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生前贈与で取得した居住用不動産の3,000万円控除の方法

最終更新日: 2024年06月05日

居住用不動産の3,000万円控除について、「生前贈与でもらった家にも適用できるの?」、「生前贈与で家をあげるときにも使えるの?」と疑問を抱く方もいらっしゃるでしょう。

そもそも居住用不動産の3,000万円控除とは、マイホームを譲渡することで得た譲渡所得に課される所得税の負担を軽くできる制度のことです。正式名称は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といい、マイホームを譲渡した場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。

所得に対して課される税金の負担を抑える制度なので、無償で家を譲る生前贈与の際には適用されません。しかし、生前贈与でもらった家を他の人に譲渡するときには適用できます。

この記事では、居住用不動産の3,000万円控除の概要や適用できる要件、手続きの流れを解説します。併せて、関連する制度である「相続空き家の3,000万円控除」や、土地に関わる「小規模宅地等の特例」の適用要件も紹介します。

税金を抑えられる制度はいくつかありますが、それぞれ適用要件や金額の算出方法が複雑なので、税理士に相談するのもおすすめです。税理士を頼りたいけれども依頼費用がどのくらいかかるか不安…という方は、「ミツモア」を使って税理士に無料で見積もりを依頼してみてください。

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居住用不動産の3,000万円控除とは

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居住用不動産の3,000万円控除がどのような制度でいつ適用できるのか、以下の項目にわけてご説明します。

居住用不動産の3,000万円控除の概要

居住用不動産の3,000万円控除とは、正式名称で「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といい、マイホームを譲渡することで得た所得に課される所得税の負担を軽くできる制度のことです。

通常、土地や建物を譲渡(売却)して所得を得た場合、譲渡所得(譲渡益)に対して所得税と住民税が課税されます。譲渡所得金額は以下の式で算出します。

譲渡所得金額(譲渡益)=総収入金額-(取得費+譲渡費用)

居住用不動産の3,000万円控除では、マイホームを譲渡した場合、譲渡所得金額から最高3,000万円を控除することができます。つまり、所得税が課される対象となる金額を抑えられる=所得税を軽減できるということです。

生前贈与で不動産を譲渡するときには適用されない

居住用不動産の3,000万円控除は、生前贈与で不動産を譲渡するときには適用されません。居住用不動産の3,000万円控除はあくまで譲渡所得の金額から3,000万円を引いて所得税を抑える制度なので、無償で不動産を譲り、そもそも譲渡所得が発生しない生前贈与は対象でないのです。

生前贈与で不動産を誰かに譲るときに課されるのは贈与税となります。

税金にはさまざまな種類があり、それぞれの負担を軽くする控除の制度も複数あるのでややこしいですが、混同しないように注意しましょう。

生前贈与で取得した不動産を譲渡するときには適用できる

居住用不動産の3,000万円控除は、生前贈与によって譲り受けたマイホームを誰かに譲渡するときには適用できます。

居住用不動産の3,000万円控除が適用されるには、複数の要件がありますが、生前贈与で譲り受けたかどうかは、適用要件に関係しません。

適用要件に関しては、後ほど詳しく解説するので、生前贈与で取得したマイホームで適用を受けたい方はぜひご確認ください。

相続後には適用できない

居住用不動産の3,000万円控除は、一定の場合を除き、相続で取得した家を譲渡するときには適用できません

被相続人(家を渡す人)と相続人(家を引継ぐ人)が同居していたマイホームを、相続するケースであれば適用されますが、被相続人と別居していた場合は適用外となります。

なお、相続した空き家を売却する際には別途「相続空き家の3,000万円控除」を適用できる可能性があります。

マイホームを生前贈与するか相続するか悩んでいる方は、どの制度を適用できるかご確認のうえ検討してみてください。生前贈与や相続にかかる税金について詳しく知りたい方は、無料で見積もりを依頼できる「ミツモア」を使って税理士を探すのがおすすめです。

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居住用不動産の3,000万円控除の適用要件

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居住用不動産の3,000万円控除の概要や、どのような場合に適用できるかをご紹介しましたが、ここでは適用を受けるためのより細かい要件についてご説明します。適用要件は以下の7点です。

