ハコネウツギは白やピンクの可憐な花を咲かせる低木の植物です。初心者でも比較的育てやすいため、どなたでもトライしやすい点も魅力といえるでしょう。この記事では、育ちやすい環境や手入れの方法、栽培するうえでの注意点などについて解説します。
ハコネウツギとは?
「ハコネウツギ」はガーデニング初心者にもおすすめの品種です。比較的どの地域でも育ちやすく、メンテナンスにも大きな手間がかからない植物といえます。
その名前を初めて耳にするという人もいるでしょう。どのような植物なのか、基本的な情報から紹介します。
日本固有の落葉性低木
日本固有の落葉性低木で、漏斗(ろうと)に似た形状の花を付けます。開花時期は5~6月で、桜が散った頃に入れ替わるように咲き始めるのです。
名前に「ハコネ」の文字があることから、箱根に自生していると思う人もいるようですが、箱根で自生しているというわけではありません。
箱根では、ニシウツギが美しく咲くことで知られています。一説では、ニシウツギと間違えられたことから付いた名前だとされているのです。
海岸や海辺など水辺を好んで生息しますが、平野部にも広く自生しています。広範囲にわたって見られることから、多様な環境に適応する品種だといえるでしょう。
花や葉の特徴
花の色が移ろっていく点にも特徴があります。咲き始めの頃は白く、咲き進むに従ってピンク色に染まります。そして最後は紅色へと変わっていくのです。
時期によっては、それぞれの枝に付く花の色が異なり、鮮やかなグラデーションを映し出す光景も見られます。色の変化を楽しめる点でも、人気の高い品種です。
葉にもハコネウツギならではの特徴があります。ひとつの茎の節に葉が向かい合うように2枚付く「対生葉序」といわれる形で、大きさは10mm前後です。
縁には鋸歯のような細かいギザギザがあり、先端が尖った楕円形をしています。表にも裏にも、毛はほとんど見られません。
ハコネウツギを育てる環境
ハコネウツギを育てる場合、どのような環境で育てることが望ましいのでしょうか。ハコネウツギの習性を踏まえながら、適した育成環境について紹介します。
庭植えが基本
鉢植えで育てたいという希望を持つ人もいるでしょう。しかしハコネウツギは鉢植え向きではありません。基本的には、庭植えで育てることが相応しい品種です。
理由のひとつに、成長の速度が著しいという特徴があげられます。短期間で大きく育つため、他の品種よりも多めに剪定する必要があり、ある程度の手間がかかるのです。
一般的に、鉢植えで育てる場合の方が、庭植えと比べて数多くの剪定が求められます。成長が早いハコネウツギではなおの事、頻繁な手入れが必要になってしまうことでしょう。
それでも鉢植えを希望するならば、最初から大き目のサイズの鉢で育てることが大切です。
日当たりがよく水はけの良い土
大きく手間がかからないことも、ハコネウツギが人気を集める大きな理由のひとつです。それゆえ園芸ビギナーでも親しみやすいでしょう。
ただし注意すべきことが2つあります。ひとつが日当たりのよい場所で育てることです。
多様な環境でも育つため、日に当たる時間の少ない半日陰でも成長します。しかし、たくさんの花をきれいに咲かせるためには、ふんだんに日光を浴びられる場所が望ましいのです。
2つめのポイントは、水はけのよい状態で育成することです。土に水が溜まってしまうと、根や茎が必要以上の水分を吸収してしまいます。
湿気や蒸れは枝や葉を弱らせ、変色の原因にもなりかねません。ひどいときには枯れてしまうこともあるため、水はけのよい状態を作ってあげることが肝心です。
育てるポイント
ハコネウツギの特徴や性質、望ましい育成環境について説明してきました。続いて、自宅で育てる際のポイントについて、具体的に見ていきましょう。
植え付けは11~3月
植え付けをする時期には、落葉期が適しています。花が終わり葉が枯れ始める11月から、翌年3月までの期間内に行いましょう。
植え付ける根鉢のサイズを基準に、その3倍程に大き目の穴を掘ります。掘り返した土には腐葉土を十分に混ぜ、栽培用の用土として使用しましょう。
