「昔からの夢だったカフェを開きたい」「会社に縛られない働き方をしたい」と考えて、開業を検討している方もいらっしゃるのではないでしょうか?ただ開業に際し開業資金はいくらかかるのか、資金はどのように調達すればいいか、といった疑問は尽きませんよね。
当記事では「開業するにはどのくらいお金が必要なのか」を始め、独立する際に必要な開業資金について解説します。資金調達方法や融資の種類もご紹介しますので、開業を検討している場合はぜひ最後までご覧ください。
この記事の監修税理士
越智聖税理士事務所 - 愛媛県松山市天山
開業に必要な資金とは
開業に必要な資金とはその名の通り、「事業開業に伴って使うお金」を意味します。たとえば店舗開業だとテナントの敷金・礼金や机・椅子代、各種設備代がそれに当たり、自宅開業だとパソコンやWebページのサーバー・ドメイン代が該当します。
開業資金は設備費だけでなく、運転資金や予備資金も考えなければ事業を続けられません。まずは開業資金の基本を押さえつつ、「開業資金はゼロでも大丈夫か」や運転資金、予備資金等について解説します。
開業資金は0円でも平気?
結論から言ってしまうと、開業資金0円で事業を始めるのはほぼ不可能でしょう。正確には「始められるけど継続は無理」です。それは事業が軌道に乗るまでに消費する「運転資金」が関係しています。もし最初の設備投資が0円だったとしても、事業で利益を出さなければ以下のようなランニングコストの分だけ資金はどんどん減っていきます。
- リピーターが付いて安定した収入を得るまでの家賃や光熱費等の固定費
- 広告・宣伝を継続する資金
- 従業員に支払う給与関係 など
そもそもオンラインショップの開業でさえ、パソコン代を始めとする電子機器類や設備代がかかります。店舗代や改装費が必要な飲食店はさらに高額になるでしょう。売掛金・買掛金の複雑なやりくりも、余裕がないとサイクルをうまく回せません。事業継続を考慮すれば、元手ゼロスタートが非常にリスキーなのがわかります。
設備投資のための開業資金
設備投資のための開業資金とは、「事業開始時に最低限必要な設備代」と考えてください。具体的には以下の初期設備代があげられます。
飲食店
- テナントの敷金・礼金
- 不動産の仲介手数料
- 前払賃料 など
ネット系の起業
- パソコン代
- ドメイン・サーバー代契約代
- Webサイトの広告費 など
とくに店舗型の場合、店舗に壁紙やカーペットすらない「スケルトン」の状態だと多額の設備投資代が必要になります。元々内装や設備が整っている「居抜き物件」であっても、クリーニング代やお店の雰囲気を変えるリフォーム代がかかります。
開業前には「なにが必要でどれくらいの出費があるのか」のイメージを、業者見積もりや不動産会社への相談を通じてしっかり考えておきましょう。
定期的に費用が発生するものに備える運転資金
最初に投資する設備費用だけでなく、運転資金も考慮して開業を検討しましょう。運転資金とは物の仕入れや従業員への給料、家賃、サーバーの月額等の「事業の運営・継続にかかるお金」を指します。
飲食店・店舗型
- 食材費
- 人件費
- 光熱費
- お店に備えるWi-Fi・雑誌や新聞類
- 連絡・予約に関わる資金(電話回線・Webページにかかる分等) など
ネット系起業
- ドメイン・サーバーの月額
- パソコン等のメンテナンス費 など
とくに最初は利益が少ないと考えられるため、運転資金分だけ赤字になると予想されます。開業に必要な設備費だけでなく、日々減っていくお金も計算し調達しておきましょう。
事業に利益が出ない期間に備える予備資金
予備資金とは事業の経営で利益が出ない間、生活費や事業のランニングコストを補填するためのお金です。事業は決して計画通りに進むわけではありません。以下のような当面の生活や事業継続を保証するお金を必ず準備しておきましょう。
- 運転資金の補填
- 生活費
- 子供の教育費
- その他機器の故障や病気等、予期できない出費への備え
「絶対に成功するから!」と蓄えなく開業するのはおすすめできません。とくに家族や友人と協力して事業を行うときは、迷惑をかけないよう常にリスクヘッジを心がけてください。
開業に必要な資金の平均を業界別に紹介
開業前には、自分が始めようとする事業がどのくらいの資金を必要とするかを確認しておくことが大切です。必要な開業資金は事業によって開きがあります。店舗で運営する場合は賃貸料や設備費など、資金がより多く必要となるでしょう。
ここでは店舗を運営する事業とそうでないものに分け、業界別に必要な開業資金について紹介します。
店舗を運営する事業の場合
