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【飲食店の開業に使える助成金・補助金まとめ】開業資金の相場を含めて解説

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最終更新日: 2024年03月01日

飲食店の開業時に気になるのが、物件の取得費用や機器・設備費といった開業資金がかかることです。そこでぜひ活用したいのが、国や地方自治体からの助成金・補助金です。本記事では開業で必要な資金の相場を含め、飲食店の経営で利用できる助成金・補助金について紹介します。

この記事の監修税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

安田亮(公認会計士・税理士・1級FP技能士)1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格、2010年京都大学経済学部経営学科卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応等を経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

飲食店開業で必要な資金は助成金・補助金でまかなえる?

日本政策金融公庫総合研究所の「2023年度新規開業実態調査」(2023年11月)によると、飲食店の開業費の平均値は1,027万円です。店舗の規模や業態によっても異なりますが、一般的に飲食店を開業するには内外装費や備品代などを含め、1,000万円程度の費用が必要と考えておくと良いでしょう。

飲食店開業にあたって必要な費用の内訳

飲食店を開業する際、店舗の設備にかかる費用と運転資金の内訳を把握しておきましょう。開業してすぐには売上が上がらないため、6か月分程度の運転資金を確保しておくと安心です。
業種によって異なりますが、設備にかかる費用や運転資金は以下のようなものが挙げられます。

設備にかかる費用
  • 店舗や事務所の賃料
  • 敷金
  • 礼金
  • 保証金
  • リフォーム費用
  • 事務用品代
  • 店舗用の什器 など
運転資金
  • 家賃
  • 光熱費
  • 仕入れ代金
  • 外注費
  • 通信費
  • 広告宣伝費 など

開業資金の集め方

飲食店の開業で必要な資金を集めるには、国や地方自治体から助成金や補助金の支給を受けたり、融資を受けることが大切です。助成金は要件を満たせば受給できる可能性が高いです。補助金は一定の資格を有しており、かつ審査が通れば国や自治体から支援を受けられます。ただし募集期間や金額、採択件数など、あらかじめ決められているものが多く、申請したからといって必ずしも受けられるとは限りません。

また、日本政策金融公庫や銀行などの金融機関から融資を受けるには、事業計画書を作成して窓口に提出して審査を通る必要があります。この他にも個人投資家やベンチャーキャピタルから資金の提供を受けたり、クラウドファンディングでの支援、さらにビジネスコンテストに出場して認知度を上げて人脈構築につなげるのもおすすめです。

開業資金は一旦すべて負担する必要がある

飲食店を開業したい人のなかには、国や地方自治体からの助成金や補助金を元手に飲食店を開業しようと考えるかもしれません。でも結論からいうと、助成金や補助金をもとに飲食店を開業することはできません。

なぜなら、給付を受けるためには特定の要件を満たす必要があり、申請から給付されるまで約1年かかるからです。事前にお金を得られるわけではないので、開業に必要な資金は用意(借入も含む)したうえで飲食店を開業しましょう。

飲食店を開業に利用できる助成金

人材雇用に強い助成金・補助金

ここからは飲食店を開業したいと考えている人に向けて、国や地方自治体からの助成金制度について紹介します。

【東京都】創業助成事業

東京創業女性
公式HP:創業助成事業(東京都)

都内で創業を予定している人、または創業から5年未満の中小企業を対象にした助成制度です。都内の開業率向上を目的としており、400万円を限度に賃借料や人件費、産業財産権出願・導入費などの経費を助成します。

対象 都内での創業を具体的に計画している個人または創業後5年未満の中小企業者等のうち、一定の要件を満たす人
補助金額 最大400万円

参考:創業助成事業(東京都)

【東京都】若手・女性リーダー応援プログラム助成事業

東京・若手&女性
公式HP:若手・女性リーダー応援プログラム助成事業(東京都)

都内で新たに店舗を開業したい人に店舗の新装でかかった工事費用や設備購入費、店舗貸借料など、最大730万円まで助成する制度です。対象は女性(年齢制限なし)または39歳以下の男性の個人事業主で、実店舗を持っていないことが条件です。

対象
  • 女性または39歳以下の男性であること
  • 創業予定の個人もしくは個人事業主
  • 都内商店街において開業する業種が、公社が定める業種に該当すること など
助成金額 最大730万円

参考:若手・女性リーダー応援プログラム助成事業(東京都)

【東京都】飲食事業者向け経営基盤強化支援事業

公式HP:飲食事業者向け経営基盤強化支援事業(東京都中小企業振興公社)

経営基盤の安定化や収益を確保する取り組みに対して、厨房機器の購入費や広告宣伝費といった経費の一部を助成します。

対象 東京都内の店舗で飲食業を営む中小企業者(個人事業主を含む)のうち、下記いずれかの要件を満たす事業者

  • 直近決算期の売上高が「2019年の決算期以降のいずれかの決算期」と比較して減少していること
  • 直近決算期において損失を計上していること
助成金額 専門家派遣実施コース:上限200万円、厨房機器等改修コース:上限50万円

