赤い実が秋から冬にかけて鮮やかに実る常緑低木のピラカンサは、生垣や庭木として人気の観葉植物です。
分類上はバラ科トキワサンザシ属で、「トキワサンザシ」「タチバナモドキ」「カザンデマリ」の3種をピラカンサとして呼ぶことが多いです。
小さな白い花や赤色の実が魅力的ですが、美しい樹形を保ち、実付きを良くするためには、適切な時期に剪定を行うことが重要なポイントとなります。
この記事では、ピラカンサの剪定時期や方法について紹介します。
ピラカンサの剪定時期は種類によって異なる
ピラカンサは、種類によって剪定時期が異なりますが、基本的には春の3~4月頃か、開花後の6~9月頃に行います。
ここでは、代表的な2種の剪定時期を紹介します。
トキワサンザシの剪定:6~9月
トキワサンザシの剪定は、開花が終わる6月下旬から9月にかけて実施するのがおすすめです。
11月ごろになると翌年の花芽を形成し始めるので、花芽を傷つけないよう、それより前に剪定を終わらせましょう。
この時期は新芽の成長が活発で、剪定後の回復力も高く、傷口の癒合も順調に進みます。
特に梅雨明け後の7月から8月初旬は、樹勢が最も旺盛な時期となるため、剪定には最適な季節と言えるでしょう。
タチバナモドキの剪定:3~4月
タチバナモドキの剪定は、3月から4月が最適です。
タチバナモドキは開花後の6月頃から花芽の形成を始めるため、それより前の時期に剪定を完了させることで、大切な花芽を誤って切除してしまうリスクを回避できるでしょう。
生垣として剪定する場合
生垣として利用する場合は、樹形を整える目的で12月から2月の冬季に剪定を行うことが多いです。
ただし、冬季の剪定は翌年の花付きに影響を与える可能性が高いです。
すでについている花芽を剪定してしまうと、春の開花が著しく減少してしまう恐れがあるため、生垣などで花を必要としない場合のみ、冬季に剪定を行いましょう。
ピラカンサの剪定に必要な道具
ピラカンサの剪定に必要な道具を紹介します。
どれもインターネットショッピングで購入可能ですし、園芸店やホームセンターでも販売されています。
手袋
ピラカンサの剪定に欠かせないのが手袋です。
ピラカンサはトゲが多く、普通のゴム手袋だと貫通して、ケガを負う可能性が高いです。
以下のポイントを気にしながら、自身にあった手袋を選んでください。
- 牛革やヤギ革などの丈夫な皮革素材
- トゲが貫通しにくい1.5mm以上の厚みがあるもの
- 前腕部分まで保護できるガーデニンググローブ
- 手首部分がゴムやマジックテープで絞れるタイプ
- 締め付けすぎない程度のゆとり
- 手のサイズに合った適切なサイズ選び
剪定バサミ
ピラカンサの剪定には、ペンチ型の剪定バサミがもっとも使い勝手が良いです。
剪定バサミには大きく分けて2つのタイプがあり、1つ目は「バイパス式」です。
ハサミのように上下2枚の刃が交差して切れる仕組みになっていて、枝を切る際に切り口がきれいに仕上がるため、ピラカンサの育成管理に適しているでしょう。
2つ目は「アンビル式」です。
この形状の特徴は、上部の刃が下部の受け台(アンビル)に向かって押し切る構造になっている点で、枯れ枝や硬くなった枝の処理に力を発揮するため、古くなったピラカンサの整理に適しています。
選び方のポイントとして、両タイプとも様々なサイズが販売されているので、使用する方の手の大きさに合わせて選択しましょう。
刈り込みバサミ
刈り込みバサミは、ピラカンサの細かな枝葉の整理や全体的な形を整えるために不可欠な道具です。
特に生垣や庭木として育てる場合、見栄えの良い均一な樹形を保つために重要な役割を果たしてくれます。
以下のポイントを意識して選んでみてください。
- 刃渡りは30〜45cm程度のもの
- 軽量で疲れにくい素材
- 握りやすいハンドル形状のもの
- メンテナンス性の良い分解可能なタイプ(便利)
剪定用ノコギリ
直径2センチメートルを超える太い枝を処理する際には、専用の剪定ノコギリが必要です。
剪定用のこぎりは、刃の形状が細身に設計されているため、枝の間に入れやすく、作業がスムーズに行え、枝を効率よく切断できるよう、刃の目が比較的粗く作られているのが特徴です。
この設計により、切断面がきれいに仕上がり、樹木への負担を軽減することができるでしょう。
剪定ノコギリは様々なサイズが市販されていますが、家庭での使用に最適なのは刃渡り25〜30cm程度のものがおすすめです。
脚立
