人物に風景、動物にインテリアなど数多く存在する撮影対象の中でも、特に人気なのが料理写真でしょう。大手画像投稿型SNS「Instagram」においては、料理に関連したタグを併記しての投稿が世界中から数千、あるいは数万を超えるほどに投稿されています。
しかし、料理写真というのは意外と難しいもの。ポートレート撮影を専門としているカメラマンでさえ、「料理写真はちょっと苦手」という場合があります。
しかし、今回この記事でレクチャーする構図やレンズ、カメラ設定に光などのチェックポイントに気を付ければ、素人であっても玄人はだしな料理写真を撮ることができます。プロカメラマンとして活動している私が解説させていただきますので、よろしくお願いいたします。
料理の撮影に欠かせない光
料理を撮影するにあたって絶対欠かせないものは何かというと、「光」です。光が満足に当てられていない料理写真というのはとても陰気で、「この料理を食べてみたいな」とは到底思えません。
あまり撮影経験のない方にとって光の要素は難しく感じられるかもしれませんが、大丈夫。この項目では、誰でも簡単に実践できるコツについて解説を行っていきます。
料理写真には自然光がベスト
カメラ初心者であってもっとも簡単に作り出すことができ、なおかつ非常に高い効果を得られる種類の光として、自然光があります。
たとえば、カフェの野外テラスでの料理やレストランの窓際でランチをいただく際のことをイメージするとご理解いただけるでしょう。とくに何もしていないのに、やわらかな光が料理を照らしてくれていませんか?
大事なのは、光を作り出し支配することではなく、既に存在している光を操ること。料理写真を撮影する際の多くの局面において、自然光はとても大きな助けとなってくれるはずです。
照明を使用するのもOK
とは言え、自然光が届かない屋内での撮影や、自然光が自分の気に入らない位置から照射している場合は、ストロボ(スピードライト)などで人工の光を作り出す必要が生じます。
料理写真撮影におけるライティングの要点は、「被写体となる料理の鮮度をアップさせること」そして「彩りを鮮やかにすること」です。そのために、真上からの幅広くソフトな光や、白とびを発生させない適度な強さの光が求められます。
自然光だけでなく人工光をもコントロールすることができれば、さまざまな料理の表現が行えるでしょう。習得には時間がかかるかもしれませんが、積極的に練習をしていきましょう。
逆光で料理を撮影しよう
少々変則的ではありますが、逆光を利用して料理写真を撮影するというのもなかなか面白いやり方です。その場合、料理のおいしさそのものよりも、生活感や芸術性を押し出した作品を撮ることができます。
影に覆われてしまった料理被写体はあまり面白味がありませんが、逆光によって後ろ側が照らされている、あるいは後光のようなものが差している場合は、アーティスティックな表現として十分通用します。
逆光をコントロールするため少々難易度は上がりますが、おいしさよりもアート性をアピールしたい、あるいは、他人とは異なる料理写真をカメラで撮影したいと考えたのならぜひチャレンジしてみてください。
料理写真の撮影に適した構図3つ
いかなるものを被写体とした写真でも、構図というものは写真の出来に大きく関わってきます。それは料理写真であってもまったく変わりありません。
むしろ料理写真の場合、構図を変化させることによって被写体となる料理ないし写真全体のイメージがガラリと変わってしまいます。この項目で述べるポイントをヒントに、いろいろ構図を練ってみましょう。
広範囲を撮影できる真上からのアングル
まず最初に紹介するのは、真上ほぼ90°から被写体となる料理を撮影するという手法です。空の上から見上げるような、いわゆる「俯瞰」の構図となります。
この構図のメリットとしては、盛り付けが行われている料理の全体を捉えられるだけでなく、テーブルやコップに食器、そのほかインテリアのようなアイテムもフレームインできるということです。
テーブルの柄や食器の材質などを料理の色彩盛り付けとうまく合わせることができれば、他の構図には引き出せない生活感やアート性を演出するといったことが可能であり、玄人好みと言えます。