飲食店や美容院、ゲストハウス、コインランドリー、整骨院、接骨院など店舗を運営する事業の場合、店舗の借り入れなどに必要な費用が一番大きな割合を占めます。さらに店舗として体裁を整えるためのリフォームや設備も必要な場合、その費用も大きな額になるでしょう。
具体的に必要となる費用を以下にあげますので、開業時の参考にしてください。
- 物件を取得する費用:保証金(敷金)、礼金、仲介手数料、前家賃など
- 店舗に投資する費用:内装費、外装費、備品代、販売促進費、人件費など
店舗を家賃10万円で借りるケースを例に説明します。保証金の相場は家賃の10ヶ月分のため、家賃10万円の店舗であれば100万円必要です。礼金と仲介手数料は各1ヶ月分の10万円ずつになります。家賃は翌月分の家賃を当月中に支払うのが一般的なため、借り入れた当月(借りる日によっては日割りになる場合もある)と翌月分を合わせた2ヶ月分が必要です。つまり、家賃10万円の場合では合計140万円を用意しなければなりません。
店舗に必要な設備投資費用も、お店の種類や物件の広さなどで金額にかなりの差が生じるでしょう。業種によっては高額な設備が必要な場合もあり、事業展開の規模やフランチャイズの有無によっても変わります。
日本政策金融公庫総合研究所の「2020年度新規開業実態調査」によると、開業資金の平均額は989万円です。500万円未満の割合が43.7%と最も高く、次いで500万~1,000万円未満が27.3%という結果が出ています。
業界ごとに必要な開業資金の平均額は次の通りです。参考にしてみてください。
業界 | 開業資金の平均額 |
医師開業(歯科医院・クリニック) | 1億~1億5,000万円 |
美容院 | 1,200万~2,000万円 |
カフェ・喫茶店 | 1,000万円前後 |
飲食店(居酒屋・焼き鳥屋など) | 200万~1,500万円 |
お店(アパレル・雑貨関係など) | 300万~1,000万円 |
エステサロン・ネイルサロン | 200万~300万円 |
学習塾 | 200万~1,000万円 |
士業(税理士・行政書士・社労士等) | 50万~100万円 |
店舗がない事業の場合
近年はオンラインショップなど、店舗がない事業も増えています。開業資金の多くを占めるのは物件取得費用や設備への投資であるため、店舗がない事業の場合は店舗がある場合と比較すると、かなり開業資金の費用を抑えることが可能です。
オンラインショップの開業資金は平均10〜50万円なので、店舗がある場合に比べると金額を抑えられます。ただし事務所を構えるのに必要な物件取得費等がかからないとしても、パソコンや電話、FAXなどの通信機器、コピー機やプリンターなどの事務用品費などが必要になるでしょう。
また、宣伝広告費は店舗がある場合と同様に必要です。その他にも商品の仕入れ費や製品の開発費、移動費などが発生する場合は、その金額も考慮してください。
コンサルティングや士業など個人で事務所を開く場合
コンサルティングや士業などは、自宅で開業する場合も少なくありません。その場合は店舗がない事業と同じく、開業資金の平均額は10〜50万円程度と少なく抑えられるでしょう。
ただし、士業の場合は登録にかかる費用や会費(弁護士会、税理士会など)も必要になります。また事務所を別途借りる場合は、店舗がある事業と同じく物件取得費や事務所への投資費用も必要です。
開業に必要な資金を計算しよう
事業の開業資金について大体のイメージがつかめたら、実際にいくらかかるのかを計算してみましょう。まず必要になる設備の項目を洗い出し、金額の大きいもの、こだわりのあるものから重点的に検討します。
事業を成功させるためには、費用対効果も考えながらリスクを最小限に抑えた投資をすることが大切です。どうしても投資が必要なもの以外は、以下の観点からよく考えて投資の是非を判断しましょう。
- 設備を導入したら生産性や作業効率が上がるのか
- 店舗リフォームによる顧客満足度の向上が売上やブランド力アップにつながるか
- 最新の機械を入れたとしても本当に事業との相乗効果があるのか
- 考えている投資計画は今すぐ取り掛かるべきなのか後回しでもよいのか など
必要な設備投資の項目と金額を揃えたら、物件取得費用と合計してください。
開業資金は予想外に費用がかかりやすく、必要な資金項目を見落とす可能性もあります。そのため、すでに事業を始めている知り合いの同業者からアドバイスを受けるのもおすすめです。
開業資金を調達する方法
開業資金の金額を確認できたら、実際に調達する方法を考えます。自己資金でまかなうのが理想的ですが、高額な場合は全額を自己資金でカバーするのは難しいでしょう。不足する場合は他の調達方法を検討しなければなりません。代表的な資金調達の方法としては、創業融資を受けることが挙げられるでしょう。その他にも補助金やクラウドファンティングなど、さまざまな選択肢があります。