ピラカンサは樹高が3~4m程度まで成長するため、高くなってしまった場合には脚立を使用すると良いでしょう。
剪定では幹や枝の隙間に足をねじ込んで脚立を立てることが多いので、三脚を使いましょう。
脚立を使う際には、以下の注意点を守って使用してください。
- 登る前に調節器具がロックされていることを確認する
- 一番上の段に載って作業しない
- 上を向いて作業しない
- 悪天候下では使わない
長袖・長ズボン
ピラカンサはトゲが多く、トゲさりやすいため作業時には長袖・長ズボンの着用をおすすめします。
以下のポイントを意識して着用するものを選んでください。
- 丈夫な生地で作られた作業着
- 体にフィットしすぎない、適度なゆとりのあるもの
- 破れにくい素材(デニムやキャンバス地など)
- 汚れが目立ちにくい濃い色のもの
ピラカンサの剪定方法
ピラカンサの剪定方法は、基本は不要な枝を切る間引き剪定です。
ただし、生垣にする場合は刈り込みを行うのがおすすめです。
それぞれの剪定方法について紹介します。
基本は間引き剪定を行う
ピラカンサの剪定で特に意識してほしいのは、徒長枝を切ることです。
徒長枝とは、他の枝と比べて著しく成長の早い枝のことを指します。通常の枝よりも太く、上にまっすぐ伸びているのが特徴です。
徒長枝は樹形を崩す原因となるだけでなく、ピラカンサは長く伸びている枝には花芽をつけないので、優先して根元から切り落としましょう。
その後、混み合った枝も整理しましょう。枝が密集すると、日光が内部まで十分に届かず、通気性が悪くなります。
その結果、病害虫の発生リスクが高まり、樹木の健康状態に悪影響を及ぼす可能性がありますが、内部の枝を適度に間引くことで、これらの問題を防ぐことができます。
生垣にしたい場合は刈り込みをする
ピラカンサを生垣として育てる場合は、刈り込み剪定が基本です。
ピラカンサは驚くべき回復力を持ち、刈り込み後も新芽を活発に出す特徴があるので、強めに刈り込みをしてコンパクトに整えましょう。
刈り込みは基本的に冬季に行いますが、生垣でも花芽を楽しみたい場合には春季に剪定してください。
また、刈り込みだけでは内部が密集しすぎてしまうので、内部の枝も間引きましょう。これにより、病害虫の発生を防ぎ、健康的な生育を促すことができます。
植えつけ初年度の強剪定と、その後の定期的な軽剪定を組み合わせることで、美しい生垣を保つことができます。
ピラカンサを剪定するときの注意点
ピラカンサを剪定をするときは、以下の点に注意して行うと良いでしょう。
トゲに注意する
ピラカンサは、伸びた枝の先にトゲを持っているため、必ず剪定用手袋をはめて剪定を行いましょう。
薄い布製の手袋だとトゲが貫通して、ケガをしてしまう恐れがあるので、丈夫な革製のものを選ぶのがおすすめです。
剪定をする際はケガをしないよう、剪定用手袋、長そで、長ズボンを着用してから取り掛かりましょう。
短い枝は切らない
ピラカンサの短い枝、特に先端にトゲがある枝は、花芽や実がなりやすい重要な部分なので、剪定時に切り落とさないよう注意してください。
また、春に開花し、秋に実をつけた枝は、つけ根から約20~30cmを残して剪定するように意識しましょう。
ピラカンサのお手入れ方法
ピラカンサは適切なお手入れを行うことで、より美しく健康的に育てることができます。
ここでは、基本的なお手入れ方法について詳しく解説します。
水やり
ピラカンサは比較的乾燥に強い植物ですので、地中に根を張ったら、自然降雨のみで問題ありません。
しかし、夏の暑い時期など土が乾燥してしまうときは、1日1回の水やりを行いましょう。
水やりの頻度は下記の通りです。
- 植え付け直後
土が乾かないよう、毎日たっぷりと水やりを行う
- 真夏or乾燥が続く時期
1日1回、朝夕の涼しい時間帯に水やりを行う
ポイント
- 土の表面が乾いてから与える
- 根元にゆっくりと染み込ませるように
- 葉水は病気予防のため避ける
肥料
水やりと同様、肥料はほとんど与える必要がありませんが、寒肥のみ与えましょう。
2月下旬~3月上旬ごろに与えてることで、春がくるまでに肥料が分解され、新芽や花芽を出すための栄養となります。
植え付け
ピラカンサの植え付けは以下のポイントに注意して行うと良いでしょう。
適切な植え付け時期
- 春:3月下旬〜4月
- 秋:10月〜11月
※真夏と厳冬期は避ける
植え付け場所の選定
【日当たり】
- 日当たりの良い場所を選ぶ
- 西日の強い場所は避ける
