日本には「ニホンミツバチ」という蜂が生息していますが、具体的にどのような蜂なのでしょうか。
今回は、ニホンミツバチの基本情報に触れつつ、同じく日本に生息しているセイヨウミツバチとの違いや養蜂する上でのポイントなどについて紹介します。
ニホンミツバチとは?
ニホンミツバチがどのような昆虫なのかをまず把握しておきましょう。他の蜂については関連記事をご覧ください。
ニホンミツバチの生態|属性、場所
ニホンミツバチはハチ目ミツバチ科ミツバチ属であり、東南アジア全域やパキスタンやアフガニスタンなどのエリアに生息している昆虫の「トウヨウミツバチ」の仲間だといわれています。
ニホンミツバチは日本に昔から生息している在来種で、狭いところに巣を作ります。具体的な場所としては、住宅の屋根裏や木の中、床下など。場合によっては石垣や墓石の中にも巣を作ります。
またその蜂蜜の希少さから誤解されることが多いですが、ニホンミツバチは絶滅危惧種ではありません。かつてはセイヨウミツバチが盛んに養蜂され、ニホンミツバチが減少傾向にありましたが、現在は市街地でも見かけることができます。
ニホンミツバチの分蜂の概要や時期は「養蜂は分蜂の時期に合わせて始めよう」で解説しています。
ニホンミツバチは温厚な性格でめったに刺さない
ニホンミツバチの性格は極めて温厚で、自ら人間を襲うことはありません。
ただ巣に攻撃を加えると襲ってくることがあります。一度ミツバチに刺されると、特有のにおいがついてしまうため、さらに他のミツバチに襲われやすくなってしまいます。
刺されてしまったら、素早くその場から立ち去って毒針を抜き、流水で洗いましょう。
ニホンミツバチはスズメバチが天敵
スズメバチはニホンミツバチの天敵です。スズメバチはニホンミツバチの巣を見つけると襲撃し、ニホンミツバチの成虫や幼虫、卵を持ち帰ってしまいます。スズメバチの幼虫のエサにしてしまうのです。
スズメバチに襲われたニホンミツバチの反応として「熱殺蜂球」が有名です。これは1匹のスズメバチを多くのミツバチで囲んで熱殺する方法で、囲まれた内部は最高48℃程になります。
セイヨウミツバチとニホンミツバチの違い
日本には「セイヨウミツバチ」も生息しています。ニホンミツバチと同じようなミツバチに思えるかもしれませんが、実は多くの違いがあることをご存知でしょうか。
この項目では、双方の違いについて紹介していきます。
見た目の違い、見分け方
ひとつの違いは大きさと見た目です。ニホンミツバチはセイヨウミツバチと比べてサイズが若干小さいです。
色はニホンミツバチが黒っぽく、セイヨウミツバチがオレンジっぽいですが、双方とも似ているので、素人は見分けるのが困難かもしれません。
もし確実に見分けたいのであれば、羽の模様をチェックしてみましょう。翅脈(しみゃく)と呼ばれる羽の脈状のすじを見ることで、どちらの種類か見分けることができます。
後翅の翅脈を観て、一部がY状ならセイヨウミツバチ、H状ならニホンミツバチです。
飼育方法の違い
セイヨウミツバチは飼育の前にひと手間を要します。木でできた巣箱の中に巣枠(すわく)という板を敷き詰めます。そこに巣礎(すそ)という蜜ろうでできた人工のハチの巣を貼り付けると、セイヨウミツバチは巣を作り始めるのです。
一方でニホンミツバチは重ねた木箱の中で飼育することで、ゼロから巣を作り始めます。ニホンミツバチの飼育は外的環境に左右されやすく、暑さのせいで巣から逃亡したり、巣が落ちてしまったりなどのリスクがあります。そのため、ニホンミツバチは飼育が難しいといわれているのです。
在来種か外来種か
セイヨウミツバチとニホンミツバチは、外来種か在来種かという点で異なります。セイヨウミツバチは明治時代にアメリカから輸入された外来種で、主に家畜用として飼育されています。
一方でニホンミツバチは、日本の在来種です。基本的に野生ですが、最近は飼育する人も増えています。
熱殺蜂球は仕組みが違う
