「ツマアカスズメバチ」と呼ばれる蜂をご存じでしょうか?ツマアカスズメバチは2012年に日本で始めて確認された、特定外来生物です。この記事ではツマアカスズメバチの生息地域や、危険性、遭遇したときの対処法などについて紹介します。
ツマアカスズメバチの特徴
ツマアカスズメバチはどんな蜂?
ツマアカスズメバチは2012年に日本で始めて確認された、特定外来生物に指定されている蜂です。原産地はインドネシア、タイ、マレーシア、中国、台湾などアジアの比較的温暖な地域と言われています。
ツマアカスズメバチの体長は働き蜂で約20mm、女王蜂で約30mm程で、平均的なスズメバチの大きさです。足先は黄色、頭は黒色、そして腹部の先端にかけて(針がついている方)はオレンジ色をしています。「ツマアカ」という名前は、これらの見た目の特徴に由来しているそう。
またツマアカスズメバチの巣は、他のスズメバチ科と同じように、丸まった球状になることが多く、マーブル模様になっているのが特徴です。
ツマアカスズメバチは特定外来生物
ツマアカスズメバチは日本の特定外来生物に登録されています。おもに輸入貨物に混入して移入して、日本以外の各国でもすでに多くの被害を与えているのです。
特定外来生物とは「外来生物(海外起源の外来種)であって、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、又は及ぼすおそれがあるもの」を指します。
特定外来生物は「外来生物法」の中で、以下のいずれかに当てはまると、予防・駆除を行うことが定められているのです。
- 特定外来生物によって被害がすでに生じている場合
- 今後、特定外来生物によって被害が生じるおそれがある場合
またツマアカスズメバチは、日本の生態系に被害を及ぼす可能性がある外来生物をまとめた「生態系被害防止外来種リスト」にも名を連ねています。このリストのなかでも「緊急対策外来種」として登録されており、ツマアカスズメバチ予防・駆除は緊急性が高いのです。
ツマアカスズメバチを見かけたら
日本ではツマアカスズメバチの被害拡大を止めるべく、ツマアカスズメバチの目撃情報を求めています。ツマアカスズメバチを見かけたら、まずは地域の自治体に相談しましょう。
地方自治体や駆除業者によってツマアカスズメバチの巣が発見・駆除された場合には、環境省へ情報を提供するように呼びかけがおこなわれています。
またツマアカスズメバチのおもな分布地域では、自治体が主体となってツマアカスズメバチの目撃情報を要請していることも。
ミツバチ狩りで生態系と経済に影響
ツマアカスズメバチがエサにしているのは、ほかの昆虫類のタンパク質。捕食対象となるのはハエやトンボ、蝶など幅広い種類にまで及びます。そのため日本の生態系や経済に悪影響を及ぼすと言われているのです。
これらの虫が捕食されて数が減ると、ハエやトンボを食べていた虫のエサが減り、そして逆にハエやトンボに食べられていた虫の数が増えてしまうことに。このように生態系の変化が進行していくと、在来種が絶滅してしまう可能性もあります。
またツマアカスズメバチはミツバチが好物です。ミツバチが減ってしまうと養蜂家はハチミツを製造・販売することができなくなるので、経済的な被害をもたらすことになるのです。
すでに日本では、長崎県の対馬地域でツマアカスズメバチが繁殖しており、在来種であるニホンミツバチに減少が見られています。
ツマアカスズメバチの分布状況
国内分布
日本では2012年に始めて、長崎県対馬市で、ツマアカスズメバチの存在を確認しています。そして翌年の2013年には、対馬近隣からツマアカスズメバチの巣が見つかり、日本に定着したことが確認されました。
ツマアカスズメバチは、現時点では以下の地域で確認されています。
2012年10月 | 長崎県対馬市(初確認) |
2015年9月 | 福岡県北九州市 |
2016年5月 | 宮崎県日南市 |
2018年10月 | 大分県大分市 |
2019年11月 | 山口県防府市 |
ツマアカスズメバチは繁殖能力が非常に高く、日本国内で分布拡大するスピードもかなり早いのが特徴です。
海外分布
ツマアカスズメバチは海外では、韓国、フランス、ポルトガル、スペイン、ドイツなどに分布しています。
とくに韓国では、ツマアカスズメバチが在来種の蜂を上回る速度で繁殖し、生態系のバランスが乱れてしまった地域もあるほど。
また韓国の都市部では、電柱や公園、住宅周りに営巣されたという実例があります。ツマアカスズメバチは、人が多い地域でも巣を作るということです。
ツマアカスズメバチは拡散速度が速さが特徴。韓国では年間10~20km、そしてヨーロッパでは、年間100kmほどの速さで分布が拡大していると報告されています。
他のスズメバチとの違いは?
