新たに事業を開始する際に、行政から「許可」や「認可」を受けなくてはいけない業種がいくつかあります。まとめて「許認可」と呼びますが、許認可が必要な業種で許認可を受けずに事業を行っていると、行政処分の対象になるだけでなく、場合によっては刑事罰の対象になるため注意が必要です。許認可とは何か、また、必要な業種について見ていきましょう。
この記事を監修した税理士
風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川
許認可とは?
許認可とは、業種を管轄する省庁から許可あるいは認可を受けることを指します。例えば東京都で建設業を始める場合は、管轄する関東地方整備局に許可申請を行わなくてはなりません。なお、後述しますが許可と認可は異なります。許可とは「一般的に禁止された行為を可能にすること」、認可とは「行政が認めることで法的効力が生まれること」です。
許認可とは、行政機関に対して手続きを行って得ることができる許可
許認可とは、法令等で規制されている特定の事業を行う際に必要となる行政機関からの許可のことを指します。行政機関には、保健所や税務署、都道府県庁、警察署などの様々な機関を含みます。
また、事業によっては、一ヵ所からの許認可だけでなく複数の行政機関から許認可を得る必要があることにも注意しましょう。
5種類の許認可
次に許認可の種類について見ていきましょう。許認可には以下の5種類があります。
(1)届出
届出は必要事項を行政機関に届けることで許認可が下りるというものです。ただし、届出が受理されないと許認可は下りないので、届出に間違いがないか注意するようにしましょう。
(2)登録
登録は行政機関に届出を行うだけでは足りず、名簿に登録されることで初めて営業を行うことができるというものです。
(3)認可
認可は、行政機関に届出を行った上で事業を行うために規定されている要件を満たすことで営業を行うことができます。
(4)許可
許可は、一般的に禁止されている行為について、行政機関に届出を行うことにより当該禁止行為を解除してもらい営業ができるようになることです。
(5)免許
特定の資格を有する者が行政機関に届出を行い、規定されている要件を満たすことで営業を行うことができます。
なぜ許認可は必要?
行政が特定の業種の行為に関して「許可」や「認可」を与えることで、事業における公正性と透明性が向上し、国民の安全や健康、利益を保護することに繋がります。
例えばある一定の衛生基準を満たした事業所にのみ食品を扱うことを許可することで、国民の安全と健康が守られることになるでしょう。そのため、飲食店や菓子製造、食肉販売などの食品関連の事業を始める場合には、管轄の保健所長の許可が必要です。
また、許認可を受けることは、事業を行う者にとってもメリットになります。業種を管轄する行政機関が許認可を与えたということで、社会的信用が高まるでしょう。
反対に、許認可を受けない場合、営業停止などの行政処分や懲役刑・罰金刑などの刑罰の対象になります。例えば保健所長の認可を受けずに食品を扱う事業を始めた場合なら、食品や容器、器具の破棄や営業停止、個人は3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人は1億円以下の罰金刑が科せられる可能性があるでしょう。
許認可が必要な業種
許認可はすべての業種に必要とされているわけではありません。業種によっては、許可も認可も取らずに営業を開始することが可能です。しかし、許認可を与えてから営業をすることが国民にとって利益となると考えられる業種には、許可・認可を受けることが必須とされています。許認可が不要な業種と必要な業種について見ていきましょう。
許認可が必要な業種の一覧表
許認可が必要な業種及び許認可の申請先は以下のとおりです。
ご覧のとおり、多くのの業種において許認可が必要なことがお分かりになるかと思います。ご自身の業種が何に該当するかを把握し、行政機関から許認可を取得するようにしましょう。
許認可が不要な業種の例
例えば学習塾や通信販売業、ネイルサロン、リース業、コンサルティング業などは、許認可不要で営業することが可能です。また、面積が500平方メートル未満の駐車場経営に関しても、基本的には国土交通省や地方自治体の許認可を受ける必要はありません。
なお、許認可が必要かどうかは、法改正などによって変わることがあるので注意が必要です。今までは許認可が不要だった業種も安全性などが見直されて許可・認可の申請が必要になったり、反対に、今までは許認可が必須だった業種が許認可不要で営業できたりすることもあります。
ご自身が開業する業種が許認可が必要なのかどうかの最新情報に関しては、行政書士や税理士に尋ねてみましょう。
各種要件や手続き
続いて、各業種の許認可を取得するための要件及び手続きについて解説していきます。
届出が必要な業種
(1)探偵業
要件
事業開始の前日までに所轄警察署を経由して公安委員会に届出・受理されること。また、公安委員会から交付された探偵業届出証明書は、営業所の見やすい場所に掲示すること
手続き
事業開始届出を公安委員会に提出すること
参考:警視庁ホームページ |
(2)インターネット異性紹介事業
要件
事業開始の前日までに所轄警察署を経由して公安委員会に届出・受理されること
手続き
事業開始届出を公安委員会に提出すること