参考:飲食事業者向け経営基盤強化支援事業(東京都中小企業振興公社)

業務改善助成金

業務改善助成金
公式HP:業務改善助成金|厚生労働省

小規模事業者や中小企業を対象にした助成金制度です。最低賃金を30円以上引き上げたうえでPOSシステムや調理器具の購入など、設備投資で生産性を向上させる施策にかかった経費の一部を支給します。

対象
  • 中小企業、小規模事業者
  • 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内
  • 解雇、賃金引き下げといった不交付事由がない
助成金額 設備投資等にかかった費用 × 助成率

※上限と比較して、低い金額を支給

参考:業務改善助成金(厚生労働省)

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金
公式HP:キャリアアップ助成金|厚生労働省

従業員の待遇や福利厚生制度を充実させたいと考える経営者を支援する制度です。「正社員化コース」や「賃金規定等改定コース」など6つのコースがあり、コースごとに支給額や支給対象が異なります。

対象
  • 雇用保険適用事業所の事業主であること
  • 雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主であること
  • 雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に対し※キャリアアップ計画書を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主であること
  • 該当するコースの措置にかかる対象労働者に対して、賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備している事業主であること
  • キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主であること

※キャリアアップ計画書は、コース実施日までに管轄労働局長に提出が必要

助成金額 正社員化コース:1人当たり最大57万円(20名まで)
障害者正社員化コース:1人当たり最大120万円
賃金規定等改定コース:1人当たり最大6.5万円
賃金規定等共通化コース:1事業所あたり最大60万円
賞与・退職金制度導入コース:1事業所あたり最大56.8万円
短時間労働者労働時間延長コース:1人あたり23万7千円
※コースによって給付する金額が異なる。

参考:キャリアアップ助成金(厚生労働省)

トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金
公式HP:トライアル雇用助成金|厚生労働省

職業経験や技能といった理由で安定的な就職が困難な求職者を、ハローワークや職業紹介事業者などからの紹介を受け、一定期間試行雇用した場合に助成金を支給する制度です。「一般トライアルコース」をはじめとした4つのコースを用意しています。

対象
  • ハローワークや職業紹介事業者等に提出された求人に対し、その紹介により雇い入れること
  • 原則3か月のトライアル雇用をすること など
助成金額 対象者1人につき月額最大4万円(合計12万円)

参考:トライアル雇用助成金(厚生労働省)

特定求職者雇用開発助成金

特定求職者雇用開発助成金
公式HP:特定求職者雇用開発助成金|厚生労働省

ハローワークなどから高年齢者や障害者などの就職困難者の紹介を受け、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主を支援する助成金です。

支給額はコースや雇用形態によって異なります。支給対象期の末日の翌日から起算して2か月以内に、支給申請書に必要書類を添えて管轄の労働局へ支給申請を行います。

対象
  • 雇用保険の適用事業主であること
  • 対象労働者をハローワークまたは民間の有料・無料職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること など
助成金額 最大240万円

※コースによって給付する金額が異なる。

参考:特定求職者雇用開発助成金(厚生労働省)

働き方改革推進支援助成金

公式HP:働き方改革推進支援助成金|厚生労働省

時間外労働の削減や年次有給休暇、特別休暇の促進といった環境整備に取り組む中小企業を対象に、200万円を上限として助成金を支給します。

対象 下記のいずれかに該当する中小企業

  • 労働者災害補償保険の適用事業主であること
  • 交付申請時点で時間外労働や年次有給休暇など、「成果目標」の設定に向けた条件を満たしていること
  • 交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること
助成金額 最大200万円

参考:働き方改革推進支援助成金|厚生労働省

飲食店の開業に利用できる補助金

開業に役立つ助成金
開業に役立つ助成金

国や自治体からの補助金制度は、飲食店の開業や運営に活用できる制度が充実しています。各制度の対象や補助額などを確認し、ご自身の希望や条件に合った補助金を探しましょう。

【東京都】受動喫煙対策支援補助金

公式HP:受動喫煙対策支援補助金(東京都保健医療局)

都内の中小飲食店や宿泊施設が行う受動喫煙防止対策を支援する補助金制度です。喫煙専用室などの設置に対して補助金が支給されます。補助上限は喫煙専用室などの設置が400万円、分煙設備の撤去などの場合が150万円で、補助率は9/10(客席面積が100㎡を越える場合は4/5)です。

対象 東京都内で中小飲食店を経営する事業者
補助金額 最大400万円

参考:受動喫煙対策支援補助金(東京都保健医療局)