1匹のスズメバチを多くのミツバチで囲んで熱殺する「熱殺蜂球」。ニホンミツバチもセイヨウミツバチも熱殺蜂球を作れるのですが、その仕組みが異なります。
ニホンミツバチは自らの身体を震わせることで、内部の中心温度を48度まで上げることができますが、セイヨウミツバチは44度までしか上げられません。スズメバチが死ぬのは46度以上。
自らの能力だけでは温度を上げきれないセイヨウミツバチは、死ぬ覚悟でスズメバチを刺そうとします。すると無数の針に刺されまいとスズメバチがもがき、発熱。結果中心温度が46度以上になり、スズメバチは暑さで死んでしまうのです。
かつては蜂球を作れるのはニホンミツバチだけとされていましたが、近年その考えは覆されたのです。
ニホンミツバチの蜂蜜は貴重
ニホンミツバチの蜂蜜の特徴を説明します。
ニホンミツバチは蜂蜜を取れる量が少ない
ニホンミツバチは蜜の収穫量が少ないです。蜂蜜の採取回数はセイヨウミツバチは年2回に対し、ニホンミツバチは年に1回ほどです。
加えて、働きバチの集蜜力の違いからセイヨウミツバチからは蜂蜜が一年で50kg取れるのに対し、ニホンミツバチは5~10kg程度しか取れません。その分ニホンミツバチの蜂蜜は高い値段で取り扱われています。
蜜の量が少ない理由は、取れる回数が少ないからだけでなく、ニホンミツバチが神経質な昆虫であるためでもあります。
扱い方によっては巣箱から逃亡してしまう恐れもあり、きちんと扱わなければなりません。そのことから、ニホンミツバチは商売には向いていないともいわれていました。
ニホンミツバチの蜂蜜は価値が高い
上で説明した通り、ニホンミツバチの蜂蜜はセイヨウミツバチの蜂蜜よりも採れる量が少ないです。そのためニホンミツバチの蜂蜜は価格が高くなるのです。
セイヨウミツバチの蜂蜜が4~6円/g なのに対して、ニホンミツバチの蜂蜜が10~20円/gと相場に大きな開きがあります。
セイヨウミツバチの蜂蜜との「質」の違い
セイヨウミツバチが特定の花を蜜源としている単花蜜である一方、ニホンミツバチは複数の花を蜜源とする百花蜜なのです。
これによって、セイヨウミツバチに比べてニホンミツバチの蜂蜜の方が複雑で奥の深い味わいになっています。
趣味でもニホンミツバチの養蜂は可能!捕獲時期や方法を解説
ここではニホンミツバチを飼育する方法を紹介します。
まずは改正養蜂振興法について知っておこう
趣味でもニホンミツバチの養蜂は可能です。しかし養蜂を始める前に改正養蜂振興法(かいせいようほうしんこうほう)について知っておく必要があります。
改正養蜂振興法とは、ミツバチを飼育するすべての人が対象の法律です。趣味であっても養蜂をするのであれば、その住所地を管理する都道府県に「蜜蜂飼育届」を提出しなければなりません。
ただし蜂蜜やミツバチなどの販売や譲渡をしない上で、以下の条件に当てはまる場合、「蜜蜂飼育届」の提出は不要です。
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養蜂は分蜂の時期に合わせて始めよう
ニホンミツバチの特徴として「分蜂」があります。春に新しい女王蜂が生まれると、元の女王蜂は働き蜂の半数を連れて新たな巣を作ります。これが分蜂です。
分蜂は、ニホンミツバチの捕獲のねらい目なのです。タイミングを逃さないように分蜂の時期を把握しましょう。
一般的に分蜂開始時期は桜の開花時期と一致し、その後1ヵ月間は分蜂が盛んに行われると言われています。分報開始時期の目安は以下の通りです。
九州南部 | 3月中旬 |
関西・関東 | 4月上旬 |
北陸 | 4月下旬 |
東北北部 | 5月上旬 |
分蜂は暖かい日に起こることが多く、11時~13時はとくに起こりやすいと言われています。
捕獲方法は2通り!|自然入居と強制捕獲
ニホンミツバチを飼育し始めるためにはまず、ニホンミツバチを捕獲する必要があります。捕獲方法は主に2つです。捕獲は分蜂の時期に行いましょう。
