結論からお伝えすると、入居時の鍵交換は多くの場合で必須です。また鍵の交換費用は借主が負担する場合が多いです。
鍵を交換しなければいけない理由や、費用の相場、DIYをする場合と業者に依頼する場合のそれぞれの注意点など、鍵交換について知っておくべき事柄を解説します。
賃貸の鍵交換は必須?誰が負担すべき?
入居時の鍵交換は法律で定められた義務ではないものの、実際には拒否できないことが多く、費用はたいていの場合は借主の負担です。
鍵交換は多くの場合で必須
賃貸物件における鍵交換とは、前入居者が使用していた鍵とシリンダーを取り替える作業のことで、ふつう入居者が入れ替わるタイミングで行われます。
一般的には新しく入居する借主が負担することが多く、初期費用の見積もり書に「鍵交換代」と記載されているのを見たことがある人も多いでしょう。
「必要性を感じられないから鍵交換をせずに費用を安くしたい」と思われるかもしれませんが、実際には貸主や管理会社に相談しても拒否することができない場合が多いです。
借主が費用を負担するのが一般的だが、交渉できることも
賃貸物件の入退去時のトラブルを防ぐために国土交通省が発行している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」には、鍵交換に関して次の通り記載があります。
鍵の取り替え(破損、鍵紛失のない場合)
(考え方) 入居者の入れ替わりによる物件管理上の問題であり、賃貸人の負担とすることが妥当と考えられる。 |
ここでは鍵交換代は貸主が負担することが望ましいという見解が示されているものの、ガイドラインには法的な拘束力がなく、実際には新入居者(借主)が負担するように契約で定められている場合がほとんどです。
ただしガイドラインの内容を根拠に、貸主に鍵交換費用を負担してもらうよう不動産業者を通じて交渉することはできます。
借り手が少ない時期である7~8月頃や、空室が続いている部屋であれば、貸主側も早く入居者を見つけたいため、交渉に応じてもらえる可能性があります。
参考:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
※別表1 損耗・毀損の事例区分(部位別)一覧表 (通常、一般的な例示) |
鍵交換にかかる費用相場
見積もりに記載されている鍵交換費用が妥当な金額なのか、不安に感じることもあるでしょう。大まかな金額相場を把握しておけば、提示された金額が適正かどうかある程度判断できます。
鍵の交換費用は種類によって差があります。鍵の種類を大きく4つに分類し、それぞれの特徴と費用を見てみましょう。
種類 | 費用相場 |
一般的なシリンダー錠 | 10,000円~12,000円程度 |
ディンプルシリンダー錠 | 15,000~25,000円程度 |
カード式電子錠 | 5,000~25,000円程度 |
電子錠 | 貸主・管理会社が定める再登録代
※設備交換の場合は20,000~100,000円程度 |
鍵の種類別の交換費用
鍵交換の費用相場を種類ごとにみていきましょう。
①一般的なシリンダー錠:10,000円~
ギザギザした表面の鍵を鍵穴に差し込み、中の筒(シリンダー)を回転させて施錠・解錠する「シリンダー錠」と呼ばれるタイプの鍵です。
鍵穴内部の構造の違いによって、ディスクシリンダー、ピンシリンダー、マグネットタンブラーシリンダーなどさらに細かい種類に分けられます。
安価で合鍵も作製しやすく、日本の多くのマンションに使われています。
古いタイプのシリンダー錠は簡単にピッキングされてしまう防犯性が低いものもあるため、不安な方は管理会社に詳しい型番などを確認してみるとよいでしょう。
②ディンプルシリンダー錠:15,000円~
鍵の表面に様々な大きさのくぼみがある特徴的な見た目が特徴です。鍵穴内部のピンが複数方向に向かって配置されており、ピッキングがしづらい複雑な構造をしています。
裏表どちら向きで差し込んでも使えるリバーシブルタイプのものも多く、使いやすさも魅力です。
賃貸物件では比較的築年数が新しい、家賃の高めなマンションで多く見られます。
複雑な構造ゆえに合鍵の作製が難しく、交換費用も比較的高額です。
③カード式電子錠:5,000円~
磁気を読み込んで使用する、カード型の鍵です。鍵穴に抜き差しをするのではなく、スロットにカードを挿入したりセンサーにかざしたりして使用します。ビジネスホテルやオフィスなどで使われることが多いタイプです。
複製しづらくピッキングされることもないため、防犯性に優れています。財布に入れて持ち歩ける手軽さもカードキーの利点です。
カードの再発行だけで済む場合は、鍵交換代も安くおさえられるでしょう。
④電子錠:貸主の定めによる
賃貸物件では見かけることが少ないですが、従来の鍵穴タイプではなく、暗証番号を入力して解錠する「暗証番号式」、指紋や顔を認証・一致させて解錠する「生体認証式」のような電子キーもあります。
基本的には設備自体の交換ではなく登録情報の変更のみのため、鍵交換代がかからないか、登録料だけで済むことが多いです。