最もシンプルで見慣れている45°のアングル
あらゆる場面で多様されている構図が、上斜め45°のアングルから料理を撮影する方法です。いまいちピンとこない方は、レストランのメニュー写真などを思い浮かべられるとよいでしょう。
この構図の長所は、なんといってもシンプルであることです。シンプルであるがゆえ、その料理それ自体が持つ色鮮やかさや華やかさ、そしておいしさ(シズル感)を満遍なく引き出すことができます。
多くの場面において無難な写真が撮影できる構図ではありますが、シンプルさのため逆に物足りないと感じることもあるかもしれません。その場合は、別の構図にも挑戦してみましょう。
ボリュームを強調できる低めのアングル
最後に紹介するのは、やや低めの位置から料理にカメラを近づけて撮る方法です。お皿の形状によっては、料理が置かれている位置より低い場所にカメラを構えた「アオリ」で撮るのも面白いかもしれません。
この手法の長所は、なんといってもボリューム感を演出できるということです。料理がフレームの大部分を占めているので、「たくさん量がありそうだぞ」というイメージを眺める人に抱かせることができます。
この構図で撮影を行う場合は、なるべくお皿をすべてフレームインさせないことをおすすめします。あえて全貌を見せないことによって、そのボリュームを現実以上に大きなものと演出することができるからです。
料理の配置の注意点3つ
先ほどは構図について説明を行いましたが、ベストな構図を作り出すには「料理をどこに配置するか」ということもまた大事な要素となり得ます。
配置を少し変えるだけでも、写真としての見映えがグンとよくなることもあるので、料理写真をカメラで撮影する際は、常にこのことに気を配っておくようにしてください。
余計なものは映さない
先ほどの構図の解説において、料理以外の食器やインテリアを写すことのよい点について述べさせていただきましたが、この項目ではその悪い点について説明させていただきます。
写してよいものもあれば、よくないものもあるのです。たとえば向かい側で料理を食べている人の腕や、無造作に置かれたお箸、クシャクシャのおしぼりなどが該当します。
「あまり料理がおいしそうに見えない」「なんだか雑多で料理に集中できない」と感じる写真はだいたいこの点ができていません。撮影前に周辺の状況を確認し、どれをフレームインさせるかどうか頭の中で取捨選択を行いましょう。
料理を中心に置かない工夫
被写体が中心にポツンと存在している、いわゆる「日の丸構図」はポートレートや風景写真でもあまり好まれるものではありませんが、料理写真においても同様のことが言えます。
ただお皿に盛られた料理が工夫もなく真ん中にきているような写真は率直に言って面白味がなく、個性を感じさせづらいです。言うなれば「楽しむための写真」というよりも「記録写真」に見えてしまいます。
「料理の一部分だけをアップする」「全体を写さず一部をフレーム外にはみ出させる」などの工夫を行い、見ていて楽しそうかつおいしそうに見える写真づくりを目指しましょう。
メイン料理を一番引き立たせる
これは料理写真にだけ言えることでもありませんが、人を惹きつける力の弱い写真にありがちなのは、メインとなる被写体が決まっていない、すなわち「何を一番見せたいのか」がよく分からないということです。
例えば、焼肉定食を撮影する場合、「ごはん、焼肉、味噌汁のどれを一番見せたいのか」をまず考え、それがメイン被写体としてちゃんと引き立つための構図的ないし配置的工夫を行う必要があります。
仮に焼肉をメインとした場合の工夫としては、「フレームの半分以上を焼肉で占め、他の料理は周囲に配置する」「焼肉をカメラの一番前に置き、その他の料理は後ろに並べておく」などが考えられます。
料理撮影におすすめのカメラレンズ
どのようなジャンルの撮影であっても、レンズ選びというのはとても大きなポイントです。中には、特定のレンズでしか撮れないような画というのもあります。
この項目では、料理写真の撮影に向いているカメラレンズについて解説を行いますので、ぜひともお買い物のご参考にお役立てくださいませ。
料理写真には単焦点レンズがベスト!