【東京都】インバウンド対応力強化支援補助金

公式HP:インバウンド対応力強化支援補助金(東京観光財団)

多言語対応のタブレットやクレジットカード、電子マネー決済機器の導入にかかった費用などに対して、300万円を上限に補助金を支給します。東京都内で飲食店を開業したい人は、外国人旅行者のニーズに対応した機器や設備を導入するのもおすすめです。

対象 都内の飲食店、免税店(中小企業者のみ) など
補助金額 最大300万円

参考:インバウンド対応力強化支援補助金(東京観光財団)

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者
公式HP:小規模事業者持続化補助金❘日本商工会議所

販路を拡大する方法などの指導を商工会議所から受けられる制度です。対象は卸売業・小売業・サービス業・製造業などの小規模事業者で、小売業やサービス業では従業員数5人以下であることが申請条件となります。

補助額は通常枠で50万円、創業枠で200万円まで支給され、補助率は補助対象となる経費の3分の2以内です。事前に最寄りの商工会議所で事業支援計画書を作成・交付してもらうことが必要です。

対象 下記の要件を満たす小規模事業者

  • 資本金または出資金が5億円以上の法人に直接または間接に100%株式保有されていないこと(法人のみ)
  • 直近過去3年分の各年または各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと
  • 持続化補助金で採択を受けて、補助事業を実施した場合、各事業の交付規程で定める様式第14「小規模事業者持続化補助金にかかる事業効果および賃金引上げ等状況報告書」を、原則本補助金の申請までに受領されたものであること
  • 「卒業枠」で採択され事業を実施した事業者ではないこと
補助金額 最大200万円

参考:小規模事業者持続化補助金❘日本商工会議所

事業再構築補助金

事業再構築
公式HP:事業再構築補助金|中小企業庁

感染症や国際情勢の影響などを受けた経済情勢に対応すべく、新業態へ参入したり、業態転換しようとする中小企業に対して最大1.5億円を限度に補助金を支給します。ただし応募条件は厳しく、要件を満たしていないと支給されないケースがあるので、注意しましょう。

対象
  • 売上が減っていること
  • 事業再構築に取り組むこと
  • 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定すること
補助金額 最大1.5億円

参考:事業再構築補助金(中小企業庁)

ものづくり補助金

ものづくり補助金
公式HP:ものづくり補助金|ものづくり補助金総合サイト

革新的なサービスの開発や試作品の開発を目的とした設備投資などの一部を支援する補助金です。事業内容ごとに「省力(オーダーメイド)枠」と「製品・サービス高付加価値化枠」、「グローバル枠」の3枠が設けられており、補助上限額は最大1億円、補助率は2/3となっています。

要件 下記の要件をすべて満たす3年から5年の事業計画を策定した中小企業・小規模事業者

  • 事業者全体の付加価値額を年平均成長率(CAGR)3%以上増加
  • 給与支給総額を年平均成長率(CAGR)1.5%以上増加
  • 事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする
補助金額 最大1億円

参考:ものづくり補助金(ものづくり補助金総合サイト)

IT導入補助金

IT導入補助金
公式HP:IT導入補助金(独立行政法人中小企業基盤整備機構)

ITツールを導入する小規模事業主や中小企業を対象とした補助金です。ITツールなどの導入経費の一部が補助されます。AとBの申請類型があり、補助額はA類型が5万円~150万円、B類型が150万円~450万円となっており、補助率は1/2以下です。

対象 中小企業・小規模事業者
補助金額 最大3,000万円

参考:IT導入補助金(独立行政法人中小企業基盤整備機構)

助成金・補助金以外で飲食店開業に必要な資金を調達する方法

国や地方自治体から助成金や補助金を元手に飲食店を開業するのは難しく、まとまった資金が必要です。多くの人は自己資金の一部を使い、残りは借入金で資金を集めています。

とくに利用されているのが国や地方自治体、金融機関からの融資です。日本政策金融公庫の「新創業融資制度」や「新規開業資金」、自治体と金融機関、信用保証協会による「制度融資」があり、連帯保証人をつけなくても低金利で受けられます。ただし審査を経て融資がはじまるまで通常1か月ほどかかるので、十分な資金と開業スケジュールを考えたうえで準備を進めましょう。

飲食店の開業で必要な資金を把握して、計画的に準備を進めよう

助成金や補助金の情報をチェックしたり、融資を受けるために準備する作業は手間と時間がかかります。ご自身に適した制度の選択や申請書類の準備に迷ったら、助成金・補助金に関する豊富な知識と経験を持った税理士に相談することをおすすめします。税理士から有益なアドバイスやサポートを受け、助成金を上手に活用してください。

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監修税理士からのコメント

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

飲食店を持つには多額の資金が必要です。補助金などを活用できるのであれば資金繰りがとても楽になるので、活用できるものはぜひ活用しましょう。