鍵を持ち歩く必要がないため紛失リスクがない点が魅力です。
賃貸の鍵交換はなんのためにするのか
防犯のために鍵交換をする
空き巣や不法侵入のリスクを避け、住居の防犯性を確保するために、鍵交換は行うべきです。
賃貸物件を借りた人はふつう退去時にすべての鍵を返却しますが、こっそり合鍵を作って所持している可能性もあります。前の入居者やその知人など、不特定多数の人が退去後も部屋に侵入できる可能性があるのです。
もし見積もり書に鍵交換代の項目がなかったら、「鍵交換は行ってもらえるのか」「貸主側で行わないのであれば、自分で手配しても構わないのか」という点を確認することをおすすめします。
鍵とシリンダーは使い回しの場合が多い
鍵交換をしているはずなのに、受け取った新居の鍵が古びていて気になった人もいるかもしれません。
貸主や管理会社が鍵を交換するときには、以下のような方法で既存の錠前を使い回していることが多いです。
- 同じ貸主や管理会社が管理している複数物件の間でローテーションする
- 複数の鍵を所有しており、1度使った鍵は数年保管してからまた設置する
同じ物件内で使い回されることもあり、その場合は過去に同じ物件に住んでいた人が合鍵を作っていたら部屋に侵入できてしまう可能性もあります。不安な場合は確認してみると良いでしょう。
鍵交換が行われた証拠は確認できる?
「費用は請求されたけど、実際に鍵を交換してもらえるのか不安」という方もいるかもしれません。
その場合、鍵交換の現場に立ち会うことができないか交渉する、鍵交換の領収書を見せてもらえないか頼むという手段もあります。
こういった要望には必ずしも応じてもらえるわけではありませんが、気になる場合はまず貸主や管理会社に相談してみるのがおすすめです。
入居中の鍵交換は場合によって負担者が変わる
入居後に鍵を交換することになった場合は、その理由によって貸主と借主どちらが負担するのかが変わります。
長年使い続けて鍵が壊れた場合は、原則として貸主側が費用を負担します。国交省の原状回復ガイドラインにも、経年劣化した設備について、借主には責任がないという考え方が示されています。
ただしこちらも法的な効力はありません。いずれにしても貸主や管理会社に報告したうえで修繕・交換することが大切です。
一方で借主が鍵を紛失した、乱暴に扱ったために故障したという理由で交換が必要となった場合は、費用も借主負担となるでしょう。
参考:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
※別表1 損耗・毀損の事例区分(部位別)一覧表 (通常、一般的な例示) |
自分で賃貸物件の鍵交換をすることは可能?
- 自分で鍵交換を手配したほうが、管理会社に任せるよりも安上がりで済みそう
- セキュリティを強化するため、より防犯性の高い鍵に交換したい
このような理由で、自分で鍵交換を手配したい、または自力で交換作業まで行いたいという人もいるかもしれません。
勝手に交換するのはNG!貸主や管理会社に相談を
建物や設備の所有者はあくまで貸主ですので、いくら自分が費用を負担する場合であっても、入居者が勝手に鍵交換をしてはいけません。
賃貸物件を借りるとき、借主は退去時に「原状回復」の義務を負います。貸主に無断で鍵交換をした場合には、退去時に元の鍵へ戻す費用を請求される可能性もあります。
貸主や管理会社が鍵の交換について把握していないことで、水漏れや火事など緊急時の対応に支障をきたすかもしれません。
自分で鍵交換をしたい場合は、まず貸主や管理会社に相談して許可をとりましょう。
自力での交換は難しいので業者に依頼しよう
鍵交換のDIYも可能ですが、失敗するリスクは高いです。
メーカーや型番、規格などを考慮して適切な鍵を探すのは難しく、サイズが合わない鍵を無理に取り付けようとすると、ドアが壊れてしまうことがあります。
鍵交換作業にもさまざまな注意が必要です。シリンダーのみの交換ならまだしも、鍵全体を交換するとなると、かなり高度な技術を求められます。
なお鍵はセキュリティ上の問題から購入後の返品が不可である場合が多く、コスト削減のつもりが鍵代や修理代がかさむリスクもあります。
DIY経験が豊富な人でない限りは、業者に依頼するのがおすすめです。
業者に鍵交換を依頼する際のポイント
鍵交換を業者に依頼する際にはいくつかのポイントがあります。
複数業者から見積もりをとる
見積もりは1社だけではなく、複数の業者からとるのがおすすめです。
交換費用は鍵の種類やメーカー、型番などによって大きく異なり、適正な施工価格が見極めにくいからです。
相見積もりで複数業者を比較しながら、予算と作業の難易度などが見合っているか、多角的に検討しましょう。
サービス内容や対応もチェック
サービス内容をよくチェックしておくこともおすすめします。具体的には、以下のようなポイントをみてみましょう。
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鍵交換以外で引越しの初期費用を安くするには