ここでは、自己資金になるものの種類や創業融資など外部からの資金調達について紹介しましょう。
自己資金
開業資金としてまず考えるのが、自己資金です。自己資金は自分で蓄えたものなど自分自身のお金のため利子は発生せず、安全な資金調達方法と言えます。
後述する新創業融資制度を受けるための条件にも関係するので、開業を目指すならばある程度の自己資金は用意しておくことが大切です。では、自己資金はどのように準備するのでしょうか。貯蓄をはじめとする自己資金の調達方法をご紹介します。
貯蓄
自己資金の代表的なものは貯蓄です。開業を決めたら、まず貯蓄を始めましょう。融資を受ける場合でも、自己資金が多いほど有利になります。
貯蓄額や貯蓄の内訳は、創業融資を受けられるかどうかの判断材料の1つです。融資の際は配偶者や子ども名義の通帳も自己資金として認められますが、逆にお金の流れが記録されていないタンス預金は認められないことが多いです。
退職金
会社を退職して独立開業する場合、退職金を自己資金に充てることもできます。退職金の支払い時期は法的に定めがないため会社によって異なりますが、一般的には退職後1〜2ヶ月で支払われるケースが多いです。
開業資金に退職金も含めるつもりなら、会社に退職金が振り込まれる時期を確認しておきましょう。
株式や投資信託の売却
株や投資信託を保有しているならば、売却して自己資金にする方法もあります。開業を決めたら、相場を見ながら有利なタイミングを見計らって売却するといいでしょう。
保険の解約
生命保険を解約して資金を作ることもできます。しかし、契約によってはこれまでかけてきた保険料よりかなり減額する可能性もあるため、慎重に検討しましょう。解約せずに、解約返戻金の7~9割を上限に借り入れができる契約者貸付制度もあります。加入時のパンフレットや契約書などを見直してみましょう。
不動産売却
土地など不動産を所有している場合、売却して自己資金にするという選択肢もあります。実際に買い手が見つかり代金を取得するまでに時間がかかるため、早めに計画を立てることが重要です。
贈与
親族などから贈与を受けて自己資金にすることもできます。しかし、融資を受ける予定がある場合は、借入金ではなく贈与を受けたという証明が必要です。借入金とみなされると自己資金としては認められず、融資額に影響が出てしまいます。融資を受ける予定なら、借入金ではないことを証明するためにも、しっかりと贈与契約書を作成しておきましょう。
また、贈与の場合は110万円以上になると贈与税がかかります。課税を避けたいのであれば、会社設立後に株主として出資してもらうのも一つの方法です。
贈与額が大きすぎると自己資金と判断されず、融資の際に信用が得られないケースも存在します。肉親以外からの贈与の場合は、そもそも自己資金として認められない場合も多いため、創業融資を検討する際は注意してください。
創業融資
創業融資とは、国や自治体から受けられる公的融資です。銀行や信用金庫など民間から融資が受けられず、自己資金だけでは起業・独立・開業等の創業費用をまかなえないときに利用できます。主な創業融資には「日本政策金融金庫」と「制度融資」からの借り入れがあります。
日本政策金融金庫
日本政策金融金庫からの創業融資は、「新創業融資制度」が該当します。日本政策金融金庫とは、国が100%出資し運営している銀行です。「地域活性化への貢献」を1つの目標と掲げ、中小企業・小規模企業の成長や安定化を支援しています。
その一環として、「新しく事業を始める方」「事業開始から間もない方」が無担保・無保証人で利用できるのが新創業融資制度です。一定の条件を満たすことで、最大3,000万円(設備資金1,500万・運転資金1,500万)の融資を受けられます。新創業融資制度を受けるための条件は、以下の3つです。
- 事業開始から2期経っていない方
- 「雇用を創出する事業を始める方」「現在勤めている企業と同業種の事業を始める方」「認定特定創業支援等事業を受けて始める方」「協調融資を受けて始める方」等の要件に該当、もしくは本制度の貸付金残高が1,000万円以内の方
- 新しく事業を始める、事業開始から1期以上経っていない方は創業資金総額の10分の1以上の自己資金が確認できる方
また創業融資ではないものの、「中小企業経営力強化資金」という類似した融資制度との併用も可能です。さらに新創業融資制度が受けられれば信用度が上がるため、民間の融資が通りやすくなるメリットもあります。
都道府県や市町村区などの制度融資
