起業する際には資金が必要です。新しく店舗やオフィスを構えるのであれば、店舗や設備の機器を購入する必要がありますし、起業の前にはある程度の仕入れも行なっておく必要があります。
起業の際には多くの資金が必要になりますが、このような資金は全額自己資金で用意しなければならないのでしょうか?実際は起業時に必要な資金は、多くの人が借入によって調達しています。
本稿では起業資金の融資を受けるために重要なポイントについて詳しくみていきましょう。
この記事を監修した税理士
高崎文秀税理士事務所 - 東京都文京区本郷
起業融資を受ける前に知っておきたいこと
起業融資は普通の事業資金の借入とは異なります。通常の事業資金融資の審査では、これまでの事業の実績をもとに審査を行いますが、起業融資は実績がない起業家に対して融資を行うので、審査の基準が全く違うのです。
そのため「どこの金融機関からお金を借りるのか」が非常に重要になります。
そして起業融資は、通常の事業資金融資と比較して融資までに時間がかかるので、流れや必要書類を事前に把握しておくことも重要です。起業融資を受ける前に知っておくべきことを解説していきます。
起業時に融資を受けることは重要
「起業融資」いわゆる「創業融資」を受けることには、実は単にお金を借りるだけではない重要な意味とメリットがあります。
創業融資は計画に対して融資を受けるものですので、創業後に経営が軌道に乗らずに資金繰りに困った状況になって融資を申し込むよりも比較的借りやすいと言えるでしょう。借りやすいうちにお金を確保しておくことで、早期に資金繰りを安定させることが可能です。
また企業経営の中では、銀行との付き合いは長いものになります。創業時という会社のスタートから銀行に会社のことを知ってもらうことによって、新店舗出店などの事業拡大時に融資を必要とする場合でもお金を借りやすくなるというメリットがあります。
起業融資を銀行から受けるのは難しい?
起業融資を銀行から借りることは容易ではありません。
銀行は審査の際に、企業や個人事業主の決算書や確定申告書をもとに審査を行います。しかし営業活動が始まっていない状態で行う起業融資の審査は、決算書や確定申告がない状態で審査をしなければなりません。
銀行は融資したお金に利息つきで返済されて初めて収益が出ます。審査材料が何もない起業融資を、何の保証もないプロパー融資で行うことはまずありえないでしょう。
信用保証協会の保証がつけば起業融資を行うこともあります。ただし信用保証協会の保証を得ることは、よほど創業計画がしっかりとしていない限りは簡単ではありません。
では起業融資はどこで借りるのがよいのでしょうか?以下の項目で詳しく解説していきます。
起業時におすすめの金融機関
起業融資を受けたいのであれば日本政策金融金庫をおすすめします。
日本政策金融公庫は税金を原資として中小事業者へ融資を行う公的な融資機関です。今は国が創業を後押ししていますので、国の融資機関である日本政策金融公庫も起業融資を積極的に行っているのです。
その中でも新創業融資制度という制度は、新規開業者が非常に借りやすい融資制度で、主な商品概要は以下の通りです。
利用条件 | 次の1~3のすべての要件に該当する人
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資金の使いみち | 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金 |
融資限度額 | 3,000万円(うち運転資金1,500万円) |
ご返済期間 | 各種融資制度で定める返済期間以内 |
担保・保証人 | 原則不要
法人への融資の場合には、代表者が連帯保証人となることで利率が0.1%低減される |
原則無担保無保証で借りることができますので、有力な担保や保証人を用意することができないスタートアップでも、事業計画さえしっかりしていれば融資を受けることは可能です。
また現在の勤務先と同じ業種の事業を始める場合には、自己資金がなくても新創業融資制度の条件を満たしたことになるので、今の業種で独立を考えている人であればかなり借りやすい融資制度ということができます。
金利はどの制度で借りるのかによって異なりますし、日々変動するものですので詳しくは日本政策金融公庫ホームページで確認するようにしてください。
概ね2%前後の低金利で借りることができると考えて問題ないでしょう。
起業融資を受けるまでの流れ
日本政策金融公庫の起業融資を受けるまでのが流れは以下の通りです。
