ここでは飲食店の新規開業、人材確保、店舗設備の充実化などに活用できる助成金・補助金の概要を中心に紹介します。飲食店経営にぜひ役立ててください。
助成金・補助金とは

飲食店を開業しようとする方々にとって、返済義務のない公的な助成金や補助金は魅力ある制度です。助成金・補助金制度に申請するには、それぞれの制度の受給要件を満たしていることが必須条件で、厳正な審査を経て採択されると受給できます。
まずは助成金・補助金の定義と主な相違点を見てみましょう。
助成金とは
企業や民間団体、個人事業主などに対して国の政策目標を達成するために交付されるお金で、人材雇用・育成に利用できる資金支援制度の大半は助成金です。厚生労働省が管轄しているものが多く、地方自治体や公的団体が独自に実施している助成金もあります。
支給額
助成金は支給される金額が一律で決まっていることが多く、申請して要件を満たしていると判断されて採択されれば、定額が支給されます。
支給のタイミング
支給は後払いが大多数で、事後の申請で助成金が支給されます。
募集期間
募集期間は随時募集されるものや期間が定められているものなど制度によって異なります。期間は半年や通年など比較的長めで、申請しやすいというメリットがあります。
補助金とは
補助金も行政上の目的を達成するために企業や個人事業主などに交付されるお金である点は助成金と同様で、事業立ち上げの際に利用できる制度の大半が補助金です。経済産業省が管轄しているものが多く、地方自治体や公的団体が実施している補助金もあります。
支給額
補助金の支給額には、実際の支出に対する割合から算出される上限が定められています。
支給のタイミング
実際の支出額から支給される金額を算出するため、基本的に助成金と同様、後払いとなっています。
募集期間
募集期間は原則1か月以内と、助成金と比べて短期であることが特徴です。定期的に募集に関する情報をチェックし、期間内に申請できるよう注意しましょう。事業計画など申請に必要となる書類を早めに準備しておくことも大切です。
また、当初の募集期間中に枠が埋まらなかった場合には追加募集が実施されるので、こうした2次・3次募集の情報をチェックすることも重要になります。
助成金・補助金の違い
補助金は主に経済産業省が管轄する「創業支援、設備投資」、一方の助成金は主に厚生労働省が管轄する「雇用の安定、職場環境改善」を対象にした支援制度です。
- 補助金と助成金の主な相違点
補助金 | 助成金 | |
主な実施機関 | 経済産業省・中小企業庁 | 厚生労働省 |
審査の有無 | 形式要件を満たす事が必要
必ず提案内容の審査有り |
形式要件を満たす事が必要
実地審査を行う場合も有り |
採択率 | 良案と認定された場合に支給
比較的倍率が高い |
条件を満たしていれば
受給することができる |
募集期間 | 比較的短期(原則1ヶ月以内) | 比較的長期(通年、半年など) |
助成金は要件を満たせば基本的に受給することができますが、補助金は要件に合致していても審査を通過しなければ受給できません。支給額が高額で募集要件がそれほど厳しくない補助金には多数の応募が集まり、採択率が低くなることも珍しくありません。また、申請が遅れたり申請書類に不備があったりすると受け付けられないこともあるので、申請準備はスケジュールに十分余裕を持って進めましょう。
飲食店の開業資金に利用できる補助金