都道府県や市町村区が行っている「制度融資」も、創業融資制度の1つです。こちらは「金融機関」「信用保証協会」「自治体」の3つが協力して、開業する方をサポートします。
信用保証教会 | 信用度が低い開業者の代わりに、金融機関に保証を担保する。万一開業者の融資返済が滞った場合は、代わりに融資の返済を行う。 |
金融機関 | 信用保証協会の保証を確認した後、開業者に融資を行う。 |
自治体(都道府県・市町村区) | あなたの代わりに信用保証協会に支払う保証料を補填したり、金融機関に融資資金利子の補給をしたりする。 |
都道府県や市町村区が利子・保証料をまかなうことで、あなたは金融機関から融資を受けることができます。さらに制度融資は金利が低いというメリットも。しかし「審査が厳しい」「融資実行に時間がかかる」「融資額の半分以上の自己資金が必要」「連帯保証人のサインが必要」等のデメリットも存在します。
補助金・助成金
国や自治体は制度融資以外にも、補助金や助成金という形で事業主のバックアップを行っています。補助金・助成金は融資とは違い、基本的に返済しなくていいのが大きなメリットです。2つの資金調達制度には、それぞれ支給目的や受給条件に違いがあります。
補助金 |
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助成金 |
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いずれも後払い形式なので、資金繰りの際には注意しましょう。
補助金
補助金は国のさまざまな政策目標を達成するための制度です。その性格上、国の政策に合った事業を実施する小規模事業者を対象に交付されます。
補助金は目的に合致しているかどうかの審査があるため難易度は高めですが、助成金と比較すると支給額が大きいです。開業する時には補助金を検討してみましょう。
開業資金になる主な補助金として、次のようなものがあります。
- 創業補助金:新しいニーズ・雇用を創出し地域活性化させる事業者に、創業時の費用を一部支給する
- 事業承継補助金:事業を引き継いだ小規模事業者等が行う承継後の新しいチャレンジを応援するために支給する
- ものづくり補助金:中小企業等による生産性向上に役立つ革新的サービスや試作品開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資を一部支給する
- 小規模事業者持続化補助金:小規模事業者の地道な販路開拓などの取り組みを対象に支給する
助成金
助成金は厚労省が管轄し、雇用の確保や労務環境の整備・改善の推進をサポートすることを目的とした支援金です。受給難易度は補助金と比べ易しいですが、金額は補助金の方が高額になります。受給には「労働・社会保険の手続き」「法律上必要な帳簿等の整備」「適正な労務管理」のクリアが必要です。主な助成金は以下の通りです。
- 特定求職者雇用開発助成金:就職困難者(高年齢層・障害者)を継続して雇う事業主に対する助成金
- トライヤル雇用奨励金:職歴やスキルが要因で安定した雇用が困難な求職者を一定期間試行雇用した事業所に対する助成金
- 三年以内既卒者等採用定着奨励金:既卒者・中退者が応募可能な求人を出し、一定期間定着させた事業者に対する助成金 など
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネットを利用し個人から寄付金のような形でお金を集める、比較的新しい資金調達方法です。基本的には「ギブアンドテイク」の形式を取り、支援者に対してサービスや商品を提供します。一般的な「購入型」の他に「寄付型」「株式型」などが存在します。
個人で集められるメリットがありますが、多額の資金が集まりにくいのが難点です。また目標額に到達するまでの時間が読めず、結果的に資金調達手段としては時間がかかります。あくまで補助的な役割で利用するとよいでしょう。
ビジネスローン
ビジネスローンとは、個人事業主や中小企業経営者を対象にした「事業性の無担保ローン」です。事業性融資への使用を前提としているため、個人的な出費には利用できません。銀行だけでなく、お金の貸し出しに特化した「ノンバンク系」事業でも取り扱っています。
ビジネスローンの融資の決定は「スコアリングシステム」が採用され、利用者の収益性・安全性・返却可能性などを考慮して審査されます。ちなみに政府系金融機関「商工組合中央金庫」にも事業性の無担保ローンがありますが、ビジネスローンとはまた異なるものです。
ビジネスローンのメリット
ビジネスローンを利用するメリットは主に以下の通りです。
- 審査時間が短くすぐに融資を受け取れる(3日以内もしくは即日)
- インターネットやATMで申込みが完結できるケースもある(店舗への来店が不要)