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1.インターネット、電話などで相談
まず最初にインターネットや電話で融資の相談を行います。なお相談は創業計画書を持参し、窓口へ行ったほうがよりスムーズで具体的に相談を行えるのでおすすめです。
2.日本政策金融公庫の審査担当者と面談
インターネットや電話で相談を行った後、日本政策金融公庫の窓口へ行き、審査担当者と面談を行います。その際は相談時に指示された創業計画書などの必要書類を持参してください。
面談では創業に至った経緯、創業計画の成功見込み、経営者としての人間性など、様々なことをチェックされます。審査担当者の質問にはできる限りスムーズに答えられるように準備をしておきましょう。
面談には1時間から2時間程度の時間がかかるので、時間に余裕をもっていくようにして下さい。
3.審査
面談が終わると日本政策金融公庫で審査が行われます。審査にかかる時間は1週間〜2週間程度で、審査結果の通知は原則電話です。
4.契約手続き
審査に通過したら、郵送か来店によって契約手続きを行います。契約には印鑑証明書や本人確認書類や商業登記簿謄本などが必要です。指示された書類を準備して日本政策金融公庫へ提出してください。
5.融資
提出した書類に不備がなければ、指定した銀行口座へ振り込みによって融資が行われます。
起業融資を受ける際の準備書類
日本政策金融公庫の起業融資に申込む際に用意する書類は以下の通りです。
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またこの他にも、「製品やサービスのパンフレットや会社案内」、「マスコミに取材された際の記事やDVD」、「会社員時代の実績を証明する書類」なども用意した方が審査には通りやすくなる傾向があります。
なお日本政策金融公庫の創業計画書は、以下のサイトからダウンロードすることができますので、一度確認してどんな内容を記載すべきか事前に把握しておくとよいでしょう。
一度事業に失敗しているとやり直せないの?
民間の銀行では、一度事業に失敗している人が起業融資を受けることは難しいといえるでしょう。
ただでさえ審査材料の少ない起業融資ですので、一度失敗したと分かっている人に対して融資をすることは、基本的に銀行が避ける傾向があるのです。
しかし国は再チャレンジを後押ししています。
そのため国の融資機関である日本政策金融公庫は「再チャレンジ支援融資」という制度を用意しており、廃業歴がある経営者がもう一度起業する際に必要な資金の融資も行っています。
廃棄の理由がやむを得ない理由であり、廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理されていれば、再チャレンジに必要な資金の融資を受けることが可能です。
一度失敗して再チャレンジのための資金が必要な場合にも、日本政策金融公庫へ相談してみるのがよいでしょう。
起業融資の審査に落ちてしまうポイント
起業融資の審査はしっかりとした事業計画さえ提出することができれば、それほど難易度は高くありません。
審査担当者が「この計画なら融資をしても返済に問題なさそうだ」と判断すれば、審査に通過できる可能性は十二分にあります。
一方で審査担当者が「この計画に融資をするのは危ない」と判断した場合、残念ながら審査に通過することは難しくなってしまいます。起業融資に失敗してしまう人にはどんな特徴があるのか理解し、できる限り起業融資の審査に落ちることを防ぐようにしましょう。
自己資金が少ない
自己資金が少ないと審査では確実に不利になるでしょう。
自己資金要件のない融資もあるので、日本政策金融公庫では自己資金なしでも起業融資を受けることもできます。しかし実際には、自己資金がなければ融資の審査に通る可能性がかなり低くなってしまうのです。
自己資金がないということは、借入金の額が大きくなり、毎月の返済額も大きくなってしまいます。どのくらいの収益が出るか分からない起業後まもなくの時期から、多額の返済に追われて返済が懸念されてしまうのです。
逆に自己資金が多ければ借入金が少なくなります。返済額も少額になるので、起業後間もなくでも返済の見込みがあると判断され、審査に通りやすくなるのです。
また創業に向けてコツコツ自己資金を貯めてきた人の方が、審査担当者から創業への本気度や計画性がある人と判断され審査にプラスになるという側面があります。