  • 居住用の不動産であること
  • 親族など特別な関係者への譲渡でないこと
  • 前年や前々年にマイホームの買い替え・交換の特例を受けていないこと
  • 固定資産の交換特例や収用等の特別控除などの特例を受けていないこと
  • 災害によって滅失した家屋の場合、住まなくなった日から3年後の年の12月31日までに売ること

なかでも、主な次の3つの適用要件について解説します。。

居住用の不動産であること

居住用不動産の3,000万円控除は、正式には居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例といいますが、その名のとおり「居住用の不動産」であることが要件です。

居住用の不動産とは、いわゆるマイホームのことで、自分が住んでいる家を売るか、家と一緒にその敷地や借地権を売るときに適用されます。

もしくは現在住んでいない場合でも、住まなくなった日から3年を経過する日を含む年の12月31日までに譲渡すれば適用を受けられます。ただし、家を取り壊し、その敷地を賃貸したり貸駐車場など他の用途で使ったりすると居住用の不動産ではないとみなされ、適用できなくなるので注意しましょう。

親族など特別な関係者への譲渡でないこと

2つ目の要件は、親族など特別な関係者への譲渡でないことです。特別な関係者は具体的には、配偶者、父母、子、生計を一にする親族、家を売った後にその売った家で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人などを指します。

これらに当てはまる人にマイホームを譲渡するケースでは適用できないことを認識しておきましょう。

前年や前々年にマイホームの買い替え・交換の特例を受けていないこと

適用要件の3つ目は、前年や前々年に居住用不動産の3,000万円控除を受けていないことです。つまり、3年に一度までしか適用できないということです。

また、入居した年とその前後2年間の合計5年間で居住用不動産の3,000万円控除を受けた場合、住宅ローン控除が適用できなくなるので注意してください。

その他の注意点として、居住用不動産の3,000万円控除を受けるには、確定申告を行わなければなりません。控除によって譲渡所得が0円になる場合も確定申告が必要です。

居住用不動産の3,000万円控除の手続き

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居住用不動産の3,000万円控除の要件にあてはまり適用できるときは、次の流れで手続きを進めましょう。

居住用不動産を売却する

まずは、居住用不動産すなわちマイホームを売却します。

不動産を売るときには、売買契約書の締結と家の名義を変更する「所有権移転登記」という手続きが必要です。この手続きは以下の順番で行います。

  1. 売買契約を締結する
  2. 必要書類を集める
  3. 登記申請書を作成する
  4. 登録免許税を納付する
  5. 登記申請書を法務局に提出する

売買契約書は、一般的に仲介や代理で入る不動産会社が作成してくれます。所有権移転登記は買主が中心となって行いますが、この手続きが済むことで不動産の売却が完了となるので、流れを知っておきましょう。

売買契約書を締結したら、登記の目的や原因を記した「登記申請書」を作成します。そして登録免許税を納付し、登記申請書を法務局へ提出します。法務局から登記完了証や登記識別情報通知が交付されたら所有権移転登記は完了です。

必要書類を集める

居住用不動産の3,000万円控除を申請するために必要な書類を揃えましょう。必要書類は次のとおりです。

  • 確定申告書
  • 譲渡所得の内訳書
  • 戸籍の附票の写し
  • 売却した家とその敷地の全部事項証明書(登記簿謄本)
  • 家を購入したときの売買契約書の写し
  • 家を売却したときの売買契約書の写し
  • 住民票の写しもしくはマイナンバー

確定申告書と譲渡所得の内訳書は、税務署の窓口でもらえるほか、国税庁のホームページからもダウンロードできます。

確定申告をする

居住用不動産の3,000万円控除の適用を受けるためには、確定申告を行わなければなりません。

確定申告には、確定申告書と併せて譲渡所得の内訳書の作成が必要となります。譲渡所得の内訳書には以下の内容を記載します。

  • 譲渡資産の内訳:譲渡された不動産の所在地、面積、利用状況、譲渡日など
  • 取得費用:不動産を購入した際の金額や建築代金など
  • 譲渡費用:譲渡する際に支払う費用や手数料など