参考:警視庁ホームページ |
(3)理美容業
要件
理容師又は美容師の有資格者がいること。また、事業を行う施設についても設備要件を満たす必要があり、事業開始前に都道府県の検査を通る必要あります
手続き
理容所又は美容所の開設届出を添付書類と併せて提出します。なお、届出には手数料が必要になるので留意しましょう
参考:市役所ホームページ |
(4)クリーニング店
要件
クリーニング師の有資格者がいること。また、事業を行う施設についても設備要件を満たす必要があり、事業開始前に都道府県の検査を通る必要あります
手続き
保健所を経由して都道府県に添付書類を併せて届出を行うこと
(5)マッサージ業
要件
治療目的で施術を行う内容のものについては、その内容に応じた資格者がいること(それ以外の整体や足つぼについては資格を要しない)
手続き
事業所開設後、10日以内に添付書類を添えた開設届を保健所に提出すること
参考:横浜市保健所 |
(6)有料駐車場業
要件
設置する駐車場が特定の条件(広さ等)に該当する場合は、事前に設置駐車場の施設要件を満たす必要があること
手続き
設置駐車場の所在地の市区町村に路外駐車場設置届出書を関係図面等を添えて事前提出すること
参考:中野区 |
登録が必要な業種
(1)旅行業・旅行代理店業
要件
第1種~3種に応じた旅行業務取扱管理者の選任や資産要件(営業保証金及び基準資産)を満たすこと
参考:国土交通省 |
手続き
本店所在地の住所が属する都道府県に新規登録申請書を添付書類を添えて提出すること
参考:東京都 |
(2)ペットショップ
要件
事業所毎に常勤職員の中から専属の動物取扱責任者を選任すること
手続き
営業開始前に申請書を添付書類を添えて都道府県に提出すること
参考:東京都 |
(3)貸金業
要件
貸金業務取扱責任者の選任、また、営業所や固定電話を設置していること
手続き
営業開始前に申請書を添付書類を添えて都道府県に提出すること
参考:東京都 |
(4)電気工事業・解体工事業
要件
実務経験のある主任電気工事士や解体工事施工技術管理者の選任、営業所を設置していること
手続き
営業開始前に申請書を添付書類を添えて経済産業省又は都道府県に提出すること
参考:経済産業省 |
(5)ガソリンスタンド
要件
品質管理者の選任、法令上の施設要件を満たしていること
手続き
営業開始前に揮発油販売業登録申請書を添付書類を添えて都道府県経由で経済産業省に提出すること
参考:経済産業省 |
(6)倉庫業
要件
倉庫管理主任者の選任、物件の施設要件を満たしていること
手続き
営業開始前に申請書を添付書類を添えて所轄の運輪局に提出すること
参考:国土交通省 |
認可が必要な業種
(1)警備業
要件
警備業の区分に応じた警備員指導教育責任者が常駐すること
手続き
営業開始前に申請書を添付書類を添えて所轄の警察署に提出すること
参考:警視庁 |
(2)自動車運転代行業
要件
安全運転管理者等を選任していること
手続き
営業開始前に申請書を添付書類を添えて所轄の警察署に提出すること
参考:埼玉警察署 |
(3)自動車分解整備業
要件
整備主任者及び自動車整備士の選任、作業所の設備・施設要件を満たしていること
手続き
営業開始前に申請書を添付書類を添えて所轄の運輪局に提出すること
参考:国土交通省 |
(4)保育所
要件
認可保育所を設置する市町村及び都道府県への事前協議、乳児室等の施設要件を満たしていること
手続き
営業開始前に設置認可申請書を添付書類を添えて都道府県に提出すること
参考:神奈川県 |
(5)私立学校
要件
所定の施設及び設備を整備していること
手続き
営業開始前に学校設置計画承認申請書を添付書類を添えて都道府県に提出すること
参考:茨城県 |
許可が必要な業種
(1)リサイクルショップ・古本屋などの中古品販売、中古自動車販売
要件
古物商の許可を受けていること
手続き
営業開始前に許可申請書を添付書類を添えて所轄の警察署に提出すること
参考:警視庁 |
(2)パチンコ店・麻雀店・ゲームセンター・キャバクラ・バー等の風俗業
要件
業種毎に定めらている設備要件等を満たすこと
手続き
営業開始前に許可申請書を添付書類を添えて所轄の警察署に提出すること
参考:警視庁 |
(3)質店
要件
営業所および保管設備の設備要件を満たすこと
手続き
営業開始前に許可申請書を添付書類を添えて所轄の警察署に提出すること
参考:神奈川県警察 |
(4)飲食店・喫茶店・弁当販売などの飲食店業
要件
食品衛生責任者の有資格者がいること、営業所の施設要件を満たしていること
手続き
営業開始前に許可申請書を添付書類を添えて所轄の保健所に提出すること
参考:東京都保健所 |
(5)菓子・パン・惣菜などの食品製造業
要件
食品衛生責任者の有資格者がいること、営業所の施設要件を満たしていること
手続き
営業開始前に許可申請書を添付書類を添えて所轄の保健所に提出すること
参考:東京都保健所 |
(6)薬局・ドラッグストア
要件
薬剤師の有資格者がいること、営業所の施設要件を満たしていること
手続き
営業開始前に許可申請書を添付書類を添えて所轄の保健所に提出すること
参考:東京都保健所 |
(7)ホテル・旅館
要件
構造設備等が法令上の要件を満たしていること
手続き
営業開始前に興行場営業許可申請書を添付書類を添えて所轄の保健所に提出すること