補助金には飲食店の開業や運営に活用できる制度が豊富に設けられています。各制度の対象や補助額などを確認し、ご自身の希望や条件に合った補助金を探しましょう。
地域創造的起業補助金
既存の技術の活用や新たなアイディアによって、需要や雇用を生む可能性がある事業に対して支給される補助金です。支給額は100万円~200万円で、補助率は補助対象となる経費の50%以内。外部調達資金がある場合とない場合とで補助額が異なるので注意が必要です。
支給対象は新たに創業を予定する者で、従業員を新たに1名以上雇用すること、認定市区町村や認定連携創業支援者業者による支援を受けることが条件となっています。
公募期間は例年4月~5月です。
※募集期間が終了しています。次回募集をお待ちください。
事業承継補助金
事業承継をきっかけにして経営革新などを実施する中小企業者に対して、その経費の一部を補助する補助金制度です。この制度の対象は、規定の期間に新たな事業転換を行うと同時に、取引先や雇用創出によって地域に貢献する中小企業であること。補助上限は経営革新を行う場合は200万円、補助率は1/3~2/3となっています。
※募集期間が終了しています。次回募集をお待ちください。
小規模事業者持続化補助金
補助金の支給だけでなく、販路を拡大する方法などの指導を商工会議所から受けることができる制度です。対象は卸売業・小売業・サービス業・製造業などの小規模事業者で、小売業やサービス業では従業員数5人以下であることが申請条件となります。
補助額は上限50万円(複数の事業者が連携して取り組む共同事業の場合は100~500万円)、補助率は補助対象となる経費の3分の2以内と定められています。
事前に最寄りの商工会議所で事業支援計画書を作成・交付してもらうことが必要で、公募は例年3月に行われます。
この補助金の補助対象経費は以下の2つとなっています。
- すでにある商品・サービスの販路開拓を目的とした取り組みに必要な経費
- 新たな商品やサービスの開発など生産性向上のための取り組みに必要な経費
※募集期間が終了しています。次回募集をお待ちください。
ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金
革新的なサービスの開発や試作品の開発を目的とした設備投資などの一部を支援する補助金です。事業内容ごとに「革新的サービス」と「ものづくり技術」の2つの対象類型が設けられています。いずれの対象類型も補助対象事業と補助率は同一で、補助上限額は1000万円、補助率は2/3となっています。また最大10社までが連携して申請することも可能です。公募は2月と8月に行われます。
※募集期間が終了しています。次回募集をお待ちください。
IT導入補助金
ITツールを導入する小規模事業主や中小企業を対象とした補助金です。ITツールなどの導入経費の一部が補助されます。
AとBの申請類型があり、補助額はA類型が40万~150万円、B類型が150万~450万円。補助率は1/2以下となっています。
※募集期間が終了しています。次回募集をお待ちください。
軽減税率対策補助金
消費税軽減税率の実施によって対応が必要になる中小企業や小規模事業者などに対し、複数税率対応レジや券売機の導入や改修、受発注システム・請求書管理システムの変更に要する経費の一部を補助する制度です。
A、B、Cの3つの申請類型があり、補助上限はA型が200万円、B型が1,000万円、C型が150万円。補助率はA型が1/2~4/5、B型が3/4、C型が1/2~3/4です。
受動喫煙防止対策補助金
東京都が実施している、都内の中小飲食店や宿泊施設が行う受動喫煙防止対策を支援する補助金。喫煙専用室などの設置に対して補助金が支給されます。
補助上限は喫煙専用室などの設置が400万円、分煙設備の撤去などの場合が150万円で、補助率は9/10(客席面積が100㎡を越える場合は4/5)です。
人材雇用に利用できる助成金