料理写真を撮影するにあたっては、ズームを行うことができない「単焦点レンズ」がおすすめです。一見不便なように思えますが、それでもおすすめするのはふたつの大きな理由があるからです。
まず1つ目は、純粋な画質のよさ。一般的にズームレンズと比較すると単焦点レンズは画質が優先されており、解像度や光の表現において優れているとされています。
そして2つ目は、濃密な「ボケ」を自由に作り出せるということです。F値(絞り)を開放することによってフォーカス外のものをボケさせることができれば、メインの被写体がより強調され、魅力的なものとなります。
おすすめ焦点距離は50~90mm
料理写真の撮影にあたっては、焦点距離が50mm~90mmとなっている単焦点レンズをおすすめします。その理由としては、「被写体を適切に切り取れるから」です。
先ほどの項目で、あえて全体を写さないことの重要性について解説しましたが、そのための切り取りを行うには、適度な長さを持ったレンズが適しています。
それでは、35mm以下の「広角レンズ」が必ずしも料理写真に向いていないかというとそうではなく、余分な写りこみにさえ気を付ければ俯瞰構図などで力を発揮してくれることもあるでしょう。
参考:Canon EF85mm F1.4L IS USMEF85mm F1.4L IS USM
マクロレンズの有効活用を
料理写真の撮影にあたってぜひともおすすめしたいのは、「マクロレンズ」と呼ばれる少々特殊なカメラレンズです。
マクロレンズというのは何かというと、その名の通り被写体に対して大幅なクローズアップを行うことが可能なカメラレンズであり、これを利用して料理のごく一部に密着した撮影を行うことができます。
これを利用し料理の「もっともおいしい部分」、たとえば刺身のてかりがある部分やトンカツの断面などをクローズアップした写真を撮影すれば、より表現の幅が広がるでしょう。
参考:Canon EF100mm F2.8 マクロ USMEF100mm F2.8 マクロ USM
料理写真に適したカメラの設定
料理写真の撮影にあたって最後に気を付けるポイントは、カメラの設定をどのようにするのかということです。ちょっとした数値をいじるだけでも、吐き出される画は大幅に変わります。
この項目では、忘れてはならない料理写真撮影時のさまざまな設定について解説を行っていきます。この項目をマスターすれば、より魅力的なフードフォトが作り出せるでしょう。
F値を調整してピントを合わせよう
いくら画質が優れたカメラやレンズを使用していても、被写体にピントが合っていなければ何の意味もありません。ピント合わせはどのような写真においても必須事項です。
それに加えてF値を調節することによって、どの程度ボケを発生させるかを決める必要があります。ピントの合った被写体をどの程度ぼかすかで、写真の印象は大きく変わるのです。
料理一品の魅力を強調したいのであればF値を低めに、「料理のある風景」を演出したいのであれば、F値を高めにして撮影を行うと思い通りの画が作り出せるでしょう。
色温度を調整して美味しそうな色味に
初心者にとって色温度(ホワイトバランス)はそれほどなじみのある設定ではないかもしれません。しかし、これを少し変えるだけで、料理の印象は他の設定以上に変わってしまいます。
色温度というのはものすごくざっくり言えば「色を青寄りにするか、黄色よりにするか」といったことなのですが、この設定を誤ると料理の魅力は台無しになります。色温度を低くしすぎると冷え切っておいしくなさそうに見えますし、高くしすぎると黄ばんで腐っているように見えます。
料理の種類によって適切な色温度は大きく異なってきますので、撮影を行う料理ごとに適宜調節を行い、最適な数値を導き出すようにしましょう。
料理向けカメラアプリは有効?
スマホ向けアプリの中には、料理をきれいに撮影することのできるものがあるようです。これらのアプリは一眼レフカメラよりもよい写真を撮れるのでしょうか。
率直に述べると、必ずしもそうとは言えません。確かにこれらアプリが備えているエフェクトは場合によっては効果的に働いてくれる場合もありますが、すべての料理に大して効果を発揮してくれるわけではありません。
さまざまな料理にも対応できる幅の広さや単純な画質の高さから言えば、一眼レフカメラを使用して料理写真を撮影されることをおすすめいたします。
料理写真をプロカメラマンに依頼
料理写真の撮影というものは、数ある撮影ジャンルの中でも比較的難易度が高い部類に入ります。そのため、人によっては満足のゆくような画がなかなか撮れないということもあるでしょう。
どうしてもクオリティの高い料理写真を短期間のうちに欲しい場合は、プロカメラマンに依頼するというのも有効な手段のひとつと言えます。
料理写真をプロカメラマンに依頼したほうがいい理由
料理写真をプロに任せた方がよい理由としては、もちろんスキルの問題もありますが、機材に関する費用などの事情もあります。
万全な状態で料理写真を撮影するにあたっては、スピードライト(複数)やソフトボックス、ラジオスレーブにライトスタンドなど、さまざまな機材を用意しておく必要があります。
これらを揃えると、プロカメラマンへの依頼料を上回るだけでなく、経験の少ない人にとっては使いこなすのが大変です。それならば、最初からプロカメラマンへ依頼した方がコストパフォーマンスもよく効率的ということとなります。
プロカメラマンに撮影依頼した場合の価格相場
撮影内容によっては、料理写真もポートレートなどと同じく1時間あたり2~6万円の金額で請けてくれることがあります。
ただし、撮影を行う料理の品数が多い場合、その分追加料金を請求されることもしばしばです。レストランのメニュー写真などを依頼しようと思えば、やはりそれなりの費用が発生すると考えてよいでしょう。
基本的には、ネットのマッチングサイトなどで集客を行っているカメラマンの方が比較的報酬が安い傾向にあるようです。
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岩崎 隼人 - 大阪府守口市南寺方中通