分蜂をして新しい場所を探している蜂の群れに、巣箱を新しい居住地として選んでもらう方法です。巣箱をミツバチ好みにして成功確率を上げることは可能ですが、自然に任せることになるので必ず捕獲できるとは限りません。
自然入居の具体的な方法は「ニホンミツバチを自然入居させるコツ」をご覧ください。
木の枝などに集まっている引っ越し途中の群を、強制的に巣箱へ入れる方法です。分蜂の群れを見つけられれば確実に捕獲できる方法ですが、既に養蜂していないと分蜂群れを見つけるのは困難です。これから養蜂を始めるという方には、自然入居をおすすめします。
強制捕獲の具体的な方法は「ニホンミツバチを強制捕獲する手順とコツ」をご覧ください。
ニホンミツバチを自然入居させるコツ
ここではニホンミツバチを自然入居させるコツを紹介します。
分蜂の時期に遅れないよう、巣箱を複数用意する
ニホンミツバチを自然入居させるために、分蜂の時期に遅れないようにしましょう。分蜂は桜の開花時期ごろに始まり、そこから約1ヵ月間は盛んに行われます。時間帯は11時~13時が狙い目です。
また自然入居は成功確率が低い捕獲方法。巣箱を複数置くことで成功する確率が上がります。小さい巣箱でも良いので、巣箱を5個以上用意して適切な場所に設置しましょう。場所は「巣箱をバラバラの場所に設置する」で解説しています。
巣箱に蜜蝋を塗り、誘引ルアーを設置する
巣箱を用意したらまずは巣箱の天井に蜜蝋を塗りましょう。蜜蝋はミツバチの巣の材料で、その香りを巣箱につけることで以前そこに巣があったように錯覚させられます。
セイヨウミツバチの蜜蝋では塗ってもあまり効果はないので、ニホンミツバチの蜜蝋を塗りましょう。
ミツバチはキンリョウヘンという蘭に引き寄せられる性質があります。キンリョウヘンの誘引成分を合成した誘引ルアーの使用することで、自然入居が成功しやすくなります。
巣箱をバラバラの場所に設置する
巣箱を設置する際は分散させましょう。そうすることで成功確率が上がります。以下のような環境は巣箱の設置場所に適しています。また公共の場に設置すると撤去されたり、盗難されたりしてしまうことがあるので気を付けてください。
適した場所 |
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ニホンミツバチを強制捕獲する手順とコツ
強制捕獲の手順
ミツバチの群を強制的に巣箱へ入れる強制捕獲。成功率が高いうえに、手軽にできるのが魅力です。
すでにミツバチを養蜂していて数を増やしたいときは、飼っているミツバチの分蜂を狙って強制捕獲するのがおすすめです。
強制捕獲の道具と手順は以下の通りです。
道具 |
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手順 |
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群にいた全ての蜂を捕獲する必要はありません。女王蜂が巣箱に入れば他の蜂も自然と集まるので、女王蜂を捕獲することを意識してください。
また1人で作業するのは危険です。必ず2人以上で行いましょう。
コツ①:分蜂集合板を利用しよう
分蜂集合板とは金網を貼り表面をでこぼこさせた板で、ニホンミツバチが集合しやすい造りになっています。分蜂群を探す手間が省けるうえに、自分が捕獲しやすい場所に置くこともできるのが魅力です。
設置角度は20度~30度、大きさは45cm四方程度あれば良いでしょう。分蜂集合板は「巣箱をバラバラの場所に設置する」で紹介したような場所に設置しましょう。
コツ②:飼育している蜂を越冬させよう
飼育している蜂が分蜂すれば、分蜂群を探す必要がなくなります。そのため、飼育している蜂は必ず越冬させましょう。
蜂蜜を採り過ぎてミツバチが越冬できなかったというのは、養蜂初心者にありがちなミス。越冬のために適量の蜂蜜を残しておきましょう。また過度な寒さ対策は逆効果になってしまうので気を付けてください。
捕獲後の飼育で気を付けることは?