見た目での違い
ツマアカスズメバチの大きさはスズメバチ科のなかでも平均的です。しかし、見た目で見分けることができます。
ツマアカスズメバチの見た目は、頭が黒色です。ほかのスズメバチは頭が黄色~オレンジなので、比較的見分けやすい外見と言えます。
ただし例外として頭が茶色で全体的に赤褐色っぽいチャイロスズメバチや、黒と白の縞模様が特徴的なクロスズメバチもいるので、あくまで参考程度にしてください。
スズメバチの詳しい見分け方は以下の記事で解説しています。
巣の特徴
ツマアカスズメバチは他のスズメバチと異なり、巣を移動させる習性があります。
ツマアカスズメバチの巣は最初、草木の茂みなど、天敵が寄り付かないような低い位置に営巣します。
しかし働き蜂の数が増えてくると、より広い空間を求めて、地上5~30mの木の上など、高いところに巣を移動させるのです。韓国では20階建ての高層ビルに巣を作ったことも。
他のスズメバチの巣が作られる場所は、せいぜい家の軒下や木の枝など地上10m程の高さ。ツマアカスズメバチほど高いところに巣を作るのは、珍しいのです。
またツマアカスズメバチは移動したあとも、巣を大きくしていき、直径が1mを超えるサイズになっていきます。下にむけて巣を伸ばしていくので、少し縦長で涙の似た形になっていくのも特徴的です。
地上から15m以上の高所に、縦長で涙型の巣を見かけたら、それはツマアカスズメバチの巣かもしれません。
ツマアカスズメバチの攻撃性は?地域によって異なる?
科学的根拠はまだ解明されていませんが、ツマアカスズメバチの攻撃性は、生息地域によって異なると言われています。
インドネシアやタイなどの原産地では、非常に攻撃性が高いといわれています。しかし移入したフランスや日本のツマアカスズメバチは、在来種と比較しても特別攻撃性が高いというわけではありません。
たとえばオオスズメバチの場合は、巣から約10mほどの位置にいる相手に対しても警戒行動をします。一方で国内に生息しているツマアカスズメバチは、巣の下を人が通過する程度ではめったに攻撃しません。
ただし他のスズメバチと同じように、1度敵であると認識した相手には、繰り返し攻撃してくるので注意しましょう。
オオスズメバチと比べて毒性は?
スズメバチのなかでも、オオスズメバチの毒性が1番強いと言われています。
そこで「外来種であるツマアカスズメバチは、オオスズメバチより毒性が強いのだろうか」と疑問に思うかもしれませんね。
結論から言うと、ツマアカスズメバチの毒性は「オオスズメバチと比較すると弱い」といえます。とはいえ「スズメバチ」のなかでの比較なので、決して毒そのものが弱いというわけではありません。
また1匹あたりの毒性がいくら弱かったとしても、何回も刺されてしまうと、多くの毒量を注入されてしまいます。そうなると結局は重症化するリスクが高いので、注意してください。
オオスズメバチの特徴と対策については以下の記事で詳しく解説しています。
ツマアカスズメバチに刺されたらどうなる?