場合によっては培養土も混ぜ、まず用土を穴の1/3程度の深さまで入れます。そこに植え付け、幹を囲むように用土で埋めていくのです。
植え付けを終えたら、水をたっぷりとあげましょう。仕上げに棒で軽くつつくなどしながら庭土を馴染ませます。
水やりは夏に少し程度
植え付け後、順調に根付いて成長するようになったら、水やりはほとんどする必要はありません。自然の気候に任せ、時おり降る雨の水で十分といえます。
水やりをしすぎて、あまり水気が多い状態は、好ましい環境とはいえません。すでに説明しましたが、不要な湿気や蒸れは、かえって枝や葉を弱らせる可能性があるからです。
夏場に晴天が続き、乾燥が気になるような時期には、少し水やりをしましょう。頻度としては、夏季の間に1~2回程で大丈夫です。
乾燥が心配であれば「マルチング」をおすすめします。ビニールなどで根元を覆う方法で、用土の乾燥だけでなく、病気や害虫から守る効果もあるのです。
また、土を藁(ワラ)で被せることも、乾燥対策として効果があります。
肥料は1~3月に
肥料に関しても、水やり同様、さほど神経を使う必要はないでしょう。活動期に、花の付きや葉の状態に問題が見られなければ、追肥をするには及びません。
肥料を与えるのは、冬を迎え休眠期となる1~3月の間が適した時期です。冬を耐えている間、必要な養分を得られる環境へと整えます。
使用するのは、緩効性の化成肥料もしくは固形の油粕です。株元に撒いて、養分を与えます。
その際に注意すべきことは、栄養を摂りやすいようにと考えて、根に近すぎる場所に肥料を与えないことです。かえって木が傷み、葉が枯れたり花の付きが悪くなったりします。
剪定時期と増やし方
ハコネウツギは極めて速いスピードで成長するため剪定はとても大切で、かつ不可欠な作業といえます。その他の部分ではあまり手がかかりませんが、剪定には意識をしっかりと向けましょう。
ここからは、適切な剪定の仕方について解説します。
剪定時期は花後の6~7月頃、軽い剪定なら12~3月でも可能
ハコネウツギは5~6月頃に花を咲かせ、7~9月頃には次の花芽をつけます。花が落ちてから花芽をつけるまでの期間が非常に短いのが特徴です。
そのため、樹形を整えるような大掛かりな剪定は、花が落ちてすぐの6~7月頃にできるだけ早く行いましょう。
枯れた枝や伸びすぎた枝、混み合った枝を軽く切って整える程度の剪定であれば、落葉期である12~3月に行うことも可能です。
ただし枝には花芽がついた状態なので、切りすぎると次の開花期に花が咲かなくなってしまいます。
剪定のポイント
剪定でまず意識することは、伸びすぎている枝の処分です。成長が早いため、長くなりすぎた枝からカットし、必要に応じて間引きも行います。
高さを抑えたいときや、鉢植えで仕立て直しをしたい場合は、強剪定が必要です。太い枝を短く切り詰める、花芽を早めにかつ多く切り落となど、状況に応じて対処します。
強剪定は、著しい成長を見せるハコネウツギにはとても有効な方法ですが、注意すべき点があります。落葉期に実施すると、その年に花が咲くことは諦めなければなりません。
増やすときは挿し木
増やす場合は、挿し木をします。経験がない人にとっては「難しそう」と感じることもあるようですが、やり方はとても簡単です。
挿し木に適した時期は、1年の中で2回あります。6~8月、そして9~ 10月です。
初めに15cm程度に枝を切り、挿し穂にします。カットした後に、水を入れたカップに差し、水分をたっぷり与えておきます。
水揚げをして、用意した土に挿し木をし、根が出るまで風通しのよい日陰で待ちます。根付いたら、希望する場所に植え付けましょう。
気を付けたい病気と害虫
植物を元気に育てるにあたっては、病気と害虫は大敵です。ハコネウツギにおいても当然いえることで、病気や虫をいかに防ぐかはとても重要になります。
美しい花を咲かせるために、主な病気や害虫の種類と、対処法について知っておきましょう。
うどんこ病に注意