いずれにせよ、自己資金が少ないと起業融資の審査に落ちてしまう可能性が高くなってしまうのです。
実現性の感じられない事業計画書
起業融資で最も重要なのは事業計画書です。
実績が何もない人に対する融資ですので、いかに実現性が高く、説得力のある事業計画を立てているかどうかが融資の成否を大きく分けることになります。
事業計画書は短期的な資金繰りはもちろん、数年後の売上や収益の見込みも記載しなければなりません。この見込みの数値にはしっかりとした根拠をつけるようにしましょう。
市場動向や営業計画に基づいて「これくらい売上を拡大できる」という説得力のある計画を立てる必要があります。この事業計画書に計画性がないと判断された場合には融資を受けることはできません。
実現可能性の高い事業計画書は、日本政策金融公庫の担当者や商工会議所が作成を手伝ってくれます。まずは相談してみるとよいでしょう。
税金などの滞納履歴がある
融資を受ける際には税金の納税証明者の提出が必ず必要になります。この際に税金の未納があると絶対に融資を受けることはできません。
また過去に税金の滞納が見つかった場合にも、融資を受けることは難しくなってしまいます。
日本政策金融公庫や信用保証協会は税金で成り立っている組織ですので、税金を滞納している人が融資や保証を受けることは非常に難しくなるのです。
起業したい業界の経験がない
起業融資は起業に至るまでのプロセスが非常に重要です。独立前と独立後の業種が同じであれば審査に通過しやすくなります。
例えば「ラーメン屋で10年働き、のれんわけをしてもらうことになったので、独立のための資金を借りたい」という場合を考えてみましょう。この場合は業界に対する知識もノウハウも豊富なので、審査で「独立することに心配はない」と判断されやすいです。
ところがこれまで普通のサラリーマンだった人が、「独立してラーメン屋を開きたい」という場合はどうでしょうか。独立後の計画に大きな懸念を持たれてしまい、融資を受けることが難しくなります。
このように起業前にどんな業界にいたかは、審査で提出する事業計画書の信憑性に大きく関わります。
返済の根拠があやふや
金融機関は「融資したお金を返済してもらうことができる」という見込みがあるからこそ融資を行います。
ところが事業計画書に実現性がないと、返済をするための根拠が曖昧になり、「本当に返済できるのかが疑わしい」と判断されてしまいます。
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という根拠のあるストーリーがないと、返済に対する根拠があるとは判断されません。
事業計画書が「これくらいは売れるだろう」という曖昧な場合には、審査に通過できない可能性が高くなります。事前に業界動向をしっかりと調査し、根拠のある計画を立てましょう。
高額な融資希望額
あまりにも希望する金額が高額の場合にも審査に落ちやすくなります。
どれくらい収益を上げることができるかどうか不透明な人に対して高額の融資をしてしまったら、金融機関にとっては返済が危ぶまれます。
基本的に運転資金の場合には、500万円程度が借入限度額であると考えておいた方がよいです。また設備資金の場合にも、フルローンでは借入額が高額になりすぎるので、自己資金がないと借入が難しくなってしまいます。
事業計画書の中から無理のない返済額であると判断できる範囲内の借入額を希望するようにしましょう。
監修税理士のコメント
高崎文秀税理士事務所 - 東京都文京区本郷
まとめ|起業準備に不安があれば税理士にご相談を!
創業時の起業融資はこれまで何も実績がない状況ですので、銀行などの民間の金融機関では借りることが難しい資金です。
しかし日本政策金融公庫は起業を後押しするという国の方針に従い、積極的に起業融資を行なっています。日本政策金融公庫の審査に通過するためには、とにかく実現可能性のある事業計画書の策定が重要です。
審査に通過しやすい事業計画書は、商工会議所の創業セミナーや税理士などが作成を手伝ってくれることもあります。絵に描いた餅のように事業計画を立てるのではなく、しっかりと根拠をつけた事業計画書を作成するようにしましょう。
また自己資金があった方が審査に通過しやすいですし、自己資金があった方が借入後の返済も容易になります。勢いや場当たり的に独立するのではなく、長期的な計画を立てて、しっかりと貯蓄を行なった上で起業した方がよいでしょう。
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