- 担保や連帯保証人なしで融資を受けられる
- カードローンと違い総量規制が存在しない(500万円~1,000万円前後が一般的)
もしすぐに融資が必要なときや担保・保証人が見つからないときは、ビジネスローンの利用をおすすめします。
ビジネスローンのデメリット
ビジネスローンを利用する最大のデメリットは、金利が非常に高いことが挙げられます。5~18%が相場となっており、制度融資等の公的融資相場の1~2.5%と比べても高金利です。また、最大借り入れ額も公的融資の方が高く設定されています。
ファクタリング
ファクタリングとは売掛金(未回収金)や手形債権(受取手形)といった「売掛債権」を、ファクタリング業者に買い取ってもらうことです。たとえば納品した製品分5万円の売掛金がある場合、ファクタリング業者に一度購入してもらうことで素早く5万円近くの資金調達ができます。入金の前倒しなので、借入金のような返済が発生しません。
ただし、ファクタリング業者への手数料を支払う必要があります。手数料は最高でも30%前後となるため、よほど急な資金繰りが必要でない限りは利用前に検討しましょう。
個人投資家(エンジェル投資家)
自己資金が少なく、融資の審査もなかなか通らないという場合は、個人投資家(エンジェル投資家)から開業資金の援助を受けるという方法もあります。個人投資家からは大型の援助を受けることも可能で、返済の必要はありません(株式の場合は配当などは必要)。
個人投資家は経営の経験がある人物も多く、起業についてのアドバイスを受けることもできます。人脈が豊富な個人投資家であれば、紹介をしてもらい新たな人脈を築くこともできるでしょう。
ただし、個人投資家には株式を譲渡する必要があるため、経営の決定権を握られるというデメリットがあります。個人投資家は出資先の会社の成長を期待して投資するため、経営に介入してくる場合も少なくありません。思い通りに事業を進めることができなくなる可能性もあるでしょう。
フランチャイズの場合の融資
フランチャイズの場合、新規の加盟者に対して本部から融資を行う制度を設けているところは少ないです。
自己資金が少ない場合は、他の事業と同様に日本政府金融公庫や銀行からの借り入れなどを行うのが一般的になります。フランチャイズの中には事業計画書作成のサポートなどを行なっているところもあるため、相談してみるとよいでしょう。
金融機関の審査では、大手など実績のあるフランチャイズでの開業なら、融資が通りやすい可能性があります。
しかし、業績に不安がある、実績が少ないなどのフランチャイズでは審査に通らない可能性もあるため、開業資金で銀行融資を検討する場合は、加盟するフランチャイズの業績なども考慮する必要があります。
開業したものの資金不足になってしまった時の対処法
張り切って開業したのはよいものの、なかなか計画通りに進まず資金繰りに苦労することも考えられます。もし事前に用意していた開業資金が足りなくなったら、以下で紹介する資金調達方法を試してみてください。
追加融資で資金を増やす
追加融資(2回目以降の融資要請)での資金繰りは可能です。追加融資は民間だけでなく、日本政策金融金庫の融資や地方銀行・信用金庫の制度融資でも受けられます。ただし審査には創業融資の審査基準である「可能性」「経営者の能力」より、「現在の事業実績」が重要視されます。具体的には以下の実績がポイントになるでしょう。
- 延滞なく順調に融資の返済ができているか
- 決算書で事業利益をあげているか(事業は順調か)→初年度の赤字の理由を明確にし、来年度の黒字化に向けた具体的な対策を入れた事業計画書作成
- 創業から1期終えているか
- 申告書作成や決算、納税を問題なく終えているか
とくに日本政策金融金庫の融資は実績を上げていれば、追加融資が出やすいです。「経営環境変化対応資金」がこれに当たります。返済期間は設備資金が15年内、運転資金が8年以内と余裕がありおすすめです。
追加融資ができないときはリスケジュール
「経営が厳しい」「事業に少し失敗している…」等、実績が不十分だと融資が受けられない可能性があります。もし追加融資が厳しいと判断したときは、リスケジュール(返済の先延ばし)を検討しましょう。リスケジュールする場合は、以下の点に注意してください。
- リスケジュール中は追加融資が受け取れない
- リスケジュールする代わりに「自力で事業を軌道に乗せる具体的な計画」を立て計画書を提出する
- リスケジュールは思い切って一旦返済額をゼロにしてもらう(金融機関側から少額返済の打診があっても、企業の立て直しを優先したほうがお互いのためであるから)
青色申告を有効活用! 節税して来季につなげよう!