ツマアカスズメバチの攻撃性はそこまで高くありませんが、刺されるとアナフィラキシーショックを起こしてしまう可能性もあるため、注意が必要です。
万が一刺された場合は、応急処置と医療機関を受診しましょう。
刺されたときの応急処置
ツマアカスズメバチに万が一刺された場合、同じスズメバチ科に刺されたときと同じように応急処置を行い、医療機関で診てもらうことが重要です。
応急処置の方法は、他のスズメバチ科と同様なので、いざ刺されたときのために覚えておきましょう。
- 毒の被害を抑えるために、その場から離れる
- 針が残っているときは、指などで抜き取る
- 毒液を絞り出す
- 水で傷口を洗い流す
- 抗ヒスタミン剤を含むステロイド軟膏を塗る
- 刺された患部を冷やす
- 医療機関で診てもらう
スズメバチ科の蜂に刺されると、患部や全身に「痛み」や「腫れ」など軽度の症状がでることがあります。このような症状には痛みを軽減する作用があるステロイド剤が有効です。
応急処置を行ったあと、ただちに病院にいき、診てもらいましょう。
しかしたとえば「呼吸困難」や「意識がもうろうとする」といった症状が出た場合は、アナフィラキシーショックなどの可能性があります。最悪、死に至ることもあるため、様子がおかしいと感じたらすぐ救急車を呼びましょう。
ツマアカスズメバチの予防・駆除
危険な蜂の被害を抑えるためには、巣を作らせない
ツマアカスズメバチの被害を抑えるためには、巣を作らせないために予防しておくのが何よりの対策法です。これはツマアカスズメバチに限らず、他の危険なスズメバチに対しても有効なので、蜂が発生しやすい地域の方はぜひ参考にしてみてください。
ツマアカスズメバチを含むスズメバチの仲間は、春頃になると、女王蜂が単独で巣作りを開始します。そのため3~5月頃のうちに捕獲機を仕掛けておき、女王蜂を捕らえることができれば、蜂の巣が作られるのを予防できるのです。
スズメバチは天敵に見つかりにくい閉鎖的な環境や、雨風をしのげる場所に巣を作ります。家の近くの雑木林や森林に、捕獲機を設置しておきましょう。
捕獲機のほかには、殺虫剤や木酢液を散布しておくなどの方法が有効です。以下の記事では、蜂の巣予防の方法や、捕獲機を自作する方法を紹介しているので、あわせて参考にしてみてください。
ツマアカスズメバチをみかけたら自治体に相談し、駆除は業者に
蜂の種類によっては、自治体に相談すれば無料で駆除してもらえることがあります。ただし自治体によって対応は様々です。ツマアカスズメバチを見つけた際は、まずどうすればいいか、自治体に相談してみましょう。
「ツマアカスズメバチかどうか見分けが付かない」という場合でも、蜂や巣を見つけた場合はまず相談してみるのをオススメします。自治体によっては、助成金や補助金を支給している場合もあるからです。
蜂の無償駆除の制度がない場合は、駆除費用は自己負担になるかもしれませんが、業者に依頼して速やかに処理してもらいましょう。スズメバチは危険度が高いので、自分で対処するのはオススメできません。
スズメバチは一般的に、巣ひとつにつき10,000~15,000円で駆除してもらうことができます。料金について詳しい内容は、以下で紹介しているので、あわせてチェックしてみてください。
【まめ知識】ツマアカスズメバチの天敵、ハチクマ
ツマアカスズメバチにも天敵はいます。それは蜂を専門的に襲い、食べる「ハチクマ」という珍しいタカ(鷹)です。
ツマアカスズメバチは地上から約10m以上の高いところに営巣しますが、ハチクマは鳥なので、高さ関係なく攻撃することができます。
またハチクマは硬い羽や皮膚をもっています。そのためツマアカスズメバチの毒針も刺さらず、反撃ができません。
そして最終的にハチクマは、好物である蜂や巣の中にいる幼虫を食べ尽くしてしまいます。
ツマアカスズメバチは生態系などへの影響が問題視されている外来種なので、ハチクマに食べつくしてくれるのは良いことなのでは?と思いますよね。
しかしハチクマという種類自体も珍しいので、ツマアカスズメバチを食べつくすことはありません。
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ツマアカスズメバチのような攻撃性の高い蜂の巣を発見した場合、自力での駆除には危険が伴います。
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