参考:東京都保健所 |
(8)病院・診療所
要件
医師の有資格者がいること、病院・診療所の施設要件を満たしていること
手続き
開設後、10日以内に開設届を所轄の保健所に提出すること
参考:東京都保健所 |
(9)介護事業
要件
法人格を有していること、提供する介護サービス毎の人員・設備基準等を満たしていること
手続き
営業開始前に許可申請書を添付書類を添えて都道府県に提出すること
参考:東京都 |
(10)建設業
要件
専任技術者及び管理者(建設業の経営経験者)の選任、人員・設備基準を満たしていること
手続き
営業開始前に許可申請書を添付書類を添えて都道府県に提出すること
参考:国土交通省 |
(11)労働者派遣業・職業紹介業
要件
営業を行うために必要な講習の受講実績、資産要件を満たしていること
手続き
営業開始前に許可申請書を添付書類を添えて所轄労働局に提出すること
参考:東京労働局 |
(12)タクシー業
要件
事業用自動車や営業所が存在する土地・建物について使用権原を有している、営業区域内において定めらている最低車両数を確保していることなど
手続き
営業開始前に許可申請書を添付書類を添えて所轄運輪局に提出すること
参考:国土交通省 |
(13)運送業
要件
原則、車庫及び休憩施設が営業所に併設している、車両数5台を確保していることなど
手続き
営業開始前に許可申請書を添付書類を添えて所轄運輪局に提出すること
参考:国土交通省 |
免許が必要な業種
(1)酒類の製造業・販売業・卸業
要件
酒類の品目別に、製造場毎の免許を受けること
手続き
営業開始前に免許申請書を添付書類を添えて所轄税務署に提出すること
参考:国税庁 |
(2)不動産業
要件
宅地建物取引主任者の有資格者がいること、施設要件等を満たすこと
手続き
営業開始前に業態毎に必要な免許申請書を添付書類を添えて都道府県に提出すること
参考:国土交通省 |
許認可を得るためには、業種毎の要件や手続きをしなければなりません。ご自身が行う事業に許認可が必要な場合はこれらの手続き等を忘れずに行うようにしましょう。
許認可申請を突破するために求められる要件
許認可を取得するためには様々な要件をクリアする必要があることは前述したとおりですが、具体的にどういった要件があるのでしょうか。人・物・金に関するものがほとんどですが、中には場所や施設の要件が必要になってきます。
ここでは、許認可を得るために必要な要件について詳しく解説します。
人的要件
まずは「人」に関する要件です。例えば、診療所を開設する場合は管理者に医師が就任する必要があります。このように、一定の有資格者や業務経験者を営業所等に配置することを要件としているものを「人的要件」といいます。
物的要件
必要な備品等が営業所に備え付けられることが要件となっているもののことを「物的要件」といい、例えば介護事業を行う場合には、事務所に事務机や椅子を備え付ける必要があります。
場所的要件
営業所等が一定の場所に存在したり、特定の施設等から一定の距離を置かなければならなかったりする要件のことを「場所的要件」といいます。
施設要件
一定の施設を営業所に併設・保有等していることが要件となっていることを「施設要件」といいます。例えば、タクシー業であれば車庫や休憩室が営業所に併設されていることが施設要件になっています。
金銭的要件
業種の中には許認可を得るために、事業運営するための資金を要件としているものがあります。これを「金銭的要件」といい、旅行業・旅行代理店業などの要件とされています。
許認可申請を専門家に依頼する場合
許認可が必要な業種で事業を始める場合には、会社設立と許認可申請の両方の手続きが必要になります。いずれの手続きも不備があると受理されないため、法律の専門家に相談したほうがよいでしょう。
許認可申請の専門家は行政書士ですが、会社設立に強い税理士がまとめて対応できることもあります。税理士は税関係の法律改正の事情に明るく、会社設立に欠かせない資金調達方法などに精通している方も少なくありません。また、行政書士とのダブルライセンスの方も比較的多いため、行政関係・税関係を区分けせずにワンストップで依頼しやすい点も特徴です。まずは税理士に相談し、会社設立と許認可申請の手続きを同時に進めていきましょう。
まとめ
国民の安心安全を守るためにも、そして、事業者として社会的信用を得るためにも、必要に応じて許認可を受けることは不可欠な法的行為です。
しかし、事業を開始する際には必要な手続きも多くなり、許認可申請に多くの時間を割くことが難しくなるかもしれません。さらに、申請が受理されない場合は、何度も関係省庁や自治体の役場に足を運ぶことになります。このような状態を避けるためにも、許認可申請や会社設立の手続きは専門家に依頼し、書類がスムーズに受理されるようにしておきましょう。
また、許認可の基準は変わることがあるという点にも注意が必要です。税理士などの法律の専門家に依頼すれば最新の基準について紹介してもらえるため、営業開始に必要な許認可を過不足なく受けることができるでしょう。
監修税理士のコメント
風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川
この記事を監修した税理士
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