ハコネウツギの栽培で最も気を付けたい病気は「うどんこ病」でしょう。カビが原因の病気で、蝕(むしば)まれることの多いものです。
葉の表面に、白い粉状の異物が付着するようになります。うどん粉のように見えることから、その名が付きました。
梅雨の時期が特に発症しやすいですが、葉が付いている期間だといつ症状が現れてもおかしくありません。そのため、活動期は常に注意を払っておく必要があるのです。
軽症であれば、柔らかい布で拭い去ることで対処可能な場合もあります。しかし、病気の具合が進行すると、薬剤を用いて駆除しなければなりません。
うどんこ病が引き起こすこととして、葉が弱り、花が咲かなくなることがあげられます。重症だと、葉が枯れ落ちる原因にもなるのです。
日当たりと風通しのよい環境を維持することで、予防につながります。
春から秋はアブラムシが発生しやすい
ハコネウツギは、害虫に強い性質があります。それゆえ、その他の植物に比べると、害虫対策の苦労は少ない品種です。
気を付けておきたいのは、春から秋にかけて活動する「アブラムシ」です。新芽の周辺に発生し、葉や枝にダメージを与えます。
夏には「オオルリコンボウハバチ」の幼虫に注意しましょう。葉に寄生して、食べてしまうことがあります。
ハコネウツギに似ている植物
数多くの植物を見渡してみると、ハコネウツギに似た種類のものも見つかります。共通の面影をたたえる2品種について紹介しましょう。
山間部に多いニシキウツギ
名前の由来は、ハコネウツギと同じように花の色が変化することにあります。2色に色が変わるため、もともとは「二色空木」と書いていたともいわれている品種です。
両者とも姿形がとてもよく似ていますが、平地に自生するハコネウツギに対して、山間部で生殖する点に違いがあります。
ハコネウツギは、箱根で見かけることはありません。箱根でよく姿を見るのは、こちらのニシキウツギです。
花の色が違うタニウツギ
ハコネウツギと同じタニウツギ属の分類される品種ですが、咲く花の色が異なります。白から紅色に移り行くハコネウツギに対して、タニウツギの花は、初めは薄いピンクです。
生殖範囲はとても広く、北海道を含む国内のほぼ全ての地域で見られます。その名が示す通り、自生するロケーションは谷が多いことが特徴です。
花が咲くと樹全体がピンクや淡い紅色の花で被われ、ふんわりと枝垂れる姿は何ともいえない美しさをたたえています。
ハコネウツギの知っておきたい知識
幅広く知識を備えておくと、育成するにあたって適切な判断が可能となり、また愛着も深まります。
ハコネウツギへの関心をより深めるために、とっておきのお役立ち情報を2点紹介します。
枯れたと勘違いしやすい空洞
「あれ、枯れてしまったかも?」と勘違いしやすい面があります。その理由としてあるのは、幹や枝の内側が空洞になっているためです。
そもそも、ウツギは「空木」から来ていて、空っぽな状態を指して名づけられています。成長とともに、幹の内部にドーナツ状の空洞ができる性質があるのです。
剪定した際に、切り口から内側を除いたときにこの空洞を目にした人が、枯れたと感じたり、病気を疑ったりすることがあります。しかし、空洞自体には問題ありませんので、安心して栽培を続けましょう。
花言葉は移り気
ハコネウツギの花言葉は「移り気」です。花の咲き始めから落ちていくまでの間に、さまざまに色を変える様子から授けられた言葉といえます。
白で始まり、ピンクへと染まってから紅色に色づく姿は、確かにひとつに定まらない移ろいやすさを浮かべています。ハコネウズキにぴったりな花言葉です。
その他にも、「秘密」「人の魅力を引き出す」「夢心地」などがあります。どれもが、ハコネウツギに備わる神秘的な魅力と通じているように感じられる言葉です。
ハコネウツギを育ててみよう
ハコネウズキは北から南まであらゆるエリアで育てやすく、メンテナンスにも手がかからないことで人気の植物です。ガーデニング初心者でも、気軽に楽しめる魅力が詰まっています。
病気や害虫に強い点も、庭木としてうってつけです。色を変える姿が可愛らしい花を付けるハコネウツギを、自宅で楽しく育ててみましょう。