なお、居住用不動産の3,000万円控除の適用により譲渡所得の金額が0円となり、所得税がかからない場合でも確定申告が必要です。

相続空き家の3,000万円控除とは

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相続空き家の3,000万円控除とは、正式名称で「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といい、相続した空き家を譲渡するときに、一定の要件を満たせば3,000万円の特別控除を受けられる制度です。

相続により取得した家は一定の場合を除き、居住用不動産の3,000万円控除を受けられません。しかし、この相続空き家の3,000万円控除を適用できる可能性があります。この控除を適用できる場合、課税対象となる譲渡所得は以下の式で算出されます。

課税譲渡所得=譲渡所得金額(譲渡益)-3,000万円

相続空き家の3,000万円控除の適用要件

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相続空き家の3,000万円控除の適用を受けるためには、細かい要件を満たさなければなりません。要件の一部を記載します。

  • 相続の開始の直前において、被相続人が住んでいた家であること
  • 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された一戸建てであること
  • 区分所有建物登記がされている建物でないこと
  • 相続の開始の直前において、被相続人以外に住んでいる人がいなかったこと
  • 相続開始から3年を経過する日を含む年の12月31日までに譲渡すること
  • 譲渡価額が1億円以下であること
  • 相続したときから譲渡したときまで、事業や貸付け、居住用に使われていないこと
  • 親、子、夫婦など特別な関係にある人への譲渡でないこと
  • 譲渡した日~その譲渡日を含む年の翌年2月15日までの間に、一定の耐震基準を満たすこと、もしくは取り壊しを行うこと

より詳細を知りたい方は、国税庁のホームページを確認するか、税理士に相談してみてください。

小規模宅地等の特例とは

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不動産を相続する際に税金を抑えられる制度として、土地を相続した場合には、小規模宅地等の特例を受けられる可能性があります

小規模宅地等の特例とは、正式名称を「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例」といい、相続税における土地の評価額を80%か50%減額できる制度です。相続税の課税対象となる金額が小さくなるので、相続税を抑えることができます。

土地を生前贈与するか、それとも相続するか悩んでいる方は、この特例が適用できるかどうかも加味して検討することをおすすめします。

小規模宅地等の特例の適用要件

付箋とリスト

小規模宅地等の特例が適用できる土地は以下の3種類で、それぞれで上限面積と減額割合が異なります。

  • 特定居住用宅地等:自宅の敷地
  • 特定事業用宅地等(特定同族会社事業用宅地を含む):店舗等
  • 貸付事業用宅地等:貸付事業に使用されていた土地

特定居住用宅地等は、自宅の敷地を配偶者や親族が相続したものです。面積の上限は330㎡、減額割合は80%と決められています。

特定事業用宅地等(特定同族会社事業用宅地を含む)とは、店舗等を一定の親族が相続したものです。面積の上限は400㎡、減額割合は80%です。

貸付事業用宅地等は、被相続人の貸付事業に使われていた土地です。貸付事業とは、駐車場業や不動産貸付業のことを指します。面積の上限は200㎡、減額割合は50%です。

小規模宅地等の特例は相続税を抑えられる便利な制度ですが、適用には上記以外にも細かい規定があるので、活用したい方は税理士に相談してみてください。

居住用不動産の3,000万円控除は税理士に相談しよう

スーツとリスト

生前贈与で取得したマイホームを売却するときには、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる「居住用不動産の3,000万円控除」を受けられます。

ただし適用には、居住用の不動産であること、親族など特別な関係者への譲渡でないこと、前年や前々年に特例を受けていないことなどの要件を満たさなければなりません。

また、確定申告を行う必要があります。確定申告の際は、確定申告書と併せて、譲渡資産の内訳、取得費用、譲渡費用を記した「譲渡所得の内訳書」を作成します。

確定申告を自分で行うのは不安な方や、「居住用不動産の3,000万円控除」についてもっと詳しく知りたい方は税理士に相談してみましょう。

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