必要な人材を確保することは、飲食店を立ち上げる際の重要ポイントのひとつです。以下に紹介した雇用促進のための助成金を活用し、店舗運営に必要な人材の雇用や育成を円滑に進めてください。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、従業員の待遇や福利厚生制度を充実させたいと考える経営者を支援する制度です。
この助成金には下記の7コースがあり、コースごとに支給額・支給対象が異なります。
- 正社員化コース
有期契約労働者などを正規雇用労働者などに転換・直接雇用した場合に助成されます。 - 賃金規定等改定コース
有期契約労働者などの基本給の賃金規定などを増額改定した場合に助成対象となります。 - 健康診断制度コース
有期契約労働者等を対象に「法定外の健康診断制度」を新たに定め、4人以上に実施した場合に助成されます。 - 賃金規定等共通化コース
有期契約労働者などを正規雇用労働者と共通の職務に応じた賃金規定を就業規則などで新たに作成・適用した場合に助成対象となります。 - 諸手当制度共通化コース
雇用する非正規社員に正社員と共通の諸手当に関する制度を新たに作成・適用した場合に助成されます。 - 選択的適用拡大導入時処遇改善コース
選択的適用拡大の導入にともなって有期契約労働者などの賃金引上げを実施した場合に助成対象となります。 - 短時間労働者労働時間延長コース
有期契約労働者などの週当たりの所定労働時間を5時間以上延長し、社会保険を適用した場合に助成されます。
トライアル雇用助成金
職業経験や技能といった理由で安定的な就職が困難な求職者を、ハローワークや職業紹介事業者などからの紹介を受け、一定期間試行雇用した場合に支給される助成金です。
トライアル雇用助成金の支給対象期間は最長で3ヶ月間。支給額は1人につき基本4万円で、ひとり親家庭の場合は1人につき基本5万円です。
トライアル雇用助成金には下記のコースが設けられています。
- 一般トライアルコース
- 障害者トライアルコース
- 障害者短時間トライアルコース
- 若年・女性建設労働者トライアルコース
人材確保等支援助成金 雇用管理制度助成コース
新たに雇用管理制度(評価・処遇制度、研修制度、健康づくり制度、メンター制度、短時間正社員制度)を導入・実施した場合に「制度導入助成」を、制度の適切な運用によって従業員の離職率の低下が図られた場合に「目標達成助成」を行う制度です。
助成額は制度導入助成が10万円、目標達成助成が57万円~72万円です。
特定求職者雇用開発助成金
ハローワークなどから高年齢者や障害者などの就職困難者の紹介を受け、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主を支援する助成金です。
支給額はコースや雇用形態によって異なります。支給対象期の末日の翌日から起算して2か月以内に、支給申請書に必要書類を添えて管轄の労働局へ支給申請を行います。
特定求職者雇用開発助成金には下記のコースがあります。
- 特定就職困難者コース
- 生涯現役コース
- 被災者雇用開発コース
- 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
- 三年以内既卒者等採用定着コース
- 障害者初回雇用コース
- 安定雇用実現コース
- 生活保護受給者等雇用開発コース
事業プランに合った助成金の探し方

ここまでに紹介した厚生労働省や経済産業省が管轄する国の助成金に加え、各地方自治体にも多くの助成金・補助金があります。
その代表例が東京都の商店街起業・承継支援事業助成金。都内商店街で新規開業や既存事業を後継する中小小売商業者が店舗の新装や改装、設備導入を行う際の経費の一部を助成する制度です。
飲食店の創業時に助成金や補助金の利用を検討する際は、まず下記のサイトで国や自治体が実施している制度の概要を確認しましょう。
各省庁のホームページ
政府が実施している助成金や補助金に関する情報は、管轄する各省庁のホームページ上で公開されています。
厚生労働省や経済産業省、中小企業庁のホームページには助成金・補助金を検索するページが用意されています。申請を検討している助成金・補助金の名称がわかっている場合は、これらのホームページで制度の詳細を確認しましょう。
各省庁の助成金・補助金情報ページ
申請する助成金や補助金を探している場合や、興味を持っている制度の名称がわからない場合は、以下で紹介する「J-Net21」などの助成金・補助金検索ページを利用してみましょう。
都道府県や市区町村のホームページ
都道府県などの地方自治体や関連団体のホームページには、自治体が独自に実施している補助金や助成金の最新情報が掲載されています。国の助成金と併せて、自治体の補助金・助成金情報も定期的にチェックすることをおすすめします。
地方自治体の助成金・補助金情報ページ(一部を抜粋)
ネットで助成金を探す
J-Net21は中小企業基盤整備機構が運営する中小企業向けの情報提供サイトです。飲食店の開業などに役立つ情報も豊富に掲載されています。サイト内に助成金・補助金の検索ページがあり、地域・利用目的・支援制度の3つから絞り込んで検索できます。
飲食店の開業資金に利用できる助成金・補助金のまとめ

数多く設けられている助成金や補助金の情報をチェックする作業は手間と時間がかかるもの。ご自身に適した制度の選択や申請書類の準備に迷ったら、助成金・補助金に関する豊富な知識と経験を持った税理士に相談することをおすすめします。税理士から有益なアドバイスやサポートを受け、助成金を上手に活用してください。
監修税理士からのコメント

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この記事の監修税理士

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