- 風通しの良い場所が理想的
【土壌条件】
- 水はけの良い土壌
- 弱酸性〜中性(pH6.0〜7.0)
- 有機質を含んだ肥沃な土
植え付けの手順
【植え穴の準備】
- 根鉢の1.5倍程度の大きさに掘る
- 底に腐葉土と化成肥料を混ぜる
【植え付け作業】
- 根鉢を崩さないよう丁寧に行う
- 植え付け深さは根鉢の上部が少し見える程度
- 空気が入らないよう、土をしっかり踏み固める
ピラカンサの増やし方
ピラカンサを増やす方法は、挿し木と種まきが基本です。
それぞれの増やし方について紹介します。
挿し木
ピラカンサの挿し木に最適な時期は、花が咲き終わった6月から9月の期間です。
この時期は剪定作業とも重なるため、剪定時に挿し木用の枝を選んでおくと効率的です。
【挿し木の詳しい手順】
1. 挿し木用の枝選び
- 健康な枝を10cm程度の長さにカット
- 斜めに切ることで発根を促進させる
2. 葉の処理
- 上部に2枚の葉を残す
- その他の葉は丁寧に取り除く
3. 水揚げ処理
- 切り口を数時間水につける
- 発根力を高める効果あり
4. 植え付け
- 挿し木専用の用土を使用する
- 適度な水はけを確保する
【注意点とコツ】
- 作業時はトゲによるケガに注意する
- 日当たりと風通しの良い場所で管理する
- 発根後は適切な大きさの鉢や庭に移植する
種まき
ピラカンサを増やすのに最適なのは挿し木ですが、種まきを行うことも可能です。
最適な種まき時期は10月中旬から12月です。
熟した実から果肉を丁寧に洗い落として種を取り出し、まき付けを行いましょう。
冬季に発芽した場合は、以下の点に注意して管理してください。
【発芽後の管理】
- 寒風や霜を避けるため室内で管理する
- 暖房の当たらない場所で管理する
- 春になったら鉢上げを実施する
ピラカンサの害虫対策
ピラカンサを健康に育てるためには、害虫への適切な対策が欠かせません。
特にアブラムシとハマキムシは、ピラカンサの生育に大きな影響を及ぼす代表的な害虫です。
これらの害虫の特徴と対策について詳しく解説します。
害虫:アブラムシ
アブラムシは新芽や若葉に寄生し、植物の栄養を吸収する害虫で、被害を受けた葉は縮んだり変形を起こし、ひどい場合は生育不良や開花・結実の減少につながります。
更に被害が進むと、アブラムシの分泌物にすす病が発生し、葉が黒くなることもあります。
アブラムシの予防には、日頃から植物の状態をよく観察し、風通しを良くしておきましょう。
新芽が出始める春先から特に注意が必要で、早期発見が効果的な対策につながります。
対処方法としては、軽度の場合は水で洗い流し、被害が深刻な場合は殺虫剤の散布が必要になります。
害虫:ハマキムシ
ハマキムシは葉を巻いて中に潜み、葉を食害する害虫で、被害を受けた葉は不規則に巻かれ、中が食べられて穴だらけになり、光合成が妨げられ、ピラカンサの生育に悪影響を及ぼします。
ハマキムシの予防には、定期的な観察と早期発見が大切です。
特に春から初夏にかけて発生が多くなるため、この時期は特に注意しましょう。
巻かれた葉を見つけたら、すぐに摘み取って処分してください。
被害が広範囲に及ぶ場合は、専用の殺虫剤を使用しましょう。
両害虫に共通する対策として、植物の健康管理が大切です。
適切な水やりや肥料管理、風通しの確保により、植物の抵抗力を高めることで、害虫の被害を軽減できるでしょう。
また、定期的な剪定により、枝葉が混み合うのを防ぎ、害虫の発生しにくい環境を作ることも効果的です。
業者にピラカンサの剪定を依頼する場合の費用相場
ピラカンサの剪定を業者に依頼する場合、費用の算出方法は主に2つのパターンがあります。
樹木の状態や規模、地域によって大きく異なるため、事前に複数の業者から見積もりを取ることをおすすめします。
剪定金額の目安料金
高さ | 料金 |
---|---|
3m未満 | 3,000~5,000円 |
3m~5m未満 | 5,000~15,000円 |
作業時間別の目安料金
剪定に要する時間を基準に費用が決定されます。
時間 | 料金 |
---|---|
30分未満 | 5,000円〜8,000円 |
1時間程度 | 8,000円〜15,000円 |
半日(4時間) | 15,000円〜30,000円 |
剪定料金の詳細はこちらの記事を参考にしてください。
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