事業の開始日から2ヶ月以内に青色申告承認申請書を提出していれば、青色申告での確定申告が可能です。青色申告のメリットは以下の通りです。
- 「今年度の赤字を繰り越し来年度の黒字で相殺」「昨年度の黒字で今年度の赤字を相殺」ができる
- 開業に伴い発生した費用を経費にできる
- 最大65万円の控除が受けられる
- 減価償却の特例が受けられる
とくに事業初年度だと「開業に伴う費用を経費にできる」は非常に大きなメリットです。場合によっては営業開始前にかかったコストである「開業費」も経費にできます(目安として1年前まで)。青色申告の開業費として経費にできるのは、以下のものが挙げられます。
- 開業前に買った10万円以下のパソコン
- 事務所・店舗の家賃
- 水道光熱費
- 電話・インターネットにかかる通信費
- 事務用消耗品費 など
事業計画書を作成し客観的に事業を見直す
「不必要な出費はないか」「経費にできる人件費や広告費はないか」など、一度事業計画書を作成し客観的に見直すことで、今後の収益見込みや経費削減計画を練り直せます。事業計画書は追加融資の際も提出が必要なため、効果的な作り方をあらかじめ確認しておきましょう。以下の要素を盛り込むことをおすすめします。
会社概要 | 個人事業主の場合は自分自身の経歴。自身のキャリアやスキル、創業の目的など自己プロフィールや履歴書的な意味合いが強い。 |
ビジネスプランの説明 | 具体的なサービスや商品、どう売り込むかの説明。事業計画や最終目標、将来的な展望の構想を盛り込む。 |
市場や競合分析 | 市場規模・成長性・競合の有無や優位性を知らせ、将来的な成功をアピールする。 |
設備資金と運転資金の内訳 | 具体的な開業資金の額。どれくらいの費用が必要になるのか。 |
収支計画 | 損益計算書予想。売上や経費を見込んで利益を予測する。3年間の収入と支出。 |
資金繰り | どうやって資金を調達するか、どのように使っていくかなどのキャッシュフローがベース。 |
マイルールを作成する
公的な決まり事でない「自分が守ると決めたマイルール」の設定は重要です。たとえば「貯金が80万円を下回ったら正社員になる」等を決めておきましょう。資金調達とは違いますが、赤字で借金を背負わないためには必要なブレーキ要素です。
それに完全に事業を畳む必要はなく、「副業にまわす」という働き方も可能です。こうした考え方を頭の片隅置いておけば、追い詰められてパニックになる事態を防げます。万が一のリスクヘッジに、マイルール作成は効果的と言えます。
開業する前に必要な開業資金を把握して資金不足を防ごう!
どんな事業でも開業するには「開業資金」が必要です。開業資金ゼロで起業できるほど甘くはなく、事前の資金調達が非常に重要になります。設備投資以外にも事業継続に使う「運転資金」や、生活費・予期せぬ出費を補填する「予備資金」も考慮すべきです。未来のお金の動きを予測した行動を取ってください。
ただ「どれくらいお金がかかるのか目処がつかない」「なにが経費でなんの科目なのか複雑でわからない」など、開業初年度は収支・税金について頭を悩ませることは多くなるでしょう。そんなときはミツモアで、「会社設立・企業開業に強い税理士」に依頼し相談することをおすすめします。
監修税理士のコメント
越智聖税理士事務所 - 愛媛県松山市天山
この記事の監修税理士
越智聖税理士事務所 - 愛媛県松山市天山
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