賃貸物件に入居するときの鍵交換は拒否できない場合が多く、防犯性を考慮しても交換すべきであるということが分かりました。
とはいえ、引越しには家具家電の購入などお金がかかりますから、少しでも費用をおさえたいですよね。
鍵交換費用以外の項目で初期費用を下げるポイントを紹介します。
礼金や仲介手数料の値下げを交渉する
初期費用のうち多くの割合を占める礼金や仲介手数料は、貸主や仲介業者との交渉次第で金額を下げてもらえる可能性があります。
特になかなか借り手が見つからず空室期間が長い部屋や、賃貸物件の閑散期である7~8月であれば、交渉に応じてもらいやすいです。
ただし繁忙期である2~3月や、条件の良い人気物件は、金額を下げなくても借りてくれる人が見つかりやすいため、希望を聞いてもらえない可能性が高いことに注意しましょう。
ちなみに礼金とともに記載されている敷金は、基本的に退去時に返還されるものであり、むやみに値切ろうとするのはおすすめしません。
家賃保証会社との契約を見直す
多くの場合、物件を借りるときには家賃保証会社への加入を求められます。これは借主が家賃の支払いを滞納した場合に、貸主の賃料収入を保証するための仕組みです。
初期費用の見積もりに載っている「初回保証料」は毎月の家賃の20~100%に設定されていますが、以下のような工夫をすることで削減できる場合があります。
- 保証料の設定が安い保証会社に加入する
- 保証会社に加入する代わり、身内や知人に「連帯保証人」になってもらって支払いを保証する
ただし、保証会社は貸主や管理会社の指定である場合が多いこと、近年では連帯保証人のみによる保証は認められない傾向にあることに留意しましょう。
火災保険を低価格のプランにする
賃貸物件に入居する際は火災保険への加入が必須ですが、貸主から提案された保険プランにそのまま入る必要はありません。
提案されたプランよりも低価格な保険内容を自分で選ぶことが可能です。
火災保険の費用を減らすためには、以下のような方法があります。
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不要なサポート・サービスを断る
初期費用の見積もりの中には、必須でないサポートやサービスが含まれていることが多く、それらを断ることで費用を削減できる可能性があります。
たとえば以下のようなサービスが挙げられます。
- 24時間トラブル対応をしてもらえるサポートシステム
- 部屋の消臭・除菌サービス
- 害虫駆除サービス
サービスの内容を仲介業者に確認し、必要ないと感じたら外してもらえないか相談してみましょう。
もし賃貸の鍵を紛失してしまったら?
うっかり賃貸物件の鍵をなくしてしまったらどうすれば良いのでしょうか。
まず落ち着いて身の回りや行動範囲を探した上で、見つからない場合は警察への届出と貸主・管理会社への連絡を行い、家に入れない場合は鍵開け業者への依頼をしましょう。
鍵を紛失したときの対応については、以下の記事でも詳しく解説しています。
まずは冷静になって探す
パニック状態のままでは、もし身の回りにあっても見つけるまでに手間取ってしまいます。まずは冷静になりましょう。
気持ちを落ち着けた上で、以下のように探してみてください。
- 着ている衣服のポケットやバッグの中身、買い物袋などを丁寧に見直す
- 鍵をなくしてから気付くまでの行動を振り返る
- 立ち寄った店や施設に連絡して鍵の落とし物がないか確認する
家主や管理会社に連絡する
入居者が鍵を紛失した場合は、貸主または管理会社に連絡をしなければなりません。
貸主や管理会社がマスターキーを管理していれば、現場に駆けつけて対応してくれる可能性もあります。
もし合鍵があったとしても、なくした鍵が見つからない場合は所有者にきちんと報告することが大切です。貸主の連絡先が不明であれば、契約を仲介した不動産業者に連絡しましょう。
もしなくした鍵が悪用されて、その物件に空き巣などの被害が生じた場合は、損害賠償問題にも発展しかねません。こっそり鍵開け業者を頼んで終わらせるなどといった対応は避けましょう。
警察に遺失届を出す
「遺失届」を最寄りの警察署や交番へ届けておくことも大切です。
もしその時点では落とし物として届けられていなくても、後々鍵が見つかったときに連絡してもらえます。
損害保険金を請求する際に、鍵を紛失したことの証明として遺失届の受理番号が必要になることもあります。
鍵開け業者に依頼する
鍵がどうしても見つからず、合鍵もない場合には、鍵業者に依頼して開けてもらうしかありません。
鍵開け作業時には身分証明を求められます。運転免許証や学生証など、顔と住所が確認できるものを用意しましょう。もし身分証明できるものが手元になければ、警察に立ち会ってもらうことで開錠が可能です。
無事に鍵を開けてもらった後は、必ず貸主・管理会社へきちんと報告し、鍵の交換が必要かどうかなどを相談しましょう。
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