切りそろえます。
また2番花が咲き終わる10〜11月には、花を付けた枝の5枚葉上を1/2ほどの長さで剪定しましょう。そして、成長が衰える休眠期に全体を1/2の高さで調節し、春に向けて元気な枝が伸びるよう手助けします。
ミニバラの剪定方法は次の記事で詳しく紹介しています。剪定方法をしっかりと確認して、ミニバラの健康的な成長を促しましょう。
バラの「花がら摘み」について

「花がら摘み」は、開花している花を切り落とす作業です。花がらを放置しておくと花を育てるのに必要な養分が取られてしまい、次の花の成長が遅れてしまいます。花がら摘みを行うことで、次の花つきがよくなる効果が見込めるのです。
せっかく咲いた花を切るのはもったいないと思うかもしれませんが、花柄摘みはバラを育てるのに欠かせない作業です。
四季咲きのバラは春の花後に行う
一番花が咲き終える時期を狙って花がら摘みをすると、四季咲きのバラは二番花を咲かせる枝が成長します。咲かせた花は長く楽しみたいものですが、開花中はバラにとって一番体力を消耗する時期のため、早めに花がらを摘むことが重要です。
「花がら」はしぼみ始めた状態のことですが、できれば9分咲きでカットし切り花で楽しみましょう。花がら摘みをする際は、枝に3~4枚の本葉を残します。葉は栄養を作り株の成長を助けるために必要だからです。
なお、浅い位置で花がら摘みをすると新しい花がすぐに付きますが、よい枝が出にくくなり株自体を弱らせます。深めに切ると開花に時間はかかるものの、元気でよい状態の枝が伸びやすくなり、また樹形をコンパクトに仕立てるのに有効です。
花茎の根元から切り取るのが基本
花がらを摘む際は、しぼんだ花弁だけでなく、花の土台ともいえる「花茎」の根元から切り取ります。花を支える膨らんだ部分は種や実を作るため、残すことで養分を取り、株を弱める原因になり得るのです。
切り取りにはハサミを使う方法と、手で摘み取る方法があります。バラの花がら摘みにはハサミを使用し、切り戻しを兼ねて行いましょう。
花がらをいつまでも残しておくと見た目も悪く、カビの発生や病気を引き起こす原因にもなります。美しい花をまた咲かせるためには、こまめな花がら摘みが必要です。
バラの剪定時に病害虫の確認も忘れずに

剪定することで、混雑した枝や葉によって見えなかった部分が見えやすくなります。不要な部分を取り除きながら、大切なバラが病気にかかっていないか、また害虫が付いていないかを確認しましょう。
バラがかかりやすい病気
「うどんこ病」は代表的なバラの病気です。春〜秋のちょうど開花する時期に発生しやすく、新しく出た枝や葉が「白い粉がかかった」ような状態になります。茎や葉がねじれるように委縮し、やがて全体に広がって枯れることもあるのです。
もうひとつの病気「黒星病」は梅雨明けから発生しやすく、バラの葉に黒い斑点が付きます。株が丈夫に育っているとあまり影響を受けませんが、黒星病にかかった葉は落葉しやすく、光合成が減ることで夏以降に花が咲かなくなるかもしれません。
どちらも発生した場合は、殺菌剤を散布したり、罹患した部分を剪定したりして対処します。近年は病気に対して強い品種が多く生み出されているため、初心者は耐病性が強いバラを選ぶと安心です。
バラに付きやすい害虫
バラの新芽に付きやすいのが「アブラムシ」です。肥料にチッ素成分が多かったり、風通しが悪かったりすると発生します。寄生を許すとカビが発生し「すす病」の原因にもなるため、スミオチンやオルトランの1,000倍希釈液を散布しておきましょう。
また、バラが植えられた有機質土壌を好む「コガネムシ」にも注意が必要です。幼虫はバラの根を食すため、元肥を施す際にいないか確認し、見つけたらすぐに駆除します。成虫を見つけた場合は、ベニカ水溶剤を散布しましょう。
さらに、バラのつぼみが突然乾いたようにしおれた場合は「バラゾウムシ」による被害が考えられます。落ちた新芽やつぼみに卵が産み付けられている恐れがあるため、すぐに拾い集めて処分しましょう。成虫にはスミチオンなどの殺虫剤を散布して対処します。
バラを上手に剪定して美しい花を咲かせよう

美しい花や、成長させ伸ばした枝を切るのは抵抗があるでしょう。しかし剪定を怠ると、バラを長く上手に育てることは難しいのです。
枝を伸びっぱなしにしたり、花がらを放置したりすると、必要な養分が株全体に回らず、健康的な成長を促せません。また病気の原因になることもあります。
不要な枝葉は切り取り、見頃を迎えた花は切り花として室内で楽しみましょう。こまめな手入れをしながら愛情をかけることで、また美しいバラの花を見ることができるのです。