ニホンミツバチを捕獲した後、次の春が来るまでに気を付けるべきことについて解説します。
夏は暑さ対策をしよう
夏の養蜂で気を付けるべきは、暑さ対策とスムシ・ゴキブリ対策、蜜源不足対策の3つです。
巣箱の温度が上がり過ぎないよう、巣箱を風通しの良い木陰に置きましょう。
暑さでミツバチが弱っていると、スムシやゴキブリが巣を占領してしまうことがあります。巣箱が汚れていないかや、ミツバチが弱っていないかなどの確認を定期的にしましょう。必要があれば掃除や給餌、巣の引っ越しなどをすると良いです。
夏は他の昆虫と蜜の取り合いになるため、蜜源が不足して弱ってしまうことがあります。その場合は、給餌をしてあげましょう。方法は以下の通りです。
給餌の手順 |
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秋はスズメバチ対策を
秋はオオスズメバチ対策をしっかりしましょう。オオスズメバチはニホンミツバチの天敵で、襲われるとニホンミツバチが巣から逃げてしまったり、壊滅したりしてしまいます。
オオスズメバチ対策として、巣門の高さを6mm程度にしましょう。オオスズメバチが侵入できないようにするのです。
また10、11月は採蜜の時期ですが、蜂蜜を適量残しておくようにしましょう。蜂蜜を全て採取してしまうと、エネルギー源がなくなって越冬できなくなってしまいます。
冬は過度な寒さ対策に注意
ニホンミツバチが越冬するのを待ちましょう。巣箱の中にヒーターを入れるなどの過度な寒さ対策は逆効果になるので避けてください。
ニホンミツバチは駆除するべきか
一方ミツバチが家の周りに出没し始めて困っている方もいらっしゃると思います。ミツバチが巣を作っていると、害を及ぼさないとわかっていても怖いですよね。そういうときは駆除してもいいのでしょうか。
ニホンミツバチは駆除しなくても大丈夫
基本的にはニホンミツバチを駆除する必要はありません。特に分蜂を行っている場合は、近いうちに引っ越ししていなくなってくれるので、放置しても問題ありません。
自力で駆除することは控える
ミツバチを駆除することに決めた場合でも、安易に自力で除去しようとするのはやめましょう。下手に巣を攻撃すると反撃に遭い、複数個所刺されることになりかねません。
かならず養蜂家や専門家に駆除を依頼するようにしましょう。
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蜂の巣を駆除する場合はミツモアがおすすめ
ニホンミツバチは在来種のミツバチであり、きちんと届け出をすれば養蜂することも可能です。神経質な昆虫であるがゆえに飼育自体は難しいですが、良質な蜂蜜(はちみつ)を収穫したい方は養蜂を一度検討してみてはどうでしょうか。
駆除したい場合はミツモアでのプロ探しがおすすめです。ミツモアならサイト上で予算、スケジュールなどの簡単な質問に答えるだけで見積もりを依頼できます。複数の業者に電話を掛ける手間がなくなります。
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